要旨
本稿が問うのは、日本の粗死亡率が 1980 年から 2024 年に 2.148 倍になったことが、死の危険が増えたことを意味するのか、人口の年齢構成が変わったことを意味するのか、である。答えは、二つを分けると年齢構成の動きが上昇の全部を超えて押し上げ、年齢別の率の動きはむしろ押し下げていた、である。新しい数学定理も新しい法則も主張しない。
第一に、粗死亡率(人口10万対)は 1980 年の 621.4 から 2024 年の 1334.5 へ 2.148 倍になった。同じ 44 年間に、年齢別の死亡率は 19 の年齢階級すべてで下がっている(2024 年 ÷ 1980 年は 0.241 から 0.671)(第4節)。
第二に、これが本稿の芯である。差 +713.4 を北川の分解で二つに分けると、年齢構成の効果が +1522.3、年齢別の率の効果が −808.8 になる。年齢構成の動きだけで、実際の上昇の 2.134 倍が出る。増えたのは危険ではなく、高い年齢にいる人の割合である(65 歳以上の割合は 0.0912 から 0.2996)(第5節)。
第三に、この分け方の量は一通りではない。重みをどの年に置くか、区間ごとに足すかで、年齢構成の効果は +1042.9 から +2001.6 まで 1.919 倍動く。しかし四通りのどれでも「年齢構成の効果 > 差 > 0 > 年齢別の率の効果」の並びは変わらない。量は約束で決まり、向きはデータで決まる(第6節)。
第四に、1950 年から 2024 年までの隣り合う 23 区間で、年齢構成の効果は 23 区間すべてで正だった。年齢別の率の効果が正になったのは 2020→2021、2021→2022、2023→2024 の 3 区間だけで、2020 年から 2024 年の上昇 +222.3 のうち 0.432 は年齢別の率の側にある。本稿はその原因を述べない(第7節)。
第五に、本稿の計算は公式の年齢調整死亡率を再現する。95 歳以上の率が表にある 2005〜2024 年は、平成27年モデル人口による男女別の値 26 個がすべて小数 1 桁で一致し、昭和60年モデル人口による旧い公式値 32 個は食い違いの最大が 0.0937 である。1955〜2000 年はこの表だけでは 90 歳以上を分けられず、20 個とも公式より 0.063 から 0.499 低く出る(第8節)。
第六に、年齢調整死亡率の水準は基準人口の選び方で 2.945 倍違う(2024 年、平成27年モデル ÷ 昭和60年モデル)が、1980 年から 2024 年への比は 0.503 と 0.490 でほとんど同じである。年齢調整死亡率は、値ではなく動きを読む量である(第8節)。
本稿の射程(scope note):新しい数学定理も新しい法則も主張しない。年齢調整(直接法)と、二つの率の差を二つの効果に分ける北川の分解(Kitagawa 1955)は、どちらも既知の手法である。本稿は日本の公開の集計表にそれを当て、数の形を読むだけである。本稿は公開の集計データの数の形を述べる構造的解釈であり、医学的な助言・診断・治療の推奨ではない。著者は医師ではない。個人の健康に関する判断は医師・医療機関に相談すること。査読を経ていないプレプリントである。 原因を述べない。年齢別の率がなぜ下がったのか、2020→2022 年と 2023→2024 年になぜ上がったのかには立ち入らない。死因にも分けていない。扱うのは日本の全死因だけである。男女計を主に、男女別を確かめに使う。他の国、死因別、地域別には広げない。使ったのは公開の集計表だけである。厚生労働省『人口動態統計』と総務省統計局『人口推計』(e-Stat)で、個人に関する情報は含まない。本稿の分解・年齢調整・逆算した人口は、それらを加工して作った数であり、国が作成した数ではない。既刊との関係:論文183 は、どの群で見ても一方が勝つのに併せると逆転する表を作り、その機構が群の重みの違いであることを示した。ここではその重みの違いを、日本の死亡統計の年次比較で測り、差を二つに厳密に分ける。論文300 は、二つのものが同じ根か別の根かを「何を動かすと片方だけが動くか」で判定できることを示した。ここでは「死亡率が上がった」という一語の下で、年齢構成を動かすと動く部分と、年齢別の率を動かすと動く部分を分ける。加えたのは、予測を先に書いてから測ったこと、分け方を四通りにして量と向きを分けたこと、公式の年齢調整死亡率を計算し直し、再現できる年とできない年の境目を示したこと、逆算した分母を人口推計と突き合わせたことである。
1. 記法と問い
粗死亡率は、一年の死亡数をその年の人口で割ったものである。本稿では人口10万あたりで書く。これは、年齢階級ごとの死亡率 m に、その階級が人口に占める割合 c を掛けて、全階級で足したもの(Σ c × m)に等しい。
粗死亡率が上がったとき、動いたかもしれないものは二つある。年齢別の率 m と、年齢構成 c である。
問い:日本の粗死亡率の上昇を作っているのは、どちらか。
観察 1.1:「死亡率が上がった」という言い方は、Σ c × m という和を指している。和は、c が動いても m が動いても動く。一つの語が、二つの別の動きをまとめて呼んでいる。
観察 1.2:だから決着させられる。二つを別々に動かしたときの寄与に分ければよい。二つの年 a と b の差を、次の二つに分ける(北川の分解)。
- 年齢別の率の効果:年齢構成を a と b の平均に固定したまま、率だけを a から b へ動かした分
- 年齢構成の効果:率を a と b の平均に固定したまま、構成だけを a から b へ動かした分
この二つの和は、差にちょうど等しい(近似ではない)。
2. 二つの予測を、測る前に書く
予測A(年齢構成が作っている):年齢構成の効果が正で、差の全部かそれ以上を占める。年齢別の率の効果は負である。
予測B(危険が増えた):年齢別の率の効果が正で、差の大半を占める。
この二つは、年齢別の率の効果の符号で正反対を言う。だから決着する。
設計(走らせる前に宣言し、実行時に変えていない)
| 中身 | |
|---|---|
| 比べる年 ① | 表の中で粗死亡率が最も低い年 → 2024 年(どの年になるかはデータで決める。結果は 1980 年) |
| 比べる年 ② | 1950 年 → 2024 年 |
| 比べる年 ③ | 表の隣り合う年どうし(1950→1955→…→2010→2014→2015→…→2024)の 23 区間 |
| 年齢階級 | 0〜4 歳から 85〜89 歳までの 5 歳階級 18 と、90 歳以上 1 つ(計 19) |
| 人口 | 表の死亡数 ÷ 死亡率 × 10万 で逆算する(表そのものが使った分母) |
| 分け方 | 北川の分解(重みは二つの年の平均) |
観察 2.1:90 歳以上を一つにまとめたのは、1950〜2000 年の表が 90 歳以上を一つの率でしか出していないからである。全年で同じ階級を使うために、そろえて粗いほうに合わせた。
3. データと、その確かめ
使ったのは厚生労働省『人口動態統計』令和6年(確定数)上巻の第5.15表(性・年齢 5 歳階級・年次別の死亡数と死亡率)である。年の列は 24 個で、1950〜2010 年は 5 年おき、2014〜2024 年は毎年である。取得したファイルは SHA-256 で固定し、検算は走らせるたびに照合する。
計算 3.1 表の中の釣り合い
| 確かめたこと | 結果 |
|---|---|
| 年齢別の死亡数+年齢不詳=総数(3 性 × 24 年) | 72 通りすべて一致 |
| 男+女=男女計(24 年 × 22 欄) | 外れ 0 件 |
| 使う升目の死亡数の最小 | 136(10 未満の升目は無い) |
| 逆算した分母で作り直した粗死亡率と公表値の差 | 最大 0.968(公表は小数 1 桁・分子に年齢不詳を含む) |
計算 3.2 逆算した人口を、総務省統計局『人口推計』の日本人人口(2000〜2020 年・千人単位)と突き合わせる。照合した年 10 個 × 19 階級=190 升目である。
| 年 | 階級ごとの相対差(中央) | 最大 |
|---|---|---|
| 2000 | 0.00016 | 0.00297 |
| 2005 | 0.00017 | 0.00491 |
| 2010 | 0.00017 | 0.00566 |
| 2015 | 0.00031 | 0.00381 |
| 2020 | 0.00016 | 0.00409 |
| 2016 | 0.00108 | 0.00793 |
| 2017 | 0.00173 | 0.01185 |
| 2018 | 0.00255 | 0.01728 |
| 2019 | 0.00402 | 0.02081 |
観察 3.3:国勢調査の年(2000・2005・2010・2015・2020)は、相対差の中央が各年 0.00031 以下、最大でも 0.00566 である。二つの独立な数え方が、ほぼ同じ分母を返している。
観察 3.4:2016〜2019 年だけは、相対差の中央が 0.00108・0.00173・0.00255・0.00402 と年を追って広がる。本稿はこの広がりの理由を確かめていない。 分析には逆算した人口(表そのものが使った分母)を使うので、分解の結果には響かない。
4. 実測、粗死亡率は上がり、年齢別の率は下がった
粗死亡率(公表値・人口10万対)は、1950 年 1087.6 → 1980 年 621.4 → 2024 年 1334.5 と、下がってから上がった。表の中で最も低いのは 1980 年である。
計算 4.1 1980 年と 2024 年の年齢別の死亡率(人口10万対)と、人口に占める割合
| 年齢階級 | 率 1980 | 率 2024 | 2024 ÷ 1980 | 割合 1980 | 割合 2024 |
|---|---|---|---|---|---|
| 0〜4 | 192.7 | 46.5 | 0.241 | 0.07271 | 0.03192 |
| 5〜9 | 27.8 | 7.6 | 0.273 | 0.08576 | 0.03819 |
| 10〜14 | 18.3 | 10.1 | 0.552 | 0.07644 | 0.04224 |
| 15〜19 | 49.2 | 24.1 | 0.490 | 0.07065 | 0.04431 |
| 20〜24 | 62.3 | 38.1 | 0.612 | 0.06693 | 0.04736 |
| 25〜29 | 69.9 | 38.9 | 0.557 | 0.07715 | 0.04915 |
| 30〜34 | 81.9 | 46.6 | 0.569 | 0.09208 | 0.04934 |
| 35〜39 | 125.3 | 64.8 | 0.517 | 0.07864 | 0.05437 |
| 40〜44 | 194.4 | 92.8 | 0.477 | 0.07131 | 0.06125 |
| 45〜49 | 324.2 | 145.2 | 0.448 | 0.06928 | 0.07102 |
| 50〜54 | 476.6 | 230.4 | 0.483 | 0.06164 | 0.07989 |
| 55〜59 | 680.7 | 359.5 | 0.528 | 0.04799 | 0.06935 |
| 60〜64 | 1100.4 | 561.6 | 0.510 | 0.03819 | 0.06202 |
| 65〜69 | 1865.8 | 910.2 | 0.488 | 0.03394 | 0.05980 |
| 70〜74 | 3297.9 | 1543.4 | 0.468 | 0.02590 | 0.06772 |
| 75〜79 | 5911.1 | 2393.6 | 0.405 | 0.01746 | 0.06525 |
| 80〜84 | 10106.8 | 4318.3 | 0.427 | 0.00938 | 0.05083 |
| 85〜89 | 16440.8 | 8158.7 | 0.496 | 0.00352 | 0.03268 |
| 90 歳以上 | 27253.3 | 18290.1 | 0.671 | 0.00102 | 0.02331 |
観察 4.2:19 階級すべてで、率は下がっている。 2024 ÷ 1980 は最小 0.241(0〜4 歳)、最大 0.671(90 歳以上)で、どの階級も 1 より小さい。
観察 4.3:一方、人口は高い年齢へ移った。65 歳以上の割合は 0.0912 から 0.2996 へ、80 歳以上の割合は 0.0139 から 0.1068 へ増えた。どの年齢でも死ににくくなったのに、死にやすい年齢にいる人の割合が増えた。 粗死亡率が上がりうるのは、この二つが逆を向いているからである。

図3:左は年齢別の死亡率(対数目盛)で、2024 年の線はすべての年齢で 1980 年の線より下にある。右は人口の年齢構成で、2024 年の棒は高い年齢の側で 1980 年の棒を大きく上回る。
5. 北川の分解、上昇の全部を超えて、年齢構成が押し上げた
計算 5.1 男女計・19 階級・人口10万対
| 区間 | 差 | 年齢構成の効果 | 年齢別の率の効果 | 構成の効果 ÷ 差 |
|---|---|---|---|---|
| 1980 → 2024 | +713.4 | +1522.3 | −808.8 | 2.134 |
| 1950 → 2024 | +247.3 | +2227.5 | −1980.2 | 9.008 |
| 1950 → 1980 | −466.2 | +323.4 | −789.6 | 、 |
観察 5.2:予測A が当たり、予測B は外れた。 1980 年から 2024 年の上昇 +713.4 に対し、年齢構成の効果は +1522.3 で、差の 2.134 倍ある。年齢別の率の効果は −808.8 で、上昇を押し下げている。
観察 5.3:1950 年から 1980 年は、粗死亡率が 466.2 下がった。それでも年齢構成の効果は +323.4 で、すでに押し上げる向きにあった。下がったのは、年齢別の率の効果 −789.6 がそれを上回ったからである。
観察 5.4:1950 年から 2024 年の差は +247.3 しかない。しかしその中身は +2227.5 と −1980.2 の打ち消し合いである。差が小さいことは、動きが小さいことを意味しない。
計算 5.5 年齢だけでなく性でも分けた(38 升目)
| 区間 | 19 階級:構成/率 | 38 升目:構成/率 |
|---|---|---|
| 1980 → 2024 | +1522.3 / −808.8 | +1539.5 / −826.4 |
| 1950 → 2024 | +2227.5 / −1980.2 | +2251.3 / −2004.3 |
観察 5.6:性でも分けると、年齢構成の効果は +1522.3 から +1539.5 へ少し動くだけである。男女の割合の変化は、この結論を動かさない。
6. 量は取り方で動き、向きは動かない
北川の分解は、重みを二つの年の平均に置く。重みを始めの年に置くことも、終わりの年に置くことも、隣り合う区間ごとに分けて足すこともできる。どれも差にはちょうど一致する。
計算 6.1 1980 → 2024(差 +713.4)を四通りで分ける
| 分け方 | 年齢構成の効果 | 年齢別の率の効果 | 構成の効果 ÷ 差 |
|---|---|---|---|
| 北川(平均の重み) | +1522.3 | −808.8 | 2.134 |
| 1980 年の重み | +2001.6 | −1288.2 | 2.806 |
| 2024 年の重み | +1042.9 | −329.5 | 1.462 |
| 隣り合う区間ごとに足す | +1218.8 | −505.3 | 1.708 |
観察 6.2:年齢構成の効果は +1042.9 から +2001.6 まで動き、最大 ÷ 最小は 1.919 である。1950 → 2024 では +1173.3 から +3281.8 まで、2.797 倍動く。「高齢化で何割」という数は、分け方の約束しだいである。
観察 6.3:しかし四通りのどれでも、1980 → 2024 と 1950 → 2024 の両方で、「年齢構成の効果 > 差 > 0 > 年齢別の率の効果」の並びは変わらない。
観察 6.4:量は約束で決まり、向きはデータで決まる。 本稿が言い切るのは向きまでである。
7. 隣り合う年どうし、年齢別の率の効果が正になった三つの区間
計算 7.1 1950 年から 2024 年までの隣り合う 23 区間を、それぞれ北川の分解で分ける。
- 年齢構成の効果が正の区間:23 / 23
- 年齢別の率の効果が正の区間:3 個(2020→2021、2021→2022、2023→2024)

図2:区間ごとの差を、年数で割って 1 年あたりにしてある。金色が年齢構成の効果、紺色が年齢別の率の効果、黒い点が粗死亡率の差である。二つの効果がともに正の区間は、紺色を金色の上に積んである。
観察 7.2:年齢構成の効果(1 年あたり)は、1950→1955 の +1.5 から、2016→2017 の +36.1 まで大きくなった。高齢化の押し上げは、区間を追うごとに強くなっている。
計算 7.3 2019 年から 2024 年の区間
| 区間 | 差 | 年齢構成の効果 | 年齢別の率の効果 |
|---|---|---|---|
| 2019 → 2020 | −3.2 | +23.3 | −26.5 |
| 2020 → 2021 | +60.3 | +33.1 | +27.2 |
| 2021 → 2022 | +113.1 | +35.3 | +77.8 |
| 2022 → 2023 | +14.6 | +31.1 | −16.5 |
| 2023 → 2024 | +34.3 | +28.2 | +6.1 |
観察 7.4:2020 年から 2024 年をまとめて分けると、差 +222.3 は年齢構成の効果 +126.4 と年齢別の率の効果 +95.9 に分かれ、率の側が 0.432 を占める。それまでの 20 区間では、率の効果はいつも負だった。公式の年齢調整死亡率も、男は 13.3 から 14.2、女は 7.2 から 7.8 へ上がっている。
観察 7.5:本稿は、この区間で年齢別の率が上がった原因を述べない。 分解が言えるのは、上昇のうちどれだけが率の側にあるかまでである。
8. 年齢調整死亡率、公式の値を計算し直す
年齢調整死亡率は、年齢別の率を、決めた一つの人口構成(基準人口)に当てはめて平均したものである。厚生労働省は平成27年モデル人口を基準にしている(第5.2表)。
計算 8.1 平成27年モデル人口で、男女別の公式値(人口千対)を計算し直す
| 年の範囲 | 表にある率 | 小数 1 桁で一致 | 再計算 − 公式 |
|---|---|---|---|
| 2005〜2024 | 90〜94 歳と 95 歳以上を分けられる | 26 / 26 | 、 |
| 1950 | 90 歳以上の率だけ | 2 / 2 | 男 −0.038・女 +0.020 |
| 1955〜2000 | 90 歳以上の率だけ | 0 / 20 | −0.499 から −0.063 |
計算 8.2 昭和60年モデル人口(85 歳以上を一つにまとめた基準人口)で、平成28年版の第5.2表の公式値を計算し直すと、32 個のうち 30 個が小数 1 桁で一致し、食い違いの最大は 0.0937 である。
観察 8.3:95 歳以上を分けられる年は、公式の値をすべて再現する。昭和60年モデル(85 歳以上を分けない)は、1955〜2000 年も含めて再現する。したがって、1955〜2000 年の平成27年モデルの食い違いは、90 歳より上の分け方にあると絞れる。そこで公式がどの率を使ったかは、本稿では確かめていない。また、90 歳以上を一つにまとめて平成27年モデルを当てると、一致は 7 / 48 に落ちる。基準人口が細かく分けている所で、率を粗くまとめてはいけない。
計算 8.4 男女計の年齢調整死亡率(本稿の計算・19 階級・人口10万対)
| 年 | 粗死亡率 | 平成27年モデル | 昭和60年モデル |
|---|---|---|---|
| 1950 | 1087.6 | 3645.3 | 1631.1 |
| 1980 | 621.4 | 2087.5 | 728.6 |
| 2015 | 1029.8 | 1048.2 | 358.1 |
| 2020 | 1112.5 | 973.8 | 334.4 |
| 2024 | 1334.5 | 1050.3 | 356.7 |
観察 8.5:1980 年から 2024 年への比は、平成27年モデルで 0.503、昭和60年モデルで 0.490 である。ところが水準は、2024 年で平成27年モデル ÷ 昭和60年モデル = 2.945、1980 年で 2.865、1950 年で 2.235 と大きく違う。年齢調整死亡率の値そのものは、基準人口という約束の産物である。読むべきは動きである。
観察 8.6:平成27年モデル人口の総数 125,319,000 は、2015 年の逆算した人口の和 125,321,432 に近い。基準人口に近い年では、粗死亡率と年齢調整死亡率がほとんど重なる(2015 年に 1029.8 と 1048.2)。二つの線は 2015 年と 2016 年のあいだで入れ替わる。

図1:縦軸は対数目盛。紺が粗死亡率(公表値)、金が平成27年モデル人口による年齢調整、灰色の破線が昭和60年モデル人口による年齢調整(どちらも本稿の計算・男女計)。二本の年齢調整の線は、水準は違うがほぼ平行に下がる。どちらも 2020 年が最も低い。
9. 限界
- 年齢は 5 歳階級で、90 歳以上をまとめた。 階級の中での年齢の偏りの変化は、年齢別の率の効果に入る。
- 年齢と性のほかの構成は測っていない。 性で分けても年齢構成の効果は +1522.3 から +1539.5 へ少し動くだけだったが、地域・国籍などの構成の変化は、年齢別の率の効果に混ざっている。
- 分け方の量は約束で動く(第6節)。本稿が言い切るのは、四通りで変わらない向きまでである。
- 原因を述べない。 年齢別の率が下がった理由も、2020 年以降に上がった区間の理由も、この分解の外にある。死因にも分けていない。
- 分母は逆算した人口である。 国勢調査の年は人口推計と相対 0.00566 以内で合うが、2016〜2019 年は最大 0.02081 まで広がる。
- 1955〜2000 年の公式の年齢調整死亡率(平成27年モデル)は、この表だけでは再現できない(第8節)。
- 日本・全死因だけである。 他の国、死因別、地域別については何も述べない。
結び
「死亡率が上がった」は、測ってみると二つの別の動きの和だった。1980 年から 2024 年に、粗死亡率は 2.148 倍になった。同じ 44 年間に、年齢別の死亡率は 19 階級すべてで下がった。北川の分解では、年齢構成の効果 +1522.3 が上昇の全部を超えて押し上げ、年齢別の率の効果 −808.8 が押し下げている。分け方を四通りに替えると量は 1.919 倍動くが、向きは一度も変わらない。
分けるものは一つ、動かしたのが年齢構成か、年齢別の率か、である。
そして 2020 年からの区間では、初めて年齢別の率の側も上昇に加わった(2020→2024 の 0.432)。その理由は、この分解が答える問いの外にある。
データと再現
| データ | 厚生労働省『人口動態統計』令和6年(確定数)上巻 第5.15表・第5.2表・付録第6表(平成27年・昭和60年モデル人口)、平成28年 上巻 第5.2表。総務省統計局『人口推計』第3表(2000〜2020 年)。すべて e-Stat から取得(2026年9月25日に利用) |
| 利用条件 | e-Stat のコンテンツは政府標準利用規約(第2.0版)に準拠(CC BY 4.0 互換)。本稿の数は、これらを加工して作成したものである |
| 範囲 | 日本(日本における日本人)・全死因・1950〜2024 年(1950〜2010 年は 5 年おき、2014〜2024 年は毎年) |
| 年齢階級 | 5 歳階級 18 と 90 歳以上(計 19) |
| 検算 | 検算/M001.py(--zu で図も書き出す)。本文の数字はすべて 検算/M001_output.txt から取っている |
| 生データ | data/ に取得したそのままのファイル 6 本と SOURCES.md(URL・取得日・SHA-256)。検算は走らせるたびに SHA-256 を照合する |
| 図 | 図/M001_zu1・図/M001_zu2・図/M001_zu3(png・svg・英語版) |
参考文献
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- 総務省統計局. 人口推計 第3表 年齢(5歳階級及び3区分),男女別人口(各年10月1日現在)-総人口,日本人人口(2000年~2020年). e-Stat(2026年9月25日に利用). https://www.e-stat.go.jp/
- 山岸勇輝 (2026). 同じ表が、二つの正しい答を持つ [論文183]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22104230
- 山岸勇輝 (2026). 三百本目の点呼、同根か別根かは、判定できる [論文300]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22171914
作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。
書誌
山岸勇輝(2026)「「死亡率が上がった」は、年齢構成の動きと年齢別の率の動きを一語で呼んでいる」[M001]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.22963112
日付の証拠(OpenTimestamps):日本語版の .ots・英語版の .ots・SHA256SUMS
予備の置き場所(ミラー。中身は上と同じです):PDF 日本語・PDF English・SHA256SUMS
住所:https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/M001・DOI 10.5281/zenodo.22963112・CC BY 4.0・プレプリント(査読を経ていません)・ORCID 0009-0006-8587-3450
引用するとき
山岸勇輝 (2026). 「死亡率が上がった」は、年齢構成の動きと年齢別の率の動きを一語で呼んでいる [M001]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/M001 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22963112
Yamagishi, Y. (2026). “The Death Rate Rose” Names Two Movements at Once, the Age Composition and the Age-Specific Rates [M001]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/M001; DOI: 10.5281/zenodo.22963112
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author = {Yamagishi, Yuuki},
title = {"The Death Rate Rose" Names Two Movements at Once, the Age Composition and the Age-Specific Rates},
year = {2026},
howpublished = {YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/M001},
doi = {10.5281/zenodo.22963112},
note = {Preprint}
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指紋(SHA-256)と確かめ方
74300e612b74bc25e2d64a2704658a3d6b701d3de08423ccf5d16d0090941839 yamagishi_M001__20260926_jp.pdfc6653b092c2bc923f3681a51a4898a4e81178cb8dac916167d47f3291cffd400 yamagishi_M001__20260926_en.pdfPDF と .ots を同じ場所に保存し、opentimestamps.org に .ots、続けて PDF を落とすと、記録された日時が表示されます。PDF が 1 バイトでも変わっていれば通りません。