要旨
流れのある槽で一つの餌を奪い合う二つの種では、少ない餌で釣り合える種(R* の小さい種)だけが残り、勝者は流す速さで入れ替わる(論文953)。そこでは、二つの R* がちょうど等しい点で何が起こるかを扱わなかった。本稿は、953 の二つの種で流す速さを R* が等しくなる 0.233333 /h に近づけ、負ける種が勝つ種の 1000 分の 1 を切るまでの時間と、ちょうど等しい点で残る比を数える。新しい定理も法則も主張しない。
第一に、等しい点の上では A、下では B が勝つ。流す速さの差 $+0.030$〜$+0.001$ の 4 点で A、$-0.001$〜$-0.030$ の 4 点で B が残った(第2節)。
第二に、等しい点に近づくほど、負ける種はなかなか消えない。1000 分の 1 を切る時刻は、差 $+0.010$・$+0.001$ で $337.5$・$\mathbf{3404.0}$ 時間、$-0.010$・$-0.001$ で $646.5$・$6165.0$ 時間だった(第2節)。
第三に、時間は差にほぼ反比例し、係数は勝つ側で違う。時間×差は、A が勝つ側で $3.3750$・$3.3975$・$\mathbf{3.4040}$、B が勝つ側で $6.4650$・$6.2310$・$6.1650$(差 0.01・0.003・0.001)だった(第2節)。
第四に、ちょうど等しい点では、負ける種は消えずに比が止まる。餌は $0.700000$ g/L に落ち着き、A の割合は初め 0.5・0.1・0.9 に対して $\mathbf{0.982561}$・$0.962918$・$0.996716$ で、10000 時間と 20000 時間で $10^{-6}$ 以内で同じだった(第3節)。
第五に、分離子は、流す速さが等しい点の上か下か、それとも点の上か。上か下かなら勝者は一つに決まり、消えるまでの時間だけが差で変わる。点の上では勝者は決まらず、残る比は初めの比と途中の育ち方で決まり、三つの初めの比で三つとも違った(第4節)。
キーワード:資源競争、流れのある槽、共存、競争排除、モノーの式、釣り合う餌の濃さ。
射程(何を示さないか)
新しい定理も法則も主張しない。モノーの式、流れのある槽の釣り合い、R* の小さい種だけが残ること、R* がちょうど等しいとき二つの種が釣り合いの線の上で並んで残りうることは、いずれも資源競争の理論で知られている。値は 953 と同じである。二つの種の最大の増え方・半飽和の濃さ・収率、流れ込む餌 10.0 g/L、初めの量は論文953 の値で、どの藻や菌にも対応しない。偶然を入れない。式は決定論で、少ない個体数で偶然に消えること、突然変異、流す速さの揺らぎは入れない。共存を勧めない。実在の槽で二つの種を並んで残す方法は扱わない。既刊との関係:論文953 の射程注記は、共存を論じず、四つの流す速さだけを調べ、釣り合う餌の濃さがちょうど等しい点で何が起こるかは扱わないと書いた。本稿はその席に座る(先客なし)。論文953 は、流れのある槽で残るのは速く増える種ではなく少ない餌で釣り合える種で、勝者が流す速さで入れ替わり、入れ替わる速さが 0.233333 /h であることを示した。ここでは、その入れ替わる点の近くと点の上を数える。加えたのは、等しい点の両側 8 点で消えるまでの時間を出したこと、時間が差にほぼ反比例し係数が勝つ側で違うと示したこと、ちょうど等しい点で比が止まることを二つの時刻で確かめたこと、残る比が初めの比で違うと示したこと、分離子を「上か下か、点の上か」に置いたことである。
1. 記法と問い
設定:論文953 と同じく、餌の濃さ $S$、種の量 $x_A$・$x_B$、流す速さ $D$、流れ込む餌 $S_0=10.0$ g/L、増え方 $\mu_i(S)=\mu_{\max,i}S/(K_i+S)$(A $0.40$ /h・$0.50$ g/L、B $0.25$ /h・$0.05$ g/L)、収率 $0.5$ とする。
$$\frac{dS}{dt}=D(S_0-S)-\frac{\mu_A x_A+\mu_B x_B}{0.5},\qquad \frac{dx_i}{dt}=(\mu_i(S)-D)\,x_i$$
釣り合う餌の濃さ $R^*_i=K_iD/(\mu_{\max,i}-D)$ が二つの種で等しくなる流す速さは $D_c=0.233333$ /h($R^*=0.700000$ g/L)である。刻み 0.5 時間で 200000 時間まで追い(刻み 0.02 との差は D=0.20 で 0.04 時間)、負ける種が勝つ種の 1000 分の 1 を切った時刻を数えた。
問い:R* が等しい点の近くと点の上で、負ける種はいつ消え、何が残るか。
2. 等しい点の近く
計算 2.1:流す速さ $D_c$+差 と、1000 分の 1 を切る時刻。
| 差 | 流す速さ(/h) | 勝つ種 | 1000 分の 1 を切る時刻(時間) |
|---|---|---|---|
| $+0.030$ | $0.263333$ | A | $111.0$ |
| $+0.010$ | $0.243333$ | A | $337.5$ |
| $+0.003$ | $0.236333$ | A | $1132.5$ |
| $+0.001$ | $0.234333$ | A | $\mathbf{3404.0}$ |
| $-0.001$ | $0.232333$ | B | $6165.0$ |
| $-0.003$ | $0.230333$ | B | $2077.0$ |
| $-0.010$ | $0.223333$ | B | $646.5$ |
| $-0.030$ | $0.203333$ | B | $240.5$ |
時刻×差は、A が勝つ側(差 0.01・0.003・0.001)で $3.3750$・$3.3975$・$3.4040$、B が勝つ側で $6.4650$・$6.2310$・$6.1650$ だった。両側とも、差を 10 分の 1 にすると時刻は 5 倍より長くなった。
観察 2.2 等しい点に近づくほど、負ける種はなかなか消えない。時刻は差にほぼ反比例して伸び、差 0.001 では A が勝つ側で 3404.0 時間、B が勝つ側で 6165.0 時間かかった。時刻×差の値は二つの側で違い($3.4040$ と $6.1650$)、同じ差でも B が勝つ側のほうが消えるのが遅かった。
3. ちょうど等しい点
計算 3.1:$D=D_c$ での A の割合(初めの量を三通り)。
| 初め(A・B) | 初めの A の割合 | 10000 時間後 | 20000 時間後(A・B の量) |
|---|---|---|---|
| $0.05$・$0.05$ | $0.500000$ | $0.982561$ | $\mathbf{0.982561}$($4.568907$・$0.081093$) |
| $0.01$・$0.09$ | $0.100000$ | $0.962918$ | $0.962918$($4.477568$・$0.172432$) |
| $0.09$・$0.01$ | $0.900000$ | $0.996716$ | $0.996716$($4.634730$・$0.015270$) |
三つとも餌は $0.700000$ g/L に落ち着き、10000 時間と 20000 時間の A の割合は $10^{-6}$ 以内で同じだった。三つの残る割合は互いに 0.01 以上違い、どれも初めの割合より大きかった。
観察 3.2 ちょうど等しい点では、負ける種は消えず、比は途中で決まって止まる。餌が $R^*$ に落ち着くと二つの種の増え方はどちらも流す速さに等しくなり、比は動かなくなった。残った比は初めの比のままではなく、どの初めの比でも A の割合は増えていた。
4. 分離子
観察 4.1 分離子は、流す速さが等しい点の上か下か、それとも点の上か。上か下かなら、勝者は差の符号で決まり、差の大きさは消えるまでの時間だけを変えた。点の上では勝者は決まらず、三つの初めの比から三つの違う比($0.962918$・$0.982561$・$0.996716$)が残った。
観察 4.2 言わないこと。少ない個体数での偶然の消滅、突然変異、流す速さの揺らぎ、実在の槽で共存させる方法は扱わない。示したのは、953 の決定論の式で、等しい点の近くで消えるまでの時間が差に反比例して伸び、点の上で比が止まることである。
5. 点呼と結び
- 953 の式と $D_c=0.233333$ /h(第1節):R* が等しい点。
- 差 0.001 で 3404.0・6165.0 時間(計算 2.1):なかなか消えない。
- 時刻×差 $\mathbf{3.4040}$ と 6.1650(計算 2.1):差に反比例・係数は側で違う。
- 点の上で A の割合 $\mathbf{0.982561}$ が止まる(計算 3.1):消えない。
- 三つの初めの比で三つの残る比(計算 3.1):初めと途中で決まる。
- 上か下か、点の上か(観察 4.1):分離子・論文953 の射程注記。
結び:餌の釣り合う濃さが等しい点の近くで負ける種は長く残り、点の上では比が止まる。953 の二つの種で、流す速さを R* が等しい 0.233333 /h から 0.001 だけずらすと、負ける種が 1000 分の 1 を切るまで 3404.0 時間(A が勝つ側)と 6165.0 時間(B が勝つ側)かかり、時刻×差は $3.4040$ と $6.1650$ だった。ちょうど等しい点では餌は 0.700000 g/L に落ち着き、A の割合は初め 0.5 から 0.982561 に増えたところで止まった。分離子は、流す速さが等しい点の上か下か、それとも点の上か。既刊との位置:論文953 が四つの流す速さで数えた勝者の入れ替わりの、論文953 が扱わなかった入れ替わる点の近くと点の上を数えた。正直に言えば、偶然の消滅を入れない式で、実際の槽では少ない種は偶然に消えうる。決定論の式で、点の近くと点の上で何が起こるか、そこまでである。
参考文献
- Hsu, S. B., Hubbell, S., & Waltman, P. (1977). A mathematical theory for single-nutrient competition in continuous cultures of micro-organisms. SIAM Journal on Applied Mathematics.
- Tilman, D. (1982). Resource Competition and Community Structure. Princeton University Press.
- 山岸勇輝 (2026). 『流れのある槽で残るのは速く増える種ではなく少ない餌で釣り合える種で、勝者は流す速さで入れ替わる』[論文953]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/953
作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。
書誌
山岸勇輝(2026)「餌の釣り合う濃さが等しい点の近くで負ける種は長く残り、点の上では比が止まる」[論文975]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/975
日付の証拠(OpenTimestamps):日本語版の .ots・英語版の .ots・SHA256SUMS
予備の置き場所(ミラー。中身は上と同じです):PDF 日本語・PDF English・SHA256SUMS
住所:https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/975・CC BY 4.0・プレプリント(査読を経ていません)・ORCID 0009-0006-8587-3450
引用するとき
山岸勇輝 (2026). 餌の釣り合う濃さが等しい点の近くで負ける種は長く残り、点の上では比が止まる [論文975]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/975
Yamagishi, Y. (2026). Near Equal Break-Even Food Levels the Loser Lingers, and Exactly There the Ratio Stops [Paper 975]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/975
@misc{yamagishi2026yoi975,
author = {Yamagishi, Yuuki},
title = {Near Equal Break-Even Food Levels the Loser Lingers, and Exactly There the Ratio Stops},
year = {2026},
howpublished = {YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/975},
note = {Preprint, edition 1}
}
指紋(SHA-256)と確かめ方
25e797cec0f0028c64e620fe777508027a3fb9913921e95c50050128933251b2 yamagishi_yoi975_v1_jp.pdf776b176f3f49350e4230062b17a783a316d9974982f5f1ea22968958f64dadc3 yamagishi_yoi975_v1_en.pdfPDF と .ots を同じ場所に保存し、opentimestamps.org に .ots、続けて PDF を落とすと、記録された日時が表示されます。PDF が 1 バイトでも変わっていれば通りません。