要旨
「収穫逓減」は、投入を増やすほど一単位あたりの上乗せが減ることを指す。本稿は、資本と人の二つの投入による生産を冪の積の式(コブ=ダグラス型)で置き、人だけを増やしたときと、二つを同じ割合で増やしたときの生産の増え方を、三つの冪の組で数える。新しい定理も法則も主張しない。
第一に、人の限界の生産は、人を増やすほど減る。資本の冪 $0.3$・人の冪 $0.8$ の式で、資本を $1$ に保ち人を $1$・$2$・$4$・$8$ にすると、人を一人足したときの上乗せは $0.800000$・$0.696440$・$0.606287$・$0.527803$ と減った(第2節)。
第二に、人だけを倍にすると、生産は倍に届かない。人だけを倍にしたときの生産は $\mathbf{1.741101}$ 倍で、人を $1$ から $10$ 人にすると一人あたりの生産は $0.630957$ に下がった(第2節)。
第三に、資本と人を同じ割合で倍にすると、生産は倍を超える。同じ式で両方を倍にすると生産は $\mathbf{2.143547}$ 倍で、両方を $10$ 倍にすると一人あたりの生産は $1.258925$ に上がった(第3節)。
第四に、逓減はどの組でも起き、規模での増え方は冪の和で決まる。冪の和が $1$ の組では両方を倍にして $2.000000$ 倍、$0.9$ の組では $1.866066$ 倍で、三つの組とも人の限界の生産は減った。資本と人の限界の生産にそれぞれの量を掛けた和は、生産の冪の和倍に差 $3.9\times10^{-10}$ 以内で一致した(第3節)。
第五に、分離子は、一つの投入だけを増やすか、全部を同じ割合で増やすかである。一つだけを増やす問いには逓減が答え、全部を同じ割合で増やす問いには冪の和が答える。二つは別の問いなので、逓減していても規模では倍を超えうる(第4節)。
キーワード:収穫逓減、規模に関する収穫、限界生産、生産関数、コブ=ダグラス型、オイラーの定理。
射程(何を示さないか)
新しい定理も法則も主張しない。限界の生産の逓減、規模に関する収穫、冪の積の生産の式、同次関数についてのオイラーの定理は、いずれも既知である。実際の経済を主張しない。冪の組 $0.3$・$0.8$、$0.5$・$0.5$、$0.3$・$0.6$ は比べるために置いた値で、特定の産業、企業、国には対応しない。価格と費用を扱わない。どれだけ投入すべきか、利益が最大になる量は扱わない。どちらの型が現実かを言わない。冪の和が $1$ より大きいか小さいかは、ここでは置いた値である。既刊との関係:論文387 は、餌場をいつ離れるかがその場所の中だけでは決まらず、周りの平均と比べて決まることを示した。ここでは同じく上乗せが減っていく場面で、減り方が一つの投入だけを動かす問いの答えであり、全部を動かす問いとは別であることを数える。論文471 は、積み上げても進まないのは量が足りないからではなく比が足りないからであることを示した。ここでは人だけを積み上げると一人あたりが下がり、資本との比を保って増やすと上がることを数える。加えたのは、人の限界の生産の減り方を並べたこと、人だけを倍にしたときと全部を倍にしたときを三つの組で並べたこと、一人あたりの生産が二つの増やし方で逆に動くことを示したこと、オイラーの和で冪の和を確かめたこと、分離子を「一つだけか、全部を同じ割合か」に置いたことである。
1. 記法と問い
設定:資本 $K$ と人 $L$ による生産を、冪 $a$・$b$ の積で置く。人の限界の生産、人だけを倍にしたとき、全部を倍にしたときの生産の比は次のとおりである。
$$F(K,L)=K^{a}L^{b},\qquad \frac{\partial F}{\partial L}=bK^{a}L^{b-1},\qquad \frac{F(K,2L)}{F(K,L)}=2^{b},\qquad \frac{F(2K,2L)}{F(K,L)}=2^{a+b}$$
$b<1$ なら人の限界の生産は $L$ とともに減り、$a+b>1$ なら全部を倍にすると生産は倍を超える。オイラーの定理から $K \partial F/\partial K+L \partial F/\partial L=(a+b)F$ である。検算では微分を中心差分で取った。
問い:限界の生産が減っているとき、投入を増やすと生産はいつも割合より少なくしか増えないのか。
2. 一つの投入だけを増やす
計算 2.1:資本を $1$ に保った人の限界の生産。
| $a$ | $b$ | $L=1$ | $L=2$ | $L=4$ | $L=8$ |
|---|---|---|---|---|---|
| $0.3$ | $0.8$ | $0.800000$ | $0.696440$ | $0.606287$ | $0.527803$ |
| $0.5$ | $0.5$ | $0.500000$ | $0.353553$ | $0.250000$ | $0.176777$ |
| $0.3$ | $0.6$ | $0.600000$ | $0.454715$ | $0.344610$ | $0.261165$ |
$a=0.3$・$b=0.8$ で人を $1$・$2$・$5$・$10$ 人にしたときの一人あたりの生産は $1.000000$・$0.870551$・$0.724780$・$0.630957$ だった。
観察 2.2 人だけを増やすと、一人ぶんの上乗せも一人あたりの生産も減る。三つの組すべてで人の限界の生産は人数とともに減った。資本が同じなら、足した人は同じ資本を分け合うことになる。
3. 全部を同じ割合で増やす
計算 3.1:人だけを倍にしたときと、全部を倍にしたときの生産の比。
| $a$ | $b$ | $a+b$ | 人だけを倍 | 全部を倍 | オイラーの和 ÷ $F$ |
|---|---|---|---|---|---|
| $0.3$ | $0.8$ | $1.1$ | $1.741101$ | $2.143547$ | $1.100000$ |
| $0.5$ | $0.5$ | $1.0$ | $1.414214$ | $2.000000$ | $1.000000$ |
| $0.3$ | $0.6$ | $0.9$ | $1.515717$ | $1.866066$ | $0.900000$ |
オイラーの和は冪の和と差 $3.9\times10^{-10}$ 以内で一致した。$a=0.3$・$b=0.8$ で資本と人を $1$・$2$・$5$・$10$ 倍にしたときの一人あたりの生産は $1.000000$・$1.071773$・$1.174619$・$1.258925$ だった。
観察 3.2 人の限界の生産が減っていても、全部を同じ割合で増やすと生産は倍を超えうる。$a=0.3$・$b=0.8$ では人だけの倍で $1.741101$ 倍、全部の倍で $2.143547$ 倍になり、一人あたりの生産は増やし方で逆向きに動いた。全部を倍にしたときの増え方を決めるのは、一つの冪ではなく冪の和である。
4. 分離子
観察 4.1 分離子は、一つの投入だけを増やすか、全部を同じ割合で増やすかである。一つだけを増やす問いには、その投入の冪が $1$ より小さいかどうかが答え、そこで逓減が起きる。全部を同じ割合で増やす問いには冪の和が答え、和が $1$ を超えれば倍を超える。「収穫逓減」と「規模に関する収穫」は、同じ式に向けた別の問いである。
観察 4.2 言わないこと。実際の産業や国の冪、価格と費用、どれだけ投入すべきか、どちらの型が現実かは扱わない。示したのは、同じ式で一つだけを増やすと逓減し、全部を増やすと倍を超えうることである。
5. 点呼と結び
- $F=K^aL^b$・$2^b$・$2^{a+b}$(第1節):二つの問い。
- 人の限界の生産 $0.800000$ から $0.527803$(計算 2.1):逓減。
- 人だけを倍で $\mathbf{1.741101}$ 倍(計算 3.1):倍に届かない。
- 全部を倍で $\mathbf{2.143547}$ 倍(計算 3.1):倍を超える。
- 一人あたり $0.630957$ と $1.258925$(計算 2.1・3.1):増やし方で逆に動く。
- オイラーの和が冪の和(計算 3.1):差 $3.9\times10^{-10}$。
- 一つだけか、全部を同じ割合か(観察 4.1):分離子・論文387・471。
結び:収穫逓減は一つの投入を増やす問いで、全部を同じ割合で増やすと生産は倍を超えうる。資本の冪 $0.3$・人の冪 $0.8$ の式で、人の限界の生産は人数とともに減り、人だけを倍にすると生産は $1.741101$ 倍だった。同じ式で資本と人を倍にすると $2.143547$ 倍で、一人あたりの生産は人だけを増やすと下がり、全部を増やすと上がった。全部を増やしたときの増え方を決めるのは冪の和である。分離子は、一つの投入だけを増やすか、全部を同じ割合で増やすかである。既刊との位置:論文387 の上乗せが減る場面と論文471 の比が足りない場面に、同じ式へ二つの問いを向ける分け方を並べた。正直に言えば、どの経済がどちらの型かは言わない。逓減と規模の収穫が別の問いである、そこまでである。
参考文献
- Cobb, C. W., & Douglas, P. H. (1928). A theory of production. The American Economic Review.
- Varian, H. R. (1992). Microeconomic Analysis. W. W. Norton.
- 山岸勇輝 (2026). 『いつ出るかは、その場所の中では決まらない』[論文387]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/387 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22699131
- 山岸勇輝 (2026). 『積み上げても進まないのは、量が足りないからではない』[論文471]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/471 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22733457
作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。
書誌
山岸勇輝(2026)「収穫逓減は一つの投入を増やす問いで、全部を同じ割合で増やすと生産は倍を超えうる」[論文934]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/934
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住所:https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/934・CC BY 4.0・プレプリント(査読を経ていません)・ORCID 0009-0006-8587-3450
引用するとき
山岸勇輝 (2026). 収穫逓減は一つの投入を増やす問いで、全部を同じ割合で増やすと生産は倍を超えうる [論文934]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/934
Yamagishi, Y. (2026). Diminishing Returns Answers What Happens When One Input Grows; Scale All Inputs Together and Output Can More Than Double [Paper 934]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/934
@misc{yamagishi2026yoi934,
author = {Yamagishi, Yuuki},
title = {Diminishing Returns Answers What Happens When One Input Grows; Scale All Inputs Together and Output Can More Than Double},
year = {2026},
howpublished = {YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/934},
note = {Preprint, edition 1}
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指紋(SHA-256)と確かめ方
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