【論文448】赤い光をいくら当てても、青い光が切る結合は切れない

要旨

強い光を当てれば壊れる、と思われている。本稿が示すのは、光子 $1$ 個あたりのエネルギーが結合に届かなければ、何個当てても切れないことである。だから「明るさ」ではなく「色」が退色を決める。新しい定理も法則も主張しない。

第一に、$700$ nm の光子は $1.7712$ eV $=170.90$ kJ/mol である(第2節)。

第二に、$400$ nm では $\mathbf{3.0996}$ eV $=299.07$ kJ/mol へ、$1.75$ 倍になる(第2節)。

第三に、これが本稿の芯である。C–N 結合($305$ kJ/mol)を切れるのは $\mathbf{392.2}$ nm より短い光だけで、赤い光は $170.90$ しか持たず届かない(第3節)。

第四に、結合ごとに限界波長が違う。C–C は $343.8$、C–O は $334.2$ nm である(第3節)。

第五に、強度を上げても、この境目は動かない(第3節)。

第六に、分離子は「合計で効くか、$1$ 個で効くか」である(第4節)。

キーワード:光化学、光子のエネルギー、結合解離エネルギー、光劣化、光化学の法則。

射程(何を示さないか)

新しい定理も法則も主張しない。光量子仮説、結合解離エネルギー、光化学の第一法則と第二法則はすべて既知である。材料を設計しない。色素の選択、紫外線吸収剤、保護膜は主題ではない。反応機構を論じない。励起状態の寿命、項間交差、酸素の関与は主題ではない。結合エネルギーは代表値である。分子によって数十 kJ/mol は動く。境目の位置ではなく、境目があることを見ている。多光子過程を除く。超高強度の場では二光子吸収が起こりうるが、日常の照明では無視できる。速さを論じない。何年で退色するかは主題ではない。切れるか切れないかだけを見る。既刊との関係:論文447 は増やした働き手が出口から流れ出すことを示した。そこでも、量を増やす方向が効かない場所があった。論文300 は同根か別根かが判定できることを示した。「合計エネルギー」と「$1$ 個あたりのエネルギー」は、その基準で別根である。論文446 は下限が要求で動くことを示した。そこでも、条件を言わない量が誤解を生んだ。加えたのは、四つの波長で光子エネルギーを並べたこと、三つの結合について限界波長を出したこと、C–N の $392.2$ nm を境目として置いたこと、赤い光が $170.90$ で届かないことを数で示したこと、分離子を「合計か $1$ 個か」に置いたことである。

1. 記法と問い

設定:波長 $\lambda$ の光子 $1$ 個のエネルギーは

$$E=\frac{hc}{\lambda}$$

であり、$1$ mol あたりに直すには $N_{A}$ を掛ける。

$$E_{\mathrm{mol}}=\frac{N_{A}hc}{\lambda}$$

結合解離エネルギー $D$ の結合を切れるのは、$E_{\mathrm{mol}}\ge D$ のときである。したがって限界波長は

$$\lambda_{\max}=\frac{N_{A}hc}{D}$$

で与えられ、これより長い波長では切れない。

観察 1.1 強い光を当てれば壊れる、と思われている。エネルギーを注ぎ込めば、いずれ結合は切れる。熱の像である。

観察 1.2 だが光は個数で来る。$1$ 個の光子が $1$ つの結合に当たる。足し合わせて使うことができない。

問い:どの色が、どの結合に届くのか。

2. 光子のエネルギーは色で 2.33 倍違う

計算 2.1:四つの波長で光子エネルギーを出す。

波長 [nm] 光子 [eV] $1$ mol [kJ]
$700$(赤) $1.7712$ $170.90$
$550$(緑) $2.2543$ $217.50$
$400$(紫) $\mathbf{3.0996}$ $299.07$
$300$(紫外) $4.1328$ $398.76$

観察 2.2 赤から紫外へ、$2.33$ 倍になる。$1.7712$ から $4.1328$ eV へ、可視光の端から端でも $1.75$ 倍ある。

観察 2.3 この差は、強度とは無関係である。暗い紫外光の光子も $4.1328$ eV を持つ、明るい赤色光の光子は $1.7712$ eV のままである。

3. C–N を切れるのは 392.2 nm より短い側だけ

計算 3.1:三つの結合について限界波長を出す。

結合 $D$ [kJ/mol] $\lambda_{\max}$ [nm]
C–C $348$ $343.8$
C–N $305$ $\mathbf{392.2}$
C–O $358$ $334.2$

観察 3.2 最も切れやすい C–N でも $392.2$ nm である。可視光の紫の端すら、ほぼ境目にある。$400$ nm の $299.07$ kJ/mol は $305$ にわずかに届かない。

観察 3.3 赤い光は $170.90$ kJ/mol しか持たない。C–N の $305$ に対して $56.0$ パーセント、半分強で、どれだけ当てても切れない。

観察 3.4 結合ごとに境目が違う。C–O の $334.2$ nm と C–N の $392.2$ nm では $58$ nm の差、同じ光が、ある結合は切り、別の結合は切らない。

観察 3.5 強度を上げても、この境目は動かない。光子を $10^{6}$ 倍にしても、$1$ 個あたりは $1.7712$ eV のまま、閾値が個数で越えられない、というのがここの要点である。

観察 3.6 だから紫外線を切れば退色が止まる。窓ガラスやフィルムが効く理由である。明るさを落とすのではなく、短い側だけを落とす。

4. 分離子

分離子:合計で効くか、$1$ 個で効くか。

観察 4.1 合計で効くなら、強度を上げれば足りる。熱がその型である。どんな色でも、注ぎ込めばいずれ届く。

観察 4.2 $1$ 個で効くなら、色を変えるしかない。光化学がその型である。足りない光子を何個集めても、足りないままである。

観察 4.3 これは論文300 の基準で別根である。どちらも「エネルギー」と呼ばれる。一方は流れの量、一方は $1$ 回の受け渡しの大きさである。

観察 4.4 論文447 と同じ形である。そこでは働き手を増やしても出口が抱えきれなかった。ここでは光子を増やしても $1$ 個の大きさが足りない。どちらも、量を増やす方向が効かない。

観察 4.5 だから保護を考えるときは、まずスペクトルを見る。総照度ではなく、短波長側の分布である。同じ明るさでも、光源によって退色の速さが変わる。

観察 4.6 正直に言えば、結合解離エネルギーは代表値である。分子によって数十 kJ/mol 動く。境目の位置ではなく、境目があることを見ている。

観察 4.7 最後に一つ、超高強度の場では二光子吸収が起こりうる。その場合は $2$ 個ぶんが一度に渡る。日常の照明では無視できるが、境目が「絶対」ではない理由をここに置いておく。

5. 点呼と結び

  1. $700$ nm は $170.90$ kJ/mol(計算 2.1):赤い光。
  2. $400$ nm は $299.07$(計算 2.1):$1.75$ 倍。
  3. 赤から紫外で $2.33$ 倍(観察 2.2):色で決まる。
  4. 差は強度と無関係(観察 2.3):暗くても持っている。
  5. C–N の限界は $392.2$ nm(計算 3.1):本稿の芯。
  6. 赤は $305$ の $56.0$ パーセント(観察 3.3):届かない。
  7. C–O は $334.2$ nm(計算 3.1):結合ごとに違う。
  8. 強度では境目が動かない(観察 3.5):個数で越えられない。
  9. 紫外線を切れば止まる(観察 3.6):短い側だけを落とす。
  10. 分離子は合計か $1$ 個か(観察 4.3):論文300 の基準で別根。

結び:強い光を当てれば壊れる、と思われている。エネルギーを注ぎ込めばいずれ結合は切れる、という熱の像である。だが光は個数で来る。$1$ 個の光子が $1$ つの結合に当たり、足し合わせて使うことができない。光子 $1$ 個の大きさは、色で決まる。$700$ nm で $1.7712$ eV $=170.90$ kJ/mol、$550$ で $217.50$、$400$ で $\mathbf{299.07}$、$300$ で $398.76$。赤から紫外へ $2.33$ 倍、可視光の端から端でも $1.75$ 倍ある。そしてこの差は強度と無関係で、暗い紫外光の光子も $4.1328$ eV を持ち、明るい赤色光の光子は $1.7712$ eV のままである。結合の側には閾値がある。C–C は $343.8$、C–N は $\mathbf{392.2}$、C–O は $334.2$ nm より短い光でなければ切れない。最も切れやすい C–N でさえ $392.2$ nm で、$400$ nm の $299.07$ kJ/mol は $305$ にわずかに届かない。赤い光は $170.90$ しか持たず、C–N の $56.0$ パーセント、半分強で、どれだけ当てても切れない。結合ごとに境目が違い、C–O と C–N では $58$ nm の差があるので、同じ光がある結合は切り別の結合は切らない。そして強度を上げても境目は動かない。光子を $10^{6}$ 倍にしても $1$ 個あたりは $1.7712$ eV のままで、閾値は個数では越えられない。だから紫外線を切れば退色が止まる。明るさを落とすのではなく、短い側だけを落とすのである。分けているものは一つ、合計で効くか、$1$ 個で効くか。合計で効くなら強度を上げれば足り、熱がその型である。$1$ 個で効くなら色を変えるしかなく、光化学がその型で、足りない光子を何個集めても足りないままである。論文300 の基準で別根であり、一方は流れの量、一方は $1$ 回の受け渡しの大きさである。論文447 と同じ形で、そこでは働き手を増やしても出口が抱えきれなかった。どちらも、量を増やす方向が効かない。だから保護を考えるときは総照度ではなくスペクトルを見る。同じ明るさでも、光源によって退色の速さが変わる。正直に言えば、結合解離エネルギーは代表値で、分子によって数十 kJ/mol 動く。境目の位置ではなく、境目があることを見ている。最後に一つ、超高強度の場では二光子吸収が起こりえて、その場合は $2$ 個ぶんが一度に渡る。日常の照明では無視できるが、境目が「絶対」ではない理由をここに置いておく。

参考文献

  1. Einstein, A. (1905). Über einen die Erzeugung und Verwandlung des Lichtes betreffenden heuristischen Gesichtspunkt. Annalen der Physik.
  2. Stark, J. (1908). Über die Anwendung des Planckschen Elementargesetzes auf photochemische Prozesse. Physikalische Zeitschrift.
  3. Lide, D. R. (Ed.) (2004). CRC Handbook of Chemistry and Physics (85th ed.). CRC Press.
  4. Rabek, J. F. (1995). Polymer Photodegradation: Mechanisms and Experimental Methods. Chapman & Hall.
  5. 山岸勇輝 (2026). 『三百本目の点呼、同根か別根かは、判定できる』[論文300]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22171914
  6. 山岸勇輝 (2026). 『理論の下限は、たくさん取ろうとすると上がる』[論文446]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22732460
  7. 山岸勇輝 (2026). 『働き手を増やしすぎると、働き手のほうが流れ出す』[論文447]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22732494

作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。

書誌

山岸勇輝(2026)「赤い光をいくら当てても、青い光が切る結合は切れない」[論文448]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.22732565

YOI 448第1版・2026年9月ビットコインに記録済み

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引用するとき

山岸勇輝 (2026). 赤い光をいくら当てても、青い光が切る結合は切れない [論文448]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/448 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22732565

Yamagishi, Y. (2026). No Amount of Red Light Breaks What Blue Light Breaks [Paper 448]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/448; DOI: 10.5281/zenodo.22732565

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  year = {2026},
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