【論文896】漏水の位置は管の音が遅いほど細かく分かるが、音の速さの見込み違いのずれは管の材料に依らない

要旨

漏水の位置を音で探すとき、細かく分かるかどうかは、時計の細かさで決まる、と思いやすい。本稿は、二つの受信器で拾った音の遅れから漏れの位置を出す模型で、標本の刻みによる誤差と、管の中の音の速さを見込み違えたずれを、音の速さの違う二つの管で数える。新しい定理も法則も主張しない。

第一に、同じ時計なら、音の遅い管ほど位置は細かい。$10$ kHz の標本化で、位置の刻みは音の速さ $400$ m/s の管で $0.020000$ m、$1200$ m/s の管で $0.060000$ m である(第2節)。

第二に、誤差は刻みの大きさどおりに出る。雑音を入れて $60$ 回位置を出すと、誤差の二乗平均は $\mathbf{0.005357}$ m と $\mathbf{0.017165}$ m で、刻みを $\sqrt{12}$ で割った値との比は $0.927930$ と $0.991014$、二つの管の比は $\mathbf{3.203949}$ である(第2節)。

第三に、これが本稿の芯である。音の速さを同じ割合で見込み違えたずれは、管の材料に依らない。音の速さを $1$ パーセント大きく見込むと、漏れが $20$ m の位置ならどちらの管でもずれは $\mathbf{-0.300000}$ m、$35$ m なら $-0.150000$ m である(第3節)。

第四に、ずれは真ん中から離れるほど大きい。二つの受信器の真ん中の $50$ m ではずれは $0$ で、受信器に近づくほど大きくなる(第3節)。

第五に、その見込み違いは、刻みより大きい。漏れが $20$ m の位置で、$1$ パーセントの見込み違いのずれは、音の遅い管で刻みの $\mathbf{15.000000}$ 倍、速い管で $\mathbf{5.000000}$ 倍である(第3節)。

第六に、分離子は、標本の刻みを問うか、音の速さの見込みを問うかである。刻みを問えば音の遅い管が有利に見え、見込みを問えば材料の違いは消えて、残るのは見込み違いの割合と真ん中からの距離だけである(第4節)。

キーワード:漏水、相互相関、管の中の音の速さ、標本化、位置の刻み、見込み違い。

射程(何を示さないか)

新しい定理も法則も主張しない。二つの受信器の音の相互相関で漏れの位置を出すこと、位置の細かさが標本化の周波数と音の速さで決まること、位置を出すには管の中の音の速さを知っていなければならないことは、いずれも漏水の調べ方で既知である。実在の管を主張しない。音の速さ $400$ m/s と $1200$ m/s、受信器の間隔 $100$ m、標本化 $10$ kHz、雑音の大きさは模型の値で、どの管の材料や口径にも対応しない。波形は崩さない。管の曲がりや分岐、音が伝わる途中で弱まること、周波数ごとに音の速さが違うことは入れない。既刊との関係:論文617 は、弁を閉じる時間が管の往復より短ければ、水撃の圧力は閉じ方によらないことを示し、そこで管の中を伝わる波の速さは水の音速ではなく、管の壁が伸びる分だけ遅くなることを数えた。本稿はその隣に置く。あちらは管の中の波の速さが圧力を決めた。ここではその速さを見込み違えることが、漏れの位置のずれになる。加えたのは、音の速さの違う二つの管で、標本の刻みと誤差を測ったこと、音の速さの見込み違いのずれが管の材料に依らないことを測ったこと、そのずれを刻みと比べたこと、分離子を「刻みか、見込みか」に置いたことである。

1. 記法と問い

設定:管の上に $L=100$ m 離して二つの受信器を置き、漏れは受信器 $1$ から $x$ の位置にある。漏れの音は管の中を速さ $c$ で両方へ伝わり、受信器 $2$ には受信器 $1$ より $\tau$ だけ遅れて届く。二つの受信器の音を $f_s=10$ kHz で標本化し、それぞれに雑音を足して相互相関をとり、いちばん高い山の遅れを $\tau$ とする。

$$\tau=\frac{L-2x}{c},\qquad
x=\frac{L-c\,\tau}{2},\qquad
\Delta x=\frac{c}{2f_s}$$

$\Delta x$ は、遅れが標本一つぶん変わったときの位置の刻みである。音の速さを $\hat c=(1+\varepsilon)c$ と見込み違えると、出す位置は次のだけずれる。

$$\hat x-x=-\frac{\varepsilon\,c\,\tau}{2}=-\frac{\varepsilon\,(L-2x)}{2}$$

問い:漏れの位置の細かさを決めるのは、時計の細かさか、音の速さの見込みか。

2. 標本の刻みと誤差

計算 2.1:音の速さの違う二つの管で、漏れを $20$〜$80$ m にばらばらに置いて $60$ 回ずつ位置を出した。

管 位置の刻み(m) 誤差の二乗平均(m) 誤差の最大(m)
音の速さ $400$ m/s $0.020000$ $0.005357$ $0.009951$
音の速さ $1200$ m/s $0.060000$ $0.017165$ $0.030098$

観察 2.2 同じ時計なら、音の遅い管ほど位置は細かく分かる。誤差の二乗平均を、刻みを $\sqrt{12}$ で割った値($0.005774$ m と $0.017321$ m)と比べると $0.927930$ と $0.991014$ で、誤差は刻みの大きさどおりに出た。二つの管の誤差の比は $3.203949$ で、音の速さの比 $3$ に近い。誤差の最大は、どちらの管でも刻みの $0.6$ 倍以内だった。

3. 音の速さの見込み違い

計算 3.1:正しい遅れ $\tau$ から、音の速さを $1$ パーセント大きく見込んで位置を出し、ずれを求めた。

漏れの位置 ずれ($400$ m/s の管) ずれ($1200$ m/s の管)
$20$ m $-0.300000$ m $-0.300000$ m
$35$ m $-0.150000$ m $-0.150000$ m
$50$ m $0.000000$ m $0.000000$ m

観察 3.2 これが本稿の芯である。音の速さを同じ割合で見込み違えたずれは、管の材料に依らない。ずれは二つの管で同じで、真ん中の $50$ m で $0$、受信器に近づくほど大きい。式のとおり、ずれは見込み違いの割合 $\varepsilon$ と真ん中からの距離だけで決まり、$c$ は $\tau$ と打ち消す。漏れが $20$ m の位置のずれ $0.300000$ m は、音の遅い管で刻みの $15.000000$ 倍、速い管で $5.000000$ 倍である。

4. 分離子

観察 4.1 分離子は、標本の刻みを問うか、音の速さの見込みを問うかである。刻みを問えば、同じ時計で音の遅い管は速い管の三分の一の刻みで位置を出せる。見込みを問えば、材料の違いは消え、残るのは見込み違いの割合と真ん中からの距離だけで、$1$ パーセントの見込み違いでも、漏れが $20$ m の位置ではどちらの管でも刻みより大きくずれる。

観察 4.2 論文617 の隣に置く。617 は、管の中を伝わる波の速さが水の音速ではなく管の壁で遅くなることを数え、その速さで水撃の圧力が決まることを示した。ここでは、その速さを見込み違えることが、漏れの位置のずれとして出る。

観察 4.3 言わないこと。実在の管の音の速さ、管の曲がりや分岐、途中で音が弱まること、周波数ごとに音の速さが違うこと、どの材料の管で音の速さの見込みが外れやすいかは扱わない。示したのは、この模型で、同じ時計なら音の遅い管ほど位置が細かく分かり、音の速さを同じ割合で見込み違えたずれは材料に依らないことである。

5. 点呼と結び

  1. $x=(L-c\tau)/2$(第1節):遅れから位置。
  2. 刻み $0.020000$ m と $0.060000$ m(計算 2.1):$400$ と $1200$ m/s。
  3. 二乗平均 $\mathbf{0.005357}$ m(計算 2.1):音の遅い管。
  4. 二乗平均 $\mathbf{0.017165}$ m(計算 2.1):音の速い管。
  5. 比 $\mathbf{3.203949}$(観察 2.2):音の速さの比に近い。
  6. $\sqrt{12}$ との比 $0.927930$ と $0.991014$(観察 2.2):刻みどおり。
  7. $1$ パーセントで $\mathbf{-0.300000}$ m(計算 3.1):本稿の芯・両方の管で同じ。
  8. 真ん中で $0$(計算 3.1):離れるほど大きい。
  9. 刻みの $\mathbf{15.000000}$ 倍と $\mathbf{5.000000}$ 倍(観察 3.2):刻みより大きい。
  10. 刻みか、見込みか(観察 4.1):分離子・論文617。

結び:漏水の位置は管の中の音が遅いほど細かく分かるが、音の速さを同じ割合で見込み違えたずれは管の材料に依らない。$10$ kHz の標本化で、位置の刻みは音の速さ $400$ m/s の管で $0.020000$ m、$1200$ m/s の管で $0.060000$ m、誤差の二乗平均は $0.005357$ m と $0.017165$ m だった。同じ時計なら、音の遅い管が有利である。しかし音の速さを $1$ パーセント大きく見込むと、漏れが $20$ m の位置では、どちらの管でも $-0.300000$ m ずれ、それは刻みの $15.000000$ 倍と $5.000000$ 倍にあたる。ずれは見込み違いの割合と真ん中からの距離だけで決まり、材料は式から消える。既刊との位置:論文617 の「管の中の波の速さは水の音速ではない」の隣に、その速さの見込み違いが漏れの位置のずれになることを置いた。正直に言えば、二つの音の速さと雑音の大きさは模型の値で、管の曲がりや分岐、途中で音が弱まることは入れていない。

参考文献

  1. 山岸勇輝 (2026). 『弁を閉じる時間が管の往復より短ければ、水撃の圧力は閉じ方によらない』[論文617]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/617 ・ DOI: 10.5281/zenodo.23014494

作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。

書誌

山岸勇輝(2026)「漏水の位置は管の音が遅いほど細かく分かるが、音の速さの見込み違いのずれは管の材料に依らない」[論文896]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/896

YOI 896第1版・2026年9月ビットコインに記録済み

日付の証拠(OpenTimestamps):日本語版の .ots・英語版の .ots・SHA256SUMS

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住所:https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/896・CC BY 4.0・プレプリント(査読を経ていません)・ORCID 0009-0006-8587-3450

引用するとき

山岸勇輝 (2026). 漏水の位置は管の音が遅いほど細かく分かるが、音の速さの見込み違いのずれは管の材料に依らない [論文896]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/896

Yamagishi, Y. (2026). A Leak Is Located More Finely Where Sound Is Slow, but the Error from Misjudging Sound Speed Does Not Depend on the Pipe [Paper 896]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/896

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  author = {Yamagishi, Yuuki},
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指紋(SHA-256)と確かめ方
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