要旨
出口を広げれば、避難は速くなる、と思いやすい。本稿は、ばらばらにいる人が歩いて出口に集まり、出口が決まった割合でしか人を通さない模型で、人数ごとに出口の幅の効き目を数える。新しい定理も法則も主張しない。
第一に、人数が少ないと、出口を広げてもほとんど効かない。出口の幅を $1$ m から $2$ m にした効き目は、$10$ 人で $\mathbf{0.986489}$ 倍、$30$ 人で $0.978555$ 倍である(第2節)。
第二に、人数が多いと、幅を倍にすれば時間はほぼ半分になる。$300$ 人で $0.500297$ 倍、$1000$ 人で $\mathbf{0.500029}$ 倍である(第2節)。
第三に、これが本稿の芯である。時間を決めるものは、人数で歩く距離から出口の幅へ移る。歩くだけの時間 $38.461538$ 秒と、出口だけの時間(人数を毎秒 $1.3$ 人で割る)が等しくなるのは $\mathbf{50}$ 人で、$60$ 人では効き目が $\mathbf{0.810663}$ 倍、$100$ 人で $0.528211$ 倍と、そこを境に効き始める(第2節)。
第四に、境の近くでは、どちらの見積もりも足りない。避難の時間を二つの大きいほうで割った比は、$10$ 人で $0.920068$、$60$ 人で $\mathbf{1.030965}$、$1000$ 人で $1.000058$ で、境に近い $60$ 人でいちばん大きい(第3節)。
第五に、出口を広げて遅くなることは無い。同じ人の並びで幅だけを替えた $240$ 回のうち、広げて遅くなった回は $0$ である(第2節)。
第六に、分離子は、最後の一人が出口に着く時刻を問うか、出口の前の行列が掃ける時刻を問うかである。前を問えば歩く距離が、後を問えば出口の幅が時間を決め、人数がどちらを問うべきかを決める(第4節)。
キーワード:避難の時間、出口の幅、歩く距離、出口の前の行列、境の人数。
射程(何を示さないか)
新しい定理も法則も主張しない。避難の時間を歩く時間と出口を通る時間に分けて見積もること、出口が通せる人数に上限があること、人数が多いと出口の幅が時間を決めることは、いずれも避難の計算で既知である。実在の建物を主張しない。歩く速さ $1.3$ m/s、出口の幅 $1$ m あたり毎秒 $1.3$ 人、出口から $50$ m 以内に一様にいることは模型の値で、どの建物や基準にも対応しない。二つの $1.3$ は単位の違う別の値である。煙と人の動きを入れない。煙による見えにくさ、人の押し合い、出口の選び方、歩き出すまでの時間は入れない。既刊との関係:論文728 は、煙のほとんどは燃えたものではなく上昇流が引き込んだ空気であり、煙の量を決めているのは天井の高さであることを示し、射程注記で避難を論じないとした。本稿はその席に座る(先客はいない)。ただし煙と見えにくさは入れず、歩く距離と出口の幅だけで時間を数える。論文549 は、滞在時間が $5.8$ 倍変わっても掛け算の関係は動かないことを示した。本稿はその隣に置く。あちらは行列の中にいる人数と時間の関係を見た。ここでは出口の前の行列が、人数が多いときだけ避難の時間を決める。加えたのは、六つの人数で出口の幅の効き目を測ったこと、境の人数 $50$ を歩く時間と出口の時間から出したこと、境の近くで避難の時間が二つの見積もりの大きいほうを上回ることを測ったこと、分離子を「着く時刻か、行列が掃ける時刻か」に置いたことである。
1. 記法と問い
設定:$N$ 人が出口から $0$〜$50$ m の距離に一様にばらばらにいて、速さ $1.3$ m/s で出口へ歩く。出口は幅 $w$ m あたり毎秒 $1.3$ 人を通し、一人を通すのに $1/(1.3w)$ 秒かかる。人は着いた順に並び、前の人が通り終えてから通る。最後の一人が通り終えた時刻を避難の時間とする。
$$t_{\mathrm{walk}}=\frac{50}{1.3},\qquad
t_{\mathrm{exit}}=\frac{N}{1.3\,w},\qquad
N^{*}=1.3\,w\times\frac{50}{1.3}$$
人数ごとに $40$ 通りの並びを作り、同じ並びで幅 $1$ m と $2$ m の時間を出して平均した。$N^{*}$ は、幅 $1$ m で歩くだけの時間と出口だけの時間が等しくなる人数である。
問い:出口を広げれば、避難はいつでも速くなるのか。
2. 人数と出口の幅の効き目
計算 2.1:六つの人数で、幅 $1$ m と $2$ m の避難の時間を出した。
| 人数 | 幅 $1$ m(秒) | 幅 $2$ m(秒) | 幅を $2$ 倍にした効き目 |
|---|---|---|---|
| $10$ | $35.387219$ | $34.909111$ | $0.986489$ |
| $30$ | $38.727079$ | $37.896591$ | $0.978555$ |
| $60$ | $47.583016$ | $38.573779$ | $0.810663$ |
| $100$ | $77.437357$ | $40.903280$ | $0.528211$ |
| $300$ | $230.890226$ | $115.513651$ | $0.500297$ |
| $1000$ | $769.275417$ | $384.660032$ | $0.500029$ |
観察 2.2 これが本稿の芯である。時間を決めるものは、人数で歩く距離から出口の幅へ移る。歩くだけの時間は $38.461538$ 秒で、出口だけの時間と等しくなるのは $50$ 人である。$10$ 人・$30$ 人では幅を倍にしても $0.986489$ 倍・$0.978555$ 倍で、ほとんど縮まない。$60$ 人から効き始め、$300$ 人・$1000$ 人では $0.500297$ 倍・$0.500029$ 倍と、ほぼ半分になる。同じ並びで比べた $240$ 回のうち、広げて遅くなった回は $0$ だった。
3. 境の近く
計算 3.1:幅 $1$ m の避難の時間を、歩くだけの時間と出口だけの時間の大きいほうで割った。
| 人数 | 大きいほう(秒) | 避難の時間との比 |
|---|---|---|
| $10$ | $38.461538$ | $0.920068$ |
| $30$ | $38.461538$ | $1.006904$ |
| $60$ | $46.153846$ | $1.030965$ |
| $100$ | $76.923077$ | $1.006686$ |
| $300$ | $230.769231$ | $1.000524$ |
| $1000$ | $769.230769$ | $1.000058$ |
観察 3.2 境の近くでは、どちらの見積もりも足りない。比は境の $50$ 人に近い $60$ 人で $1.030965$ といちばん大きく、人数が多くなると $1.000058$ へ、大きいほうの値に近づく。境から離れた多い人数では、出口だけの見積もりでほぼ足りる。境の近くでは、避難の時間が二つの見積もりのどちらをも上回った。ただし二つの和 $84.615385$ 秒よりはずっと短い。
4. 分離子
観察 4.1 分離子は、最後の一人が出口に着く時刻を問うか、出口の前の行列が掃ける時刻を問うかである。人数が少なければ、時間は歩く距離の側にあり、出口の幅を倍にしてもほとんど変わらない。人数が多ければ、時間は出口だけの見積もりに近づき、幅を倍にすればほぼ半分になる。どちらを問うべきかは、人数 $50$ の境のどちら側にいるかで決まる。
観察 4.2 論文728 の席に座り、論文549 の隣に置く。728 は煙の量を天井の高さが決めることを示し、避難を論じないとした。本稿はその避難の時間を、煙を入れずに歩く距離と出口の幅で数えた。549 は行列の中の人数と時間の掛け算の関係を見た。ここでは出口の前の行列が、人数の多いときだけ時間を決める。
観察 4.3 言わないこと。実在の建物や避難の基準の値、煙による見えにくさ、人の押し合い、出口の選び方、歩き出すまでの時間は扱わない。示したのは、この模型で、出口を広げて効くのは人数が多いときだけで、少ないうちは歩く距離が時間を決めることである。
5. 点呼と結び
- 歩く時間 $38.461538$ 秒と出口の時間 $N/(1.3w)$(第1節):二つの見積もり。
- $10$ 人で $\mathbf{0.986489}$ 倍(計算 2.1):ほとんど効かない。
- $30$ 人で $0.978555$ 倍(計算 2.1):まだ歩く距離。
- 境の人数 $\mathbf{50}$(観察 2.2):本稿の芯。
- $60$ 人で $\mathbf{0.810663}$ 倍(計算 2.1):効き始める。
- $1000$ 人で $\mathbf{0.500029}$ 倍(計算 2.1):ほぼ半分。
- 遅くなった回 $0$(観察 2.2):$240$ 回のうち。
- $60$ 人で比 $\mathbf{1.030965}$(計算 3.1):境の近くでは大きいほうを上回る。
- $1000$ 人で比 $1.000058$(計算 3.1):大きいほうに近づく。
- 着く時刻か、行列が掃ける時刻か(観察 4.1):分離子・論文728・549。
結び:出口を広げて避難が速くなるのは人数が多いときだけで、少ないうちは歩く距離が時間を決める。出口から $50$ m 以内の人が $1.3$ m/s で歩き、出口が幅 $1$ m あたり毎秒 $1.3$ 人を通すとき、幅を倍にした効き目は $10$ 人で $0.986489$ 倍、$1000$ 人で $0.500029$ 倍だった。歩くだけの時間 $38.461538$ 秒と出口だけの時間が等しくなる $50$ 人を境に、時間を決めるものが歩く距離から出口の幅へ移る。境の近くの $60$ 人では、避難の時間 $47.583016$ 秒が二つの大きいほうの $1.030965$ 倍になり、どちらの見積もりも足りなかった。それでも二つの和 $84.615385$ 秒よりはずっと短く、多い人数では大きいほうでほぼ足りる。既刊との位置:論文728 が論じないとした避難の席に座り、論文549 の行列の隣に、人数で決まる出口の効き目を置いた。正直に言えば、歩く速さと出口を通れる割合は模型の値で、煙も人の押し合いも出口の選び方も入れていない。
参考文献
- 山岸勇輝 (2026). 『滞在時間が $5.8$ 倍変わっても、掛け算の関係は動かない』[論文549]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/549 ・ DOI: 10.5281/zenodo.23014185
- 山岸勇輝 (2026). 『煙のほとんどは燃えたものではなく引き込まれた空気で、煙の量を決めるのは天井の高さである』[論文728]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/728 ・ DOI: 10.5281/zenodo.23015039
作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。
書誌
山岸勇輝(2026)「出口を広げて避難が速くなるのは人数が多いときだけで、少ないうちは歩く距離が時間を決める」[論文895]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/895
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住所:https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/895・CC BY 4.0・プレプリント(査読を経ていません)・ORCID 0009-0006-8587-3450
引用するとき
山岸勇輝 (2026). 出口を広げて避難が速くなるのは人数が多いときだけで、少ないうちは歩く距離が時間を決める [論文895]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/895
Yamagishi, Y. (2026). Widening the Exit Speeds Evacuation Only When There Are Many People; With Few, the Walking Distance Sets the Time [Paper 895]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/895
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author = {Yamagishi, Yuuki},
title = {Widening the Exit Speeds Evacuation Only When There Are Many People; With Few, the Walking Distance Sets the Time},
year = {2026},
howpublished = {YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/895},
note = {Preprint, edition 1}
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指紋(SHA-256)と確かめ方
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