要旨
本稿が問うのは、ローソク足の形が相場に属しているのか足の切り方に属しているのか、である。答えは、足の切り方に属している。新しい数学定理も新しい法則も主張しない。
第一に、四つの形(包み足・はらみ足・ピンバー・十字線)の出現頻度は、足種を変えるだけで動く。銘柄と形ごとの最大÷最小の中央は 1.1745、最大は 1.5721 である。ピンバーは五分足で千本あたり 67.6854 回、四時間足で 45.7459 回である(第3節)。
第二に、これが本稿の芯である。包み足の判定は「今の始値が前の終値より内側か」で決まる。 その二つの差の絶対値の中央は、スプレッドの 0.1111 倍(中央)しかない。幅は 0.0417 から 0.1667 である(第4節)。
第三に、差がちょうど 0 になる割合は中央 1.3732% である。つまり包み足かどうかは、スプレッドの十分の一ほどの差で、ほぼ半々に振り分けられている(第4節)。
第四に、合成乱数との比は、形ごとに系統的にずれる。包み足 0.4986 から 0.5107、はらみ足 1.4474 から 1.6656、ピンバー 0.5886 から 0.6420、十字線 1.3077 から 1.3894 である。16 セルのうち 0.8 から 1.25 に収まったのは 0 である(第5節)。
第五に、★ 包み足のずれは、基準線の作り方で説明がつく。 合成乱数では始値が前の終値と厳密に等しいので、条件が自動的に満たされる。この基準線は、始値を使う形には使えない。本稿はそれを測ってから書いている(第4節・第5節)。
第六に、形が出た足から 24 時間先の方向の情報は、日次 t の絶対値が 2 以上のセルが 16 のうち 2(偶然なら およそ 0.7)である。足種を変えると D の中央は −1.4472 から +0.5823 pips まで符号ごと動く(第6節・第7節)。
本稿の射程(scope note):新しい数学定理も新しい法則も主張しない。ローソク足の形の定義も、ランダムウォークも既知である。特定の商材や提唱者を論じない。実在の教材、その著者、販売元は主題ではなく、一切名指さない。扱うのは公知の形そのものである。売買を論じない。本稿が測るのは出現頻度と方向の情報であって、手数料・約定・資金管理を含む売買の成績ではない。射程は日中・少数銘柄に限る。四銘柄・三年の測定である。月次の時系列モメンタム(数十市場・保有1〜12ヶ月)は学術的に文書化されており、本稿はそれを否定しない。形の定義を一通りに固定する。ピンバーはヒゲが実体の 2.0 倍以上・反対のヒゲが 0.5 倍以下、十字線は実体が値幅の 10% 以下である。別の閾値では頻度が変わる(第8節)。★ 合成乱数の基準線は、始値を使う形には使えない。合成乱数では始値が前の終値と厳密に等しい。本稿はそれを測ってから書いている(第4節)。重複を除いていない。24 時間先まで見ている。予測を主張しない。既刊との関係:F016 は折れ線の型(ダブルトップなど)を合成乱数と比べた。本稿は一本や二本の足の形を同じ手で測る。加えたのは、足種を変えて頻度が動くことを示したこと、包み足の判定に使う差をスプレッドと並べたこと、基準線が使えない場面を測って明示したことである。
1. 記法と問い
一本や二本のローソク足の形に、名前が付いている。
| 形 | 定義(買いの向き) | 言われること |
|---|---|---|
| 包み足 | 前の足が陰線で、今の足が陽線、かつ今の実体が前の実体を包む | 買い手が売り手を飲み込んだ |
| はらみ足 | 今の足の高安が、前の足の高安の中に収まる | 勢いが止まった |
| ピンバー | 下ヒゲが長く、上ヒゲが短い | 下で買い支えられた |
| 十字線 | 実体が極端に小さい | 迷い・転換 |
観察 1.1:どれも「その足が完成した時点」で判定できる。 先読みにはならない。そこは正しい。
観察 1.2:だが形は、足の切り方に依存する。 同じ値動きでも、五分で切るか四時間で切るかで、別の形になる。「売り手が力尽きた」という説明は、足の切り方を含んでいない。
観察 1.3:決着させるには、三つ測ればよい。 足種を変えて頻度が動くか。合成乱数でも出るか。そして判定に使っている差が、どれだけ小さいかである。
問い:ローソク足の形は、相場に属しているのか、足の切り方に属しているのか。
2. 測る量と設計を、先に書く
設計(走らせる前に宣言し、実行時に変えていない)
| 項目 | 決めたこと |
|---|---|
| 足種 | 五分足・一時間足・四時間足(中値・完成足のみ) |
| 包み足 | 前の足が陰線で今の足が陽線、今の終値が前の始値以上、今の始値が前の終値以下、実体が前より大きい |
| はらみ足 | 今の足の高安が前の足の高安の中に収まる(向きは前の足の色の逆) |
| ピンバー | 下ヒゲが実体の 2.0 倍以上、かつ上ヒゲが実体の 0.5 倍以下 |
| 十字線 | 実体が値幅の 10% 以下(向きは前の足の色の逆) |
| 方向の情報 | 形が出た足に信号を置き、24 時間先までの値動き(pips) |
| 基準線 | 足の中まで合成乱数(10 系列) |
| 銘柄 | USDJPY・EURUSD・GBPUSD・XAUUSD |
| 期間 | 2019–2024。評価 2022–2024 |
観察 2.1:売りの向きは上下を逆にして同じ定義を使う。 買いだけを数えると、その期間の向きに引きずられる。
観察 2.2:足種を変えても、先の長さは 24 時間で同じにする。 ここをそろえないと、「形が効いた」のか「見ている時間が違う」のかが分けられない。
観察 2.3:★ 合成乱数の基準線には、後で分かる問題がある。 第4節でそれを測り、第5節でどこまで使えるかを書く。
本数は評価期間で USDJPY が五分足 214,291・一時間足 17,865・四時間足 4,812 本、EURUSD が 214,605・17,891・4,822、GBPUSD が 214,370・17,874・4,818、XAUUSD が 209,799・17,495・4,735 本である。
3. 形の頻度は、足種で動く
計算 3.1 千本あたりの出現(評価期間)
| 銘柄 | 形 | 5m | 1h | 4h | 最大÷最小 |
|---|---|---|---|---|---|
| USDJPY | 包み足 | 126.8789 | 127.7918 | 133.0008 | 1.0483 |
| USDJPY | はらみ足 | 155.0042 | 167.5343 | 193.2668 | 1.2468 |
| USDJPY | ピンバー | 67.6277 | 53.6804 | 43.0175 | 1.5721 |
| USDJPY | 十字線 | 100.2095 | 109.0960 | 109.3101 | 1.0908 |
| EURUSD | 包み足 | 113.6041 | 125.6498 | 118.4156 | 1.1060 |
| EURUSD | はらみ足 | 148.0534 | 153.0378 | 181.2526 | 1.2242 |
| EURUSD | ピンバー | 67.7431 | 49.1867 | 48.1128 | 1.4080 |
| EURUSD | 十字線 | 96.2419 | 105.3043 | 101.6176 | 1.0942 |
| GBPUSD | 包み足 | 114.9694 | 124.7622 | 129.3068 | 1.1247 |
| GBPUSD | はらみ足 | 145.8740 | 145.5746 | 178.9124 | 1.2290 |
| GBPUSD | ピンバー | 67.8966 | 53.4855 | 43.3790 | 1.5652 |
| GBPUSD | 十字線 | 100.7837 | 102.6631 | 103.7775 | 1.0297 |
| XAUUSD | 包み足 | 120.8204 | 126.8362 | 118.9018 | 1.0667 |
| XAUUSD | はらみ足 | 140.4058 | 162.4464 | 206.5470 | 1.4711 |
| XAUUSD | ピンバー | 61.7543 | 51.7862 | 48.5744 | 1.2713 |
| XAUUSD | 十字線 | 98.0748 | 105.2301 | 107.7086 | 1.0982 |
計算 3.2 形ごと・足種ごとの中央(千本あたり)
| 形 | 5m | 1h | 4h |
|---|---|---|---|
| 包み足 | 117.8949 | 126.2430 | 124.1043 |
| はらみ足 | 146.9637 | 157.7421 | 187.2597 |
| ピンバー | 67.6854 | 52.6359 | 45.7459 |
| 十字線 | 99.1422 | 105.2672 | 105.7430 |
観察 3.3:足種での最大÷最小の中央は 1.1745、幅は 1.0297 から 1.5721 である。
観察 3.4:ピンバーは足種で最も動く。 五分足で千本あたり 67.6854 回、四時間足で 45.7459 回で、細かい足ほど多く出る。
観察 3.5:はらみ足は逆である。 五分足で 146.9637、四時間足で 187.2597 回で、粗い足ほど多く出る。
観察 3.6:★ 向きが形によって逆である以上、これは「相場が変わった」では説明できない。 同じ期間・同じ価格から作った足である。動いているのは足の切り方だけである。

図2:銘柄ごとに、三つの足種での千本あたりの件数。形によって、足種の向きが逆になる。
4. 包み足の判定は、スプレッドの十分の一の差で決まっている。これが分離子である
計算 4.1 今の始値と前の終値の差(評価期間)
| 銘柄 | 足種 | 差の絶対値 中央(pips) | スプレッド 中央 | 差 ÷ スプレッド | ちょうど 0 の割合 |
|---|---|---|---|---|---|
| USDJPY | 5m | 0.0500 | 0.6000 | 0.0833 | 10.2127% |
| USDJPY | 1h | 0.1000 | 0.6000 | 0.1667 | 9.6781% |
| USDJPY | 4h | 0.1000 | 0.6000 | 0.1667 | 9.4971% |
| EURUSD | 5m | 0.0500 | 0.3000 | 0.1667 | 1.2246% |
| EURUSD | 1h | 0.0500 | 0.3000 | 0.1667 | 1.9507% |
| EURUSD | 4h | 0.0500 | 0.3000 | 0.1667 | 2.1360% |
| GBPUSD | 5m | 0.0500 | 0.9000 | 0.0556 | 1.0473% |
| GBPUSD | 1h | 0.1000 | 0.9000 | 0.1111 | 1.5218% |
| GBPUSD | 4h | 0.1000 | 0.9000 | 0.1111 | 1.1416% |
| XAUUSD | 5m | 0.1500 | 3.5400 | 0.0424 | 0.5529% |
| XAUUSD | 1h | 0.1500 | 3.5700 | 0.0420 | 0.8059% |
| XAUUSD | 4h | 0.1500 | 3.6000 | 0.0417 | 0.8448% |
観察 4.2:★ 差をスプレッドで割った値の中央は 0.1111、幅は 0.0417 から 0.1667 である。
観察 4.3:★ 包み足の判定は、この差の符号で決まる。 つまりスプレッドの十分の一ほどの量で、包み足かどうかが振り分けられている。
観察 4.4:差がちょうど 0 になる割合は、中央 1.3732% である。 USDJPY では 9.4971% から 10.2127% に達する。USDJPY だけ高いのは、価格の刻みが 1 pip に対して粗いためである。
観察 4.5:★ したがって「買い手が売り手を飲み込んだ」という説明は、スプレッドより一桁小さい差の符号に乗っている。その差は、約定できる幅より小さい。
観察 4.6:★ そして合成乱数では、この差がちょうど 0 である。 足を連続した歩みから作るので、始値は前の終値と厳密に等しい。だから包み足の条件が自動的に満たされ、頻度が跳ね上がる。この基準線は、始値を使う形には使えない。
5. 基準線、使える形と、使えない形
計算 5.1 合成乱数との比較(一時間足・10 系列・千本あたり)
| 銘柄 | 形 | 実測 | 合成乱数 | 比 |
|---|---|---|---|---|
| USDJPY | 包み足 | 127.7918 | 250.2323 | 0.5107 |
| USDJPY | はらみ足 | 167.5343 | 100.5877 | 1.6656 |
| USDJPY | ピンバー | 53.6804 | 83.6104 | 0.6420 |
| USDJPY | 十字線 | 109.0960 | 78.5223 | 1.3894 |
| EURUSD | 包み足 | 125.6498 | 250.2040 | 0.5022 |
| EURUSD | はらみ足 | 153.0378 | 100.5701 | 1.5217 |
| EURUSD | ピンバー | 49.1867 | 83.5727 | 0.5886 |
| EURUSD | 十字線 | 105.3043 | 78.4976 | 1.3415 |
| GBPUSD | 包み足 | 124.7622 | 250.2350 | 0.4986 |
| GBPUSD | はらみ足 | 145.5746 | 100.5763 | 1.4474 |
| GBPUSD | ピンバー | 53.4855 | 83.6075 | 0.6397 |
| GBPUSD | 十字線 | 102.6631 | 78.5051 | 1.3077 |
| XAUUSD | 包み足 | 126.8362 | 250.2544 | 0.5068 |
| XAUUSD | はらみ足 | 162.4464 | 100.3887 | 1.6182 |
| XAUUSD | ピンバー | 51.7862 | 83.7611 | 0.6183 |
| XAUUSD | 十字線 | 105.2301 | 78.6225 | 1.3384 |
観察 5.2:実測を乱数で割った比の中央は 0.9749 だが、幅は 0.4986 から 1.6656 である。16 セルのうち 0.8 から 1.25 に収まったのは 0 である。
観察 5.3:★ 中央が 1 に近いのは偶然である。 形ごとに系統的にずれており、その平均を取っただけである。中央値だけを見てはいけない。
観察 5.4:★ 包み足は合成乱数で 250.2040 回から 250.2544 回と、実測のちょうど二倍出る。 第4節のとおり、始値が前の終値と厳密に等しいので条件が自動的に満たされる。 この比は、市場について何も言っていない。基準線の作り方が言っている。
観察 5.5:十字線も始値を使う(実体 = 終値 − 始値)ので、同じ理由で歪む。比が 1.3077 から 1.3894 と一定なのは、歪み方が一定だからである。
観察 5.6:★ 使えるのは、始値を使わない形である。 はらみ足は高安だけ、ピンバーは一本の中の四つの値の比だけを使う。はらみ足は実測が 1.4474 倍から 1.6656 倍多く、ピンバーは 0.5886 倍から 0.6420 倍少ない。 どちらも乱数と一致しないが、その差は「形が意味を持つ」ことを意味しない。実測の足は連続した歩みではなく、値動きの大きさが時間帯で変わるからである。
観察 5.7:★ 本稿は「形は乱数と同じ頻度で出る」とは結論しない。 ★ 結論できるのは、頻度が足の切り方(第3節)と基準線の作り方(第4節)の両方に強く依存する、ということである。

図1:銘柄ごとの、四つの形の千本あたりの件数。濃い棒(実測)と薄い棒(合成乱数)の高さが、形ごとに系統的にずれる。
6. 形が出た足から先の、方向の情報
計算 6.1 形が予言する向きへの値動き(一時間足・24 時間先・評価期間)
| 銘柄 | 形 | 件数 | D(pips) | Dd(日次平均) | 日次 t | スプレッド | 買/売 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| XAUUSD | 包み足 | 2,219 | 1.5760 | 2.1087 | 0.47 | 3.57 | 1115/1099 |
| XAUUSD | はらみ足 | 2,842 | 1.9063 | 0.7280 | 0.17 | 3.57 | 1423/1415 |
| XAUUSD | ピンバー | 906 | −1.2516 | 3.0319 | 0.43 | 3.57 | 508/398 |
| XAUUSD | 十字線 | 1,841 | −4.9772 | −6.9927 | −1.43 | 3.54 | 874/964 |
| GBPUSD | 十字線 | 1,835 | 0.7914 | −0.3688 | −0.17 | 0.90 | 900/930 |
観察 6.2:形ごとの D の中央は、包み足 +1.1849、はらみ足 +0.5323、ピンバー −0.7979、十字線 +0.0544 pips である。スプレッドの中央は 0.7500 pips である。
観察 6.3:日次 t の絶対値が 2 以上のセルは 16 のうち 2 である。偶然なら およそ 0.7 なので、やや多い。
観察 6.4:有意に見えた二つは、包み足で 1 つ、ピンバーで 1 つである。 本稿はこれを主張しない。 24 時間先まで見ており、観測は重なっている。
観察 6.5:買いと売りの数はほぼ同じである(XAUUSD のはらみ足で 1423/1415)。ピンバーだけ偏る(508/398)。ヒゲの出方が上下で対称でないためで、これ自体はその期間の向きを含む。
7. 足種を変えると、方向の情報も動く
計算 7.1 同じ形・同じ 24 時間先で、足種だけを変える(評価期間・pips)
| 銘柄 | 形 | 5m D | 5m t | 1h D | 1h t | 4h D | 4h t |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| USDJPY | 包み足 | −0.1704 | −1.19 | 4.8417 | 3.00 | −0.4155 | 0.20 |
| USDJPY | はらみ足 | −0.6832 | −2.31 | −1.9012 | −0.58 | −3.8545 | −0.71 |
| USDJPY | ピンバー | 1.0238 | 0.11 | 9.8877 | 3.16 | −0.7374 | −0.47 |
| USDJPY | 十字線 | −0.9764 | −0.22 | −0.6826 | 0.12 | 1.7015 | 0.22 |
| EURUSD | 包み足 | −0.6851 | −1.43 | 0.3731 | −0.26 | −2.5657 | −1.07 |
| EURUSD | はらみ足 | 0.2778 | 0.77 | 1.0428 | 1.72 | −4.5383 | −2.04 |
| GBPUSD | 包み足 | 0.0665 | −0.48 | 0.7938 | 0.70 | −5.4092 | −2.05 |
| GBPUSD | ピンバー | −0.6882 | −0.27 | −0.3442 | 0.14 | 1.9933 | 0.58 |
| XAUUSD | ピンバー | −3.5413 | −2.89 | −1.2516 | 0.43 | −11.8705 | −1.14 |
| XAUUSD | はらみ足 | 1.1832 | −0.27 | 1.9063 | 0.17 | 10.8059 | 1.92 |
観察 7.2:足種ごとの D の中央は、五分足 −0.2947、一時間足 +0.5823、四時間足 −1.4472 pips である。符号が足種で変わる。
観察 7.3:日次 t の絶対値が 2 以上のセルは、三つの足種すべてで 16 のうち 2 である。偶然なら およそ 0.7 である。どの足種でも同じ程度にしか出ない。
観察 7.4:★ USDJPY のピンバーは、一時間足で D が +9.8877(t 3.16)だが、四時間足では −0.7374(t −0.47)である。 同じ形・同じ期間・同じ先の長さで、足種を変えただけで符号が変わる。
観察 7.5:★ したがって「この形は効く」という主張は、足種を書かなければ意味を持たない。 そして足種を三つ試せば、そのうちどれかが良く見えるのは当たり前である。
8. 時間帯で分ける
設計:協定世界時で重ならない五区分に分ける。信号は一時間足の包み足である。
計算 8.1 五区分それぞれの方向の情報(評価期間)
| 銘柄 | 東京 0–7 | ロンドン 7–12 | 重複 12–16 | NY後半 16–21 | 夜間 21–24 |
|---|---|---|---|---|---|
| USDJPY | 4.85(t 2.29) | 3.47(t 0.92) | 4.57(t 0.71) | 7.37(t 1.58) | 3.71(t 0.84) |
| EURUSD | −1.80(t −1.26) | 3.50(t 1.55) | 0.55(t 0.23) | 0.34(t 0.28) | 0.83(t 0.48) |
| GBPUSD | −1.46(t −0.81) | 2.54(t 1.08) | 0.10(t 0.61) | 0.95(t 0.72) | 4.79(t 1.21) |
| XAUUSD | −3.17(t −0.59) | 6.77(t 0.93) | 3.63(t 0.49) | 9.32(t 1.53) | −18.35(t −1.23) |
観察 8.2:日次 t の絶対値が 2 以上になったセルは 20 のうち 1 である。偶然なら およそ 0.9 セルなので、偶然と同じ程度である。
観察 8.3:有意に見えたのは USDJPY の東京帯(4.85・t 2.29)である。本稿はこれを主張しない。
観察 8.4:USDJPY は五区分すべてで正である。 その期間にその銘柄が上がったことの言い換えでありうる。本稿はドリフトを分離していない。
9. 限界
- ★ 合成乱数の基準線は、始値を使う形には使えない。 合成乱数では始値が前の終値と厳密に等しいので、包み足と十字線の頻度が歪む。本稿はそれを測ってから書いているが、歪みを直した基準線は作っていない。 ここが最大の限界である。
- 形の定義を一通りに固定している。 ピンバーの 2.0 倍と 0.5 倍、十字線の 10% である。別の閾値では頻度が変わる。ただし第3節(足種で動く)と第4節(差がスプレッドより小さい)は、閾値に依らない。
- ★ はらみ足とピンバーが乱数と一致しない理由を説明できていない。 実測の足は連続した歩みではなく、値動きの大きさが時間帯で変わる。その効果を分離していない。
- 重複を除いていない。 24 時間先まで見ている。第6節と第7節の日次 t は膨らんでいる。
- ドリフトを分離していない。 第8節で USDJPY が五区分すべて正なのは、その期間の向きを含む。
- 合成乱数は独立な正規増分である。 ボラティリティの群れは入っていない。
- 四銘柄・三年である。 他の市場、他の期間について述べるものではない。
結び
ローソク足の形には名前と物語が付いている。「買い手が売り手を飲み込んだ」「下で買い支えられた」。
だが包み足の判定は、「今の始値が前の終値より内側か」で決まる。そしてその二つの差の中央は、スプレッドの 0.1111 倍しかない。 差がちょうど 0 になる割合は中央 1.3732%、USDJPY では 10.2127% に達する。
飲み込んだかどうかは、約定できる幅より一桁小さい量の符号で決まっている。
出現頻度は足種を変えるだけで中央 1.1745 倍動き、ピンバーは細かい足ほど多く、はらみ足は粗い足ほど多い。向きが形によって逆である以上、これは相場では説明できない。
そして合成乱数との比は形ごとに 0.4986 から 1.6656 まで系統的にずれ、16 セルのうち 0.8 から 1.25 に収まったのは 0 である。 包み足のずれは基準線の作り方で説明がつくが、はらみ足とピンバーのずれは説明できていない。
★ 本稿は「形は乱数と同じだけ出る」とは結論しない。結論できるのは、頻度が足の切り方と基準線の作り方の両方に強く依存する、ということである。
方向の情報は、日次 t の絶対値が 2 以上のセルが 16 のうち 2(偶然なら 0.7)で、足種を変えると D の中央は −1.4472 から +0.5823 pips まで符号ごと動く。「この形は効く」という主張は、足種を書かなければ意味を持たない。
データと再現
| データ | 為替は Dukascopy 由来のティック(2019 年以降はミリ秒・bid・ask まで一致することを確認済み)。金は Dukascopy |
| 期間 | 2019–2024(六年)。評価 2022–2024 |
| 銘柄 | USDJPY・EURUSD・GBPUSD・XAUUSD |
| 足 | 五分足・一時間足・四時間足。中値・完成足のみ。ティックの無い足は作らない |
| 形 | 包み足・はらみ足・ピンバー(2.0 倍と 0.5 倍)・十字線(10%) |
| 検算 | 検算/F020.py(--zu で図も書き出す)。本文の数字はすべて 検算/F020_output.txt から取っている |
| 図 | 図/F020_zu1・図/F020_zu2(png・svg・英語版) |
| 乱数の種 | 0〜9 に固定。再実行しても同じ値が出る |
| 土台の検査 | _ツール/audit_bars.py(足の先読み・夏時間・日の区切り)。記録は _土台の検査.txt |
参考文献
- 山岸勇輝 (2026). チャートの型は、合成乱数にも同じ頻度で現れる [F016]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22891793
作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。
書誌
山岸勇輝(2026)「ローソク足の形は、足の切り方に属している」[F020]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.22891997
日付の証拠(OpenTimestamps):日本語版の .ots・英語版の .ots・SHA256SUMS
予備の置き場所(ミラー。中身は上と同じです):PDF 日本語・PDF English・SHA256SUMS
住所:https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/F020・DOI 10.5281/zenodo.22891997・CC BY 4.0・プレプリント(査読を経ていません)・ORCID 0009-0006-8587-3450
引用するとき
山岸勇輝 (2026). ローソク足の形は、足の切り方に属している [F020]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/F020 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22891997
Yamagishi, Y. (2026). Candlestick Shapes Belong to the Way the Bars Were Cut [F020]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/F020; DOI: 10.5281/zenodo.22891997
@misc{yamagishi2026yoiF020,
author = {Yamagishi, Yuuki},
title = {Candlestick Shapes Belong to the Way the Bars Were Cut},
year = {2026},
howpublished = {YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/F020},
doi = {10.5281/zenodo.22891997},
note = {Preprint}
}
指紋(SHA-256)と確かめ方
5fc61f5fd447e94033aee5f3ba7cf99f89c6f953b76281e7d23393d9a9b14baf yamagishi_F020__20260922_jp.pdf368a80b6d8b671bc9b8a466a2f2bfc694b7311e3b9ec7a546101dee6f81f8827 yamagishi_F020__20260922_en.pdfPDF と .ots を同じ場所に保存し、opentimestamps.org に .ots、続けて PDF を落とすと、記録された日時が表示されます。PDF が 1 バイトでも変わっていれば通りません。