要旨
ドップラー効果は一つの現象だと思われている。本稿が示すのは、古典には答が二つあり、相対論のそれは二つの幾何平均に $15$ 桁一致することである。そして横方向では、片方にしか効果が無い。新しい定理も法則も主張しない。
第一に、$\beta=0.1$ で古典の二式は $1.111111111$ と $1.100000000$ に分かれる。差は $0.011111111$ である(第2節)。
第二に、これが本稿の芯である。相対論の値 $1.105541597$ は、その二つの幾何平均にちょうど一致する。$1.105541596785133$ 対 $1.105541596785133$(第3節)。
第三に、相加平均とは一致しない。差は $0.000013959$ である(第3節)。
第四に、$\beta\to0$ では三つとも一致する。$\beta=10^{-6}$ で差は $5.000\times10^{-13}$ である(第3節)。
第五に、横方向では古典が $\mathbf{1.000000000}$、相対論が $\mathbf{0.994987437}$ で、後者だけに効果がある(第4節)。
第六に、分離子は「動いているのが誰かを問う効果か、問わない効果か」である(第5節)。
キーワード:ドップラー効果、相対論的ドップラー効果、幾何平均、横ドップラー効果、特殊相対論。
射程(何を示さないか)
新しい定理も法則も主張しない。古典ドップラー効果の二つの式も、相対論的ドップラー効果も、横ドップラー効果も標準的である。媒質の物理を扱わない。音波の分散、風、非一様な媒質は主題ではない。静止した媒質と、真空中の光だけを見る。実験を設計しない。アイヴス=スティルウェルの実験の構成や誤差評価には立ち入らない。加速を扱わない。等速運動だけを見る。加速する源については何も言わない。幾何平均であることに機構を与えない。一致は代数から出る恒等式であり、本稿はそれを確かめるところまでである。既刊との関係:論文24 は片道の光速が測れないと示し、ドップラー比が同期を含まないことを使った。本稿はその比そのものを二つに分ける。論文292 は足せるのが対数だけだと示した。幾何平均が出るのは、掛け算の世界で平均を取ったからである。論文300 は同根か別根かが判定できると示した。古典の二式は別根であり、相対論の一式は同根に戻す。論文481 は分離子が無いと反証の行き先が決まらないと示した。本稿はその分離子を一本書く。加えたのは、古典の二式を $1.111111111$ と $1.100000000$ で並べたこと、相対論が幾何平均に $15$ 桁一致することを確かめたこと、相加平均との差 $0.000013959$ を出したこと、$\beta\to0$ の側を $5.000\times10^{-13}$ で確かめたこと、横のずれが二次であることを $4.030693$ 倍で示したことである。
1. 記法と問い
設定:振動数 $f_{0}$ の源と観測者が、速さ $v$ で近づく。$\beta=v/c$ と書く。媒質の静止系で考えると、古典の答は「誰が動いているか」で分かれる。
$$\frac{f}{f_{0}}=\frac{1}{1-\beta}\ \ (\text{源が動く}),\qquad
\frac{f}{f_{0}}=1+\beta\ \ (\text{観測者が動く})$$
相対論では一つしかない。
$$\frac{f}{f_{0}}=\sqrt{\frac{1+\beta}{1-\beta}}$$
以下 $\beta=0.1$ で数を出す。
観察 1.1 ドップラー効果は一つの現象だと思われている。近づけば高く、遠ざかれば低い。一つの式で書ける、という像である。
観察 1.2 だが古典には二つある。源が動くか、観測者が動くか、媒質という第三者がいるので、相対速度が同じでも答が違う。
問い:二つはどれだけ違い、相対論の一つはそのどこに来るのか。
2. 古典には答が二つある
計算 2.1:$\beta=0.10$ で三つを出す。
| 場合 | $f/f_{0}$ |
|---|---|
| 古典(源が動く) | $\mathbf{1.111111111}$ |
| 古典(観測者が動く) | $\mathbf{1.100000000}$ |
| 相対論 | $\mathbf{1.105541597}$ |
観察 2.2 古典の二式が食い違う。差 $0.011111111$、相対速度は同じなのに、答が $1.1$ パーセント違う。
観察 2.3 食い違いは二次からである。$1/(1-\beta)=1+\beta+\beta^{2}+\cdots$ と $1+\beta$、一次までは同じで、$\beta^{2}$ で分かれる。
観察 2.4 だから媒質があるかどうかは、原理的には測れる。二式のどちらが当たるかを見る。音ではそれができ、実際に区別がつく。
観察 2.5 光では、その区別がつかない。相対論の式は一つしかない。「誰が動いているか」を問う場所が無い。
3. 相対論は、その二つの幾何平均である
計算 3.1:古典の二値の平均を二通りに取り、相対論の値と比べる。
| 量 | 値 | 相対論との差 |
|---|---|---|
| 幾何平均 $\sqrt{(1/(1-\beta))(1+\beta)}$ | $\mathbf{1.105541596785133}$ | $0$ |
| 相対論 $\sqrt{(1+\beta)/(1-\beta)}$ | $\mathbf{1.105541596785133}$ | 、 |
| 相加平均 | $1.105555556$ | $0.000013959$ |
観察 3.2 幾何平均とは $15$ 桁一致する。$1.105541596785133$ 対 $1.105541596785133$、近いのではなく、代数として同じである。
観察 3.3 実際、式を掛ければ確かめられる。$\frac{1}{1-\beta}\cdot(1+\beta)=\frac{1+\beta}{1-\beta}$、平方根を取れば相対論の式そのものになる。
観察 3.4 相加平均とは一致しない。差 $0.000013959$、「二つの中間」というだけでは足りず、どの平均かが効いている。
観察 3.5 幾何平均が出るのは、比の世界だからである。振動数比は掛け算で合成される。論文292 が示したとおり、足せるのは対数だけで、掛け算の世界の平均は幾何平均になる。
観察 3.6 $\beta\to0$ では三つとも一致する。$\beta=10^{-6}$ で差 $5.000\times10^{-13}$、境目の反対側であり、低速では二つの理論を区別できない。
4. 横方向では、片方にしか効果が無い
計算 4.1:視線と垂直に動く場合を出す。
| 理論 | $f/f_{0}$ | ずれ |
|---|---|---|
| 古典 | $\mathbf{1.000000000}$ | $0$ |
| 相対論 | $\mathbf{0.994987437}$ | $0.005013$ |
観察 4.2 古典では何も起きない。$1.000000000$、近づいても遠ざかってもいないので、当然である。
観察 4.3 相対論では下がる。$0.994987437$、その値は $1/\gamma$ に一致し、逆算で $0.994987437107$ に戻る。
観察 4.4 つまりこれは時間の遅れそのものである。距離が変わらないのに振動数が下がる。動いている時計が遅れることだけが効いている。
観察 4.5 ずれは二次である。$\beta=0.10$ で $0.005012563$、$0.20$ で $0.020204103$、比 $4.030693$、$\beta$ を $2$ 倍にすると約 $4$ 倍で、一次の効果ではない。
観察 4.6 だから横ドップラーは、縦の効果の残りかすではない。縦が消える配置で残る。別の起源を持つ量である。
5. 分離子
分離子:「誰が動いているか」を問う効果か、問わない効果か。
観察 5.1 問うなら、答は二つになる。$1.111111111$ と $1.100000000$、媒質という基準があるからで、音がそれである。
観察 5.2 問わないなら、答は一つである。$1.105541597$、相対速度だけで決まり、光がそれである。
観察 5.3 二つは論文300 の基準で別根である。どちらも「ドップラー効果」と呼ばれる。一方は媒質に対する速度の効果、一方は相対速度の効果で、独立変数が違う。
観察 5.4 そして横ドップラーは、その分離子の検査になっている。媒質の話なら横では何も起きない。起きたなら、相対論の側である。
観察 5.5 論文24 はこの比を使って別のことを示した。ドップラー比は一つの時計の上の二つの事象から作られるので同期を含まない。本稿はその比が古典側では二つに割れることを見ている。
観察 5.6 これは論文481 でいう分離子の一本である。「ドップラーの式が合わない」という報告が来たとき、媒質を見落としたのか、二次の項を落としたのかで、直す先が違う。
観察 5.7 正直に言えば、幾何平均の一致に機構を与えていない。$\frac{1}{1-\beta}\cdot(1+\beta)=\frac{1+\beta}{1-\beta}$ という代数の恒等式である。「なぜ相対論が古典の二つのちょうど中間に来るのか」という問いには、本稿は答えていない。確かめたのは、そう来るという事実だけである。
6. 点呼と結び
- 古典は $1.111111111$ と $1.100000000$(計算 2.1):差 $0.011111111$。
- 食い違いは二次から(観察 2.3):一次までは同じ。
- 相対論は幾何平均に $15$ 桁一致(計算 3.1):本稿の芯。
- 相加平均とは $0.000013959$ 違う(観察 3.4):どの平均かが効く。
- $\beta\to0$ で $5.000\times10^{-13}$(観察 3.6):境目の反対側。
- 横は古典で $1.000000000$(計算 4.1):何も起きない。
- 横は相対論で $0.994987437$(観察 4.3):$1/\gamma$ に一致。
- 横のずれは二次(観察 4.5):$4.030693$ 倍。
- 分離子は誰が動くかを問うか(観察 5.3):論文300 の基準で別根。
- 幾何平均に機構は与えていない(観察 5.7):確かめたのは事実だけ。
結び:ドップラー効果は一つの現象だと思われている。近づけば高く遠ざかれば低い、一つの式で書けるという像である。だが古典には二つある。源が動くか観測者が動くかで、媒質という第三者がいるため、相対速度が同じでも答が違う。古典には答が二つある。$\beta=0.10$ で、源が動く場合は $\mathbf{1.111111111}$、観測者が動く場合は $\mathbf{1.100000000}$、差は $0.011111111$ で、相対速度は同じなのに答が $1.1$ パーセント違う。食い違いは二次からで、$1/(1-\beta)=1+\beta+\beta^{2}+\cdots$ と $1+\beta$ は一次までは同じである。だから媒質があるかどうかは原理的には測れ、音ではそれができて実際に区別がつく。光ではその区別がつかない。相対論の式は一つしかなく、「誰が動いているか」を問う場所が無い。相対論は、その二つの幾何平均である。幾何平均 $\sqrt{(1/(1-\beta))(1+\beta)}$ は $\mathbf{1.105541596785133}$、相対論 $\sqrt{(1+\beta)/(1-\beta)}$ も $\mathbf{1.105541596785133}$ で、$15$ 桁一致する。近いのではなく代数として同じで、$\frac{1}{1-\beta}\cdot(1+\beta)=\frac{1+\beta}{1-\beta}$ を掛けて平方根を取れば確かめられる。相加平均 $1.105555556$ とは $0.000013959$ 違い、「二つの中間」というだけでは足りず、どの平均かが効いている。幾何平均が出るのは比の世界だからで、振動数比は掛け算で合成され、論文292 が示したとおり足せるのは対数だけである。$\beta\to0$ では三つとも一致し、$\beta=10^{-6}$ で差は $5.000\times10^{-13}$、低速では二つの理論を区別できない。横方向では、片方にしか効果が無い。視線と垂直に動く場合、古典は $\mathbf{1.000000000}$ で何も起きないが、相対論は $\mathbf{0.994987437}$ と下がり、その値は $1/\gamma$ に一致して逆算で $0.994987437107$ に戻る。つまりこれは時間の遅れそのもので、距離が変わらないのに振動数が下がるのは、動いている時計が遅れることだけが効いているからである。ずれは二次で、$\beta=0.10$ で $0.005012563$、$0.20$ で $0.020204103$、比は $4.030693$、$\beta$ を $2$ 倍にすると約 $4$ 倍になる。だから横ドップラーは縦の効果の残りかすではなく、縦が消える配置で残る、別の起源を持つ量である。分けているものは一つ、「誰が動いているか」を問う効果か、問わない効果か。問うなら答は二つになり、媒質という基準があるからで、音がそれである。問わないなら答は一つで、相対速度だけで決まり、光がそれである。二つは論文300 の基準で別根であり、どちらも「ドップラー効果」と呼ばれるが、一方は媒質に対する速度の効果、一方は相対速度の効果で、独立変数が違う。そして横ドップラーはその分離子の検査になっている。媒質の話なら横では何も起きず、起きたなら相対論の側である。論文24 はこの比を使って別のことを示した。ドップラー比は一つの時計の上の二つの事象から作られるので同期を含まない。本稿はその比が古典側では二つに割れることを見ている。これは論文481 でいう分離子の一本で、「ドップラーの式が合わない」という報告が来たとき、媒質を見落としたのか二次の項を落としたのかで直す先が違う。正直に言えば、幾何平均の一致に機構を与えていない。$\frac{1}{1-\beta}\cdot(1+\beta)=\frac{1+\beta}{1-\beta}$ という代数の恒等式であって、「なぜ相対論が古典の二つのちょうど中間に来るのか」という問いに本稿は答えていない。確かめたのは、そう来るという事実だけである。
参考文献
- Doppler, C. (1842). Über das farbige Licht der Doppelsterne und einiger anderer Gestirne des Himmels. Böhmische Gesellschaft der Wissenschaften.
- Ives, H. E., & Stilwell, G. R. (1938). An Experimental Study of the Rate of a Moving Atomic Clock. Journal of the Optical Society of America.
- Einstein, A. (1905). Zur Elektrodynamik bewegter Körper. Annalen der Physik.
- 山岸勇輝 (2026). 『片道の光速は、測れない』[論文24]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22090261
- 山岸勇輝 (2026). 『足せるのは対数だけである』[論文292]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22171519
- 山岸勇輝 (2026). 『三百本目の点呼、同根か別根かは、判定できる』[論文300]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22171914
- 山岸勇輝 (2026). 『「法則が破れた」は、どの仮定へも落とせる』[論文481]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22733927
作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。
書誌
山岸勇輝(2026)「古典のドップラーは二つの式であり、相対論はその幾何平均である」[論文491]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.22760067
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引用するとき
山岸勇輝 (2026). 古典のドップラーは二つの式であり、相対論はその幾何平均である [論文491]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/491 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22760067
Yamagishi, Y. (2026). The Classical Doppler Effect Is Two Formulas, and Relativity Is Their Geometric Mean [Paper 491]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/491; DOI: 10.5281/zenodo.22760067
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