Yamagishi Complexity Torus Lab山岸勇輝ラボ

逆二乗則の地図:一枚の皮の物差しで見る、7 つの現象

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重力、電気の力、光の明るさ、電波、音。物理には、距離の 2 乗に反比例して弱まるもの(逆二乗則)がたくさんあります。教科書では一つずつ別の章で習いますが、私はこれらを、一本の物差しで並べて見ています。

その物差しは「皮ごとの重さ」です。源を中心に、薄い球の皮を玉ねぎのように重ねて、皮一枚ぶんにどれだけの量がのっているかを見ます。この記事は、その物差しで巡る、逆二乗則の地図です。

物差し:皮ごとの重さが平らになるのは、2 乗のときだけ

半径 r の球の皮の面積は 4πr² です。密度が距離の n 乗に反比例する(1/rⁿ)とき、厚み 1 の皮一枚ぶんの重さは 4πr² × 1/rⁿ になります。

n が 2 のときだけ、r² が打ち消し合って、どの皮の重さも同じ 4π になります。n が 2 より小さいと外の皮ほど重く、大きいと内の皮ほど重くなります。私はこれを論文01 で「n=2 の唯一性定理」として示しました。半径 1 の球の中の重さが、ちょうど全方向の立体角 4π になることも、そこから出てきます。

皮ごとの重さは、n=2 のときだけ平らになる
図 1 皮ごとの重さ。n=2 だけが平らで、どの皮も同じ 4π をのせています。

この「平ら」が、逆二乗則のいろいろな顔の正体です。以下、一つずつ見ていきます。

1. 夜空はなぜ暗いのか(論文496)

宇宙に星が一様に散らばっていて、どこまでも続くとします。遠い星ほど暗く見えます(1/4πr²)。けれども遠い皮ほど、そこにある星の数も増えます(4πr²)。二つの 4π と r² がちょうど打ち消し合うので、半径 1 の皮も、半径 1000 の皮も、届く光は同じ 0.010000000 になりました。

どの皮も同じだけ光を届けるので、皮を足していくと、明るさは半径に比例して増え続けます(半径を 2 倍にすると 2.000000000 倍)。夜空が暗いのは、星が遠くて暗いからではなく、足し合わせがどこかで打ち切られているからです。これはオルバースのパラドクスと呼ばれる問題で、唯一性定理の「平ら」が、そのまま天文学に出てきた形です。

2. 明るさを名乗る量は四つある(論文214)

「明るさ」という言葉は、実は四つの別の量を指しています。そのうち逆二乗に従うのは、面に当たる光の量(放射照度)だけです。光源から 1 m から 1000 m まで離れると、放射照度は 0.318 から 3.18×10⁻⁷ まで落ちますが、光源の表面の明るさ(放射輝度)は 1013.211836 のまま動きません。

だからレンズで太陽の光をどれだけ集めても、太陽の表面より熱くはできません。計算すると上限は 5771.83 K で、太陽の表面の 5772 K と 0.003% しか違いませんでした。皮が広がって薄まるのは「面に当たる量」だけ、ということです。

3. 片道と往復で、指数が変わる(論文335)

電波で通信するとき、届く強さは 1/r² です。ところがレーダーは、電波が相手に届いて、跳ね返って戻ってきます。皮で薄まることが二度起きるので、1/r⁴ になります。

距離を 2 倍にするのに、通信は 4 倍、レーダーは 16 倍の電力が要ります。レーダーの電力を 2 倍にしても、届く距離は 18.9207% しか伸びません。指数を決めているのは、周波数でも空間でもなく、「片道か、往復か」でした。

4. 音源が点か線か(論文456)

点のような音源から離れると、音は球の皮に広がり、距離が 2 倍で 6.0206 dB 下がります。ところが道路のように長くのびた音源(線音源)では、音は球ではなく円筒の皮に広がるので、距離 2 倍で 3.0103 dB しか下がりません。

うるささが感覚的に半分になる 10 dB を得るには、点音源なら 3.1623 倍、線音源なら 10.0000 倍も離れなければなりません。広がる皮の形(球か円筒か)で、指数が一つ変わります。

5. 地図の上では「平ら」の指数が 1 になる(論文1094)

お店が客を引き寄せる力を、距離の 2 乗に反比例するとしたモデル(ライリーの法則、ハフのモデル)があります。この 2 はニュートンの重力にならった数です。けれども人が住んでいるのは、球の空間ではなく地図の上(2 次元)です。

地図の上では、輪ごとに同じ数の客が来るのは、距離の 1 乗のときです。2 乗にすると、客の数は町を 10 倍に広げるごとに 14.467569 ずつ増え続けます。同じ「2」でも、3 次元の空間では「皮ごとに同じ」、地図の上では「足すと止まらなくなる境目」と、役が変わります。

6. 双極子では、足し方の形が効いてくる(論文1084)

プラスとマイナスの電荷の組(双極子)が作る電場は、1/r³ で弱まります。3 次元でこれは、ちょうど「境目」の指数です。境目では、足し合わせた答えが、どんな形で囲んで足したかによって変わります。

球で囲んで足すと、電場は −(4π/3)p になります。磁石の側は +(8π/3)m です。この 4π/3 と 8π/3 を足すと 4π に戻ります。1/3 と 2/3 に割れるのは、囲む形が丸いときだけで、細長い形にすると割れ方が変わります。

7. 次元を動かすと、二つの「2」が分かれる(論文1092)

空間の次元を 3 から動かすと、「皮ごとに同じ」になる指数は、次元から 1 を引いた数(4 次元で 3、5 次元で 4)になります。一方、ブラックホールとつり合う密度の指数は、どの次元でも 2 のままです。二つの「2」が重なるのは、3 次元だけでした。

地図:指数と次元で、役が決まる

ここまでを一枚にまとめると、次のようになります。横が距離の指数、縦が空間の次元です。

逆二乗則の地図:指数が次元−1 なら皮ごとに同じ、次元なら境目、次元+1 以上なら内側で決まる
図 2 指数が「次元−1」なら皮ごとに同じ、「次元」なら足し方の形で決まる境目、「次元+1」以上なら内側で決まります。かっこの中は論文の番号です。青い斜めの列は、論文01 の唯一性定理を次元ごとに広げた族です(論文114)。4 次元の欄は、ポアンカレ予想の論文08 の定理です(球の殻が 2π²r³ で広がり、指数 3 で平らになる)。同じ 1/r³ が、3 次元では境目、4 次元では唯一性になります。
  • 指数が「次元−1」:皮ごとに同じ。3 次元の 1/r²(夜空・光・電波の片道)、2 次元の 1/r(線音源・地図の上の商圏)。
  • 指数が「次元」:足し合わせが、囲む形や広さで決まる境目。3 次元の双極子、地図の上のライリーとハフの 2。
  • 指数が「次元+1」以上:内側の近い所で決まる。レーダーの往復の 1/r⁴。

同じ「逆二乗」でも、どの次元の、どの量の話かで、役がまったく違います。私の論文では、こういう「同じ名前で呼ばれる、出どころの違うもの」を別根(べっこん)と呼び、何を動かすと別物になるか(分離子)を必ず書くようにしています。この地図では、分離子は「次元」と「指数が次元からいくつずれているか」です。

この記事について

この記事は、新しい法則を主張するものではありません。それぞれの数は、もとの論文の検算が出したものです。どの論文も、査読を経ていないプレプリントです。

一枚の皮の物差しで E=mc² を読むと、何が見えるか。その話は、小さな本『一枚の皮と、その中身』に書きました。