重力、電気の力、光の明るさ、電波、音。物理には、距離の 2 乗に反比例して弱まるもの(逆二乗則)がたくさんあります。教科書では一つずつ別の章で習いますが、私はこれらを、一本の物差しで並べて見ています。
その物差しは「皮ごとの重さ」です。源を中心に、薄い球の皮を玉ねぎのように重ねて、皮一枚ぶんにどれだけの量がのっているかを見ます。この記事は、その物差しで巡る、逆二乗則の地図です。
物差し:皮ごとの重さが平らになるのは、2 乗のときだけ
半径 r の球の皮の面積は 4πr² です。密度が距離の n 乗に反比例する(1/rⁿ)とき、厚み 1 の皮一枚ぶんの重さは 4πr² × 1/rⁿ になります。
n が 2 のときだけ、r² が打ち消し合って、どの皮の重さも同じ 4π になります。n が 2 より小さいと外の皮ほど重く、大きいと内の皮ほど重くなります。私はこれを論文01 で「n=2 の唯一性定理」として示しました。半径 1 の球の中の重さが、ちょうど全方向の立体角 4π になることも、そこから出てきます。

この「平ら」が、逆二乗則のいろいろな顔の正体です。以下、一つずつ見ていきます。
1. 夜空はなぜ暗いのか(論文496)
宇宙に星が一様に散らばっていて、どこまでも続くとします。遠い星ほど暗く見えます(1/4πr²)。けれども遠い皮ほど、そこにある星の数も増えます(4πr²)。二つの 4π と r² がちょうど打ち消し合うので、半径 1 の皮も、半径 1000 の皮も、届く光は同じ 0.010000000 になりました。
どの皮も同じだけ光を届けるので、皮を足していくと、明るさは半径に比例して増え続けます(半径を 2 倍にすると 2.000000000 倍)。夜空が暗いのは、星が遠くて暗いからではなく、足し合わせがどこかで打ち切られているからです。これはオルバースのパラドクスと呼ばれる問題で、唯一性定理の「平ら」が、そのまま天文学に出てきた形です。
2. 明るさを名乗る量は四つある(論文214)
「明るさ」という言葉は、実は四つの別の量を指しています。そのうち逆二乗に従うのは、面に当たる光の量(放射照度)だけです。光源から 1 m から 1000 m まで離れると、放射照度は 0.318 から 3.18×10⁻⁷ まで落ちますが、光源の表面の明るさ(放射輝度)は 1013.211836 のまま動きません。
だからレンズで太陽の光をどれだけ集めても、太陽の表面より熱くはできません。計算すると上限は 5771.83 K で、太陽の表面の 5772 K と 0.003% しか違いませんでした。皮が広がって薄まるのは「面に当たる量」だけ、ということです。
3. 片道と往復で、指数が変わる(論文335)
電波で通信するとき、届く強さは 1/r² です。ところがレーダーは、電波が相手に届いて、跳ね返って戻ってきます。皮で薄まることが二度起きるので、1/r⁴ になります。
距離を 2 倍にするのに、通信は 4 倍、レーダーは 16 倍の電力が要ります。レーダーの電力を 2 倍にしても、届く距離は 18.9207% しか伸びません。指数を決めているのは、周波数でも空間でもなく、「片道か、往復か」でした。
4. 音源が点か線か(論文456)
点のような音源から離れると、音は球の皮に広がり、距離が 2 倍で 6.0206 dB 下がります。ところが道路のように長くのびた音源(線音源)では、音は球ではなく円筒の皮に広がるので、距離 2 倍で 3.0103 dB しか下がりません。
うるささが感覚的に半分になる 10 dB を得るには、点音源なら 3.1623 倍、線音源なら 10.0000 倍も離れなければなりません。広がる皮の形(球か円筒か)で、指数が一つ変わります。
5. 地図の上では「平ら」の指数が 1 になる(論文1094)
お店が客を引き寄せる力を、距離の 2 乗に反比例するとしたモデル(ライリーの法則、ハフのモデル)があります。この 2 はニュートンの重力にならった数です。けれども人が住んでいるのは、球の空間ではなく地図の上(2 次元)です。
地図の上では、輪ごとに同じ数の客が来るのは、距離の 1 乗のときです。2 乗にすると、客の数は町を 10 倍に広げるごとに 14.467569 ずつ増え続けます。同じ「2」でも、3 次元の空間では「皮ごとに同じ」、地図の上では「足すと止まらなくなる境目」と、役が変わります。
6. 双極子では、足し方の形が効いてくる(論文1084)
プラスとマイナスの電荷の組(双極子)が作る電場は、1/r³ で弱まります。3 次元でこれは、ちょうど「境目」の指数です。境目では、足し合わせた答えが、どんな形で囲んで足したかによって変わります。
球で囲んで足すと、電場は −(4π/3)p になります。磁石の側は +(8π/3)m です。この 4π/3 と 8π/3 を足すと 4π に戻ります。1/3 と 2/3 に割れるのは、囲む形が丸いときだけで、細長い形にすると割れ方が変わります。
7. 次元を動かすと、二つの「2」が分かれる(論文1092)
空間の次元を 3 から動かすと、「皮ごとに同じ」になる指数は、次元から 1 を引いた数(4 次元で 3、5 次元で 4)になります。一方、ブラックホールとつり合う密度の指数は、どの次元でも 2 のままです。二つの「2」が重なるのは、3 次元だけでした。
地図:指数と次元で、役が決まる
ここまでを一枚にまとめると、次のようになります。横が距離の指数、縦が空間の次元です。

- 指数が「次元−1」:皮ごとに同じ。3 次元の 1/r²(夜空・光・電波の片道)、2 次元の 1/r(線音源・地図の上の商圏)。
- 指数が「次元」:足し合わせが、囲む形や広さで決まる境目。3 次元の双極子、地図の上のライリーとハフの 2。
- 指数が「次元+1」以上:内側の近い所で決まる。レーダーの往復の 1/r⁴。
同じ「逆二乗」でも、どの次元の、どの量の話かで、役がまったく違います。私の論文では、こういう「同じ名前で呼ばれる、出どころの違うもの」を別根(べっこん)と呼び、何を動かすと別物になるか(分離子)を必ず書くようにしています。この地図では、分離子は「次元」と「指数が次元からいくつずれているか」です。
この記事について
この記事は、新しい法則を主張するものではありません。それぞれの数は、もとの論文の検算が出したものです。どの論文も、査読を経ていないプレプリントです。
- 論文01 球対称密度分布における n=2 の唯一性定理
- 論文496 4π が二度現れて約分され、そのあと和が発散する
- 論文214 レンズは明るくできるが、明るさは増やせない
- 論文335 往復すると、冪が変わる
- 論文456 うるささを半分にするのに、距離を倍にしても足りない
- 論文1094 商圏の重力モデルの「距離の 2 乗」は、地図の上では客の総数がちょうど収まらなくなる境目の指数である
- 論文1084 4π は縦の 4π/3 と横の 8π/3 に分かれ、水素の 21 cm 線は横の側を測っている
- 論文1092 密度 1/r² の「2」は二つあり、球殻の重さの 2 と地平線のつり合いの 2 が重なるのは 3 次元だけである
- 論文08 n=3唯一性定理とホップファイブレーションに基づく 4次元ポアンカレ予想とエキゾチック構造の構造的解釈
- 論文114 「4次元らしさ」を担うのは誰か
- 論文1097 格子に並べた双極子の場の和は足す形で決まり、球で 0、細い針で 4π/3、薄い板で −8π/3 になる
一枚の皮の物差しで E=mc² を読むと、何が見えるか。その話は、小さな本『一枚の皮と、その中身』に書きました。