要旨
光は最短の道を通ると言われる。本稿が示すのは、停留点が最小・最大・縮退の三通りあり、三つとも光学の中で作れることである。楕円鏡では $24$ 点すべてが等しく、幅は $\mathbf{4.441\times10^{-16}}$ である。新しい定理も法則も主張しない。
第一に、平面鏡では停留点が $x=0.000000017$ に来て、経路長 $\mathbf{2.828427125}$ は両隣の $2.831969281$ より短い。最小である(第2節)。
第二に、そこで入射角と反射角が $45.000000$ 度 対 $45.000000$ 度で一致する(第2節)。
第三に、これが本稿の芯である。曲率の大きい鏡では、頂点の $\mathbf{3.572114220}$ が両隣の $3.571008542$ より長い。同じ停留条件が最大を与える(第3節)。
第四に、楕円の二焦点を結ぶ反射では、$24$ 点すべてで経路長が $\mathbf{4.000000000000}$ になる。幅は $\mathbf{4.441\times10^{-16}}$ で、最小でも最大でもない(第3節)。
第五に、同じ停留条件から屈折のスネルの法則が出る。$n_{1}\sin\theta_{1}=0.806200914$ 対 $n_{2}\sin\theta_{2}=0.806200883$(第4節)。
第六に、分離子は「停留か、最小か」である(第4節)。
キーワード:フェルマーの原理、停留点、変分原理、光路長、極値。
射程(何を示さないか)
新しい定理も法則も主張しない。フェルマーの原理が停留であって最小でないことは標準的であり、論文84 が既に「停留であって最小とは限らない(鞍点もある)」と書いている。本稿が加えるのは数である。最小・最大・縮退の三つを光学の中で実際に作り、値を並べた。とくに縮退の場合は「鞍点」という言い方には収まらない。変分法の一般論を書かない。第二変分、共役点、モース指数の理論には立ち入らない。一変数の数値探索で足りる範囲だけを見る。波動光学を扱わない。回折、干渉、経路積分による停留位相の説明は主題ではない。幾何光学の経路長だけを見る。目的論を持ち込まない。論文84 と 97 が退けたとおり、光が道を「選ぶ」とは書かない。停留は局所条件である。既刊との関係:論文84 は最小作用が停留であって目的論ではないと示した。本稿はその一文に、反例となる数を付ける。論文143 は最小エントロピー生成が原理ではなく柵つきの定理だと示した。「最小」を名乗る主張の柵を書く点で同じ形である。論文486 は三つの分野の最適点が同じ頂点だと示した。そこでは頂点が一種類だった。本稿は頂点に三種類あることを示す。論文481 は分離子が無いと反証の行き先が決まらないと示した。本稿はその分離子を一本書く。加えたのは、最小の例を $2.828427125$ 対 $2.831969281$ で出したこと、最大の例を $3.572114220$ 対 $3.571008542$ で出したこと、縮退の例を幅 $4.441\times10^{-16}$ で出したこと、三つを同じ枠で並べたこと、停留条件からスネルの法則を数値で確かめたことである。
1. 記法と問い
設定:点 $A$ から鏡の点 $x$ を経て点 $B$ に至る光学的経路長を
$$L(x)=n_{1}\,|Ax|+n_{2}\,|xB|$$
とする。フェルマーの原理は $L'(x)=0$、すなわち $L$ が停留であることを要求する。$L$ が最小であることは要求していない。以下、鏡の形を変えて $L$ の様子を見る。
観察 1.1 光は最短の道を通ると言われる。最小の経路、「自然は無駄をしない」という言い方と一緒に使われる像である。
観察 1.2 だが条件は $L'(x)=0$ である。一階の条件、二階の符号については何も言っていない。
問い:最小でない停留点は、実際に作れるのか。
2. 最小になる場合
計算 2.1:平面鏡で $L(x)$ の停留点を探すと $x=0.000000017$、そこでの経路長は $\mathbf{2.828427125}$ である。探索区間 $[-5,5]$ の内側にあり、端に張り付いていない。
観察 2.2 それは最小である。$2.828427125 < 2.831969281$、両隣より短く、谷になっている。
観察 2.3 停留点は対称点に来る。$x=0.000000017$、厳密には $0$ で、残っているのは数値探索の刻みである。
観察 2.4 そこで入射角と反射角が一致する。$45.000000$ 度 対 $45.000000$ 度、反射の法則が停留条件から出ており、独立な確認になる。
観察 2.5 ここまでは「最短の道」で困らない。平面鏡なら最小、この一例だけを見ていれば、原理を「最小原理」と呼んでも矛盾は出ない。
3. 最大になる場合と、どこでも同じ場合
計算 3.1:鏡の曲率を大きくして、同じ探索をする。
| 位置 | 経路長 |
|---|---|
| 頂点 | $\mathbf{3.572114220}$ |
| 左隣 | $3.571008542$ |
| 右隣 | $3.571008542$ |
観察 3.2 停留点が最大になっている。$3.572114220 > 3.571008542$、両隣より長く、山になっている。同じ $L'(x)=0$ が、谷ではなく山を指した。
観察 3.3 だから「最小」ではなく「停留」である。最小の例と最大の例が両方ある。反例が一つあれば、最小という言い方は成り立たない。
計算 3.4:楕円の二焦点を $A$、$B$ に置き、楕円上の $24$ 点で反射させる。
| 量 | 値 |
|---|---|
| 経路長($24$ 点とも) | $\mathbf{4.000000000000}$ |
| $24$ 点での幅 | $\mathbf{4.441\times10^{-16}}$ |
| 長軸 $2a$ | $4.0000$ |
観察 3.5 どこで反射しても同じである。幅 $4.441\times10^{-16}$、倍精度の丸めの大きさであり、$24$ 点すべてが等しい。
観察 3.6 値は長軸に一致する。$4.000000000000$ 対 $2a=4.0000$、楕円の定義から来る値で、独立な確認になる。
観察 3.7 これは最小でも最大でもない。全部の点が停留点である。谷でも山でもなく、平らである。「鞍点もある」という言い方には、この場合が入っていない。
4. 分離子
分離子:要求しているのが停留か、最小か。
観察 4.1 停留なら、三通りある。最小・最大・縮退、三つとも光学の中で作れた。
観察 4.2 最小なら、曲率の大きい鏡が反例になる。$3.572114220 > 3.571008542$、一階の条件は満たすが、最小ではない。
観察 4.3 同じ停留条件から、屈折の法則も出る。停留点 $x=0.362650234$ で $n_{1}\sin\theta_{1}=0.806200914$、$n_{2}\sin\theta_{2}=0.806200883$、スネルの法則であり、法則の側は最小か最大かに依らない。
観察 4.4 つまり物理を担っているのは一階の条件だけである。二階の符号は形が決める。鏡の曲率という、原理の外にある量である。
観察 4.5 論文84 は同じことを言葉で書いていた。「停留であって最小とは限らない」。本稿が足したのは数と、第三の場合である。「鞍点もある」では縮退が落ちる。
観察 4.6 論文143 と同じ形でもある。最小エントロピー生成は原理ではなく柵つきの定理だった。「最小」を名乗る主張には、たいてい柵が要る。
観察 4.7 正直に言えば、縮退の例は特別な配置に依っている。二焦点という一点でだけ起きる。焦点から少しでもずらせば平らでなくなり、三通りのうち縮退だけが不安定である。三つを対等に並べたが、実際に出会う頻度は同じではない。
5. 点呼と結び
- 平面鏡で $2.828427125$(計算 2.1):両隣より短い。
- 入射角と反射角が $45.000000$ 度(観察 2.4):独立な確認。
- 頂点で $3.572114220$(計算 3.1):本稿の芯。
- 両隣は $3.571008542$(観察 3.2):停留点が最大。
- 楕円で $24$ 点とも $4.000000000000$(計算 3.4):幅 $4.441\times10^{-16}$。
- 値が長軸 $2a$ に一致(観察 3.6):楕円の定義から。
- 縮退は鞍点ではない(観察 3.7):谷でも山でもない。
- スネルの法則が出る(観察 4.3):$0.806200914$ 対 $0.806200883$。
- 分離子は停留か最小か(観察 4.1):停留なら三通り。
- 縮退は不安定(観察 4.7):二焦点でだけ起きる。
結び:光は最短の道を通ると言われる。最小の経路という、「自然は無駄をしない」と一緒に使われる像である。だが条件は $L'(x)=0$ という一階の条件であって、二階の符号については何も言っていない。最小になる場合、平面鏡では停留点が $x=0.000000017$ に来て、経路長 $\mathbf{2.828427125}$ は両隣の $2.831969281$ より短く、探索区間 $[-5,5]$ の内側にあって端に張り付いていない。停留点は対称点に来ており、厳密には $0$ で、残っているのは数値探索の刻みである。そこで入射角と反射角が $45.000000$ 度 対 $45.000000$ 度で一致し、反射の法則が停留条件から出ることの独立な確認になる。ここまでは「最短の道」で困らず、この一例だけを見ていれば原理を「最小原理」と呼んでも矛盾は出ない。最大になる場合と、どこでも同じ場合、鏡の曲率を大きくすると、頂点の経路長 $\mathbf{3.572114220}$ が両隣の $3.571008542$ より長くなる。同じ $L'(x)=0$ が、谷ではなく山を指した。最小の例と最大の例が両方あるのだから、「最小」ではなく「停留」である。さらに楕円の二焦点を結ぶ反射では、楕円上の $24$ 点すべてで経路長が $\mathbf{4.000000000000}$ となり、幅は $\mathbf{4.441\times10^{-16}}$、すなわち倍精度の丸めの大きさしかない。その値は長軸 $2a=4.0000$ に一致し、楕円の定義から来る独立な確認になる。これは最小でも最大でもなく、全部の点が停留点で、谷でも山でもなく平らである。「鞍点もある」という言い方には、この場合が入っていない。分けているものは一つ、要求しているのが停留か、最小か。停留なら最小・最大・縮退の三通りがあり、三つとも光学の中で作れた。最小なら曲率の大きい鏡が反例になり、一階の条件は満たすが最小ではない。同じ停留条件から屈折の法則も出て、停留点 $x=0.362650234$ で $n_{1}\sin\theta_{1}=0.806200914$、$n_{2}\sin\theta_{2}=0.806200883$ となる。スネルの法則であり、法則の側は最小か最大かに依らない。つまり物理を担っているのは一階の条件だけで、二階の符号を決めているのは鏡の曲率という、原理の外にある量である。論文84 は同じことを言葉で書いていた。「停留であって最小とは限らない」。本稿が足したのは数と、第三の場合である。「鞍点もある」では縮退が落ちる。論文143 と同じ形でもあり、最小エントロピー生成が原理ではなく柵つきの定理だったように、「最小」を名乗る主張にはたいてい柵が要る。正直に言えば、縮退の例は特別な配置に依っている。二焦点という一点でだけ起き、焦点から少しでもずらせば平らでなくなる。三通りのうち縮退だけが不安定であり、三つを対等に並べたが、実際に出会う頻度は同じではない。
参考文献
- Born, M., & Wolf, E. (1999). Principles of Optics (7th ed.). Cambridge University Press.
- Feynman, R. P., Leighton, R. B., & Sands, M. (1964). The Feynman Lectures on Physics, Vol. II, Ch. 19. Addison-Wesley.
- Lanczos, C. (1970). The Variational Principles of Mechanics (4th ed.). University of Toronto Press.
- 山岸勇輝 (2026). 『最小作用の原理』[論文84]. Zenodo. 10.5281/zenodo.21741231
- 山岸勇輝 (2026). 『最小エントロピー生成は、原理ではなく柵つきの定理である』[論文143]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22082367
- 山岸勇輝 (2026). 『「法則が破れた」は、どの仮定へも落とせる』[論文481]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22733927
- 山岸勇輝 (2026). 『三つの分野に出る「ちょうど半分」は、物理ではなく二次関数の頂点である』[論文486]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22759952
作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。
書誌
山岸勇輝(2026)「停留点は三通りある」[論文487]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.22759965
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引用するとき
山岸勇輝 (2026). 停留点は三通りある:最小と、最大と、どこでも同じ [論文487]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/487 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22759965
Yamagishi, Y. (2026). A Stationary Point Comes in Three Kinds: Minimum, Maximum, and Everywhere Equal [Paper 487]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/487; DOI: 10.5281/zenodo.22759965
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