【論文891】伐らずに測る材積の誤差は三つの仮定の誤差が重なり、いちばん効くのは測りにくい形の係数である

要旨

立木の材積を正確にするには、直径をよく測ればよい、と思いやすい。本稿は、伐らずに測る材積の誤差が三つの仮定の誤差からどう重なるかを、式と乱数で数える。新しい定理も法則も主張しない。

第一に、三つの誤差は、二乗の和の平方根で重なる。直径 $0.02$・樹高 $0.05$・形の係数 $0.08$ で、材積の相対誤差は $\mathbf{0.102470}$ である(第2節)。

第二に、式は乱数で作った木と合う。三つの量に誤差を乗せた木を $40$ 万本作ると、材積の相対誤差は $0.102684$ で、式と $0.002$ 以内で一致した(第2節)。

第三に、これが本稿の芯である。いちばん効くのは形の係数である。分散の取り分は直径 $0.152381$・樹高 $0.238095$・形の係数 $\mathbf{0.609524}$ である(第3節)。

第四に、直径は二乗で効くが、取り分は形の係数に及ばない。直径の誤差 $0.02$ は材積では $0.04$ に効くが、形の係数の $0.08$ の半分である(第3節)。

第五に、誤差を半分にする効き目は、形の係数がいちばん大きい。誤差を半分にすると材積の誤差は、直径で $0.941124$ 倍、樹高で $0.906327$ 倍、形の係数で $\mathbf{0.736788}$ 倍になる(第3節)。

第六に、分離子は、測れる量の精度を上げるか、仮定の精度を上げるかである。直径と樹高は測れるが、形の係数は伐らないと確かめられない仮定で、そこに誤差の六割がある(第4節)。

キーワード:材積、胸高直径、形の係数、誤差の伝わり方、分散の取り分。

射程(何を示さないか)

新しい定理も法則も主張しない。立木の材積を形の係数・胸高断面積・樹高の積で見積もること、独立な相対誤差が二乗の和の平方根で重なること、二乗で効く量の誤差が二倍になることは、いずれも既知である。実在の値を主張しない。三つの誤差、直径 $0.30$ m、樹高 $20$ m、形の係数 $0.45$ は模型の値で、どの樹種にもどの測定器にも対応しない。相関を入れない。三つの誤差は互いに独立とした。林全体に入らない。一本の木の材積だけを扱い、林全体の標本の取り方は扱わない。既刊との関係:論文581 は、森が炭素を吸う速さの頂点と、ためる量の頂点が別の林齢にあることを示した。本稿はその隣に置く。あちらは森にためる量を林齢で数えた。ここではその量のもとになる一本の材積を、伐らずに測るときの誤差を数える。加えたのは、三つの誤差の重なりを式と乱数の二通りで出したこと、分散の取り分を並べて形の係数が $0.609524$ を占めると測ったこと、それぞれの誤差を半分にした効き目を比べたこと、分離子を「測れる量か、仮定か」に置いたことである。

1. 記法と問い

設定:立木の材積 $V$ を、形の係数 $f$、胸の高さの直径 $D$、樹高 $h$ から見積もる。それぞれに独立な相対誤差 $\varepsilon_f$・$\varepsilon_D$・$\varepsilon_h$ があるとする。

$$V=f\times\frac{\pi D^{2}}{4}\times h,\qquad
\frac{\sigma_V}{V}\approx\sqrt{(2\varepsilon_D)^{2}+\varepsilon_h^{2}+\varepsilon_f^{2}}$$

$\varepsilon_D=0.02$、$\varepsilon_h=0.05$、$\varepsilon_f=0.08$ とし、真の値を $D=0.30$ m、$h=20$ m、$f=0.45$(材積 $0.636173$ m$^3$)とした。相対誤差は、式と、三つの量に正規分布の誤差を乗せた木を乱数で $40$ 万本作った標準偏差の二通りで出した。

問い:伐らずに測る材積の誤差は、どこから来るのか。

2. 三つの誤差の重なり

計算 2.1:三つの相対誤差から、材積の相対誤差を出した。

観察 2.2 三つの誤差は、二乗の和の平方根で重なる。式では材積の相対誤差は $0.102470$ で、乱数で $40$ 万本作ると $0.102684$ だった。差は $0.002$ 以内である。材積の誤差は、三つのどの誤差よりも大きい。

3. 取り分と、半分にする効き目

計算 3.1:分散の取り分と、それぞれの誤差を半分にしたときの材積の相対誤差を出した。

量 材積に効く誤差 分散の取り分 半分にしたときの倍率
胸高直径 $2\times0.02$ $0.152381$ $0.941124$
樹高 $0.05$ $0.238095$ $0.906327$
形の係数 $0.08$ $0.609524$ $0.736788$

観察 3.2 これが本稿の芯である。いちばん効くのは形の係数である。分散の取り分は形の係数が $0.609524$ で、六割を占める。直径は二乗で効くので $0.02$ の誤差が材積では $0.04$ になるが、それでも形の係数の $0.08$ の半分で、取り分は $0.152381$ にとどまる。

観察 3.3 誤差を半分にする効き目は、形の係数がいちばん大きい。形の係数の誤差を半分にすると材積の誤差は $0.075498$、元の $0.736788$ 倍になる。直径の誤差を半分にしても $0.941124$ 倍、樹高でも $0.906327$ 倍にしかならない。

4. 分離子

観察 4.1 分離子は、測れる量の精度を上げるか、仮定の精度を上げるかである。直径と樹高は、伐らずに測れる量である。形の係数は、木の幹が円柱からどれだけ細っているかの仮定で、伐らないと確かめられない。誤差の六割は、その測りにくい仮定にある。

観察 4.2 論文581 の隣に置く。581 は、森が炭素を吸う速さの頂点と、ためる量の頂点が別の林齢にあることを示した。あちらは森にためる量を林齢で数えた。ここではその量のもとになる一本の材積を、伐らずに見積もるときの誤差の出どころを数えた。

観察 4.3 言わないこと。実在の樹種や測定器の誤差も、誤差どうしの相関も、林全体の見積もりも扱わない。示したのは、材積の誤差の六割が形の係数から来るということである。

5. 点呼と結び

  1. $V=f\times\pi D^2/4\times h$(第1節):三つの仮定の積。
  2. 相対誤差 $\mathbf{0.102470}$(観察 2.2):式。
  3. 乱数で $0.102684$(観察 2.2):$40$ 万本。
  4. 直径の取り分 $0.152381$(計算 3.1):二乗で効いても小さい。
  5. 樹高の取り分 $0.238095$(計算 3.1):中くらい。
  6. 形の係数の取り分 $\mathbf{0.609524}$(計算 3.1):本稿の芯。
  7. 形の係数を半分で $\mathbf{0.736788}$ 倍(観察 3.3):いちばん効く。
  8. 直径を半分で $0.941124$ 倍(計算 3.1):あまり効かない。
  9. 樹高を半分で $0.906327$ 倍(計算 3.1):少し効く。
  10. 測れる量か、仮定か(観察 4.1):分離子・論文581。

結び:伐らずに測る材積の誤差は三つの仮定の誤差が重なり、いちばん効くのは測りにくい形の係数である。直径・樹高・形の係数の相対誤差 $0.02$・$0.05$・$0.08$ から、材積の相対誤差は $0.102470$(乱数で $0.102684$)になり、分散の取り分は形の係数が $0.609524$ を占める。直径は二乗で効いても $0.04$ で、形の係数の $0.08$ の半分だからである。誤差を半分にする効き目は、形の係数で $0.736788$ 倍、樹高で $0.906327$ 倍、直径で $0.941124$ 倍である。誤差の六割は、測れる量ではなく、伐らないと確かめられない仮定にある。既刊との位置:論文581 が数えた森にためる量の隣に、そのもとになる一本の材積を伐らずに見積もる誤差の出どころを置いた。正直に言えば、三つの誤差は模型の値で、独立とし、林全体の見積もりには入っていない。

参考文献

  1. Husch, B., Beers, T. W., & Kershaw, J. A. (2003). Forest Mensuration (4th ed.). Wiley.
  2. Taylor, J. R. (1997). An Introduction to Error Analysis (2nd ed.). University Science Books.
  3. 山岸勇輝 (2026). 『森が炭素を吸う速さの頂点と、ためる量の頂点は、別の林齢にある』[論文581]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/581 ・ DOI: 10.5281/zenodo.23014343

作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。

書誌

山岸勇輝(2026)「伐らずに測る材積の誤差は三つの仮定の誤差が重なり、いちばん効くのは測りにくい形の係数である」[論文891]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/891

YOI 891第1版・2026年9月ビットコインに記録済み

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引用するとき

山岸勇輝 (2026). 伐らずに測る材積の誤差は三つの仮定の誤差が重なり、いちばん効くのは測りにくい形の係数である [論文891]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/891

Yamagishi, Y. (2026). The Error in a Standing Tree’s Volume Stacks Three Assumptions, and the Hardest to Measure, the Form Factor, Counts Most [Paper 891]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/891

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