要旨
本稿が問うのは、条件を足したときに増えるのは情報なのか、それとも減るのは件数だけなのか、である。答えは、減るのは件数だけである。新しい数学定理も新しい法則も主張しない。
第一に、五分足・十五分足・一時間足・四時間足の向きをそろえる本数 k を 1 から 4 へ動かすと、件数は 17,841 件から 6,798 件へ(USDJPY)、四銘柄の比の中央で 0.3683 倍に落ちる。同じとき、方向の情報の中央は +0.2548・+0.4347・+0.8606・−0.2449 pips と動き、単調ではない(第3節)。
第二に、三本の移動平均が順に並ぶ形(条件を 1・2・3 と掛ける)でも、件数は 0.3413 倍に落ちる。方向の情報の増分の中央は −1.3877 pips で、四銘柄すべてで負である(第4節)。
第三に、これが本稿の芯である。k = 4 では日次 t の絶対値の中央が 2.4643 になり、有意なセルが 4 のうち 4 になる。偶然なら およそ 0.2 なので、これは「そろえると効く」ように見える。だが 24 本先まで見ている以上、隣り合う観測は 23 本ぶん重なっている。 前の観測が終わるまで次を立てない形にすると、件数は 0.1012 倍になり、日次 t の中央は 0.5923 に、有意なセルは 4 のうち 0 になる(第5節)。
第四に、同じことがパーフェクトオーダーでも起きる。重複ありでは日次 t の中央が 5.2377 だが、重複を除くと 0.5286 になる。符号も 4 のうち 2 の銘柄で反転する(族A・第5節)。
第五に、選択期間で最良だった k が評価期間でも最良だったのは 4 のうち 1 である。偶然なら 1.0 なので、選択期間の順位は引き継がれない(第6節)。
第六に、足の中まで独立な正規増分で一本の道を作り、それを四つの足にまとめ直すと、k = 4 の件数比は 0.3895 から 0.3918 になる。実測の 0.3630 から 0.3810 より、むしろ高い。 そろうことは市場の性質ではなく、同じ価格列を四つの粗さで見ていることの帰結である(第7節)。
本稿の射程(scope note):新しい数学定理も新しい法則も主張しない。移動平均、多時間軸の一致、ランダムウォーク、重複した観測が t を膨らませることはすべて既知である。特定の商材や提唱者を論じない。実在の教材、その著者、販売元は主題ではなく、一切名指さない。扱うのは公知の作法そのものである。売買を論じない。本稿が測るのは件数と方向の情報であって、手数料・約定・資金管理を含む売買の成績ではない。射程は日中・少数銘柄に限る。四銘柄・六年・1 時間足を基準とした測定である。月次の時系列モメンタム(数十市場・保有1〜12ヶ月)は学術的に文書化されており、本稿はそれを否定しない。足の組み合わせを一つに固定する。五分・十五分・一時間・四時間の四つで、平均線は SMA(20) である。別の組み合わせでは数字が変わる(第9節)。「そろえる」を上下の一致と定義する。傾きの一致や並びの一致という別の定義は扱わない。予測を主張しない。既刊との関係:本系列は、率や t を報告するときに、それが偶然なら何になるかを必ず併記する。F004 は重複を除くと有意なセルが 10 のうち 10 から 2 に落ちることを示した。本稿は同じ手を、条件を足す作法に当てる。加えたのは、件数の落ち方を独立な場合と並べたこと、一本の道から四つの足を作る基準線を用意したこと、重複の前後で日次 t と符号がどう動くかを同じ表に並べたことである。
1. 記法と問い
上位の足と下位の足の向きをそろえてから入る、という作法がある。三本の移動平均が順に並ぶのを待つ、という作法もある。
| 作法 | よくある形 | 言われること |
|---|---|---|
| 多時間軸の一致 | 四時間足が上、一時間足も上、そこで十五分足の押し目を買う | 上位足に逆らわない |
| 並びの一致 | 短期・中期・長期の平均線が上から順に並ぶ | 強いトレンドの証拠 |
| 条件の追加 | 上の二つを掛け合わせる | 精度が上がる |
観察 1.1:条件を足せば件数は必ず減る。 これは市場について何も言っていない。作法の是非とは無関係に、掛け算の性質である。
観察 1.2:そして件数が減ると、勝率は動きやすくなる。少ない標本では、良い数字も悪い数字も出やすい。「そろえたときの勝率は高い」という報告は、そろえなかったときの勝率と、件数と、偶然なら何になるかを併記しないかぎり読めない。
観察 1.3:決着させるには、三つ並べればよい。 一つは件数の落ち方、独立ならどれだけ落ちるか。二つは方向の情報、落ちた分だけ濃くなっているか。三つは重複、同じ出来事を何度も数えていないか。
問い:条件を足したとき、増えるのは情報なのか、減るのは件数だけなのか。
2. 測る量と設計を、先に書く
設計(走らせる前に宣言し、実行時に変えていない)
| 項目 | 決めたこと |
|---|---|
| 族A | 五分足・十五分足・一時間足・四時間足の、SMA(20) に対する終値の上下 |
| 族A の k | そろった本数。先頭から k 本すべてが同じ向きのとき、その向きに建てる |
| 族B | 一時間足の SMA(5)・SMA(20)・SMA(80)。条件1 は 5 が 20 の上、条件2 はさらに 20 が 80 の上、条件3 はさらに終値が 5 の上 |
| 基準の足 | 1 時間足・中値・完成足のみ |
| 先の長さ | h = 24(二十四時間) |
| 方向の情報 | 信号の符号と 24 本先までの値動きの積の平均(pips) |
| 銘柄 | USDJPY・EURUSD・GBPUSD・XAUUSD |
| 期間 | 2019–2024。選択 2019–2021 / 評価 2022–2024 |
観察 2.1:上位足は「完成した足」しか使わない。 一時間足の時刻 t で四時間足を参照するとき、その t を含む進行中の四時間足を使うと、最大で四時間ぶん先の終値を見てしまう。そこで「その足の終わりが t 以下」のものだけを使った。
観察 2.2:h = 24 本先を見ている以上、隣り合う観測は 23 本ぶん重なっている。 日次クラスタは同じ日の中の重なりしか畳まない。日をまたぐ重なりは残る。第5節でそこを潰す。
観察 2.3:「そろえる」を上下の一致と定義した。 傾きの一致や並びの一致という別の定義もある。族B がその一つである。
本数は USDJPY が五分足 438,283 本・十五分足 146,125 本・一時間足 36,534 本・四時間足 9,640 本、EURUSD が 438,505・146,202・36,554・9,648、GBPUSD が 438,199・146,127・36,535・9,644、XAUUSD が 418,478・139,501・34,892・9,442 である。
3. 族A、そろえる本数を 1 から 4 まで動かす
計算 3.1 k ごとの件数と方向の情報(評価期間)
| 銘柄 | k | 件数 | D(pips) | Dd(日次平均) | 日次 t | 日数 | 件/日 | スプレッド |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| USDJPY | 1 | 17,841 | 1.4086 | 1.8664 | 2.05 | 935 | 24.0 | 0.60 |
| USDJPY | 2 | 13,626 | 2.7307 | 3.0784 | 2.33 | 928 | 17.0 | 0.60 |
| USDJPY | 3 | 9,952 | 3.0821 | 2.0426 | 1.07 | 906 | 12.0 | 0.60 |
| USDJPY | 4 | 6,798 | 2.4546 | −5.4733 | −2.15 | 873 | 8.0 | 0.60 |
| EURUSD | 1 | 17,867 | −0.6399 | −0.2000 | −0.38 | 936 | 24.0 | 0.30 |
| EURUSD | 2 | 13,658 | −1.0408 | −0.1921 | −0.27 | 926 | 17.0 | 0.30 |
| EURUSD | 3 | 9,756 | −0.4116 | 0.0633 | 0.06 | 898 | 12.0 | 0.30 |
| EURUSD | 4 | 6,485 | −0.8412 | −3.4725 | −2.56 | 860 | 8.0 | 0.30 |
| GBPUSD | 1 | 17,850 | 0.1094 | 0.5404 | 0.76 | 935 | 24.0 | 0.90 |
| GBPUSD | 2 | 13,728 | −0.1583 | 0.8609 | 0.90 | 923 | 17.0 | 0.90 |
| GBPUSD | 3 | 9,863 | −0.0066 | −0.0130 | −0.01 | 885 | 12.0 | 0.90 |
| GBPUSD | 4 | 6,584 | 0.3513 | −4.4598 | −2.37 | 862 | 8.0 | 0.90 |
| XAUUSD | 1 | 17,471 | 0.4002 | 0.4684 | 0.19 | 918 | 23.0 | 3.57 |
| XAUUSD | 2 | 13,432 | 1.0277 | 0.3503 | 0.12 | 896 | 17.0 | 3.57 |
| XAUUSD | 3 | 9,704 | 1.7277 | −1.8574 | −0.46 | 863 | 12.0 | 3.56 |
| XAUUSD | 4 | 6,424 | −1.5865 | −18.4721 | −3.57 | 832 | 8.0 | 3.58 |
計算 3.2 件数の落ち方
| 銘柄 | k=1 | k=2 | k=3 | k=4 | k=4 ÷ k=1 | 独立なら |
|---|---|---|---|---|---|---|
| USDJPY | 17,841 | 13,626 | 9,952 | 6,798 | 0.3810 | 0.1250 |
| EURUSD | 17,867 | 13,658 | 9,756 | 6,485 | 0.3630 | 0.1250 |
| GBPUSD | 17,850 | 13,728 | 9,863 | 6,584 | 0.3689 | 0.1250 |
| XAUUSD | 17,471 | 13,432 | 9,704 | 6,424 | 0.3677 | 0.1250 |
計算 3.3 k ごとの中央
| k | D の中央(pips) | 日次 t の絶対値の中央 | 絶対値 2 以上のセル |
|---|---|---|---|
| 1 | +0.2548 | 0.5670 | 1 / 4 |
| 2 | +0.4347 | 0.5865 | 1 / 4 |
| 3 | +0.8606 | 0.2610 | 0 / 4 |
| 4 | −0.2449 | 2.4643 | 4 / 4 |
観察 3.4:件数の比の中央は 0.3683 である。四つが独立なら 0.1250 になるはずなので、実測はその約三倍残っている。 四つの足は独立ではなく、同じ価格列を四つの粗さで見ている。
観察 3.5:方向の情報の中央は +0.2548・+0.4347・+0.8606・−0.2449 pips と動く。k = 3 まで増えて、k = 4 で符号が変わる。単調ではない。
観察 3.6:k = 4 で日次 t の絶対値の中央が 2.4643 になり、有意なセルが 4 のうち 4 になる。 偶然なら およそ 0.2 なので、ここだけを見れば「四つそろえると効く」と読める。
観察 3.7:だが符号を見ると、四銘柄とも Dd が負である(−5.4733・−3.4725・−4.4598・−18.4721)。「そろえた向きに建てると負ける」という読み方になる。そろえる作法の主張とは逆向きであり、ここで一度立ち止まる理由になる。

図1:左が件数(k = 1 を 1 とした比)、右が方向の情報。左は四銘柄とも同じように落ち、右は横ばいで散らばる。
4. 族B、パーフェクトオーダーの条件を 1・2・3 と掛ける
計算 4.1 条件の数ごとの件数と方向の情報(評価期間)
| 銘柄 | 条件 | 件数 | D(pips) | Dd(日次平均) | 日次 t | 日数 | 件/日 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| USDJPY | 1 | 17,841 | 1.6576 | 2.2002 | 1.14 | 935 | 24.0 |
| USDJPY | 2 | 10,858 | −0.3119 | −8.4592 | −3.08 | 868 | 12.0 |
| USDJPY | 3 | 6,368 | 0.8151 | −14.7604 | −4.94 | 815 | 7.0 |
| EURUSD | 1 | 17,867 | 0.5151 | 1.3911 | 1.30 | 936 | 24.0 |
| EURUSD | 2 | 10,592 | −0.3452 | −3.5403 | −2.41 | 867 | 12.0 |
| EURUSD | 3 | 6,084 | −1.1296 | −7.5709 | −4.72 | 803 | 7.0 |
| GBPUSD | 1 | 17,850 | −0.0960 | 0.5722 | 0.40 | 935 | 24.0 |
| GBPUSD | 2 | 10,582 | −0.4649 | −6.7779 | −3.44 | 877 | 12.0 |
| GBPUSD | 3 | 6,040 | −1.2266 | −11.9795 | −5.53 | 815 | 7.0 |
| XAUUSD | 1 | 17,471 | 2.2325 | 0.2547 | 0.06 | 918 | 23.0 |
| XAUUSD | 2 | 10,389 | −1.0276 | −24.7170 | −4.33 | 852 | 12.0 |
| XAUUSD | 3 | 5,978 | −0.1845 | −38.7500 | −6.33 | 772 | 7.0 |
計算 4.2 条件を掛けた効果
| 銘柄 | 条件3 ÷ 条件1(件数) | D 条件1 | D 条件3 | D の増分 |
|---|---|---|---|---|
| USDJPY | 0.3569 | 1.6576 | 0.8151 | −0.8425 |
| EURUSD | 0.3405 | 0.5151 | −1.1296 | −1.6447 |
| GBPUSD | 0.3384 | −0.0960 | −1.2266 | −1.1306 |
| XAUUSD | 0.3422 | 2.2325 | −0.1845 | −2.4170 |
観察 4.3:件数の比の中央は 0.3413 である。条件を三つ掛けると、件数は三分の一になる。
観察 4.4:方向の情報の増分の中央は −1.3877 pips で、幅は −2.4170 から −0.8425 である。四銘柄すべてで負、つまり条件を足すほど悪くなっている。
観察 4.5:スプレッドの中央は 0.7500 pips である。増分の大きさはスプレッドと同じ桁だが、符号が逆なので、そもそも足す理由がない。
観察 4.6:ここでも Dd が条件を足すほど単調に悪化し、日次 t が −6.33 まで行く(XAUUSD)。第3節と同じ形である。 次節でその正体を見る。

図2:左が件数(条件1 を 1 とした比)、右が方向の情報。族A と同じ形が出る。
5. 重複を除く。これが分離子である
設計:前の観測が終わるまで次を立てない。h = 24 なので、24 本ごとに 1 件だけ残す。
計算 5.1 重複の前後(評価期間)
| 銘柄 | 条件 | 件数 | D(pips) | Dd(日次平均) | 日次 t | 件/日 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| USDJPY | 族A k=4 重複あり | 6,798 | 2.4546 | −5.4733 | −2.15 | 8.0 |
| USDJPY | 族A k=4 重複なし | 663 | 2.9468 | 2.9468 | 0.75 | 1.0 |
| USDJPY | 族B 条件3 重複あり | 6,368 | 0.8151 | −14.7604 | −4.94 | 7.0 |
| USDJPY | 族B 条件3 重複なし | 592 | 0.6837 | 0.6837 | 0.16 | 1.0 |
| EURUSD | 族A k=4 重複あり | 6,485 | −0.8412 | −3.4725 | −2.56 | 8.0 |
| EURUSD | 族A k=4 重複なし | 657 | −0.9322 | −0.9322 | −0.43 | 1.0 |
| EURUSD | 族B 条件3 重複あり | 6,084 | −1.1296 | −7.5709 | −4.72 | 7.0 |
| EURUSD | 族B 条件3 重複なし | 587 | −0.8419 | −0.8419 | −0.37 | 1.0 |
| GBPUSD | 族A k=4 重複あり | 6,584 | 0.3513 | −4.4598 | −2.37 | 8.0 |
| GBPUSD | 族A k=4 重複なし | 665 | −5.4644 | −5.4644 | −1.94 | 1.0 |
| GBPUSD | 族B 条件3 重複あり | 6,040 | −1.2266 | −11.9795 | −5.53 | 7.0 |
| GBPUSD | 族B 条件3 重複なし | 601 | −2.0435 | −2.0435 | −0.69 | 1.0 |
| XAUUSD | 族A k=4 重複あり | 6,424 | −1.5865 | −18.4721 | −3.57 | 8.0 |
| XAUUSD | 族A k=4 重複なし | 651 | 0.1210 | 0.1210 | 0.02 | 1.0 |
| XAUUSD | 族B 条件3 重複あり | 5,978 | −0.1845 | −38.7500 | −6.33 | 7.0 |
| XAUUSD | 族B 条件3 重複なし | 584 | −6.8297 | −6.8297 | −0.82 | 1.0 |
計算 5.2 重複の前後のまとめ(四銘柄の中央)
| 条件 | 件数の比 | D 重複あり | D 重複なし | 日次 t の絶対値 重複あり | 同 重複なし | 符号が反転 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 族A k=4 | 0.1012 | −0.2449 | −0.4056 | 2.4643 | 0.5923 | 2 / 4 |
| 族B 条件3 | 0.0971 | −0.6570 | −1.4427 | 5.2377 | 0.5286 | 0 / 4 |
観察 5.3:日次 t の絶対値の中央が、族A で 2.4643 から 0.5923 へ、族B で 5.2377 から 0.5286 へ落ちる。 重複を除いたあと絶対値が 2 以上のセルは、族A が 4 のうち 0・族B が 4 のうち 0 である。偶然なら およそ 0.2 なので、偶然を下回っている。
観察 5.4:件数の比は 0.1012 と 0.0971 である。十件のうち九件は、前の観測がまだ終わっていないうちに数えていた。
観察 5.5:族A では符号が 4 のうち 2 の銘柄で反転する。 XAUUSD は −1.5865 から +0.1210 へ、GBPUSD は +0.3513 から −5.4644 へ動く。重複を除くことは、精度を上げる操作ではなく、別の量に変える操作である。
観察 5.6:第3節と第4節で「そろえると有意に負になる」と読めた形は、重複が作っていた。 同じ出来事を八回数えれば、日次平均はその出来事に引っ張られる。日次クラスタは同じ日の中しか畳まないので、日をまたぐ重なりは残る。
観察 5.7:★ したがって本稿の答えは二重である。条件を足しても方向の情報は増えない(第3・4節)。そして「足すと有意に効く/効かない」と見えたものも、重複を除くと消える(本節)。残るのは、件数が減ったという事実だけである。
6. 選択期間で最良だった k は、評価期間でも最良か
計算 6.1 期間をまたいだ順位(族A)
| 銘柄 | 選択で最良の k | その k の評価 D | 評価で最良の k | 一致 |
|---|---|---|---|---|
| USDJPY | 4 | 2.4546 | 3 | × |
| EURUSD | 4 | −0.8412 | 3 | × |
| GBPUSD | 4 | 0.3513 | 4 | ○ |
| XAUUSD | 4 | −1.5865 | 3 | × |
観察 6.2:選択期間では四銘柄すべてで k = 4 が最良だった。ここだけを見れば「そろえるほど良い」と読める。
観察 6.3:評価期間で最良だったのは 4 のうち 3 の銘柄で k = 3 である。一致したのは 4 のうち 1 で、偶然なら 1.0 なので、選択期間の順位は引き継がれていない。
観察 6.4:これは「k = 3 が正しい」という意味ではない。四つの k から最良を選ぶ作業そのものが、期間ごとに違う答えを出すということである。
7. 基準線、合成乱数でも「そろう」か
計算 7.1 一本の道を作り、それを四つの足にまとめ直す(10 系列・評価期間)
| 銘柄 | 実測 k=4 ÷ k=1 | 合成乱数 k=4 ÷ k=1 | 差 |
|---|---|---|---|
| USDJPY | 0.3810 | 0.3918 | −0.0107 |
| EURUSD | 0.3630 | 0.3895 | −0.0266 |
| GBPUSD | 0.3689 | 0.3910 | −0.0221 |
| XAUUSD | 0.3677 | 0.3912 | −0.0235 |
観察 7.2:合成乱数の件数比は 0.3895 から 0.3918 である。実測の 0.3630 から 0.3810 より、むしろ高い。 差の中央は −0.0228 である。
観察 7.3:合成乱数には上昇も下降も支持も抵抗もない。それでも四つの足は同じ割合でそろう。 そろうことは市場の性質ではなく、同じ価格列を四つの粗さで見ていることの帰結である。
観察 7.4:ここで一つ誤りを踏み、直した。初稿では四つの足それぞれに別々の乱数を当てていた。 それは独立な四本の道であって、「同じ列を四つの粗さで見る」という当の状況になっていない。その版の件数比は、四つが独立なら得られる 0.1250 とほとんど一致した。 ★ 基準線が理論値と一致しすぎるときは、基準線の作り方を疑う。 直した版では、一本の道を五分足で作り、それを十五分・一時間・四時間にまとめ直している。
8. 時間帯で分ける
設計:協定世界時で重ならない五区分に分ける。信号は族A の k = 4 である。
計算 8.1 五区分それぞれの方向の情報(評価期間)
| 銘柄 | 東京 0–7 | ロンドン 7–12 | 重複 12–16 | NY後半 16–21 | 夜間 21–24 |
|---|---|---|---|---|---|
| USDJPY | 1.90(t −0.36) | 6.69(t 0.37) | −5.49(t −2.05) | 3.62(t −0.57) | 7.00(t 1.54) |
| EURUSD | −0.67(t −0.13) | −0.20(t −0.98) | −1.51(t −2.17) | −1.63(t −1.79) | 0.17(t −0.17) |
| GBPUSD | 1.00(t −0.08) | −2.20(t −2.30) | −0.09(t −1.59) | 1.14(t −0.81) | 2.90(t 0.51) |
| XAUUSD | −3.47(t −1.02) | 7.95(t 0.24) | −1.08(t −1.03) | −11.37(t −1.33) | 6.94(t 0.33) |
観察 8.2:日次 t の絶対値が 2 以上になったセルは 20 のうち 3 である。偶然なら およそ 0.9 セルなので、実測はそれより多い。
観察 8.3:だがこの三つは、重複を残したままの信号で測っている。 第5節が示したとおり、重複ありの日次 t は膨らむ。時間帯の層別で多く見えたことを、市場の性質として読んではいけない。
観察 8.4:有意に見えた三つは 重複 12–16 の二つと ロンドン 7–12 の一つで、符号はすべて負である。本稿はこれを主張しない。重複を除くと件数は 584 件から 665 件しかなく、それを五区分に切ると測れる精度がなくなる。
9. 限界
- ★ 足の組み合わせを一つに固定している。 五分・十五分・一時間・四時間、平均線は SMA(20) である。別の組み合わせでは数字が変わる。ただし第5節の結論(重複を除くと t が落ちる)は、組み合わせではなく h と件数の構造から出ている。
- 「そろえる」を上下の一致と定義している。 傾きの一致や、並びの一致という別の定義がある。族B がその一例で、同じ形になった。
- k を足す順を先頭から固定している。 五分・十五分・一時間・四時間の順である。別の順では途中の k の値が変わる。k = 1 と k = 4 は順に依らない。
- 重複を除いた件数は 584 件から 665 件である。 この件数では、スプレッドと同じ桁の効果は見えない。「有意でない」は「無い」ではなく「この件数では見えない」である。
- 第8節は重複を残したままである。 重複を除くと区分あたりの件数が足りない。
- 合成乱数は独立な正規増分である。 ボラティリティの群れは入っていない。
- 四銘柄・六年である。 他の市場、他の期間について述べるものではない。
結び
四つの足をそろえると、件数は 0.3683 倍になる。三本の平均線を順に並べると、件数は 0.3413 倍になる。どちらも、条件を掛けたのだから当然である。
減った分だけ濃くなっているなら、方向の情報は増えるはずだった。増えなかった。 族A の中央は +0.2548・+0.4347・+0.8606・−0.2449 pips と単調でなく、族B の増分の中央は −1.3877 pips で四銘柄すべて負だった。
そして「そろえると有意になる」ように見えた形は、重複が作っていた。前の観測が終わるまで次を立てない形にすると、件数は 0.1012 倍になり、日次 t の中央は 2.4643 から 0.5923 へ落ち、有意なセルは 4 のうち 4 から 4 のうち 0 になる。族A では符号まで 4 のうち 2 の銘柄で反転する。
合成乱数で一本の道を作り、それを四つの足にまとめ直すと、そろう割合は 0.3895 から 0.3918 で、実測よりむしろ高い。
そろうことは市場の性質ではない。同じ価格列を、四つの粗さで見ているだけである。
データと再現
| データ | 為替は Dukascopy 由来のティック(2019 年以降はミリ秒・bid・ask まで一致することを確認済み)。金は Dukascopy |
| 期間 | 2019–2024(六年)。選択 2019–2021 / 評価 2022–2024 |
| 銘柄 | USDJPY・EURUSD・GBPUSD・XAUUSD |
| 足 | 五分・十五分・一時間・四時間。中値・完成足の終値のみ。ティックの無い足は作らない |
| 上位足の参照 | その足の終わりが基準足の時刻以下のものだけを使う(進行中の足は使わない) |
| 検算 | 検算/F010.py(--zu で図も書き出す)。本文の数字はすべて 検算/F010_output.txt から取っている |
| 図 | 図/F010_zu1・図/F010_zu2(png・svg・英語版) |
| 乱数の種 | 0〜9 に固定。再実行しても同じ値が出る |
| 土台の検査 | _ツール/audit_bars.py(足の先読み・夏時間・日の区切り)。記録は _土台の検査.txt |
参考文献
- 山岸勇輝 (2026). RSI の「買われすぎ 70」は、自分が選んだ足種に属している [F004]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22881156
作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。
書誌
山岸勇輝(2026)「多時間軸をそろえても、そろえた分だけ件数が減る」[F010]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.22891380
日付の証拠(OpenTimestamps):日本語版の .ots・英語版の .ots・SHA256SUMS
予備の置き場所(ミラー。中身は上と同じです):PDF 日本語・PDF English・SHA256SUMS
住所:https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/F010・DOI 10.5281/zenodo.22891380・CC BY 4.0・プレプリント(査読を経ていません)・ORCID 0009-0006-8587-3450
引用するとき
山岸勇輝 (2026). 多時間軸をそろえても、そろえた分だけ件数が減る [F010]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/F010 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22891380
Yamagishi, Y. (2026). Aligning Timeframes Only Reduces the Count by as Much as You Aligned [F010]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/F010; DOI: 10.5281/zenodo.22891380
@misc{yamagishi2026yoiF010,
author = {Yamagishi, Yuuki},
title = {Aligning Timeframes Only Reduces the Count by as Much as You Aligned},
year = {2026},
howpublished = {YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/F010},
doi = {10.5281/zenodo.22891380},
note = {Preprint}
}
指紋(SHA-256)と確かめ方
ed4ca54f0c5a82180f21aa9c21ed80f6d743ea6139b286b774d3f1e64827c31e yamagishi_F010__20260922_jp.pdfa00be1263c3930116d9814fcf843161394119c6f630e3dbd4cd44a94f9ff188d yamagishi_F010__20260922_en.pdfPDF と .ots を同じ場所に保存し、opentimestamps.org に .ots、続けて PDF を落とすと、記録された日時が表示されます。PDF が 1 バイトでも変わっていれば通りません。