【I002】介護の事業所1か所あたりの認定者は、町の大きさによらず60人台

要旨

要介護(要支援)認定者数(令和6年度、保険者別)と、老人福祉・介護事業の事業所数(令和3年 経済センサス)を突き合わせ、事業所1か所あたりの認定者数を出した。

全国では 63.5人/事業所。市区町村ごとに見ても中央値は 64.3人で、町の大きさとも高齢化率とも、ほとんど関係がない(人口との相関 r = −0.077、高齢化率との相関 r = +0.048)。

差があるのは都道府県である。京都府の 91.4人から宮崎県の 37.4人まで、2.4倍の開きがある。
認定率(認定者 ÷ 65歳以上人口)も、大阪府24.7%から宮崎県16.6%まで開く。

釧路総合振興局管内では、白糠町が131.8人(5事業所で659人)ともっとも重く、弟子屈町が44.8人ともっとも軽い。釧路市は62.5人で、全国の63.5人とほぼ同じである。

1. はじめに

I001 は自動車整備業について、需要(保有台数)で割ると人口とは別の順番が出ることを示した。
本稿は介護で同じことを行う。介護の需要は、人口ではなく要介護(要支援)の認定を受けた人の数である。

介護の事業所1か所あたり、認定を受けた人は何人いるか。

2. データ

認定者 厚生労働省「介護保険事業状況報告(年報)」令和6年度、保険者別 要介護(要支援)認定者数(年度末現在、男女計・総数)。全国 7,207,487人
事業所 総務省・経済産業省「令和3年 経済センサス-活動調査」産業小分類 854 老人福祉・介護事業
人口・65歳以上 総務省「住民基本台帳に基づく人口」2026年1月1日

単位

介護保険の保険者は市であって区ではない。したがって政令指定都市は1市として扱った(R001 でいう単位B、1,741市区町村)。

保険者1,573のうち 1,530(認定者 6,884,124人、全体の95.5%)が市区町村と一致した。
残る 43 は広域連合などで、複数の市町村でひとつの保険者を作っているため、市区町村に割り当てられない(例:福岡県介護保険広域連合 40,745人、東三河広域連合 34,025人)。都道府県の集計にはすべて含めている。

3. 結果

3-1 1か所あたり63.5人。市区町村の大きさとは関係がない

全国で 63.5人/事業所。市区町村ごと(事業所がある1,508市区町村)の中央値は 64.3人。

相関
log₁₀(人口) × 1事業所あたり認定者数 −0.077
高齢化率 × 1事業所あたり認定者数 +0.048

どちらもほとんど関係がない。 大きい町でも小さい町でも、高齢化が進んだ町でもそうでない町でも、事業所1か所が受け持つ認定者は60人台にそろう。

需要が増えれば事業所が増え、減れば減る。供給が需要に追随していると読める。

3-2 差は都道府県にある

多いほう 認定者 事業所 1か所あたり 認定率
京都府 176,020 1,925 91.4 24.1%
埼玉県 363,272 4,727 76.9 18.2%
茨城県 145,180 1,909 76.1 16.8%
東京都 678,800 8,989 75.5 21.5%
兵庫県 347,780 4,631 75.1 22.0%
少ないほう 認定者 事業所 1か所あたり 認定率
高知県 47,063 959 49.1 19.7%
佐賀県 46,175 979 47.2 18.4%
沖縄県 65,306 1,437 45.4 18.2%
青森県 77,451 1,844 42.0 18.5%
宮崎県 58,270 1,558 37.4 16.6%

京都府と宮崎県で2.4倍の差がある。

横棒の図。47都道府県の「介護の事業所1か所あたりの認定者数」を多い順に並べ、北海道を色を変えて示し、全国の値を縦の点線で示している。

図1 介護の事業所1か所あたりの要介護認定者数(47都道府県)。
橙は北海道、青の点線は全国(63.5人)。

3-3 認定率も都道府県で開く

認定率(認定者 ÷ 65歳以上人口)は、大阪府24.7%・京都府24.1%・和歌山県22.2%・兵庫県22.0%が高く、栃木県16.9%・茨城県16.8%・山梨県16.7%・宮崎県16.6%が低い。

認定率と1か所あたり認定者数の相関は r = +0.352。認定率が高い府県ほど1か所あたりも多い傾向はあるが、それだけでは説明しきれない。

3-4 釧路総合振興局管内

市町村 人口 65歳以上 認定者 事業所 1か所あたり 認定率
釧路市 151,566 55,077 12,878 206 62.5 23.4%
釧路町 18,021 5,998 1,293 18 71.8 21.6%
厚岸町 7,976 3,094 698 8 87.2 22.6%
浜中町 5,172 1,789 244 2 122.0 13.6%
標茶町 6,698 2,504 532 10 53.2 21.2%
弟子屈町 6,327 2,645 583 13 44.8 22.0%
鶴居村 2,368 823 113 2 56.5 13.7%
白糠町 6,840 2,986 659 5 131.8 22.1%

白糠町が管内でもっとも重い。 5事業所で659人、1か所あたり131.8人で、全国(63.5人)の2.1倍である。
弟子屈町は13事業所で583人、1か所あたり44.8人。人口はほぼ同じ(6,840人と6,327人)なのに、1か所あたりは約3倍違う。

釧路市は62.5人で、全国とほぼ同じである。

浜中町(13.6%)と鶴居村(13.7%)は、認定率が管内の他の市町村(21〜23%)より大きく低い。 この差の理由は、本稿では分からない。

4. 考察

4-1 供給は需要に追随している

3-1 のとおり、1か所あたりの認定者数は町の大きさにも高齢化率にもよらない。
これは、R003 で見た「1軒だけの分類の数は町の大きさによらない」とは別の意味を持つ。
介護では、需要の量に応じて事業所の数がほぼ比例して決まっている。

制度(介護保険)が需要を可視化し、指定を受けた事業所がそれに応じる仕組みだからだ、と説明することはできる。ただし本稿はそれを確かめていない。

4-2 それでも都道府県で2.4倍違う

人口でも高齢化率でも説明されないのに、都道府県では2.4倍の差がある。
R004 で、産業の厚みの残差も都道府県による違いがもっとも大きかった。同じ向きの結果である。

考えられるのは、事業所の規模(定員)の違い、都市部と郡部での事業所の形態の違い、自治体の指定の運用の違いだが、いずれも本稿では見ていない。

4-3 同じ人口でも3倍違う

白糠町と弟子屈町は人口がほぼ同じで、1か所あたりは約3倍違う。
人口を見ているだけでは、この差は見えない。 需要(認定者)と供給(事業所)の両方を置いて、はじめて出る。

5. 限界

  • 認定者は令和6年度(年度末現在)、事業所は令和3年6月1日、人口は2026年1月1日。時点が違う
  • 保険者が広域連合の場合、市区町村に割り当てられない(43保険者・認定者323,363人)。市区町村ごとの表からは落ちる
  • 854「老人福祉・介護事業」は、入所・通所・訪問の別や、定員・規模を区別しない。1か所あたりの人数は、事業所の大きさを含まない
  • 認定者は認定を受けた人の数であり、実際にサービスを使った人の数ではない
  • 事業所の所在地と、利用者の住所は一致するとはかぎらない。隣接する市町村の事業所を使う場合がある
  • 1か所あたりの認定者数は、需要の目安であって、仕事の量でも収益でもない

6. 再現の手順

  1. e-Stat から「介護保険事業状況報告(年報)令和6年度」の保険者別 要介護(要支援)認定者数(男女計・総数)を取得する。シートは「その1」が総数で、その2以降は年齢階級の内訳。足すと二重に数える
  2. e-Stat から令和3年 経済センサスの産業小分類別 事業所数(市区町村別)を取得し、854 を取る
  3. 住民基本台帳の人口・65歳以上人口を取る
  4. 政令指定都市を1市として(単位B)、都道府県と保険者名で突き合わせる
  5. 認定者 ÷ 事業所数、認定者 ÷ 65歳以上人口を出す

本稿の数値は、すべて1本のスクリプト(kensan_189)の出力である。中間の数値を手で書き写していない。

参考文献・データの出典

  1. 厚生労働省「介護保険事業状況報告(年報)」令和6年度
  2. 総務省統計局・経済産業省「令和3年 経済センサス-活動調査」産業小分類別 事業所数(市区町村別)
  3. 総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数調査」2026年1月1日現在
  4. 山岸勇輝「市区町村の人口と、そこにある産業小分類の数」(R001)。Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22872218
  5. 山岸勇輝「町に1軒だけの商売」(R003)。Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22872474
  6. 山岸勇輝「人口で説明した残りは、所得でも地価でも説明できない」(R004)。Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22872530
  7. 山岸勇輝「整備工場1軒あたりの車は、何台か」(I001)。Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22875470

版の記録

版 日付 内容
第1版 2026-09-21 初出

引用のしかた

山岸勇輝(2026)「介護の事業所1か所あたりの認定者は、町の大きさによらず60人台、差は都道府県にある [I002]」Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22875542

(この DOI は concept DOI。常に最新の版を指す。引用にはこれを使う)

© 2026 山岸 勇輝(Yuuki YAMAGISHI)

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書誌

山岸勇輝(2026)「介護の事業所1か所あたりの認定者は、町の大きさによらず60人台」[I002]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.22875542

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引用するとき

山岸勇輝 (2026). 介護の事業所1か所あたりの認定者は、町の大きさによらず60人台 [I002]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/I002 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22875542

Yamagishi, Y. (2026). Certified Care Recipients per Establishment Are in the Sixties Everywhere, Regardless of Municipality Size [I002]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/I002; DOI: 10.5281/zenodo.22875542

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