要旨
本稿が問うのは、部位の間の 5 年生存率の違いが、「どの進行度で見つかる人が多いか」(進行度の構成)と「同じ進行度どうしの生存率の違い」(進行度ごとの生存率)にどう分かれるか、である。全国がん登録の 2018 年診断例の 5 年相対生存率(臨床進行度別・男女計)を使い、進行度の分かる人について、二つの効果に分けた。新しい数学定理も新しい法則も主張しない。
第一に、三つの進行度(限局・領域・遠隔)の生存率を三つの割合で重みづけた平均(本稿の計算・「進行度の分かる人の生存率」)は、甲状腺の 96.1 から膵臓の 13.6 まで開く。全部位は 68.2 である。進行度不明の人の生存率は表に無く、全体の値から逆算すると膵臓の 8.67 から前立腺の 113.89 まで開く。逆算が当たっているかは確かめられないので、本稿は不明の人を入れずに比べる(第3・4節)。
第二に、これが本稿の芯である。膀胱の生存率は、限局 81.0(肺 81.1)・領域 38.9(肺 39.3)・遠隔 11.0(肺 11.7)と、三つの進行度のどれでも肺とほぼ同じ(差は三つとも標準誤差の 2 倍の中)なのに、合わせると 69.6 対 41.9 になる。 差 +27.7 点のうち +28.0 点が進行度の構成の効果で、進行度ごとの効果は −0.3 点である。膀胱は限局で見つかる人が 66.8 %、肺は 31.3 % で、遠隔は 5.3 % と 38.8 % である(第5節)。
第三に、19 部位の 171 組のうち 10 組で、三つの進行度のどれでも生存率が低い部位のほうが、合わせると高くなる(膀胱と肺・喉頭と結腸・皮膚と乳房など)。これは数理物理の論文183 が「同じ表が、二つの正しい答を持つ」として示した形(シンプソンの逆転)の、がんの生存率の実例である(第5節)。
第四に、全部位(68.2)との差を分けると、構成の効果のほうが大きい部位は 19 部位のうち 8 部位(膀胱・喉頭・皮膚・子宮体部など)で、残りは進行度ごとの効果のほうが大きい。膵臓は差 −54.5 点のうち、進行度ごとの効果が −36.6 点、構成の効果が −17.9 点で、限局でも 42.4 %(全部位の限局は 91.2 %)である(第6節)。
第五に、19 部位の差のばらつき(分散 515.5)は、構成の効果の分散 94.7、進行度ごとの効果の分散 275.7、二つの共分散の 2 倍 145.1 に分かれる。二つの効果は、12 部位で同じ向き、7 部位で逆向きである(第6節)。
第六に、分けているのは、進行度の構成と、進行度ごとの生存率である。部位の 5 年生存率の高さは、そのがんの性質(進みやすさ・治りやすさ)だけでなく、どの進行度で見つかる人が多いかも運んでいる。
本稿の射程(scope note):新しい数学定理も新しい法則も主張しない。全体の率を構成と層ごとの率に分けることも、層ごとの向きと全体の向きが逆になりうること(シンプソンの逆転)も既知である。本稿は公表の集計表の数を並べ、差を二つに分け、逆転の組を数えるだけである。本稿は公開の集計データの数の形を述べる構造的解釈であり、医学的な助言・診断・治療の推奨ではない。著者は医師ではない。個人の健康に関する判断は医師・医療機関に相談すること。査読を経ていないプレプリントである。 一人の見通しではない。どの数も 2018 年に診断された人たちの集計である。なぜ進行度の構成が部位で違うのか(見つかり方・症状・検診など)には立ち入らず、検診の効き目も論じない。 がんの性質(進みやすさ・治りやすさ)の違いとしては読まない。進行度ごとの生存率の違いには、同じ進行度の中の広がり、年齢、治療など多くのものが入っており、本稿は分けていない。地域・施設を比べない。 データについて:出典として「国立がん研究センターがん情報サービス」と明記し、集計表の値は改変せずに載せ、本稿の計算(重みづけ平均・差の分け方・分散の分け方)と分けて示す。進行度の分かる部位はすべて表に載せた。加えたのは、部位の差を進行度の構成と進行度ごとの生存率に分けて 19 部位で並べたこと、三つの進行度のどれでも低いのに合わせると高くなる組を 171 組から数え、膀胱と肺の差のほぼすべてが構成から来ることを標準誤差と並べて示したこと、逆算した進行度不明の人の生存率が 100 を超える部位があるので、不明の人を入れずに比べたことである。
1. 記法と問い
- 進行度:臨床進行度の限局(原発臓器に限局)・領域(所属リンパ節転移または隣接臓器浸潤)・遠隔(遠隔転移)(集計表の注のとおり)。進行度不明の割合は、三つの合計を 100 % から引いた値(集計表の注)。
- 進行度の分かる人の生存率(本稿の計算):三つの進行度の 5 年相対生存率を、三つの割合で重みづけた平均(割合の和で割る)。
- 差の分け方:二つの部位の差 = 構成の効果 Σ(割合の差 × 生存率の平均)+ 進行度ごとの効果 Σ(割合の平均 × 生存率の差)(北川の分け方・二つの和はちょうど差になる)。割合は三つの進行度の中の割合に直してから使う。
- 逆転:部位 A の進行度の分かる人の生存率が B より高いのに、三つの進行度のどれでも A の生存率が B より低いこと。
問い:部位の間の 5 年生存率の違いは、進行度の構成と進行度ごとの生存率にどう分かれるか。
観察 1.1:M007 は「5 年生存率」が三つの別の数を指すことを示した。本稿はその一つ(全国がん登録の相対生存率)を、進行度で開く。全体の率は、層の構成と層ごとの率の二つを一語で呼んでいる。これは M001 が死亡率で見た形の、生存率の版である。
2. 下見と設計
正直に書く:本稿の設計は、表を見たあとに決めた。
| 中身 | |
|---|---|
| 進行度別 | がん情報サービスの集計表のシート「最新データ(進行度別)」:2018 年診断例の限局・領域・遠隔の対象者数・割合・5 年相対生存率・標準誤差(男女計)と進行度不明の割合。22 行(全部位と束ねた行を含む) |
| 部位別 | 同じ集計表のシート「最新データ(性別)」:2018 年診断例の部位別 5 年相対生存率と対象者数(男女計) |
| 数える部位 | 束ねた行(全部位・大腸・子宮)を除く 19 部位。全部位は比べる相手に使う |
| 見込みと、測ったこと | 下見の前は「逆転の組は少なく、目立つものは無い」と見込んでいた。数えると 10 組あり、膀胱と肺では進行度ごとの差が三つとも 1 点未満だった |
3. データと、その確かめ
計算 3.1 取得したファイルを SHA-256 で固定し、次のことを確かめた。
- 三つの割合 + 進行度不明の割合 = 100(22 行すべて)。注に「*4 限局、領域、および遠隔の合計を100%から引いて算出」とある。
- 三つの進行度の対象者数の和 ÷ 部位の対象者数 × 100 = 三つの割合の和(乳房を除く 21 行で差 1.4e-14 以内)。
- 乳房だけは食い違う(90.203 と 90.801)。部位の対象者数 89,682 は男女計で男性 590 人を含み、三つの進行度の和 ÷(89,682 − 590)× 100 は三つの割合の和と一致する。
- 集計表は、出典として 2009-2011 年生存率報告(Center for Cancer Control and Information Services, 2020)を挙げている。
観察 3.2:進行度不明の人の生存率は、表に無い。 全体の 5 年相対生存率から三つの進行度の分を引いて逆算すると、膵臓 8.67・胆のう・胆管 12.41 から、皮膚 88.47・前立腺 113.89 まで開く。前立腺だけが 100 を超える。相対生存率は一般の人と比べた数なので 100 を超えることもあるが(M007)、この逆算が当たっているかは確かめられない。本稿は、不明の人を入れず、進行度の分かる人だけの重みづけ平均で部位を比べる。
4. 部位ごとの進行度の構成と、進行度ごとの生存率
計算 4.1 2018 年診断例の進行度ごとの対象者数・割合(%)・5 年相対生存率(%)、進行度不明の割合、進行度の分かる人の生存率(本稿の計算)(男女計)。進行度の分かる人の生存率の高い順。
| 部位 | 限局の人数 | 限局の割合 | 限局の生存率 | 領域の人数 | 領域の割合 | 領域の生存率 | 遠隔の人数 | 遠隔の割合 | 遠隔の生存率 | 不明の割合 | 進行度の分かる人の生存率 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 甲状腺 | 6,508 | 39.1 | 99.8 | 7,178 | 43.1 | 97.4 | 867 | 5.2 | 56.7 | 12.6 | 96.1 |
| 皮膚 | 17,841 | 84.3 | 98.2 | 1,847 | 8.7 | 68.3 | 266 | 1.3 | 19.8 | 5.7 | 94.4 |
| 前立腺 | 49,690 | 59.9 | 100.0 | 14,028 | 16.9 | 98.7 | 10,423 | 12.6 | 55.9 | 10.6 | 93.6 |
| 乳房 | 52,296 | 58.7 | 99.1 | 22,778 | 25.6 | 90.0 | 5,822 | 6.5 | 42.5 | 9.2 | 92.5 |
| 喉頭 | 3,103 | 70.7 | 94.5 | 936 | 21.3 | 54.3 | 94 | 2.1 | 13.6 | 5.8 | 83.6 |
| 子宮体部 | 10,603 | 67.0 | 94.9 | 2,857 | 18.0 | 70.4 | 1,519 | 9.6 | 21.3 | 5.4 | 82.8 |
| 子宮 | 14,838 | 55.9 | 94.9 | 7,169 | 27.0 | 68.1 | 2,660 | 10.0 | 20.7 | 7.1 | 79.1 |
| 子宮頸部 | 4,206 | 40.4 | 95.4 | 4,288 | 41.1 | 66.8 | 1,111 | 10.7 | 20.4 | 7.8 | 73.9 |
| 腎・尿路 | 14,350 | 55.7 | 93.5 | 4,986 | 19.4 | 60.2 | 3,714 | 14.4 | 15.3 | 10.5 | 73.7 |
| 直腸 | 20,675 | 45.3 | 93.2 | 13,431 | 29.4 | 74.5 | 8,354 | 18.3 | 21.2 | 7.0 | 73.1 |
| 大腸(結腸・直腸) | 62,371 | 45.6 | 94.3 | 38,814 | 28.4 | 74.5 | 26,087 | 19.1 | 17.6 | 6.9 | 72.5 |
| 結腸 | 41,696 | 45.8 | 94.9 | 25,383 | 27.9 | 74.5 | 17,733 | 19.5 | 16.0 | 6.9 | 72.3 |
| 膀胱 | 13,609 | 66.8 | 81.0 | 2,942 | 14.4 | 38.9 | 1,089 | 5.3 | 11.0 | 13.4 | 69.6 |
| 胃 | 63,906 | 57.3 | 94.0 | 20,298 | 18.2 | 50.4 | 20,233 | 18.1 | 7.0 | 6.4 | 68.7 |
| 全部位 | 401,639 | 46.0 | 91.2 | 200,900 | 23.0 | 62.2 | 165,025 | 18.9 | 19.4 | 12.1 | 68.2 |
| 口腔・咽頭 | 6,548 | 35.2 | 86.9 | 9,808 | 52.7 | 56.3 | 854 | 4.6 | 13.5 | 7.6 | 65.8 |
| 卵巣 | 2,051 | 21.4 | 92.6 | 4,720 | 49.2 | 63.6 | 1,701 | 17.7 | 26.5 | 11.8 | 63.1 |
| 食道 | 8,027 | 38.3 | 83.3 | 7,694 | 36.7 | 35.5 | 3,906 | 18.6 | 10.9 | 6.4 | 50.2 |
| 肺 | 33,188 | 31.3 | 81.1 | 20,544 | 19.4 | 39.3 | 41,134 | 38.8 | 11.7 | 10.4 | 41.9 |
| 肝臓 | 19,673 | 59.2 | 52.5 | 3,801 | 11.4 | 11.0 | 4,265 | 12.8 | 2.9 | 16.5 | 39.2 |
| 胆のう・胆管 | 3,201 | 16.3 | 49.7 | 8,470 | 43.2 | 32.4 | 4,957 | 25.3 | 3.0 | 15.1 | 27.0 |
| 膵臓 | 6,011 | 15.9 | 42.4 | 10,976 | 29.1 | 15.9 | 17,458 | 46.3 | 2.2 | 8.7 | 13.6 |
観察 4.2:進行度の分かる人の生存率は、甲状腺 96.1 から膵臓 13.6 まで開く。遠隔の割合は膵臓 46.3 %・肺 38.8 % が高く、皮膚 1.3 %・口腔・咽頭 4.6 %・膀胱 5.3 % が低い。限局の生存率も、甲状腺 99.8・前立腺 100.0 から、膵臓 42.4・胆のう・胆管 49.7 まで開く。
5. 芯、進行度のどれでも低いのに、合わせると高い
計算 5.1 19 部位の 171 組のうち、三つの進行度のどれでも生存率が低い部位のほうが、進行度の分かる人の生存率では高くなる 10 組。差の大きい順。
| 組(高い > 低い) | 高いほう | 低いほう | 限局 | 領域 | 遠隔 | 差 | 構成の効果 | 進行度ごとの効果 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 膀胱 > 肺 | 69.6 | 41.9 | 81.0・81.1 | 38.9・39.3 | 11.0・11.7 | +27.7 | +28.0 | −0.3 |
| 喉頭 > 結腸 | 83.6 | 72.3 | 94.5・94.9 | 54.3・74.5 | 13.6・16.0 | +11.3 | +17.1 | −5.8 |
| 喉頭 > 子宮頸部 | 83.6 | 73.9 | 94.5・95.4 | 54.3・66.8 | 13.6・20.4 | +9.7 | +14.8 | −5.2 |
| 膀胱 > 卵巣 | 69.6 | 63.1 | 81.0・92.6 | 38.9・63.6 | 11.0・26.5 | +6.5 | +23.3 | −16.8 |
| 膀胱 > 口腔・咽頭 | 69.6 | 65.8 | 81.0・86.9 | 38.9・56.3 | 11.0・13.5 | +3.8 | +13.8 | −10.0 |
| 口腔・咽頭 > 卵巣 | 65.8 | 63.1 | 86.9・92.6 | 56.3・63.6 | 13.5・26.5 | +2.7 | +10.2 | −7.5 |
| 皮膚 > 乳房 | 94.4 | 92.5 | 98.2・99.1 | 68.3・90.0 | 19.8・42.5 | +1.9 | +7.7 | −5.8 |
| 腎・尿路 > 結腸 | 73.7 | 72.3 | 93.5・94.9 | 60.2・74.5 | 15.3・16.0 | +1.4 | +6.0 | −4.6 |
| 皮膚 > 前立腺 | 94.4 | 93.6 | 98.2・100.0 | 68.3・98.7 | 19.8・55.9 | +0.8 | +9.3 | −8.5 |
| 喉頭 > 子宮体部 | 83.6 | 82.8 | 94.5・94.9 | 54.3・70.4 | 13.6・21.3 | +0.8 | +4.9 | −4.1 |
観察 5.2:膀胱と肺は、進行度ごとの生存率の差が限局 −0.08・領域 −0.40・遠隔 −0.70 点で、三つとも 1 点未満である。 差を二つの標準誤差の二乗和の平方根で割ると −0.13・−0.36・−0.65 で、三つとも 2 倍の中にある。同じ進行度どうしでは、差があるとは言えない。それなのに、進行度の分かる人の生存率は 69.6 対 41.9 で、差 +27.7 点のうち +28.0 点が構成の効果である。 膀胱は限局で見つかる人が 66.8 %、肺は 31.3 %、遠隔は 5.3 % と 38.8 % である。
観察 5.3:残りの 9 組も、どれも構成の効果が正で進行度ごとの効果が負である(喉頭と結腸:+17.1 と −5.8 など)。部位の全体の生存率が高いことは、同じ進行度どうしで生存率が高いことを意味しない。 数理物理の論文183 は「同じ表が、二つの正しい答を持つ」として、層ごとの答と全体の答が逆になる形を示した。膀胱と肺はその形の、がんの生存率の実例である。どちらの答が「正しいか」は、何を問うかで決まる。

図1:左は膀胱(青)と肺(橙)の進行度ごとの 5 年相対生存率と、進行度の分かる人の生存率(本稿の計算)。右は進行度の分かる人の中の、限局・領域・遠隔の割合。
6. 全部位と比べて
計算 6.1 各部位の進行度の分かる人の生存率と全部位(68.2)の差を、構成の効果と進行度ごとの効果に分ける(点)。差の小さい順。
| 部位 | 進行度の分かる人の生存率 | 全部位との差 | 構成の効果 | 進行度ごとの効果 |
|---|---|---|---|---|
| 膵臓 | 13.6 | −54.5 | −17.9 | −36.6 |
| 胆のう・胆管 | 27.0 | −41.2 | −10.7 | −30.5 |
| 肝臓 | 39.2 | −29.0 | +8.1 | −37.1 |
| 肺 | 41.9 | −26.2 | −13.8 | −12.4 |
| 食道 | 50.2 | −18.0 | −3.8 | −14.2 |
| 卵巣 | 63.1 | −5.0 | −7.6 | +2.6 |
| 口腔・咽頭 | 65.8 | −2.3 | +2.8 | −5.2 |
| 胃 | 68.7 | +0.5 | +4.1 | −3.6 |
| 膀胱 | 69.6 | +1.5 | +14.2 | −12.8 |
| 結腸 | 72.3 | +4.1 | −0.5 | +4.6 |
| 直腸 | 73.1 | +4.9 | +0.0 | +4.9 |
| 腎・尿路 | 73.7 | +5.5 | +5.5 | +0.1 |
| 子宮頸部 | 73.9 | +5.8 | +2.0 | +3.8 |
| 子宮体部 | 82.8 | +14.6 | +10.1 | +4.5 |
| 喉頭 | 83.6 | +15.4 | +15.9 | −0.5 |
| 乳房 | 92.5 | +24.4 | +8.8 | +15.5 |
| 前立腺 | 93.6 | +25.4 | +5.4 | +20.0 |
| 皮膚 | 94.4 | +26.2 | +20.1 | +6.1 |
| 甲状腺 | 96.1 | +27.9 | +5.3 | +22.6 |
観察 6.2:構成の効果のほうが大きい部位は 19 部位のうち 8 部位(胃・喉頭・肺・皮膚・子宮体部・卵巣・膀胱・腎・尿路)で、残りの 11 部位は進行度ごとの効果のほうが大きい。二つの効果は 12 部位で同じ向き、7 部位で逆向きである。19 部位の差の分散 515.5 は、構成の効果の分散 94.7、進行度ごとの効果の分散 275.7、共分散の 2 倍 145.1 に分かれる。
観察 6.3:膵臓は、全部位との差 −54.5 点のうち、進行度ごとの効果が −36.6 点、構成の効果が −17.9 点である。 遠隔で見つかる人が多い(46.3 %・全部位 18.9 %)ことも効いているが、それより大きいのは、限局でも 42.4 %(全部位の限局 91.2 %)という進行度ごとの違いである。肝臓は構成の効果が +8.1 点と正(限局の割合 59.2 %)なのに、進行度ごとの効果が −37.1 点である。

図2:各部位の進行度の分かる人の生存率と全部位(68.2)の差(◆)を、進行度の構成の効果(青)と進行度ごとの生存率の効果(橙)に分けたもの。
7. 限界
- 進行度不明の人を入れていない。 不明の割合は 5.4〜16.5 % あり、その人たちの生存率は表に無い。
- 男女計だけを見た。 進行度別の値は男女計でしか公表されていない。
- 進行度は三つの粗い区分である。 同じ区分の中の広がり・年齢・治療の違いは分けていない。
- なぜ構成が部位で違うのか(見つかり方など)には立ち入らない。 検診の効き目は論じない。
- 一人の見通しではない。 地域・施設を比べない。
結び
膀胱は、限局・領域・遠隔のどれでも肺とほぼ同じ生存率なのに、進行度の分かる人を合わせると 69.6 対 41.9 になった。差のほぼすべては、どの進行度で見つかる人が多いかから来ていた。19 部位の 171 組のうち 10 組で、同じ逆転が起きていた。膵臓は逆に、構成より進行度ごとの違いが大きく、限局でも 42.4 % だった。
分けるものは二つ、進行度の構成と、進行度ごとの生存率、である。
部位の 5 年生存率を比べるときは、それが同じ進行度どうしの違いなのか、見つかる進行度の違いなのかを、一緒に思い出す。
データと再現
| データ | 全国がん登録に基づく部位別 5 年相対生存率(2018 年診断例・進行度別と部位別・男女計)の集計表(がん情報サービス・2026 年 9 月 25 日に取得) |
| 利用条件 | 出典として「国立がん研究センターがん情報サービス」と明記して利用。集計表の値は改変せずに載せ、本稿の計算(重みづけ平均・差の分け方・分散の分け方)と分けて示した |
| 範囲 | 日本・2018 年診断例 |
| 検算 | 検算/M026.py(--zu で図も書き出す)。本文の数字はすべて 検算/M026_output.txt から取っている |
| 生データ | data/ に取得したファイルと SOURCES.md(URL・取得日・SHA-256・利用条件・ファイルの注の写し・言葉と計算の置き方) |
| 図 | 図/M026_zu1・図/M026_zu2(png・svg・英語版) |
参考文献
- Center for Cancer Control and Information Services, National Cancer Center (2020). Monitoring of Cancer Incidence in Japan – Survival 2009-2011 Report.
- 国立がん研究センターがん情報サービス. 全国がん登録によるがん生存率データ(2016年〜2018年診断例)5年相対生存率 cancer_survivalNCR(2016-2018).xlsx(2026年9月25日に取得). https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/data/dl/excel/cancer_survivalNCR%282016-2018%29.xlsx
- 山岸勇輝 (2026). 同じ表が、二つの正しい答を持つ [論文183]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22104230
- 山岸勇輝 (2026). 「死亡率が上がった」は、年齢構成の動きと年齢別の率の動きを一語で呼んでいる [M001]. Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22963112
- 山岸勇輝 (2026). 「5 年生存率」という一語は、三つの別の数を指している [M007]. Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22964570
作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。
書誌
山岸勇輝(2026)「部位の 5 年生存率の違いは、進行度の構成と進行度ごとの生存率に分かれる」[M026]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.22968675
日付の証拠(OpenTimestamps):日本語版の .ots・英語版の .ots・SHA256SUMS
予備の置き場所(ミラー。中身は上と同じです):PDF 日本語・PDF English・SHA256SUMS
住所:https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/M026・DOI 10.5281/zenodo.22968675・CC BY 4.0・プレプリント(査読を経ていません)・ORCID 0009-0006-8587-3450
引用するとき
山岸勇輝 (2026). 部位の 5 年生存率の違いは、進行度の構成と進行度ごとの生存率に分かれる [M026]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/M026 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22968675
Yamagishi, Y. (2026). Differences in 5-Year Survival Between Sites Split into Stage Mix and Stage-Specific Survival [M026]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/M026; DOI: 10.5281/zenodo.22968675
@misc{yamagishi2026yoiM026,
author = {Yamagishi, Yuuki},
title = {Differences in 5-Year Survival Between Sites Split into Stage Mix and Stage-Specific Survival},
year = {2026},
howpublished = {YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/M026},
doi = {10.5281/zenodo.22968675},
note = {Preprint}
}
指紋(SHA-256)と確かめ方
8d8e116d4c58be170a67e618696794fea4bb4b93b9396b8aa8c568ef853a190e yamagishi_M026_differences_5_year_survival_between_20260926_jp.pdf52d45c52b944529e6fc0355647945addce44dccd561f619863387659f22dfef6 yamagishi_M026_differences_5_year_survival_between_20260926_en.pdfPDF と .ots を同じ場所に保存し、opentimestamps.org に .ots、続けて PDF を落とすと、記録された日時が表示されます。PDF が 1 バイトでも変わっていれば通りません。