要旨
カムが従動節を押す向きと、従動節が動く向きのなす角(圧力角)が大きいと従動節を横に押す分が増え、設計では角を収めるようにカムを大きくする。本稿は、論文929 の四つの運動曲線で、持ち上げ $10$ mm をカムの角 $60$ 度で行う半径方向のローラーの従動節について、最大の圧力角を $30$ 度(置いた値)に収めるのに要るピッチ円の半径を出す。新しい定理も法則も主張しない。
第一に、要るピッチ円は曲線で $6.9276$ mm 違う。要る半径は単弦 $21.4575$ mm、3-4-5 多項式 $26.3648$ mm、放物線 $28.0797$ mm、サイクロイド $\mathbf{28.3851}$ mm だった(第2節)。
第二に、並びは速さの最大の並びと同じである。速さの係数の最大は単弦 $1.570796$、3-4-5 多項式 $1.875000$、放物線とサイクロイド $2.000000$ で、要る半径の小さい順も単弦・3-4-5 多項式・放物線・サイクロイドだった(第2節)。
第三に、速さの最大が同じ二つでも要る半径は違う。放物線とサイクロイドはどちらも速さの係数の最大が $2.000000$ だが、要る半径は $\mathbf{0.3054}$ mm 違った。放物線は持ち上げの半分($u=0.5$)で角が最大になり、閉じた式 $28.0797$ mm と一致した。サイクロイドは $u=0.4694$、持ち上げ $0.4391$、速さの係数 $1.981634$ のところで角が最大になった(第3節)。
第四に、角の式を別の描き方で確かめた。半径 $30$ mm での最大の圧力角は、角の式で $28.6202$・$23.4132$・$28.8218$・$27.3039$ 度、ピッチ曲線を直交座標で描いた傾きから $28.6201$・$23.4132$・$28.8218$・$27.3039$ 度で、$10^{-3}$ 度以内で一致した(第2節)。
第五に、分離子は、従動節の速さだけで見るか、そのときのカムの半径で割って見るかである。速さだけで見ると放物線とサイクロイドは同じ $2.000000$ である。そのときの半径で割ると、サイクロイドは半径がまだ小さい手前で角が最大になり、要る半径が $0.3054$ mm 大きくなった(第4節)。
キーワード:カム、圧力角、ピッチ円、従動節、運動曲線、サイクロイド。
射程(何を示さないか)
新しい定理も法則も主張しない。カムの圧力角の定義、圧力角を収めるためにピッチ円(基礎円にローラーの半径を足した円)を大きくすること、許す圧力角の目安、運動曲線ごとの最大の速さは、いずれもカムの設計で知られている。置いた値である。持ち上げ $10$ mm、カムの角 $60$ 度、許す圧力角 $30$ 度は本稿で置いた。特定の機械のカムには対応しない。半径方向のローラーの従動節だけを扱う。従動節の動く線がカムの中心を通る形で、中心からずらした従動節、平らな面の従動節、揺れる腕の従動節は入れない。輪郭の強さを扱わない。接触の応力、材料、ローラーの半径が輪郭の曲率を超えて削れる切り下げ、戻りの区間は扱わない。既刊との関係:論文929 の射程注記は、カムを設計せず、カムの輪郭、圧力角、接触の応力、材料は扱わないと書いた。本稿はそのうち圧力角の席に座る(先客なし)。論文929 は、四つの運動曲線の最大の速さを $2$・$1.570796$・$2$・$1.875$ と並べ、サイクロイドは最大の加速度が大きいのに端で跳ばないぶん揺れが残りにくいことを示した。ここでは、同じ曲線でカムの大きさを決める圧力角を数える。論文557 は、歯車の圧力角が歯を強くする向きと伝動をなめらかにする向きで逆に働くことを示した。ここでの圧力角は歯車の歯ではなく、カムが従動節を押す角である。加えたのは、四つの曲線で要るピッチ円の半径を出したこと、角が最大になる位置と持ち上げを並べたこと、放物線を閉じた式で確かめたこと、角の式を直交座標の傾きで確かめたこと、分離子を「速さだけで見るか、半径で割って見るか」に置いたことである。
1. 記法と問い
設定:持ち上げ $h=10$ mm を、カムの角 $\beta=60$ 度($\pi/3$ ラジアン)で行う。無次元の角 $u\in[0,1]$ での持ち上げを論文929 と同じ $s(u)$、速さの係数を $v(u)=ds/du$ とする。従動節は半径方向に動くローラーで、ローラーの中心が描くピッチ曲線の半径は $r(u)=R_p+hs(u)$、$R_p$ がピッチ円の半径である。圧力角 $\phi$ は
$$\tan\phi(u)=\frac{1}{r}\frac{dr}{d\theta}=\frac{(h/\beta)\,v(u)}{R_p+h\,s(u)}$$
で、$u$ を $20000$ に刻んで最大を取り、最大が $30$ 度になる $R_p$ を二分法で探した。別の描き方として、ピッチ曲線を直交座標で描き、曲線の接線と半径方向のなす角からも最大の圧力角を出した。
問い:最大の圧力角を $30$ 度に収めるピッチ円は、曲線でどれだけ違い、何で決まるか。
2. 四つの曲線の要るピッチ円
計算 2.1:要るピッチ円の半径と、角が最大になる位置。
| 曲線 | 速さの係数の最大 | 要る半径(mm) | 角が最大の $u$ | その持ち上げ | その速さの係数 |
|---|---|---|---|---|---|
| 単弦 | $1.570796$ | $21.4575$ | $0.4395$ | $0.4055$ | $1.542509$ |
| 3-4-5 多項式 | $1.875000$ | $26.3648$ | $0.4625$ | $0.4299$ | $1.853910$ |
| 放物線 | $2.000000$ | $28.0797$ | $0.5000$ | $0.5000$ | $2.000000$ |
| サイクロイド | $2.000000$ | $\mathbf{28.3851}$ | $0.4694$ | $0.4391$ | $1.981634$ |
計算 2.2:ピッチ円の半径 $30$ mm での最大の圧力角(度)。
| 曲線 | 角の式 | 直交座標の傾き |
|---|---|---|
| 放物線 | $28.6202$ | $28.6201$ |
| 単弦 | $23.4132$ | $23.4132$ |
| サイクロイド | $28.8218$ | $28.8218$ |
| 3-4-5 多項式 | $27.3039$ | $27.3039$ |
四つの曲線とも $10^{-3}$ 度以内で一致した。速さの係数の最大は論文929 の $2$・$1.570796$・$2$・$1.875$ と $10^{-6}$ 以内だった。
観察 2.3 要るピッチ円の並びは、速さの最大の並びと同じである。速さの係数の最大の小さい順も、要る半径の小さい順も、単弦・3-4-5 多項式・放物線・サイクロイドだった。いちばん小さい単弦 $21.4575$ mm といちばん大きいサイクロイド $28.3851$ mm の差は $6.9276$ mm で、その間に 3-4-5 多項式と放物線が入った。
3. 速さの最大が同じ二つ
計算 3.1:放物線は $u\le0.5$ で $v=4u$、$s=2u^2$ で、角は $u=0.5$ で最大になり、要る半径は
$$R_p=\frac{2(h/\beta)}{\tan30^\circ}-\frac h2=28.0797\ \text{mm}$$
で、探した $28.0797$ mm と $10^{-3}$ mm 以内で一致した。サイクロイドの要る半径は放物線より $0.3054$ mm 大きく、角が最大になる $u$ は $0.4694$ で $0.5$ より前だった。
観察 3.2 速さの最大が同じでも、角が最大になる位置が違えば要る半径は違う。放物線は速さが最大の $u=0.5$ で角も最大になり、そのとき持ち上げは $0.5000$ である。サイクロイドは $u=0.4694$ で角が最大になり、そこでは持ち上げが $0.4391$ でまだ半分に届かず、速さの係数は $1.981634$ だった。単弦と 3-4-5 多項式も、角が最大になる $u$ は $0.4395$ と $0.4625$ で、速さが最大の $u=0.5$ より前だった。
4. 分離子
観察 4.1 分離子は、従動節の速さだけで見るか、そのときのカムの半径で割って見るかである。速さだけで見ると、放物線とサイクロイドは同じ最大 $2.000000$ で見分けがつかない。圧力角は速さの係数を $R_p+hs$ で割った量なので、同じ速さでも持ち上げの小さいところで角が大きくなる。サイクロイドは持ち上げ $0.4391$ のところで角が最大になり、要る半径は $28.3851$ mm と放物線の $28.0797$ mm より大きかった。
観察 4.2 言わないこと。接触の応力、材料、切り下げ、戻りの区間、ずらした従動節や平らな面の従動節、許す圧力角をいくつにすべきかは扱わない。示したのは、置いた持ち上げとカムの角で、最大の圧力角を $30$ 度に収めるピッチ円が曲線でどれだけ違い、速さの最大が同じ二つでも角が最大になる位置で違うことである。
5. 点呼と結び
- 圧力角の式(第1節):速さの係数を半径で割る。
- 要る半径 $21.4575$ から $\mathbf{28.3851}$ mm(計算 2.1):並びは速さの最大と同じ。
- 二通りの描き方が $10^{-3}$ 度以内(計算 2.2):角の式の確かめ。
- 放物線とサイクロイドの差 $\mathbf{0.3054}$ mm(計算 3.1):速さの最大は同じ $2$。
- サイクロイドは $u=0.4694$・持ち上げ $0.4391$ で角が最大(観察 3.2):半分の手前。
- 速さだけか、半径で割るか(観察 4.1):分離子・論文929 の射程注記。
結び:速さの最大が同じカムの曲線でも、圧力角を収めるピッチ円は、角が最大になる位置で変わる。持ち上げ $10$ mm をカムの角 $60$ 度で行い、最大の圧力角を $30$ 度に収めるピッチ円の半径は、単弦 $21.4575$ mm、3-4-5 多項式 $26.3648$ mm、放物線 $28.0797$ mm、サイクロイド $28.3851$ mm だった。放物線とサイクロイドは速さの係数の最大がどちらも $2.000000$ だが、サイクロイドは持ち上げ $0.4391$ のところで角が最大になり、要る半径が $0.3054$ mm 大きかった。分離子は、従動節の速さだけで見るか、そのときのカムの半径で割って見るかである。既刊との位置:論文929 が揺れで比べた四つの曲線を、論文929 が扱わなかった圧力角とカムの大きさで比べた。正直に言えば、許す圧力角も持ち上げも置いた値で、接触の強さは見ていない。四つの曲線で、角を収めるカムの大きさがどれだけ違うか、そこまでである。
参考文献
- Norton, R. L. (2009). Cam Design and Manufacturing Handbook. Industrial Press.
- 山岸勇輝 (2026). 『歯を強くする角度は、伝動をなめらかにする角度と逆を向いている』[論文557]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/557 ・ DOI: 10.5281/zenodo.23014224
- 山岸勇輝 (2026). 『サイクロイドのカムは加速度の最大が大きいのに、端で跳ばないぶん速く回しても揺れが残りにくい』[論文929]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/929
作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。
書誌
山岸勇輝(2026)「速さの最大が同じカムの曲線でも、圧力角を収めるピッチ円は、角が最大になる位置で変わる」[論文961]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/961
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住所:https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/961・CC BY 4.0・プレプリント(査読を経ていません)・ORCID 0009-0006-8587-3450
引用するとき
山岸勇輝 (2026). 速さの最大が同じカムの曲線でも、圧力角を収めるピッチ円は、角が最大になる位置で変わる [論文961]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/961
Yamagishi, Y. (2026). Cam Curves with the Same Peak Velocity Need Different Pitch Circles, Set by Where the Pressure Angle Peaks [Paper 961]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/961
@misc{yamagishi2026yoi961,
author = {Yamagishi, Yuuki},
title = {Cam Curves with the Same Peak Velocity Need Different Pitch Circles, Set by Where the Pressure Angle Peaks},
year = {2026},
howpublished = {YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/961},
note = {Preprint, edition 1}
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指紋(SHA-256)と確かめ方
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