【論文972】カムの従動節をずらして得をするのは、戻りが持ち上げより遅いときだけである

要旨

カムの圧力角を収めるには、ピッチ円を大きくするほかに、従動節の動く線をカムの中心からずらす方法がある。ずらすと持ち上げの側の圧力角が下がる。本稿は、論文961 の四つの運動曲線(持ち上げ 10 mm・持ち上げの角 60 度)に、戻りの角 60・90・120 度と従動節のずれを入れ、持ち上げと戻りの両方で最大の圧力角を 30 度に収めるピッチ円が最も小さくなるずれを探す。新しい定理も法則も主張しない。

第一に、ずれ 0 では 961 の値に戻る。ずれ 0・戻り 60 度で、要るピッチ円は単弦 21.4575 mm・サイクロイド 28.3851 mm で、961 と $10^{-3}$ mm 以内だった(第2節)。

第二に、戻りが持ち上げと同じ角なら、ずらしても得をしない。戻り 60 度では、四つの曲線とも最適のずれは $0.0000$ mm で、要る半径はずれ 0 と同じだった(第2節)。

第三に、戻りが遅いほど、最適のずれは大きく、要る半径は小さい。単弦では、戻り 90 度で最適のずれ $2.4335$ mm・要る半径 $17.4135$ mm、戻り 120 度で $3.6194$ mm・$\mathbf{15.6138}$ mm だった(第3節)。

第四に、小さくなる割合は、曲線によらずほとんど同じである。ずれ 0 に対する要る半径の比は、戻り 90 度で $0.811534$〜$0.815958$、戻り 120 度で $\mathbf{0.725686}$〜$0.732789$ だった(第3節)。

第五に、分離子は、持ち上げと戻りを同じ速さで行うか、違う速さで行うかである。ずれは持ち上げの圧力角の分子から引かれ、戻りの圧力角の分子に足される。同じ速さなら片方を下げたぶん他方が上がり、戻りが遅ければ戻りの余裕を持ち上げに回せた(第4節)。

キーワード:カム、圧力角、従動節のずれ、戻りの区間、ピッチ円、運動曲線。

射程(何を示さないか)

新しい定理も法則も主張しない。従動節の動く線をカムの中心からずらすと持ち上げの圧力角が下がり戻りの圧力角が上がること、ずれのある直動の従動節の圧力角の式は、いずれもカムの設計で知られている。置いた値である。持ち上げ 10 mm・持ち上げの角 60 度・四つの運動曲線は論文961 の値で、戻りの角 60・90・120 度と許す圧力角 30 度、ずれを探す範囲 0〜15 mm は本稿で置いた。どの機械のカムにも対応しない。直動のローラーの従動節だけを扱う。平らな面の従動節、揺れる腕の従動節、休みの区間、回る向きを変えることは入れない。輪郭の強さを扱わない。接触の応力、材料、切り下げ(論文967)、横に押す力による軸受の摩擦は扱わない。既刊との関係:論文961 の射程注記は、半径方向のローラーの従動節だけを扱い、中心からずらした従動節、平らな面の従動節、揺れる腕の従動節は入れないと書いた。本稿はそのうち中心からずらした従動節の席に座る(先客なし)。論文961 は、速さの最大が同じカムの曲線でも、圧力角を収めるピッチ円が角の最大になる位置で変わることを示した。ここでは、同じ曲線に戻りと従動節のずれを加え、ずれが要る半径をどう変えるかを数える。論文967 は、切り下げを避けるローラーの大きさが減速の強さの順に決まることを示した。ここでは圧力角だけを見る。加えたのは、ずれ 0 で 961 を再現したこと、三つの戻りの角で最適のずれと要る半径を出したこと、同じ角の戻りでは最適のずれが 0 だと示したこと、小さくなる割合が曲線によらずほぼ同じだと示したこと、分離子を「同じ速さか、違う速さか」に置いたことである。

1. 記法と問い

設定:持ち上げ $h=10$ mm を角 $\beta=60$ 度で行い、戻りは角 $\beta_r$ で同じ曲線を逆にたどる。従動節の動く線をカムの中心から $e$ ずらすと、ピッチ円の半径 $R_p$ に対して動き始めの高さは $y_0=\sqrt{R_p^2-e^2}$ で、圧力角は

$$\tan\phi=\frac{\pm(h/\beta)\,v(u)-e}{y_0+h\,s(u)}$$

(持ち上げで $+$・$\beta$、戻りで $-$・$\beta_r$)である。$u$ を $4000$ に刻んで持ち上げと戻りの最大の圧力角を出し、その大きいほうが 30 度に収まる $R_p$ を二分法で探した。ずれ $e$ は 0〜15 mm の黄金分割で、要る $R_p$ が最も小さくなるように詰めた。

問い:従動節をずらすと、持ち上げと戻りの両方で圧力角を収めるピッチ円はどれだけ小さくなるか。

2. 同じ角の戻り

計算 2.1:ずれ 0・戻り 60 度で、要るピッチ円は単弦 21.4575 mm・サイクロイド 28.3851 mm で、961 と $10^{-3}$ mm 以内だった。戻り 60 度で最適のずれを探すと、四つの曲線とも $0.0000$ mm で、要る半径は放物線 $28.0797$ mm・単弦 $21.4575$ mm・サイクロイド $28.3851$ mm・3-4-5 多項式 $26.3648$ mm のまま(比 $1.000000$)だった。

観察 2.2 戻りが持ち上げと同じ角なら、ずらしても得をしない。同じ曲線を同じ角で戻ると、戻りの圧力角は持ち上げの鏡になる。ずれは片方を下げると他方を同じだけ上げるので、最適は 0 だった。

3. 遅い戻り

計算 3.1:戻り 90 度と 120 度の最適のずれと要るピッチ円。

曲線・戻り ずれ 0(mm) 最適のずれ(mm) 要る半径(mm) ずれ 0 に対する比
放物線・90 度 $28.0797$ $3.1831$ $22.7898$ $0.811611$
単弦・90 度 $21.4575$ $2.4335$ $17.4135$ $0.811534$
サイクロイド・90 度 $28.3851$ $3.1395$ $23.1610$ $0.815958$
3-4-5 多項式・90 度 $26.3648$ $2.9341$ $21.4840$ $0.814875$
放物線・120 度 $28.0797$ $4.7746$ $20.3771$ $\mathbf{0.725686}$
単弦・120 度 $21.4575$ $3.6194$ $\mathbf{15.6138}$ $0.727660$
サイクロイド・120 度 $28.3851$ $4.6881$ $20.8003$ $0.732789$
3-4-5 多項式・120 度 $26.3648$ $4.3772$ $19.2865$ $0.731525$

四つの曲線とも、戻り 120 度ではずらすと要る半径が 10 パーセント以上小さくなった。

観察 3.2 戻りが遅いほど、ずらす得が大きい。戻り 90 度から 120 度にすると、四つの曲線とも最適のずれが大きくなり、要る半径の比が下がった。その比は、戻り 90 度で $0.811534$〜$0.815958$、120 度で $0.725686$〜$0.732789$ と、曲線によらずほとんど同じだった。

4. 分離子

観察 4.1 分離子は、持ち上げと戻りを同じ速さで行うか、違う速さで行うかである。ずれ $e$ は持ち上げの圧力角の分子から引かれ、戻りの圧力角の分子に足される。同じ速さなら、片方の余裕はもう片方の不足になり、最適のずれは 0 だった。戻りが遅いと戻りの圧力角には余裕があり、ずらしてその余裕を持ち上げに回すと、単弦で 21.4575 mm が $15.6138$ mm になった。

観察 4.2 言わないこと。平らな面や揺れる腕の従動節、休みの区間、回る向き、接触の応力、切り下げ、どのずれを使うべきかは扱わない。示したのは、961 の四つの曲線で、ずらす得が戻りの遅さにだけ現れ、その割合が曲線によらずほぼ同じことである。

5. 点呼と結び

  1. ずれのある従動節の圧力角(第1節):持ち上げで引き、戻りで足す。
  2. ずれ 0 で 961 を再現(計算 2.1):21.4575・28.3851 mm。
  3. 戻り 60 度で最適のずれ 0(計算 2.1):ずらしても得をしない。
  4. 単弦・戻り 120 度で $\mathbf{15.6138}$ mm(計算 3.1):遅い戻りで得をする。
  5. 比 $\mathbf{0.725686}$〜0.732789(計算 3.1):曲線によらずほぼ同じ。
  6. 同じ速さか、違う速さか(観察 4.1):分離子・論文961 の射程注記。

結び:カムの従動節をずらして得をするのは、戻りが持ち上げより遅いときだけである。961 の四つの曲線で、戻りが持ち上げと同じ 60 度なら最適のずれは 0 だったが、戻りを 120 度にすると最適のずれは $3.6194$〜$4.7746$ mm になり、要る半径はずれ 0 の $0.725686$〜$0.732789$ 倍になった。単弦では 21.4575 mm が $15.6138$ mm になった。分離子は、持ち上げと戻りを同じ速さで行うか、違う速さで行うかである。既刊との位置:論文961 が中心を通る従動節で数えた圧力角に、論文961 が入れなかったずれと戻りを入れた。正直に言えば、接触の強さも切り下げも見ていない。ずらす得がどこに現れ、どれだけか、そこまでである。

参考文献

  1. Norton, R. L. (2009). Cam Design and Manufacturing Handbook. Industrial Press.
  2. 山岸勇輝 (2026). 『速さの最大が同じカムの曲線でも、圧力角を収めるピッチ円は、角が最大になる位置で変わる』[論文961]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/961
  3. 山岸勇輝 (2026). 『カムの切り下げを避けるローラーの大きさは、圧力角と違い、減速の強さの順に決まる』[論文967]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/967

作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。

書誌

山岸勇輝(2026)「カムの従動節をずらして得をするのは、戻りが持ち上げより遅いときだけである」[論文972]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/972

YOI 972第1版・2026年9月ビットコインに記録済み

日付の証拠(OpenTimestamps):日本語版の .ots・英語版の .ots・SHA256SUMS

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住所:https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/972・CC BY 4.0・プレプリント(査読を経ていません)・ORCID 0009-0006-8587-3450

引用するとき

山岸勇輝 (2026). カムの従動節をずらして得をするのは、戻りが持ち上げより遅いときだけである [論文972]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/972

Yamagishi, Y. (2026). Offsetting a Cam Follower Pays Only When the Return Is Slower Than the Rise [Paper 972]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/972

@misc{yamagishi2026yoi972,
  author = {Yamagishi, Yuuki},
  title = {Offsetting a Cam Follower Pays Only When the Return Is Slower Than the Rise},
  year = {2026},
  howpublished = {YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/972},
  note = {Preprint, edition 1}
}
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