【論文976】広い周波数の揺らぎでは風速計の過大は正弦より小さく、揺らぎの長さでそろう

要旨

揺らぐ風では杯型の風速計が平均の風速より多く回り(論文890)、軸の摩擦の過小と足し算で重なる(論文968)。そこでは、揺らぎを一つの速さの正弦だけとし、乱流の広い周波数の揺らぎは扱わなかった。本稿は、890 の距離定数 3 m の風速計に、正弦と同じ二乗平均の広い周波数の揺らぎ(オルンシュタイン・ウーレンベック過程・積分時間は置いた値)を当て、過大がどう変わり、何でそろうかを数える。新しい定理も法則も主張しない。

第一に、同じ二乗平均でも、広い周波数の揺らぎの過大は正弦より小さい。5 m/s で、正弦 0.5 Hz(振幅 0.3)の過大 $0.035459$ に対し、標準偏差 $0.212132$ の広い周波数の揺らぎでは積分時間 0.5 秒で $\mathbf{0.025784}$ だった(第2節)。

第二に、積分時間が長いほど過大は小さい。5 m/s で積分時間 0.5・2・10 秒の過大は $0.025784$・$0.011576$・$0.003053$(標準誤差 $0.000296$・$0.000186$・$0.000114$)だった(第2節)。

第三に、風速と積分時間の積が同じなら、過大は同じである。揺らぎの長さ(風速×積分時間)2.5 m の三組(5 m/s・0.5 秒、10 m/s・0.25 秒、2.5 m/s・1 秒)の過大は $0.025784$・$0.025762$・$0.025899$、10 m の三組は $0.011576$・$0.011515$・$0.011623$ だった(第3節)。

第四に、そろい方は乱数の散らばりの中に収まる。同じ長さの四つの組で、過大の差は $+0.000022$・$-0.000115$・$+0.000061$・$-0.000047$ で、標準誤差の和 $0.000617$・$0.000556$・$0.000357$・$0.000416$ より小さかった(第3節)。

第五に、分離子は、揺らぎを時間で数えるか、長さで数えるかである。同じ積分時間 1 秒でも、2.5 m/s では長さ 2.5 m で過大 $0.025899$、10 m/s では長さ 10 m で $0.011515$ と違った。長さ(風速×時間)で数えると、距離定数との比で過大がそろった(第4節)。

キーワード:風速計、オーバースピーディング、乱流、積分時間、距離定数、オルンシュタイン・ウーレンベック過程。

射程(何を示さないか)

新しい定理も法則も主張しない。杯型の風速計が距離定数で特徴づけられること、揺らぐ風で指示が多くなること(オーバースピーディング)、その大きさが揺らぎの強さと、揺らぎの長さと距離定数の比で決まることは、いずれも気象測器と乱流の計測で知られている。揺らぎを単純にした。広い周波数の揺らぎはオルンシュタイン・ウーレンベック過程(指数で減る相関・積分時間 0.25〜10 秒は置いた値)とし、実在の乱流のスペクトルの形、風向の揺らぎ、斜めの風は入れない。摩擦を入れない。軸の摩擦(論文968)は入れず、890 と同じ応答の式だけを使う。乱数の散らばりを持つ。過大は 3600 秒の三つの乱数の列の平均で、標準誤差はその散らばりから出した。実在の風速計にも観測にも対応しない。既刊との関係:論文968 の射程注記は、揺らぎを単純にし、890 と同じく揺らぎは一つの速さ(0.5 Hz)の正弦で、乱流の広い周波数の揺らぎ、風向の揺らぎ、斜めの風は扱わないと書いた。本稿はそのうち乱流の広い周波数の揺らぎの席に座る(先客なし)。論文890 の射程注記も、揺らぎは一つの速さの正弦波だけで、乱流の広い周波数の揺らぎは扱わないと書いた。本稿はその席にも座る。論文890 は、揺らぐ風で杯型の風速計が速い風に早く追いつくぶん平均の風速より多く回ることを示した。ここでは、揺らぎを広い周波数にしたとき過大がどう変わるかを数える。論文968 は、摩擦の過小と揺らぎの過大が足し算で重なることを示した。ここでは摩擦を外し、揺らぎの形だけを変える。加えたのは、同じ二乗平均の正弦と比べたこと、積分時間ごとの過大を出したこと、風速と積分時間を別々に変えて長さでそろうと確かめたこと、そろい方を標準誤差と比べたこと、分離子を「時間か、長さか」に置いたことである。

1. 記法と問い

設定:論文890 と同じく、指示の速さ $V$ は $dV/dt=U(U-V)/L$(距離定数 $L=3$ m)に従う。風速は $U=U_0(1+\sigma \xi(t))$ で、$\xi$ は平均 0・分散 1 のオルンシュタイン・ウーレンベック過程

$$\xi_{i+1}=a\,\xi_i+\sqrt{1-a^2}\,\eta_i,\qquad a=e^{-\Delta t/T_I}$$

($\eta_i$ は標準正規の乱数、$T_I$ は積分時間、刻み $\Delta t=0.01$ 秒)とした。$\sigma=0.212132$ は、振幅 0.3 の正弦と同じ二乗平均である。3600 秒回して初めの 60 秒を除き、過大を「指示の平均÷風の平均−1」として三つの乱数の列で平均した。揺らぎの長さは $U_0T_I$ とする。

問い:揺らぎを広い周波数にすると、風速計の過大はどう変わり、何でそろうか。

2. 正弦と広い周波数

計算 2.1:正弦(5 m/s・振幅 0.3・0.5 Hz)の過大は $0.035459$(890 と同じ)。広い周波数の揺らぎ(5 m/s・標準偏差 $0.212132$)では次のとおり。

積分時間 揺らぎの長さ 三つの列の過大 平均 標準誤差
$0.50$ 秒 $2.50$ m $0.026186$・$0.025207$・$0.025958$ $\mathbf{0.025784}$ $0.000296$
$2.00$ 秒 $10.00$ m $0.011714$・$0.011208$・$0.011806$ $0.011576$ $0.000186$
$10.00$ 秒 $50.00$ m $0.003180$・$0.002826$・$0.003152$ $0.003053$ $0.000114$

観察 2.2 広い周波数の揺らぎでは、過大は正弦より小さく、積分時間とともに小さくなる。三つの積分時間のどれでも、過大は同じ二乗平均の正弦 0.5 Hz の $0.035459$ より小さかった。積分時間を 0.5 秒から 10 秒にすると、過大は $0.025784$ から $0.003053$ に下がった。

3. 揺らぎの長さ

計算 3.1:風速と積分時間を別々に変えた組の過大(距離定数との比は $L/(U_0T_I)$)。

風速 積分時間 揺らぎの長さ 距離定数との比 過大の平均(標準誤差)
$5.0$ m/s $0.50$ 秒 $2.50$ m $1.2000$ $0.025784$($0.000296$)
$10.0$ m/s $0.25$ 秒 $2.50$ m $1.2000$ $0.025762$($0.000322$)
$2.5$ m/s $1.00$ 秒 $2.50$ m $1.2000$ $0.025899$($0.000260$)
$5.0$ m/s $2.00$ 秒 $10.00$ m $0.3000$ $0.011576$($0.000186$)
$10.0$ m/s $1.00$ 秒 $10.00$ m $0.3000$ $0.011515$($0.000171$)
$2.5$ m/s $4.00$ 秒 $10.00$ m $0.3000$ $0.011623$($0.000230$)

長さが同じ組の過大の差は、2.5 m で $+0.000022$(5 m/s と 10 m/s・標準誤差の和 $0.000617$)と $-0.000115$(5 m/s と 2.5 m/s・$0.000556$)、10 m で $+0.000061$($0.000357$)と $-0.000047$($0.000416$)で、四つとも標準誤差の和の 3 倍以内だった。

観察 3.2 風速と積分時間の積が同じなら、過大は同じである。風速を 2.5 m/s から 10 m/s まで 4 倍変えても、長さが同じなら過大の差は乱数の散らばりの中に収まった。過大を決めていたのは、風速と積分時間のそれぞれではなく、その積の揺らぎの長さだった。

4. 分離子

観察 4.1 分離子は、揺らぎを時間で数えるか、長さで数えるかである。時間で数えると、同じ積分時間 1 秒でも、2.5 m/s では過大 $0.025899$、10 m/s では $0.011515$ と違った。長さで数えると、前者は 2.5 m、後者は 10 m で、同じ長さの組とそれぞれそろった。風速計の距離定数も長さなので、二つの長さの比で過大が決まった。

観察 4.2 言わないこと。実在の乱流のスペクトルの形、風向の揺らぎ、斜めの風、摩擦、実在の風速計の値、観測の補正の方法は扱わない。示したのは、指数で減る相関の揺らぎで、過大が正弦より小さく、揺らぎの長さでそろうことである。

5. 点呼と結び

  1. オルンシュタイン・ウーレンベック過程の風(第1節):正弦と同じ二乗平均。
  2. 積分時間 0.5 秒で過大 $\mathbf{0.025784}$(計算 2.1):正弦の 0.035459 より小さい。
  3. 0.5・2・10 秒で 0.025784・0.011576・0.003053(計算 2.1):長いほど小さい。
  4. 長さ 2.5 m の三組 0.025784・0.025762・0.025899(計算 3.1):長さでそろう。
  5. 差は標準誤差の和の中(計算 3.1):四つの組。
  6. 時間か、長さか(観察 4.1):分離子・論文968 と論文890 の射程注記。

結び:広い周波数の揺らぎでは風速計の過大は正弦より小さく、揺らぎの長さでそろう。890 の風速計に正弦と同じ二乗平均の広い周波数の揺らぎを当てると、5 m/s の過大は積分時間 0.5・2・10 秒で $0.025784$・$0.011576$・$0.003053$ で、正弦 0.5 Hz の $0.035459$ より小さかった。風速と積分時間を別々に変えても、揺らぎの長さが 2.5 m なら $0.025762$〜$0.025899$、10 m なら $0.011515$〜$0.011623$ にそろった。分離子は、揺らぎを時間で数えるか、長さで数えるかである。既刊との位置:論文890 と論文968 が正弦で数えた過大を、二つが扱わなかった広い周波数の揺らぎで数えた。正直に言えば、揺らぎは指数で減る相関の一つの形で、実在の乱流ではない。揺らぎの形を広げたとき、過大が何でそろうか、そこまでである。

参考文献

  1. Kaimal, J. C., & Finnigan, J. J. (1994). Atmospheric Boundary Layer Flows: Their Structure and Measurement. Oxford University Press.
  2. World Meteorological Organization (2008). Guide to Meteorological Instruments and Methods of Observation (7th ed.). WMO.
  3. 山岸勇輝 (2026). 『揺らぐ風では、風速計は速い風に早く追いつくぶん、平均の風速より多く回る』[論文890]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/890
  4. 山岸勇輝 (2026). 『風速計の摩擦の過小と揺らぎの過大は足し算で重なり、打ち消す風速は揺らぎが小さいほど高い』[論文968]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/968

作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。

書誌

山岸勇輝(2026)「広い周波数の揺らぎでは風速計の過大は正弦より小さく、揺らぎの長さでそろう」[論文976]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/976

YOI 976第1版・2026年9月ビットコインに記録済み

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引用するとき

山岸勇輝 (2026). 広い周波数の揺らぎでは風速計の過大は正弦より小さく、揺らぎの長さでそろう [論文976]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/976

Yamagishi, Y. (2026). With Broadband Gusts a Cup Anemometer Overshoots Less Than with a Sine, and the Overshoot Collapses on Gust Length [Paper 976]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/976

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