【論文855】壁の量が同じでも、偏って置くと床がねじれ、柔らかい側が大きく動く

要旨

建物の横からの力に対しては「壁を増やせばよい」と言われる。本稿は、量が同じでも置き方で答が変わることを数える。新しい定理も法則も主張しない。

第一に、力が掛かる点と、壁が抵抗する点は別である。力は重心 $x=5$ に掛かり、壁は剛性で重みをつけた剛心のまわりで抵抗する(第2節)。

第二に、釣り合って置けば床はねじれない。左右 $2.0$・$2.0$ では剛心が重心と重なり、変位は両側とも $0.25$ である(第2節)。

第三に、これが本稿の芯である。量が同じでも、偏らせると柔らかい側が大きく動く。$3.5$・$0.5$ では柔らかい側の変位が $\mathbf{1.913043}$ 倍、$3.9$・$0.1$ では $\mathbf{2.687927}$ 倍になる(第3節)。

第四に、柔らかい側の壁は、力が小さいのに変位が大きい。$3.5$・$0.5$ で柔らかい側の壁の力は $0.239130$、変位は $0.478261$ である(第3節)。

第五に、力と直角の向きの壁まで働く。横からの力しか掛けていないのに、直角の向きの壁に $\mathbf{0.260870}$ の力がかかる(第3節)。

第六に、分離子は、量を問うか、配置を問うかである。剛性の和はどの配置でも $4.0$ で、変わったのは置き場所だけである(第4節)。

キーワード:耐力壁、剛心、偏心、ねじれ、配置、模型。

射程(何を示さないか)

新しい定理も法則も主張しない。剛な床を持つ建物で水平力が重心に作用し、抵抗の中心が剛心であること、重心と剛心のずれ(偏心)がねじれを生むこと、ねじれで剛心から遠い側の変位が大きくなること、直交する壁もねじれに抵抗することは、いずれも既知である。設計の助言をしない。壁をどこに置くべきか、基準の壁の量や偏心率の上限は述べない。実在の建物を主張しない。平面 $10$ m 四方、壁の剛性 $2.0$・$3.5$・$0.5$ などは模型の値である。床は剛と置く。床のたわみは入れない。静的な一方向の力だけを見る。地震の揺れの応答、壁の壊れ方、力の向きの入れ替わりは入れない。既刊との関係:論文840 は木の「真ん中」が一つではなく、半分以上の木で中心と重心が別の点になることを示した。本稿はその隣に置く。ここでも「真ん中」が二つあり、力の真ん中(重心)と抵抗の真ん中(剛心)がずれると床がねじれる。論文300 は同根か別根かが判定できることを示した。壁の量と配置は、その基準で別根である。加えたのは、剛性の和を揃えたまま三つの配置で壁ごとの力と変位を並べたこと、力の和とモーメントの釣り合いを配置ごとに確かめたこと、柔らかい側で力が小さく変位が大きいことを測ったこと、分離子を「量か、配置か」に置いたことである。

1. 記法と問い

設定:$10$ m 四方の剛な床を、$x=0$ と $x=10$ の $y$ 向きの壁、$y=0$ と $y=10$ の $x$ 向きの壁(剛性 $2.0$ ずつ)で支える。重心 $x=5$ に $y$ 向きの力 $1$ を掛ける。

$$x_{r}=\frac{\sum_i k_i x_i}{\sum_i k_i},\qquad
e=x_{m}-x_{r},\qquad
\theta=\frac{F\,e}{J},\qquad
u_i=\frac{F}{\sum_i k_i}+\theta\,(x_i-x_{r})$$

$x_{r}$ は剛心、$e$ は偏心、$J$ はねじれの剛性、$u_i$ は $y$ 向きの壁 $i$ の変位である。$y$ 向きの壁の剛性の和はどの配置でも $4.0$ に揃える。

問い:壁の量が同じなら、置き方は答に関係ないのか。

2. 釣り合った配置

計算 2.1:左右 $2.0$・$2.0$ で、壁ごとの力と変位を出した。

壁 力 変位
$x=0$(剛性 $2.0$) $0.500000$ $0.250000$
$x=10$(剛性 $2.0$) $0.500000$ $0.250000$
直角の壁 $y=0$ $0.000000$ 、

観察 2.2 剛心が重心と重なり、床はねじれない。偏心は $0$ で、両側が同じだけ動く。直角の向きの壁には何の力もかからない。

3. 偏った配置

計算 3.1:剛性の和を $4.0$ のまま、左右を偏らせた。

配置(左・右) 剛心 偏心 柔らかい側の変位 釣り合いとの比
$2.0$・$2.0$ $5.0000$ $0.0000$ $0.250000$ $1.000000$
$3.5$・$0.5$ $1.2500$ $3.7500$ $0.478261$ $1.913043$
$3.9$・$0.1$ $0.2500$ $4.7500$ $0.671982$ $2.687927$

観察 3.2 これが本稿の芯である。量が同じでも、柔らかい側が大きく動く。$3.5$・$0.5$ で $1.913043$ 倍、$3.9$・$0.1$ で $2.687927$ 倍である。剛心が硬い側へ寄り、重心に掛かる力がそのまわりに床を回すからである。

計算 3.3:$3.5$・$0.5$ の配置で、壁ごとの力と変位を出した。

壁 力 変位
$x=0$(剛性 $3.5$) $0.760870$ $0.217391$
$x=10$(剛性 $0.5$) $0.239130$ $0.478261$
直角の壁 $y=0$ $0.260870$ 、
直角の壁 $y=10$ $-0.260870$ 、

観察 3.4 柔らかい側の壁は、力が小さいのに変位が大きい。力は釣り合いの $0.5$ より小さい $0.239130$ なのに、変位は $0.25$ より大きい $0.478261$ である。力だけを見ていると、どこが大きく動くかを見落とす。

観察 3.5 力と直角の向きの壁まで働く。$y$ 向きの力しか掛けていないのに、$x$ 向きの壁に $0.260870$ と $-0.260870$ の力がかかる。床のねじれを止めるのに、直角の壁が組で使われているからである。

観察 3.6 どの配置でも釣り合いは閉じている。力の和は掛けた力 $1$ と差 $0$ で一致し、重心まわりのモーメントの残りも $10^{-15}$ 未満である。だから倍率の違いは計算の誤りではなく、配置の違いから来ている。

4. 分離子

観察 4.1 分離子は、量を問うか、配置を問うかである。剛性の和は三つの配置で同じ $4.0$ なのに、柔らかい側の変位は $1.000000$ 倍から $2.687927$ 倍まで動く。量は合計で決まり、ねじれは置き場所で決まる。

観察 4.2 論文840 の隣に置く。840 は木の「真ん中」が一つではなく、中心と重心が別の点になることを示した。ここでも「真ん中」は二つあり、力の真ん中である重心と、抵抗の真ん中である剛心がずれると床がねじれる。木では二つの真ん中が隣どうしにとどまったが、ここではずれの大きさがそのまま変位の倍率になる。論文300 は同根か別根かが判定できることを示した。量と配置は、その基準で別根である。

観察 4.3 言わないこと。壁をどこに置くべきかも、基準の壁量も、地震の揺れの応答も、壁の壊れ方も扱わない。示したのは、量を揃えても配置で変位が変わるということである。

5. 点呼と結び

  1. 力は重心、抵抗は剛心(第1節):二つの真ん中。
  2. 釣り合いなら変位は両側 $0.25$(計算 2.1):ねじれない。
  3. $3.5$・$0.5$ で偏心 $3.75$(計算 3.1):剛心が寄る。
  4. 柔らかい側 $\mathbf{1.913043}$ 倍(計算 3.1):本稿の芯。
  5. $3.9$・$0.1$ で $\mathbf{2.687927}$ 倍(計算 3.1):もっと偏ると。
  6. 柔らかい側の力は $0.239130$(計算 3.3):小さい。
  7. その変位は $0.478261$(計算 3.3):大きい。
  8. 直角の壁に $\mathbf{0.260870}$(計算 3.3):ねじれを止める組。
  9. 釣り合いは配置ごとに閉じる(観察 3.6):計算の誤りではない。
  10. 量か、配置か(観察 4.1):分離子・論文840・300。

結び:壁の量が同じでも、偏って置くと床がねじれ、柔らかい側が大きく動く。剛性の和を $4.0$ に揃えたまま左右を $2.0$・$2.0$ から $3.5$・$0.5$ に偏らせると、剛心が $1.25$ にずれて偏心が $3.75$ になり、柔らかい側の変位は釣り合いの $1.913043$ 倍、$3.9$・$0.1$ では $2.687927$ 倍になる。力は重心に掛かり、壁は硬い側へ寄った剛心のまわりで抵抗するので、床が回るからである。そのとき柔らかい側の壁は力が $0.239130$ と小さいのに変位が $0.478261$ と大きく、横からの力しか掛けていないのに直角の向きの壁に $0.260870$ の力がかかる。力だけを見ていると、どこが大きく動くかを見落とす。力の和とモーメントの釣り合いはどの配置でも閉じており、倍率の違いは配置から来ている。既刊との位置:論文840 の「真ん中が二つある」の隣に、重心と剛心のずれが変位の倍率になる側として置き、論文300 の規律で量と配置を別根として扱った。正直に言えば、床を剛と置き、静的な一方向の力だけを見ており、地震の揺れの応答や壁の壊れ方は入れていない。

参考文献

  1. Chopra, A. K. (2017). Dynamics of Structures: Theory and Applications to Earthquake Engineering. Pearson.
  2. 山岸勇輝 (2026). 『三百本目の点呼、同根か別根かは、判定できる』[論文300]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/300 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22171914
  3. 山岸勇輝 (2026). 『木の「真ん中」は一つではない。半分以上の木で、中心と重心は別の点になる』[論文840]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/840 ・ DOI: 10.5281/zenodo.23015628

作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。

書誌

山岸勇輝(2026)「壁の量が同じでも、偏って置くと床がねじれ、柔らかい側が大きく動く」[論文855]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/855

YOI 855第1版・2026年9月ビットコインに記録済み

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住所:https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/855・CC BY 4.0・プレプリント(査読を経ていません)・ORCID 0009-0006-8587-3450

引用するとき

山岸勇輝 (2026). 壁の量が同じでも、偏って置くと床がねじれ、柔らかい側が大きく動く [論文855]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/855

Yamagishi, Y. (2026). With the Same Amount of Wall, an Uneven Layout Twists the Floor and Moves the Soft Side Far More [Paper 855]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/855

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