【論文846】勝てるかどうかは後ろから塗れば分かる。何手で勝てるかは、その札からは読めない

要旨

ゲームを解くとは、初手から読むことだと思われている。本稿は、終わりから塗るほうが安いことと、それでも足りない量があることを数える。新しい定理も法則も主張しない。

第一に、後ろから塗れば勝ち負けが全部決まる。位置 $0$ から $1000$ まで一度ずつ見るだけで、負け局面が $286$ 個と出る(第2節)。

第二に、その並びには規則がある。負け局面は $7$ を法として $0$ か $2$ のものとちょうど一致し、両向きの食い違いが $0$ である(第2節)。

第三に、その規則は取れる数からは読めない。取れるのは $1$・$3$・$4$ なのに、周期は $7$ である(第2節)。

第四に、これが本稿の芯である。「勝ち」の札は何手かを持たない。同じ勝ちの中に手数が $286$ 種類あり、最小 $1$ から最大 $571$ まで開く(第3節)。

第五に、前から探すと同じ局面を何度も見る。位置 $25$ で前からは $229970$ 局面、後ろからは $26$ 局面で、比は $\mathbf{8845.000000}$ である(第4節)。

第六に、分離子は、勝てるかを問うか、何手で勝てるかを問うかである。後者は塗るときに一緒に持たなければ、あとから札を見ても出てこない(第5節)。

キーワード:後退解析、減算ゲーム、負け局面、周期、手数、全数え上げ。

射程(何を示さないか)

新しい定理も法則も主張しない。終局から遡って勝ち負けを決める方法(後退解析)、一つの山の減算ゲームで負け局面が周期的に並ぶこと、スプレイグ=グランディの理論は、いずれも既知である。実在のゲームを論じない。将棋や囲碁の強さ、実際の対局には入らない。定理を証明しない。周期が $7$ になることは数え上げで確かめるだけで、証明はしない。スプレイグ=グランディの理論は名前を挙げるにとどめる。取れる数を一般化しない。$1$・$3$・$4$ の一組だけを見る。他の集合でどうなるかは扱わない。二人が最善を尽くすと置く。読み違いや時間切れは扱わない。大きさを一般化しない。位置 $1001$ 以上は数えていない。既刊との関係:論文602 はニムの勝ち負けが繰り上がりのない足し算で決まることを示した。本稿はその席には座らず、隣に置く。あちらは山が複数あって閉じた式が在る。こちらは山が一つで式が無く、後ろから塗るほかない。論文300 は同根か別根かが判定できることを示した。勝ち負けの札と、何手かかるかは、その基準で別根である。加えたのは、位置 $1000$ まで塗って負け局面が $7$ を法として $0$ か $2$ と両向きに一致すると確かめたこと、同じ「勝ち」の中に手数が $286$ 種類あると数えたこと、前から探す局面の数と後ろから塗る局面の数の比を測ったこと、分離子を「勝てるかか、何手でか」に置いたことである。

1. 記法と問い

設定:石が $n$ 個ある。二人が交互に $1$・$3$・$4$ 個のどれかを取り、取れなくなったほうが負けとする。

$$\mathrm{win}(n)=\bigvee_{m\in\{1,3,4\},\ m\le n}\ \neg\,\mathrm{win}(n-m),\qquad
\mathrm{win}(0)=\text{偽}$$

位置 $0$ から順に埋めれば、各位置を一度見るだけで全部決まる。同時に、最善を尽くしたときに決着までにかかる手数も持たせる。

問い:塗り終わった札は、何を答えていて、何を答えていないのか。

2. 後ろから塗る

計算 2.1:位置 $0$ から $1000$ まで塗った。負け局面の最初の $20$ 個は $0$・$2$・$7$・$9$・$14$・$16$・$21$・$23$・$28$・$30$・$35$・$37$・$42$・$44$・$49$・$51$・$56$・$58$・$63$・$65$ である。

数えたもの 値
負け局面の総数 $286$ 個
$7$ を法として $0$ か $2$ のもの $286$ 個
法に合わない負け局面 $0$ 個
法に合うのに勝ち局面 $0$ 個

観察 2.2 両向きに食い違いが無い。「負けなら法に合う」と「法に合うなら負け」の両方を数えて、どちらも $0$ 件である。片側だけを数えると、片方の向きの反例を見落とす。

観察 2.3 周期 $7$ は取れる数からは読めない。取れるのは $1$・$3$・$4$ で、その和も最大値も $7$ ではない。塗ってみて初めて出てくる数である。

観察 2.4 端は自明である。位置 $0$ は取れないので負け、位置 $1$・$3$・$4$ は一手で $0$ にできるので勝ちである。塗り始めの数手は確かめられ、そこから先が数え上げになる。

3. 同じ「勝ち」でも、手数は違う

計算 3.1:塗るときに、最善を尽くして決着までにかかる手数も一緒に持たせた。

位置 札 決着までの手数
$10$ 勝ち $5$
$20$ 勝ち $11$
$50$ 勝ち $29$
$100$ 負け $58$
$500$ 勝ち $285$
$1000$ 勝ち $571$

観察 3.2 これが本稿の芯である。札は手数を持たない。勝ち局面の手数は最小 $1$ から最大 $571$ まであり、相異なる値が $286$ 種類ある。「勝ち」という一語に、これだけの中身が畳まれている。

観察 3.3 手数はあとから足せない。塗り終わった札の並びだけを見ても、どの位置が何手かは復元できない。手数は塗るときに一緒に運ぶ量で、札の関数ではないからである。

4. 前から探すと、何度も見る

計算 4.1:同じゲームを、記憶せずに前から探したときに見る局面の数を数えた。

位置 前から 後ろから 比
$10$ $168$ $11$ $15.272727$
$15$ $1869$ $16$ $116.812500$
$20$ $20736$ $21$ $987.428571$
$25$ $229970$ $26$ $8845.000000$

観察 4.2 比は位置とともに跳ね上がる。位置 $25$ で $8845$ 倍である。前から探すと同じ位置へ何通りもの道で到達し、そのたびに読み直すからである。

観察 4.3 後ろからの数は位置の数そのものである。位置 $n$ までなら $n+1$ 局面しか見ない。一度塗ったところを二度と塗らないからである。

5. 分離子

観察 5.1 分離子は、勝てるかを問うか、何手で勝てるかを問うかである。前者は札が答え、後者は札が答えない。同じ塗り方の中で、一方は出力で、もう一方は出力にしなければ消える。

観察 5.2 論文602 の隣に置く。602 はニムの勝ち負けが繰り上がりのない足し算で決まることを示した。あちらは山が複数で、閉じた式が勝ち負けを直接与える。こちらは山が一つで式が無く、塗るほかない。どちらも「勝てるか」を答えるが、答え方が違う。論文300 は同根か別根かが判定できることを示した。札と手数は、その基準で別根である。

観察 5.3 言わないこと。実在のゲームも、周期の証明も、他の取れる数も扱わない。示したのは、安く解ける解き方が、必ずしも聞きたいこと全部を答えないということである。

6. 点呼と結び

  1. 負け局面は $286$ 個(計算 2.1):位置 $1000$ まで。
  2. $7$ を法として $0$ か $2$(計算 2.1):両向きに食い違い $0$。
  3. 周期 $7$ は取れる数から読めない(観察 2.3):塗って出る。
  4. 手数は $286$ 種類(観察 3.2):本稿の芯。
  5. 最小 $1$・最大 $571$(計算 3.1):一語に畳まれている。
  6. 手数はあとから足せない(観察 3.3):札の関数でない。
  7. 位置 $25$ で前から $229970$ 局面(計算 4.1):記憶しない場合。
  8. 後ろからは $26$ 局面(計算 4.1):比 $\mathbf{8845.000000}$。
  9. 後ろからの数は位置の数(観察 4.3):二度塗らない。
  10. 勝てるかか、何手でか(観察 5.1):分離子・論文602・300。

結び:勝てるかどうかは後ろから塗れば分かる。何手で勝てるかは、その札からは読めない。石を $1$・$3$・$4$ 個ずつ取るゲームで位置 $0$ から $1000$ まで塗ると、負け局面は $286$ 個で、$7$ を法として $0$ か $2$ のものと両向きに食い違い $0$ で一致する。取れる数が $1$・$3$・$4$ なのに周期が $7$ になるのは、塗ってみて初めて出てくる数である。ところが同じ「勝ち」の札の中には手数が $286$ 種類あり、最小 $1$ から最大 $571$ まで開いていて、札の並びだけからは復元できない。手数は塗るときに一緒に運ぶ量で、札の関数ではないからである。そして塗るやり方は安い。位置 $25$ で前から探せば $229970$ 局面を見るのに、後ろからなら $26$ 局面、比は $8845.000000$ である。既刊との位置:論文602 の「閉じた式が勝ち負けを直接与える」の隣に、式が無くて塗るほかない側として置き、論文300 の規律で札と手数を別根として扱った。正直に言えば、取れる数は $1$・$3$・$4$ の一組だけで、周期が $7$ になることの証明はしていない。

参考文献

  1. Berlekamp, E. R., Conway, J. H., & Guy, R. K. (2001). Winning Ways for Your Mathematical Plays. A K Peters.
  2. 山岸勇輝 (2026). 『三百本目の点呼、同根か別根かは、判定できる』[論文300]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/300 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22171914
  3. 山岸勇輝 (2026). 『ニムの勝ち負けは、繰り上がりのない足し算で決まる』[論文602]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/602 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22805951

作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。

書誌

山岸勇輝(2026)「勝てるかどうかは後ろから塗れば分かる。何手で勝てるかは、その札からは読めない」[論文846]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/846

YOI 846第1版・2026年9月ビットコインに記録済み

日付の証拠(OpenTimestamps):日本語版の .ots・英語版の .ots・SHA256SUMS

予備の置き場所(ミラー。中身は上と同じです):PDF 日本語・PDF English・SHA256SUMS

住所:https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/846・CC BY 4.0・プレプリント(査読を経ていません)・ORCID 0009-0006-8587-3450

引用するとき

山岸勇輝 (2026). 勝てるかどうかは後ろから塗れば分かる。何手で勝てるかは、その札からは読めない [論文846]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/846

Yamagishi, Y. (2026). Whether You Can Win Is Settled by Painting Backwards; How Many Moves It Takes Is Not in That Label [Paper 846]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/846

@misc{yamagishi2026yoi846,
  author = {Yamagishi, Yuuki},
  title = {Whether You Can Win Is Settled by Painting Backwards; How Many Moves It Takes Is Not in That Label},
  year = {2026},
  howpublished = {YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/846},
  note = {Preprint, edition 1}
}
指紋(SHA-256)と確かめ方
452e8bbbb1d0962599976fed9a226af0da19d77a91ba25715f24eab11979a2cb yamagishi_yoi846_v1_jp.pdf
d18a1a3751824a5c0c93854d842e88ad7bebde7be5c89bd3bf078d7e6130475d yamagishi_yoi846_v1_en.pdf

PDF と .ots を同じ場所に保存し、opentimestamps.org に .ots、続けて PDF を落とすと、記録された日時が表示されます。PDF が 1 バイトでも変わっていれば通りません。