【論文949】球面収差を入れると目の細かさに最もよい瞳は中くらいに収まり、その大きさは収差の強さにとても鈍い

要旨

回折だけを考えると、瞳は大きいほど細かい縞のコントラストを通す。本稿は、論文919 の眼の値に瞳の縁ほど大きくなる球面収差を入れ、ぼけを最もよく選んだときの、錐体の並びが拾える最も細かい縞(ナイキストの細かさ)のコントラストを、瞳の直径ごとに数値で出す。新しい定理も法則も主張しない。

第一に、収差が無ければ、瞳は大きいほどよい。数値の計算は回折だけの式を再現し(瞳 $3$ mm で $0.266568$・式 $0.266680$、$6$ mm で $0.612981$・式 $0.612983$)、調べた $8$ mm までに中の最大は無かった($8$ mm で $0.707238$)(第2節)。

第二に、収差を入れると、最もよい瞳は中くらいに収まる。瞳 $6$ mm の縁の収差を $0.5$・$1$・$2$・$4$ 波長と置くと、最もよい瞳は $6.149$・$5.207$・$4.523$・$\mathbf{3.970}$ mm で、そのときのコントラストは $0.573231$・$0.511423$・$0.445752$・$0.378165$ だった(第3節)。

第三に、最もよい瞳は収差の強さにとても鈍い。収差を $8$ 倍にしても、最もよい瞳は $\mathbf{0.645625}$ 倍にしかならなかった。直径と収差の強さの冪は $-0.210410$ だった(第3節)。

第四に、小さな瞳では収差はほとんど効かない。瞳 $2.5$ mm のコントラストは、収差 $0$ から $4$ 波長まで $0.151378$ から $0.151299$ までしか変わらなかった(第3節)。

第五に、分離子は、瞳を広げる得と縁の収差の損のどちらが勝つかである。瞳を広げると回折のぼけは減るが、縁の収差は直径の $4$ 乗で増える。小さな瞳では得が勝ち、大きな瞳では損が勝ち、その境が最もよい瞳になる(第4節)。

キーワード:球面収差、瞳の直径、変調伝達関数、回折、ナイキストの細かさ、眼の光学。

射程(何を示さないか)

新しい定理も法則も主張しない。瞳の関数の自己相関として光学伝達関数を出すこと、回折だけの円い瞳の変調伝達関数の式、球面収差が瞳の縁から測った位置の $4$ 乗で増えること、収差とぼけを釣り合わせるとよく写ることは、いずれも既知である。置いた値である。波長・錐体の間隔・節点から網膜までは論文919 と同じで、球面収差の強さは比べるために置いた値である。どの人の眼にも対応しない。ほかの収差と網膜を入れない。色収差、非点収差、涙の膜、散乱、瞳のどこから入った光かで網膜の感じ方が変わることは入れない。視力を予言しない。コントラストは比べ方を示すための値で、誰かの視力や明るさによる瞳の変化は扱わない。既刊との関係:論文919 の射程注記は、収差を入れず、眼の球面収差・色収差・涙の膜・散乱は入れない、回折だけの光学を置くと書いた。本稿はそのうち球面収差の席に座る(先客なし)。論文358 の射程注記も、光学を作らず、回折限界・収差・点像分布関数の理論には立ち入らないと書いた。本稿はその収差の席にも座る。論文919 は、瞳が $1.85$ mm より開いていれば、目の細かさの天井は回折ではなく錐体の並びが決めることを示した。ここでは、瞳をさらに開いたときに収差がその天井のコントラストをどう削るかを数える。加えたのは、回折だけの式を数値で再現したこと、四つの収差の強さで最もよい瞳とコントラストを出したこと、最もよい瞳が収差の強さに鈍いことを冪で示したこと、小さな瞳では収差が効かないことを並べたこと、分離子を「瞳を広げる得と縁の収差の損のどちらが勝つか」に置いたことである。

1. 記法と問い

設定:論文919 と同じく、波長 $555$ nm、錐体の間隔 $2.5$ μm、節点から網膜まで $16.7$ mm とする。錐体の並びが拾える最も細かい縞(ナイキストの細かさ)は $58.2940$ 本/度である。瞳の直径を $D$、瞳の縁までの距離を $1$ とした位置を $\rho$ として、波面のずれを次のように置く。

$$W(\rho)=W_{020}\,\rho^2+W_{040}\,\rho^4,\qquad W_{040}=A\left(\frac{D}{6\ \mathrm{mm}}\right)^4\ \text{(波長)}$$

$A$ は瞳 $6$ mm での縁の球面収差、$W_{020}$ はぼけで、瞳ごとにコントラストが最も高くなるように選ぶ。ナイキストの細かさの変調伝達関数(コントラスト)は、瞳の関数を横にずらした自己相関の大きさとして数値で出す。

問い:球面収差があるとき、ナイキストの細かさのコントラストを最も高くする瞳はどれほどで、それは収差の強さでどう動くか。

2. 収差が無いとき

計算 2.1:収差 $0$ の数値と、回折だけの式。

瞳 数値 式(論文919 の値)
$3$ mm $0.266568$ $0.266680$
$6$ mm $0.612981$ $0.612983$

瞳 $1.5$・$2$・$2.5$・$3$・$3.5$・$4$・$5$・$6$・$7$・$8$ mm のコントラストは $0.0000$・$0.0235$・$0.1514$・$0.2666$・$0.3587$・$0.4318$・$0.5385$・$0.6130$・$0.6669$・$0.7072$ で、最も高いのは調べた範囲の端の $8$ mm($0.707238$)だった。

観察 2.2 収差が無ければ、瞳は大きいほどよく、中の最大は無い。数値の計算は回折だけの式を $3$ mm と $6$ mm で $5\times10^{-3}$ 以内の差で再現した。これが収差を入れた計算の出発点になる。

3. 収差を入れたとき

計算 3.1:瞳ごとのコントラスト(ぼけを最もよく選んだ値)。

縁の収差 $A$ $3$ mm $4$ mm $5$ mm $6$ mm $7$ mm $8$ mm
$0.5$ $0.2665$ $0.4309$ $0.5305$ $0.5729$ $0.5299$ $0.3660$
$1$ $0.2665$ $0.4283$ $0.5071$ $0.4646$ $0.2505$ $0.2116$
$2$ $0.2661$ $0.4178$ $0.4215$ $0.2257$ $0.1840$ $0.1372$
$4$ $0.2648$ $0.3781$ $0.1941$ $0.1628$ $0.1112$ $0.0859$

計算 3.2:最もよい瞳(黄金分割で詰めた)。

縁の収差 $A$ 最もよい瞳 コントラスト ぼけ $W_{020}$(波長)
$0.5$ $6.149$ mm $0.573231$ $-0.5068$
$1$ $5.207$ mm $0.511423$ $-0.5110$
$2$ $4.523$ mm $0.445752$ $-0.5809$
$4$ $\mathbf{3.970}$ mm $0.378165$ $-0.7025$

収差を $0.5$ から $4$ へ $8$ 倍にすると、最もよい瞳は $\mathbf{0.645625}$ 倍になり、冪は $-0.210410$($0.5$ と $1$ の間で $-0.239947$、$1$ と $2$ の間で $-0.203297$)だった。瞳 $2.5$ mm のコントラストは収差 $0$・$0.5$・$1$・$2$・$4$ で $0.151378$・$0.151377$・$0.151373$・$0.151358$・$0.151299$ だった。

観察 3.3 最もよい瞳は中くらいに収まり、収差の強さにとても鈍い。縁の収差を $8$ 倍にしても、最もよい瞳は $6.149$ mm から $3.970$ mm にしか縮まなかった。小さな瞳では収差の強さがほとんど効かず、$2.5$ mm では $4$ 波長でもコントラストは $0.151299$ だった。最もよいときのぼけは、収差の向きと逆に $-0.5068$ から $-0.7025$ 波長だった。

4. 分離子

観察 4.1 分離子は、瞳を広げる得と縁の収差の損のどちらが勝つかである。瞳を広げると回折のぼけが減り、ナイキストの細かさのコントラストは上がる。一方で縁の収差は直径の $4$ 乗で増える。収差が無ければ得だけが残って瞳は大きいほどよく、収差があると大きな瞳では損が勝ち、その境が中くらいの最もよい瞳になった。

観察 4.2 言わないこと。実在の眼の収差の強さ、色収差・非点収差・涙の膜・散乱、網膜の感じ方、明るさによる瞳の変化、誰かの視力は扱わない。示したのは、置いた球面収差の下で、ナイキストの細かさのコントラストを最も高くする瞳が中くらいに収まり、その大きさが収差の強さに鈍いことである。

5. 点呼と結び

  1. 波面のずれと数値の伝達関数(第1節):縁の収差は直径の $4$ 乗。
  2. 収差 $0$ で式を再現(計算 2.1):瞳は大きいほどよい。
  3. 最もよい瞳 $6.149$ から $\mathbf{3.970}$ mm(計算 3.2):中くらいに収まる。
  4. $8$ 倍の収差で $\mathbf{0.645625}$ 倍(計算 3.2):冪 $-0.210410$。
  5. $2.5$ mm では $0.151378$ から $0.151299$(計算 3.2):小さな瞳に収差は効かない。
  6. 広げる得か、縁の損か(観察 4.1):分離子・論文919 と論文358 の射程注記。

結び:球面収差を入れると目の細かさに最もよい瞳は中くらいに収まり、その大きさは収差の強さにとても鈍い。回折だけでは瞳は大きいほどよく、$8$ mm でコントラスト $0.707238$ だった。縁の収差を $0.5$・$1$・$2$・$4$ 波長と置くと、最もよい瞳は $6.149$・$5.207$・$4.523$・$3.970$ mm で、収差を $8$ 倍にしても瞳は $0.645625$ 倍にしかならなかった。瞳 $2.5$ mm では収差がほとんど効かなかった。分離子は、瞳を広げる得と縁の収差の損のどちらが勝つかである。既刊との位置:論文919 が回折だけで置いた目の細かさの天井に、論文919 と論文358 が入れなかった収差を入れ、瞳を開いたときにそのコントラストがどう削られるかを数えた。正直に言えば、本物の眼には色収差も散乱もある。置いた球面収差の下で、最もよい瞳がどこに収まりどれほど動くか、そこまでである。

参考文献

  1. Born, M., & Wolf, E. (1999). Principles of Optics (7th ed.). Cambridge University Press.
  2. Goodman, J. W. (2005). Introduction to Fourier Optics (3rd ed.). Roberts & Company.
  3. 山岸勇輝 (2026). 『被写界深度の「深さ」は、測定値ではなく約束である』[論文358]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/358 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22697216
  4. 山岸勇輝 (2026). 『瞳が $1.85$ mm より開いていれば、目の細かさの天井は回折ではなく錐体の並びが決める』[論文919]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/919

作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。

書誌

山岸勇輝(2026)「球面収差を入れると目の細かさに最もよい瞳は中くらいに収まり、その大きさは収差の強さにとても鈍い」[論文949]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/949

YOI 949第1版・2026年9月ビットコインに記録済み

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引用するとき

山岸勇輝 (2026). 球面収差を入れると目の細かさに最もよい瞳は中くらいに収まり、その大きさは収差の強さにとても鈍い [論文949]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/949

Yamagishi, Y. (2026). Spherical Aberration Gives the Eye a Middle-Sized Best Pupil That Barely Moves with the Aberration’s Strength [Paper 949]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/949

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  year = {2026},
  howpublished = {YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/949},
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