【論文882】跳ね返りは反発係数と相対速度の積で、皿を玉の半分の速さで下げるのは反発係数を半分にするのと同じ

要旨

けん玉で玉を皿に静かに乗せるには、柔らかい皿が要る、と思いやすい。本稿は、跳ね返りが反発係数と相対速度の積で決まることを、皿を動かしながら受ける場合で数える。新しい定理も法則も主張しない。

第一に、止めた皿では、跳ね返りは反発係数と当たる速さの積である。高さ $0.3$ m から $2.426108$ m/s で当たる玉を反発係数 $0.526621$ で受けると、跳ね返りは $1.277638$ m/s である(第2節)。

第二に、これが本稿の芯である。皿を玉の半分の速さで下げるのは、反発係数を半分にするのと同じである。皿から見た跳ね返りは $\mathbf{0.638819}$ m/s で、皿を止めたまま反発係数を $\mathbf{0.263310}$ にしたときと同じになる(第2節)。

第三に、玉と同じ速さで下げれば、跳ね返りは $0$ である。相対速度が $0$ なので当たらず、皿の材料に依らない(第2節)。

第四に、接触を刻んでも、式と同じ前提なら皿の速さに依らない。ばねとダンパーの接触を刻むと、重力なし・引っ張りありでは、皿を下げる四つの速さすべてで比が $\mathbf{0.526626}$ だった(第3節)。

第五に、前提を外すと、反発係数そのものが動く。引っ張る力を切るだけなら比は皿の速さに依らず一律 $\mathbf{0.571747}$、重力を入れるだけなら相対速度が小さいほど $0.523486$ から $0.513842$ へ下がる(第3節)。

第六に、分離子は、皿の材料を替えるか、皿の動かし方を替えるかである。材料は反発係数を、動かし方は相対速度を変え、跳ね返りには積として同じだけ効く(第4節)。

キーワード:反発係数、相対速度、けん玉、ばねとダンパー、跳ね返り。

射程(何を示さないか)

新しい定理も法則も主張しない。反発係数が相対速度についての比であること、ばねとダンパーの接触の反発係数が $\exp(-\zeta\pi/\sqrt{1-\zeta^2})$ で書けること、接触の前提で反発係数が動くことは、いずれも既知である。実在の値を主張しない。落とす高さ、ばねの硬さ、減衰比は模型の値で、どのけん玉にも対応しない。玉の回転と糸を入れない。玉の回転、糸の張り、皿の形は入れない。皿は一定の速さで動くとした。こつを勧めない。どう受けるべきかは述べない。既刊との関係:論文355 は、反発係数が材料の定数ではなく、経験則が自分の破れる速度を自分で指すことを示した。本稿はその隣に置く。あちらは反発係数が衝突の速さで動くことを数えた。ここでは相対速度を皿の動かし方で変えられること、そして刻んだ接触では重力が入ると反発係数が相対速度で動くことを数える。加えたのは、皿を下げる速さごとに跳ね返りを並べたこと、皿を半分の速さで下げるのと反発係数を半分にするのが同じだと数えたこと、刻んだ接触を式と同じ前提で合わせ、前提を片方ずつ外してずれを分けたこと、分離子を「材料か、動かし方か」に置いたことである。

1. 記法と問い

設定:下向きに速さ $v$ で落ちてくる玉を、下向きに一定の速さ $u$ で動く皿で受ける。反発係数 $e$ は、皿から見た離れる速さと当たる速さの比とする。

$$v_{\text{離}}-u=e\,(v-u),\qquad
e=\exp\Bigl(-\frac{\zeta\pi}{\sqrt{1-\zeta^{2}}}\Bigr)$$

後者はばねとダンパーの接触(減衰比 $\zeta$)の反発係数で、$\zeta=0.2$ で $0.526621$ である。玉は高さ $0.3$ m から落とし、当たる速さは $2.426108$ m/s とした。接触は、ばねの硬さ $5\times10^{4}$ N/m、玉の質量 $0.08$ kg で $10^{-7}$ 秒刻みで追った。

問い:跳ね返りを小さくするには、皿を柔らかくするしかないのか。

2. 皿を下げる速さと跳ね返り

計算 2.1:皿を下げる速さを当たる速さの $0$・$0.25$・$0.5$・$0.75$・$1$ 倍にして、跳ね返りを出した。

皿を下げる速さの割合 皿の速さ(m/s) 皿から見た跳ね返り(m/s) 地面から見た上向きの速さ(m/s)
$0$ $0.000000$ $1.277638$ $1.277638$
$0.25$ $0.606527$ $0.958229$ $0.351702$
$0.5$ $1.213054$ $0.638819$ $-0.574235$
$0.75$ $1.819581$ $0.319410$ $-1.500171$
$1$ $2.426108$ $0.000000$ $-2.426108$

観察 2.2 これが本稿の芯である。皿を玉の半分の速さで下げるのは、反発係数を半分にするのと同じである。皿を半分の速さで下げると、皿から見た跳ね返りは $0.638819$ m/s である。皿を止めたままこれを得るには反発係数を $0.263310$ にする必要があり、元の $0.526621$ のちょうど半分である。跳ね返りは反発係数と相対速度の積なので、どちらを半分にしても同じになる。

観察 2.3 玉と同じ速さで下げれば、跳ね返りは $0$ である。皿の速さが当たる速さと等しければ相対速度が $0$ で、皿の材料に依らず跳ね返らない。地面から見ると、皿を半分以上の速さで下げたとき、玉は受けたあとも下向きに動いている。

3. 接触を刻む

計算 3.1:ばねとダンパーの接触を刻み、皿から見た比を、重力と引っ張る力の有無を変えて出した。

前提 割合 $0$ $0.25$ $0.5$ $0.75$
重力なし・引っ張りあり $0.526626$ $0.526626$ $0.526626$ $0.526626$
重力なし・引っ張りなし $0.571747$ $0.571747$ $0.571747$ $0.571747$
重力あり・引っ張りあり $0.523486$ $0.522430$ $0.520312$ $0.513842$
重力あり・引っ張りなし $0.568512$ $0.567425$ $0.565238$ $0.558572$

観察 3.2 式と同じ前提なら、刻んだ比は皿の速さに依らない。重力なし・引っ張りありでは、四つの速さすべてで $0.526626$ で、式 $0.526621$ と合った。一定の速さで動く皿から見ると、接触は止めた皿と同じに見えるからである。

観察 3.3 前提を外すと、反発係数そのものが動く。引っ張る力を切るだけなら、比は皿の速さに依らず一律に $0.571747$ へ上がる。重力を入れるだけなら、皿の速さを上げて相対速度が小さくなるほど $0.523486$ から $0.513842$ へ下がる。一回目は重力あり・引っ張りなしだけで式と比べて合わず、前提を片方ずつ外して、上がる分と速さで動く分を分けた。

4. 分離子

観察 4.1 分離子は、皿の材料を替えるか、皿の動かし方を替えるかである。材料を替えると反発係数が変わり、動かし方を替えると相対速度が変わる。跳ね返りは二つの積なので、同じだけ効く。柔らかい皿でなくても、皿を玉に合わせて下げれば跳ね返りは小さくなる。

観察 4.2 論文355 の隣に置く。355 は、反発係数が材料の定数ではなく、衝突の速さで動くことを示した。ここでも刻んだ接触で、重力が入ると反発係数が相対速度で動くことを測った。そのうえで、相対速度そのものは皿の動かし方で変えられることを数えた。

観察 4.3 言わないこと。実在のけん玉の材料値も、玉の回転や糸の張りも、受け方のこつも扱わない。示したのは、跳ね返りが反発係数と相対速度の積で、皿を半分の速さで下げるのが反発係数を半分にするのと同じだということである。

5. 点呼と結び

  1. 跳ね返り $=e(v-u)$(第1節):皿から見て。
  2. 止めた皿で $1.277638$ m/s(計算 2.1):$e=0.526621$。
  3. 半分の速さで下げて $\mathbf{0.638819}$ m/s(計算 2.1):本稿の芯。
  4. 同じ跳ね返りの反発係数 $\mathbf{0.263310}$(観察 2.2):ちょうど半分。
  5. 同じ速さで下げて $0$(観察 2.3):材料に依らない。
  6. 式と同じ前提で $\mathbf{0.526626}$(計算 3.1):皿の速さに依らない。
  7. 引っ張りを切ると $\mathbf{0.571747}$(観察 3.3):一律に上がる。
  8. 重力を入れると $0.523486$ から $0.513842$(観察 3.3):相対速度で動く。
  9. 前提を片方ずつ外して分けた(観察 3.3):原因を推測で書かない。
  10. 材料か、動かし方か(観察 4.1):分離子・論文355。

結び:跳ね返りは反発係数と相対速度の積で決まり、皿を玉の半分の速さで下げるのは反発係数を半分にするのと同じである。高さ $0.3$ m から落ちた玉を反発係数 $0.526621$ の皿で受けると、止めた皿では $1.277638$ m/s、半分の速さで下げた皿では $0.638819$ m/s 跳ね返り、後者は反発係数を $0.263310$ にしたのと同じである。跳ね返りは二つの積なので、材料で反発係数を半分にしても、動かし方で相対速度を半分にしても同じだけ効くからである。ばねとダンパーで接触を刻むと、式と同じ前提では比が皿の速さに依らず $0.526626$ だが、引っ張る力を切ると一律 $0.571747$、重力を入れると相対速度が小さいほど下がる。反発係数は、接触の前提によっては相対速度で動く。既刊との位置:論文355 の「反発係数は材料の定数ではない」の隣に、相対速度を動かし方で変えることを置いた。正直に言えば、ばねの硬さと減衰は模型の値で、玉の回転や糸は入れていない。

参考文献

  1. Goldsmith, W. (1960). Impact: The Theory and Physical Behaviour of Colliding Solids. Edward Arnold.
  2. 山岸勇輝 (2026). 『反発係数は材料の定数ではない。そして経験則は、自分が破れる速度を自分で指す』[論文355]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/355 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22697011

作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。

書誌

山岸勇輝(2026)「跳ね返りは反発係数と相対速度の積で、皿を玉の半分の速さで下げるのは反発係数を半分にするのと同じ」[論文882]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/882

YOI 882第1版・2026年9月ビットコインに記録済み

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引用するとき

山岸勇輝 (2026). 跳ね返りは反発係数と相対速度の積で、皿を玉の半分の速さで下げるのは反発係数を半分にするのと同じ [論文882]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/882

Yamagishi, Y. (2026). Rebound Is Restitution Times Relative Speed, So Lowering the Cup at Half the Ball’s Speed Equals Halving Restitution [Paper 882]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/882

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  author = {Yamagishi, Yuuki},
  title = {Rebound Is Restitution Times Relative Speed, So Lowering the Cup at Half the Ball's Speed Equals Halving Restitution},
  year = {2026},
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