【論文995】分裂の破片に質量があると取り出せる割合は下がり、落ちる破片の重さがより強く効く

要旨

一回の分裂で得られる割合の式は、落ちてくる粒子がそこまで届くかを問わない(論文939)。そこでは破片を二つの光子に限り、質量を持つ破片を扱わなかった。本稿は、939 と同じカーの赤道面の分裂で、二つの破片が静止質量を持つとき、外へ出る破片が持ち出すエネルギーの増えた割合を、保存則と質量の殻の条件を数値で解いて出す。新しい定理も法則も主張しない。

第一に、破片が重いほど、取り出せる割合は下がる。回転 $a=1$、地平線のすぐ外($r=1.0001$)で、同じ質量の破片の割合は質量 0・0.1・0.2・0.3 に $\mathbf{0.207071}$・$0.192786$・$0.148042$・$0.065657$ で、0.4 では取り出せなかった(第2節)。

第二に、同じ質量の破片の割合は、光子の式に一つの因子を掛けた形に一致した。取り出せた 18 点で、割合は (√((2/r)(1 − 4μ²)) − 1)/2 と $\mathbf{2.171}$×10⁻⁸ 以内で一致し、回転 0.9 でも同じ形だった。式は導いていない(第2節)。

第三に、破片の質量には上限がある。取り出せる質量の上限は、二分法で $r=1.0001$・1.2・1.5・1.8 に $\mathbf{0.353536}$・$0.316228$・$0.250000$・$0.158114$ で、½√(1 − r/2) と一致した(第3節)。

第四に、重さは落ちる破片にあるほうが強く効く。$r=1.0001$ で、外へ出る破片だけが質量 0.3 を持つと割合は $0.188435$、落ちる破片だけが持つと $\mathbf{0.098435}$ だった(第4節)。

第五に、分離子は、重さを外へ出る破片に持たせるか、穴へ落ちる破片に持たせるか。質量の和 0.4 でも、外へ 0.3・落ちる 0.1 なら $0.174949$、外へ 0.1・落ちる 0.3 なら $0.094949$ で、どちらも質量の和や二乗の和だけの簡単な形とは合わなかった(第4節)。

キーワード:ペンローズ過程、カーのブラックホール、エルゴ球、破片の質量、エネルギーの取り出し、一般相対論。

射程(何を示さないか)

新しい定理も法則も主張しない。ペンローズ過程、カーのブラックホールのエルゴ球、分裂の破片に質量があると取り出せる割合が光子の場合より下がることは、いずれも一般相対論で知られている。単位を揃えた。重力定数と光の速さと穴の質量を 1 とし、分裂する粒子の質量も 1 とした。分裂の形を限る。赤道面の上で、遠くで静止していた粒子が折り返しの点で二つに割れ、二つの破片もその点で折り返す場合だけを扱う。赤道面の外、多段の分裂、破片の向きのほかの選び方は扱わない。届くかを問わない。落ちてくる粒子が分裂の点まで届くか(論文939)は確かめず、その場の条件だけで数える。式を導かない。同じ質量の破片の割合と質量の上限の形は、数値の解がその形と一致することを確かめただけで、導いてはいない。既刊との関係:論文939 の射程注記は、分裂の形を限り、投げ込んだ粒子、質量を持つ破片、赤道面の外、多段の分裂は扱わないと書いた。本稿はそのうち質量を持つ破片の席に座る(先客なし)。論文939 は、一回の分裂で得られる割合の式は落ちてくる粒子がそこまで届くかを問わないことを示した。ここでは、同じその場の条件で、破片に質量を持たせる。論文887 は、回るブラックホールから取り出せるエネルギーの総量が最大で質量の 0.292893 であることを示した。ここでは総量ではなく、一回の分裂の割合を数える。加えたのは、二つの回転と三つの半径と七つの質量で割合を数値で出したこと、同じ質量の破片の割合が一つの形と一致すると確かめたこと、取り出せる質量の上限を二分法で出したこと、重さを外へ出る破片と落ちる破片に分けて比べたこと、分離子を「重さをどちらの破片に持たせるか」に置いたことである。

1. 記法と問い

分裂:重力定数・光の速さ・穴の質量を 1 とし、回転 $a$ のカーの時空の赤道面で、遠くで静止していた質量 1 の粒子(エネルギー $E_0=1$)が半径 $r$ の折り返しの点で二つに割れる。破片 $i$ は静止質量 $\mu_i$、エネルギー $E_i$、角運動量 $L_i$ を持ち、同じ点で折り返す。折り返しの条件(質量の殻)は

$$\bigl[E(r^2+a^2)-aL\bigr]^2=\Delta\bigl[\mu^2r^2+(L-aE)^2\bigr],\qquad \Delta=r^2-2r+a^2$$

で、$E_1+E_2=E_0$、$L_1+L_2=L_0$ を満たし、どちらの破片も未来を向き、落ちる破片のエネルギー $E_2$ が負になる解を探して、取り出した割合 $\eta=(E_1-E_0)/E_0$ の最大を取った。$L_2$ を広い範囲で刻んで符号の変わる所を二分法で詰めた。

問い:破片が静止質量を持つと、一回の分裂で取り出せる割合はどう下がり、それはどちらの破片に重さがあるかでどう違うか。

2. 同じ質量の破片

計算 2.1:取り出した割合(なしは負のエネルギーの解が無い)。

回転 半径 質量 0 0.1 0.2 0.3 0.4
$1$ $1.000100$ $\mathbf{0.207071}$ $0.192786$ $0.148042$ $0.065657$ なし
$1$ $1.200000$ $0.145497$ $0.132456$ $0.091608$ $0.016398$ なし
$1$ $1.800000$ $0.027046$ $0.016398$ なし なし なし
$0.9$ $1.435990$ $0.090078$ $0.078156$ $0.040815$ なし なし
$0.9$ $1.500000$ $0.077350$ $0.065685$ $0.029150$ なし なし
$0.9$ $1.800000$ $0.027046$ $0.016398$ なし なし なし

質量 0.45 と 0.49 はどの点でも取り出せなかった。質量 0 の値は、光子の閉じた形 $(\sqrt{2/r}-1)/2$ と一致した。

計算 2.2:取り出せた 18 点で、割合と

$$\eta=\frac{1}{2}\left(\sqrt{\frac{2}{r}\,(1-4\mu^2)}-1\right)$$

の差の最大は $2.171$×10⁻⁸ だった。取り出せなかった点は、この形が 0 以下になる点と一致した。回転 1 の $r=1.8$ と回転 0.9 の $r=1.8$ の値は同じで、この形に回転は入らない。$r=1.2$・質量 0.3 と $r=1.8$・質量 0.1 がどちらも $0.016398$ なのは、この形で $(2/r)(1-4\mu^2)$ が同じ値になるためである。

3. 質量の上限

計算 3.1:回転 1 で、取り出せる同じ質量の上限を二分法で出すと、$r=1.0001$・$1.2$・$1.5$・$1.8$ に $0.353536$・$0.316228$・$0.250000$・$0.158114$ で、$\tfrac12\sqrt{1-r/2}$ と $10^{-4}$ 以内で一致した。

観察 3.2 深く割るほど、重い破片でも取り出せる。上限は地平線のすぐ外で $0.353536$、エルゴ球の縁に近い $r=1.8$ で $0.158114$ だった。上限はどれも、二つの破片の質量の和が分裂する粒子の質量 1 に等しくなる $0.5$ より小さかった。

4. 重さを持たせる破片

計算 4.1:回転 1・$r=1.0001$ で、破片の質量を違えたとき。

外へ出る破片 落ちる破片 取り出した割合 質量の和の形 二乗の和の形
$0.3$ $0$ $0.188435$ $0.174503$ $0.140280$
$0$ $0.3$ $\mathbf{0.098435}$ $0.174503$ $0.140280$
$0.3$ $0.1$ $0.174949$ $0.148042$ $0.132424$
$0.1$ $0.3$ $0.094949$ $0.148042$ $0.132424$

質量の和の形は $1-4\mu^2$ を $1-(\mu_1+\mu_2)^2$ に、二乗の和の形は $1-2(\mu_1^2+\mu_2^2)$ に替えた値で、どちらも非対称な破片とは合わなかった。

観察 4.2 重さは落ちる破片にあるほうが強く効く。同じ質量 0.3 を、外へ出る破片に持たせると $0.188435$、落ちる破片に持たせると $0.098435$ だった。質量の組を入れ替えても、和と二乗の和は変わらないのに割合は変わった。

5. 分離子

観察 5.1 分離子は、重さを外へ出る破片に持たせるか、穴へ落ちる破片に持たせるか。同じ質量の破片なら、割合は一つの形に一致し、光子の式の $2/r$ に $1-4\mu^2$ を掛けたものになった。質量を違えると、その形は二つの簡単な置き換えのどちらでも表せず、重さが落ちる側にあるほど割合は下がった。非対称な場合の形は探していない。

観察 5.2 言わないこと。落ちてくる粒子が分裂の点まで届くか、赤道面の外、多段の分裂、式の導き方、実在の天体やジェットは扱わない。示したのは、その場の条件で解いた一回の分裂で、破片の質量が取り出せる割合をどう下げるかである。

6. 点呼と結び

  1. 保存則と質量の殻で解く分裂(第1節):二つの破片も折り返す。
  2. 質量 0.3 で $0.065657$、0.4 で取り出せない(計算 2.1):光子の $\mathbf{0.207071}$ から下がる。
  3. 同じ質量の形と差 $\mathbf{2.171}$×10⁻⁸(計算 2.2):回転は入らない。
  4. 質量の上限 $\mathbf{0.353536}$ から 0.158114(計算 3.1):½√(1 − r/2)。
  5. 落ちる破片の重さで $\mathbf{0.098435}$(計算 4.1):外へ出る側なら 0.188435。
  6. 外へ出る破片か、落ちる破片か(観察 5.1):分離子・論文939 の射程注記。

結び:分裂の破片に質量があると取り出せる割合は下がり、落ちる破片の重さがより強く効く。939 と同じ分裂を保存則と質量の殻の条件で解くと、回転 1 の地平線のすぐ外で、同じ質量の破片の割合は質量 0 の $0.207071$ から 0.3 の $0.065657$ に下がり、0.4 では取り出せなかった。同じ質量の破片の割合は (√((2/r)(1 − 4μ²)) − 1)/2 と $2.171$×10⁻⁸ 以内で一致し、質量の上限は ½√(1 − r/2) と一致した。質量 0.3 を落ちる破片に持たせると $0.098435$、外へ出る破片なら $0.188435$ だった。分離子は、重さを外へ出る破片に持たせるか、穴へ落ちる破片に持たせるか。既刊との位置:論文939 が二つの光子に限った一回の分裂に、論文939 が扱わなかった破片の質量を足した。正直に言えば、その場の条件だけで解いた分裂の数を並べ、同じ質量の形と一致することを確かめた。式は導いていない。破片の重さで取り出せる割合がどう下がるか、そこまでである。

参考文献

  1. Bardeen, J. M., Press, W. H., & Teukolsky, S. A. (1972). Rotating black holes: locally nonrotating frames, energy extraction, and scalar synchrotron radiation. The Astrophysical Journal.
  2. 山岸勇輝 (2026). 『回るブラックホールから取り出せるエネルギーは回転の二乗で増え始め、最大で質量の 0.292893』[論文887]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/887
  3. 山岸勇輝 (2026). 『一回の分裂で得られる割合の式は、落ちてくる粒子がそこまで届くかを問わない』[論文939]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/939

作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。

書誌

山岸勇輝(2026)「分裂の破片に質量があると取り出せる割合は下がり、落ちる破片の重さがより強く効く」[論文995]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/995

YOI 995第1版・2026年9月ビットコインに記録済み

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住所:https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/995・CC BY 4.0・プレプリント(査読を経ていません)・ORCID 0009-0006-8587-3450

引用するとき

山岸勇輝 (2026). 分裂の破片に質量があると取り出せる割合は下がり、落ちる破片の重さがより強く効く [論文995]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/995

Yamagishi, Y. (2026). Massive Fragments Lower the Share Extracted in One Split, and Mass on the Infalling Fragment Weighs More [Paper 995]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/995

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