要旨
衛生行政報告例(令和6年度)の第13表から、環境衛生及び食品衛生関係職員の数を職名別・専従兼務別に数え、これまで数えてきた施設の数と突き合わせた。
職員は27,227人。ただしこれは人数ではなく、のべ数である。 第13表の注1により、兼務者は兼務している職務の数だけ数えられる。
専従者は2,349人(8.6%)、兼務者は24,878人(91.4%)。
| 職名 | 人 | うち専従 |
|---|---|---|
| 食品衛生監視員 | 8,558 | 1,372(16.0%) |
| 環境衛生監視員 | 6,710 | 465(6.9%) |
| 家庭用品衛生監視員 | 3,986 | |
| 食鳥検査員 | 2,805 | |
| と畜検査員 | 2,689 | |
| 狂犬病予防員 | 2,479 |
専従者が1人もいない都道府県が11ある。 専従の割合の中央値は4.9%、東京都でも38.9%である。
食品営業(全業種の許可+届出)2,769,361施設を、食品衛生監視員8,558人で割ると324施設/人。専従の1,372人で割ると2,018施設/人になる。
人口10万人あたりの職員は、島根県48.4に対して埼玉県11.2で4.31倍。 人口(対数)との相関は r = −0.694 で、人口の少ない県ほど、人口あたりの職員が多い。
1. はじめに
I006 からここまで、数えてきたのは見張られる側だった。旅館52,946、公衆浴場23,668、クリーニング67,551、食品営業2,769,361、薬局63,203、理容所107,995、美容所277,752、墓地876,042。
では、見張る側は何人いるのか。
2. データ
| 職員数 | 厚生労働省「衛生行政報告例」令和6年度 第13表(食品衛生)。令和6年度末現在。職名6つ×専従・兼務 |
| 食品営業の施設数 | 同 第4表-1・第6表-1(I011 で数えたもの) |
| 理容所・美容所 | 同 第10表(I015 で数えたもの) |
| 人口 | 総務省「住民基本台帳に基づく人口」2026年1月1日 |
47都道府県すべての行がそろい、合計は全国の値とぴたり一致する(27,227、差0)。
第13表の注1:「兼務者」の「総数」は、環境衛生監視員・食品衛生監視員・と畜検査員・食鳥検査員・狂犬病予防員・家庭用品衛生監視員の職務を兼務している者の累計である。
つまり、1人が3つの職名を持てば3と数えられる。27,227は人数ではない。
3. 結果
3-1 27,227はのべ数である
| 職名 | 人 | 割合 |
|---|---|---|
| 食品衛生監視員 | 8,558 | 31.4% |
| 環境衛生監視員 | 6,710 | 24.6% |
| 家庭用品衛生監視員 | 3,986 | 14.6% |
| 食鳥検査員 | 2,805 | 10.3% |
| と畜検査員 | 2,689 | 9.9% |
| 狂犬病予防員 | 2,479 | 9.1% |
| 総数 | 27,227 |
6つの職名の足し合わせは27,227で、総数とぴたり一致する。一致するということは、兼務している人が職名ごとに重ねて数えられているということである。
実際の人数がはっきり分かるのは、専従者だけである。
3-2 専従は8.6%
| 人 | 割合 | |
|---|---|---|
| 専従者 | 2,349 | 8.6% |
| 兼務者 | 24,878 | 91.4% |
| 全体 | うち専従 | 専従の割合 | |
|---|---|---|---|
| 食品衛生監視員 | 8,558 | 1,372 | 16.0% |
| 環境衛生監視員 | 6,710 | 465 | 6.9% |
この仕事の9割は、他の職務と兼ねて行われている。
| 専従の割合(都道府県) | |
|---|---|
| 高い | 東京38.9%/福岡23.0%/宮城20.0% |
| 低い | 愛媛0.0%/佐賀0.0%/宮崎0.0% |
| 0%の都道府県 | 11/47 |
| 中央値 | 4.9% |
11の都道府県には、専従の環境衛生・食品衛生関係職員が1人もいない。
3-3 1人あたり何施設か
| 食品営業 | 施設/人 |
|---|---|
| 許可+届出 2,769,361 ÷ 食品衛生監視員 8,558 | 324 |
| 許可+届出 2,769,361 ÷ 専従 1,372 | 2,018 |
| 届出のみ 865,122 ÷ 8,558 | 101 |
| 届出のみ 865,122 ÷ 専従 1,372 | 631 |
| 理容所+美容所 385,747 | 施設/人 |
|---|---|
| ÷ 環境衛生監視員 6,710 | 57 |
| ÷ 専従 465 | 830 |
環境衛生監視員が見るのは理容・美容だけではない。 旅館・公衆浴場・クリーニング・興行場・特定建築物なども入るので、実際の受け持ちはこれよりずっと多い。
3-4 人口の少ない県ほど、人口あたりの職員が多い
| 人口10万人あたり | |
|---|---|
| 全国 | 職員22.0(食品衛生監視員6.9/環境衛生監視員5.4) |
| 多い | 島根48.4/宮崎46.0/高知41.0 |
| 少ない | 東京15.0/福岡13.6/埼玉11.2 |
| 上と下 | 4.31倍、中央値26.3 |
| 人口(対数)との相関 | r = −0.694 |
人口が少ない県ほど、人口あたりの職員が多い。
3-5 1人あたりの施設数は3倍ちがう

図1 食品衛生監視員1人あたりの届出食品営業施設(47都道府県、令和6年度)。
灰色は都道府県、橙は北海道、青の縦線は全国の101。
| 食品衛生監視員1人あたりの届出食品営業施設 | |
|---|---|
| 多い | 福岡178/新潟155/茨城143 |
| 少ない | 京都62/富山58/群馬56 |
| 全国 | 101、中央値99 |
| 上と下 | 3.20倍 |
| 人口(対数)との相関 | r = +0.210 |
| 環境衛生監視員1人あたりの理容所+美容所 | |
|---|---|
| 多い | 新潟115/福岡101/山梨101 |
| 少ない | 福井37/富山36/島根29 |
| 全国 | 57、中央値55 |
| 上と下 | 3.94倍 |
3-6 北海道
| 職員 | 1,369人(専従199、14.5%) |
| 食品衛生監視員 | 378人(専従103) |
| 環境衛生監視員 | 326人(専従46) |
| と畜検査員 | 243人(全国2,689の9.0%) |
| 食鳥検査員 | 199人(全国2,805の7.1%) |
| 人口10万人あたり | 職員27.4(20位/47。全国22.0) |
| 食品衛生監視員1人あたり | 届出食品営業91施設(29位/47。全国101) |
| 環境衛生監視員1人あたり | 理容所+美容所52施設(27位/47。全国57) |
北海道の専従割合14.5%は全国の8.6%より高い。 と畜検査員243人は全国の9.0%で、人口の割合4.0%の2倍以上である。
4. 考察
4-1 「27,227人」と書いてはいけない
第13表の注1により、兼務者は兼務している職務の数だけ数えられる。したがって27,227はのべ数であって、人数ではない。
これは、この表を読むうえでもっとも大事な点である。 「日本の衛生行政には27,227人いる」と書けば誤りになる。実際の人数は、これより少ない。
どれだけ少ないかは、この表からは分からない。はっきり分かるのは専従の2,349人だけである。
I015 で理容所と美容所を重ねて開いている施設381を二重に数えていなかったのと同じで、衛生行政報告例は数え方を注に明記している。 読む側がそれを読むかどうかの問題である。
4-2 9割が兼務であること
専従2,349人に対して兼務24,878人。この仕事の9割は、他の職務と兼ねて行われている。
専従が1人もいない都道府県が11ある。中央値は4.9%で、東京都でさえ38.9%である。
兼務が悪いということではない。 小さい自治体では、1人が複数の職務を持つのはむしろ自然である。人口10万人あたりの職員は島根48.4・宮崎46.0と多く、人口(対数)との相関は −0.694 だった。人口が少ない県ほど、人口あたりの職員は手厚い。
言えるのは、この仕事が「専任の職業」としてはほとんど存在していないということである。
4-3 2,018施設という数字
食品営業2,769,361施設を専従の食品衛生監視員1,372人で割ると2,018施設/人。全員(8,558人)で割っても324施設/人である。
これは割り算であって、実際の受け持ちではない。 保健所ごとの配置も、立入検査の頻度も、この表では分からない。監視の対象は施設の種類によって頻度が違う。
それでも、この桁は覚えておく価値がある。 I014 で見たとおり、医薬品販売では立入検査率が長野県91.6%から奈良県4.1%まで22.1倍開いていた。I016 では、乳の収去が処理量3,569,411キロリットルに対して2,593点(1点あたり1,377キロリットル)だった。
「規制がある」ことと「見られている」ことは、別のことである。 規制の側の人数を数えると、その差がどれくらいかが見える。
4-4 小規模事業者にとって何を意味するか
I015 で見たとおり、理容所は1施設あたり1.80人、美容所は2.12人でやっている。X001 で見たとおり、526分類の中央値は14.77人である。
そうした小さい店が、全国で385,747軒ある。 それを見る環境衛生監視員は6,710人(専従465人)。1人あたり57軒(専従なら830軒)。
開業のときの手続きは確実に行われる。 I015 で見た使用確認は、美容所で年12,433件あった。これは新しく使ってよいか確かめる手続きで、開業・移転のたびに発生する。
一方で、開業後の立入は頻度が低くならざるを得ない。 I015 で閉鎖命令が全国0件だったこと、I014 で処分2,633件のうち取消・停止が6件(0.063%)だったことは、この人数と整合する。
ただし、人数が少ないから処分が少ないのか、問題が少ないから処分が少ないのかは、この数字では決まらない。
4-5 北海道と、と畜検査員
北海道のと畜検査員は243人で全国の9.0%、食鳥検査員は199人で7.1%。人口の割合は4.0%だから、2倍前後の厚みがある。
I016 で見たとおり、北海道は乳の処理量で全国の17.1%を占め、人口比の4.23倍だった。畜産がある場所には、それを検査する職員が置かれる。
これは4-2で見た「人口が少ない県ほど人口あたりの職員が多い」とは別の理屈である。と畜検査員の配置は人口ではなく、と畜場の所在で決まる。 乳の処理量が人口では決まらなかったのと同じ形である。
釧路管内の畜産農業は100事業所、畜産食料品製造業は27事業所だった(I016)。その周りに、検査する職員がいる。
5. 限界
- 総数27,227は人数ではなく、のべ数である。 兼務者は兼務している職務の数だけ数えられる(第13表の注1)
- 「兼務者」は他の職務と兼ねている人で、この仕事にどれだけ時間を使っているかは分からない
- 1人あたりの施設数は割り算であって、実際の受け持ちではない。 保健所ごとの配置も、立入検査の頻度も、この表では分からない
- 環境衛生監視員が見るのは理容・美容だけではない。旅館・公衆浴場・クリーニング・興行場・特定建築物なども入る
- 指定都市・中核市の職員は、その都道府県の行に含まれる(再掲の行は使っていない)
- 職員の多い少ないは、業務の量とも質とも直接には結びつかない
- 処分の少なさが人数の少なさによるものかどうかは、この数字では決まらない
- 相関は関係の強さの目安で、原因と結果の向きは示さない
6. 再現の手順
- e-Stat で衛生行政報告例 令和6年度の第13表(食品衛生、環境衛生及び食品衛生関係職員数)を落とす(CP932)
- 全国の行と、北海道から沖縄県までの47行を取る(「指定都市(再掲)」より下は使わない)
- 総数・専従者・兼務者の3区分で、6つの職名の人数を取る
- 注1を読む。 兼務者の総数は職務ごとの累計であり、人数ではない
- 第4表-1・第6表-1の食品営業施設数、第10表の理容所・美容所数で割る
- 人口10万人あたりを出し、人口(対数)との相関を取る
本稿の数値は、すべて1本のスクリプト(kensan_209)の出力である。中間の数値を手で書き写していない。
この論文の位置づけ
新しい理論を主張するものではない。衛生行政報告例の第13表を職名別・専従兼務別に数え、これまで数えてきた施設の数で割っただけである。総数27,227がのべ数であること、専従が2,349人(8.6%)で11都道府県には1人もいないこと、食品営業2,769,361施設に対して食品衛生監視員が8,558人(専従1,372人)であること、人口の少ない県ほど人口あたりの職員が多いこと(r = −0.694)を示した。1人あたりの施設数は割り算であって実際の受け持ちではない。相関は示したが、原因と結果の向きは示していない。
参考文献・データの出典
- 厚生労働省「衛生行政報告例」令和6年度、第13表・第4表-1・第6表-1(食品衛生)、第10表(生活衛生)
- 総務省・経済産業省「経済センサス-活動調査」令和3年、第9-1A表・第9-1B表
- 総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数調査」2026年1月1日現在
- 山岸勇輝「届出を要する食品営業は865,122」(I011)。Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22876599
- 山岸勇輝「薬をネットで売る店は11,910(12.8%)」(I014)。Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22877337
- 山岸勇輝「理容所107,995、美容所277,752」(I015)。Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22878037
- 山岸勇輝「乳の処理量は、上と下で20,444倍」(I016)。Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22879076
- 山岸勇輝「その商売は、1事業所あたり何人か」(X001)。Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22877856
版の記録
| 版 | 日付 | 内容 |
|---|---|---|
| 第1版 | 2026-09-22 | 初出 |
引用のしかた
山岸勇輝(2026)「見張る側は27,227人、うち専従は2,349人、食品営業2,769,361施設に対して [I018]」Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22879207
(この DOI は concept DOI。常に最新の版を指す。引用にはこれを使う)
© 2026 山岸 勇輝(Yuuki YAMAGISHI)
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書誌
山岸勇輝(2026)「見張る側は27,227人、うち専従は2,349人」[I018]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.22879207
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引用するとき
山岸勇輝 (2026). 見張る側は27,227人、うち専従は2,349人 [I018]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/I018 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22879207
Yamagishi, Y. (2026). 27,227 on the Watching Side, of Whom 2,349 Are Full-Time [I018]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/I018; DOI: 10.5281/zenodo.22879207
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