【M046】HbA1c の平均は 40〜44 歳から 70〜74 歳へ 0.426 しか上がらないのに、6.5 以上の人は 5.11 倍になる

要旨

特定健診(2022 年度)の HbA1c の分布が、年齢とともに平均ごと右へずれるだけなのか、形も変わるのかを、第10回 NDB オープンデータの「HbA1c 都道府県別性年齢階級別分布」(6 つの区分 × 男女 × 40〜74 歳の 5 歳階級)と「各項目の平均値」で確かめた。全国は 47 都道府県と判別不可の人数を足して出した(23,557,356 人)。新しい数学定理も新しい法則も主張しない。

第一に、表はそろっている。中計は 5 歳階級の和に一致し、10 未満で伏せた升目は 36 か所(足せなかった人は多くても 324 人)である(第3節)。

第二に、平均は年齢とともにゆっくり上がる。 40〜44 歳から 70〜74 歳へ、男性 5.485 → 5.911(+0.426)、女性 5.378 → 5.797(+0.419)(第4節)。

第三に、ここが本稿の芯である。線の上の割合の上がり方は、線の高さで違う。 40〜44 歳から 70〜74 歳へ、男性は 5.6 以上 2.16 倍・6.0 以上 4.76 倍・6.5 以上 5.11 倍・8.0 以上 1.77 倍・8.4 以上 1.35 倍で、真ん中の線がいちばん大きく増える(女性も 6.5 以上 7.87 倍がいちばん大きい)(第5節)。

第四に、40〜44 歳の分布を平均のずれだけ右へ動かした見込みと比べると、6.5 以上は男性で見込み 6.67 % に対し実際 16.34 %(2.45 倍)、女性で 3.26 % に対し 9.14 %(2.81 倍)。 男性の 8.4 以上は見込み 1.11 %・実際 1.17 %(1.05 倍)とほぼ見込みどおりで、女性は 1.64 倍(第6節)。

第五に、男性の 8.4 以上の割合は 55〜59 歳(1.58 %)がいちばん高く、70〜74 歳(1.17 %)はそれより低い。 平均は上がり続けるのに、裾の端は途中から増えない(第4節)。

第六に、分けるのは平均がずれたか、分布の形が変わったか。HbA1c では、年齢とともに 6.0〜8.0 のあたりが平均のずれ以上にふくらみ、いちばん上の端はそれほど増えない。

射程注記:本稿は新しい数学定理も新しい法則も主張しない。人数と平均は NDB オープンデータにあり、本稿は線ごとの割合と、平均のずれだけの見込みを比べただけである。本稿は公開の集計データの数の形を述べる構造的解釈であり、医学的な助言・診断・治療の推奨ではない。著者は医師ではない。個人の健康に関する判断は医師・医療機関に相談すること。査読を経ていないプレプリントである。 分布の形が変わった理由(治療・受診する人の顔ぶれ・加齢など)には立ち入らない。 特定健診を受けた人の数であり、国の人口全体の割合ではない。受ける人の顔ぶれは年齢で違う。見込みは区分の中を一様とみなしたもので、区分の幅(とくに 6.5〜8.0)が広いぶん粗い。一人の見通しではない。 都道府県は足して全国にするだけで、比べない。データについて:第10回 NDB オープンデータ(厚生労働省)は公共データ利用規約(第1.0版)に従って使い、本稿の割合・平均・見込みはそれを加工して作成した。本稿が加えたこと:HbA1c の線の上の割合の増え方が線の高さで違うことを示し、平均のずれだけの見込みと比べて、分布の形の変わり方を分けたこと。

1. 記号と問い

  • 線の上の割合:HbA1c(NGSP)が 5.6・6.0・6.5・8.0・8.4 以上の人の割合(区分の人数を足して総数で割る)。
  • 全国の平均:都道府県ごとの平均を、分布の表の人数で重みづけて出す。
  • 平均のずれだけの見込み:40〜44 歳の分布を、70〜74 歳との平均の差だけ右へ動かしたときの線の上の割合。区分の中は一様とみなす(累積の割合を直線でつなぐ)。動かした線が区分の中に入る 6.5・8.0・8.4 について出す。

問い:HbA1c の分布は、年齢とともに平均ごと右へずれるだけか。

観察 1.1:M040 は、血圧が 140 以上の人の割合がその年の平均でほぼ決まる(分布は形を保ってずれる)ことを示した。本稿は同じ問いを HbA1c に当て、違う答えが出ることを示す。M045 は、「糖尿病の人」の数が何を数えるかで桁が変わることを示した(HbA1c 6.5 % 以上は、その一つの物差しに使われている)。

2. 下見と設計

正直に書く:設計は表を見てから決めた。

内容
分布 第10回 NDB オープンデータ 特定健診「HbA1c 都道府県別性年齢階級別分布」(2022 年度・6 つの区分)
平均 同「各項目の平均値 都道府県別性年齢階級別分布」の HbA1C の行
物差し 線の上の割合、40〜44 歳 → 70〜74 歳の倍率、平均のずれだけの見込みとの比
全国の作り方 全国の行が無いので、47 都道府県と判別不可を足した
見込みと実測 8.4 以上の実際は、男女とも見込みの 1.2 倍より小さいと見込んでいた。実測では男性 1.05 倍・女性 1.64 倍で、女性は外れた

3. データと確かめ

計算 3.1 取得した 3 本のファイル(ページの写しと二つの表)を SHA-256 で固定し、次を確かめた。

  • ページの写しに、二つの表(HbA1c・各項目の平均値)の置き場所がある。表の見出しは「特定健診(HbA1C):2022年度」「特定健診 平均値:2022年度」。
  • 年齢の見出しは男女とも 40〜74 歳の 7 つと中計。都道府県の塊は 47 都道府県と判別不可の 48。中計 = 7 つの 5 歳階級の和(伏せた升目の無い行)。
  • 足した人数は 23,557,356 人。10 未満で伏せた升目は 36 か所で、足せなかった人は多くても 324 人(足した人数の 1 万分の 1 より少ない)。

4. 平均と線の上の割合

計算 4.1 年齢ごとの平均と、6.5 以上・8.4 以上の割合(%)

年齢 男:平均 男:6.5 以上 男:8.4 以上 女:平均 女:6.5 以上 女:8.4 以上
40〜44 歳 5.485 3.20 0.87 5.378 1.16 0.25
45〜49 歳 5.580 5.32 1.21 5.439 1.83 0.34
50〜54 歳 5.677 8.01 1.52 5.548 2.94 0.49
55〜59 歳 5.760 10.74 1.58 5.645 4.29 0.56
60〜64 歳 5.821 12.97 1.45 5.699 5.68 0.56
65〜69 歳 5.873 14.78 1.33 5.748 7.28 0.54
70〜74 歳 5.911 16.34 1.17 5.797 9.14 0.54

観察 4.2:平均は男女とも年齢とともに上がり、5.6・6.0・6.5 以上の割合も年齢とともに上がる。 ところが男性の 8.4 以上の割合は 55〜59 歳の 1.58 % がいちばん高く、70〜74 歳は 1.17 % と下がる。8.0 以上も男性では 55〜59 歳がいちばん高い。女性の 8.4 以上は 55〜59 歳から先、0.54〜0.56 % でほとんど動かない。

図1 HbA1c が線の上にいる人の割合

図1:線(5.6・6.0・6.5・8.0・8.4)の上にいる人の割合(縦は対数)。男性では下の二本(8.0・8.4 以上)が 55〜59 歳から下がる。女性では 8.4 以上が 55〜59 歳から平らになり、8.0 以上はゆっくり上がり続ける。

5. 芯、線の高さで、増え方が違う

計算 5.1 40〜44 歳 → 70〜74 歳の倍率

男 女
平均の差 +0.426 +0.419
5.6 以上 2.16 倍 2.74 倍
6.0 以上 4.76 倍 7.30 倍
6.5 以上 5.11 倍 7.87 倍
8.0 以上 1.77 倍 2.77 倍
8.4 以上 1.35 倍 2.14 倍

観察 5.2:倍率は真ん中の線でいちばん大きい(男性 6.5 以上 5.11 倍・女性 6.5 以上 7.87 倍)。低い線(5.6 以上)は 2.16 倍・2.74 倍、高い線(8.4 以上)は 1.35 倍・2.14 倍にとどまる。平均の差は男性 +0.426・女性 +0.419 しかない。

6. 平均のずれだけで見込むと

計算 6.1 70〜74 歳:平均のずれだけの見込みと実際(%)

線 男:見込み 男:実際(÷ 見込み) 女:見込み 女:実際(÷ 見込み)
6.5 以上 6.67 16.34(2.45 倍) 3.26 9.14(2.81 倍)
8.0 以上 1.68 1.90(1.13 倍) 0.55 0.89(1.60 倍)
8.4 以上 1.11 1.17(1.05 倍) 0.33 0.54(1.64 倍)

観察 6.2:6.5 以上は、男性で見込み 6.67 % に対して実際 16.34 %(2.45 倍)、女性で 3.26 % に対して 9.14 %(2.81 倍)。 分布が形を保って右へずれただけなら、実際は見込みの近くに来るはずである。8.4 以上は男性で 1.05 倍とほぼ見込みどおり、女性は 1.64 倍で、どちらも 6.5 以上の倍より小さい。年齢とともに、6.0〜8.0 のあたりが平均のずれ以上にふくらんでいる。M040 の血圧(140 以上の割合は平均でほぼ決まる)とは違う形である。

図2 70〜74 歳:平均のずれだけの見込みと実際

図2:70〜74 歳の線の上の割合。水色が平均のずれだけの見込み、紺が実際。6.5 以上で差が大きい。

7. 限界

  1. 特定健診を受けた人の数である(40〜74 歳)。受ける人の顔ぶれは年齢で違い、国の人口全体の割合ではない。
  2. 見込みは区分の中を一様とみなしている。 6.5〜8.0 の区分は幅が広く、その中の形しだいで見込みは動く。
  3. 一年度(2022 年度)の年齢の違いを見ており、同じ人の年齢による変化ではない(生まれ年の違いも入る)。
  4. 形が変わった理由には立ち入らない。
  5. 都道府県は比べない。一人の見通しではない。

結び

2022 年度の特定健診で、HbA1c の平均は 40〜44 歳から 70〜74 歳へ 0.426(男性)しか上がらないのに、6.5 以上の人は 5.11 倍になり、平均のずれだけで見込む 6.67 % に対して実際は 16.34 % だった。8.4 以上の人は、男性ではかえって 55〜59 歳がいちばん多い。

分けているものは一つ、平均がずれたか、分布の形が変わったか。

「平均は少ししか上がっていない」と聞いたら、線の上の割合がどう動いたか、線の高さを変えて一緒に確かめる。

データと再現

データ 第10回 NDB オープンデータ(厚生労働省)特定健診「HbA1c 都道府県別性年齢階級別分布」「各項目の平均値 都道府県別性年齢階級別分布」(2022 年度・2026 年 9 月 26 日に取得)
利用条件 厚生労働省のページは公共データ利用規約(第1.0版)に従う。本稿の割合・平均・見込みは、これらを加工して作成したもので、国が作成した数ではない
範囲 日本(47 都道府県と判別不可を足した全国)・特定健診を受けた 40〜74 歳・2022 年度
検算 検算/M046.py(--zu で図も書く)。本文の数字はすべて 検算/M046_output.txt から取った
生データ data/ に取得した 3 本と SOURCES.md(URL・取得日・SHA-256・利用条件・定義と計算の置き方)
図 図/M046_zu1・図/M046_zu2(png・svg・英語版)

参考文献

  • 厚生労働省. 第10回NDBオープンデータ 特定健診(HbA1c 都道府県別性年齢階級別分布・各項目の平均値 都道府県別性年齢階級別分布)(2026年9月26日に利用). https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000177221_00016.html
  • 山岸勇輝 (2026). 血圧が 140 以上の人の割合は、その年の平均でほぼ決まる。2013〜2023 年の 8 回の調査の 50 歳以上で、平均だけから当てた割合との差のばらつきは 1.76 ポイント、平均のいちばん大きい下がりは 6 つの升目のうち 4 つで血圧計が替わった 2018→2019 年 [M040]. Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22974334
  • 山岸勇輝 (2026). 「糖尿病の人」の数は、何を数えるかで桁が変わる。70 歳以上の 10 万人あたり、検査で強く疑われる 19,500・通院している 12,130・その日に受療した 449〜1,948・一年に亡くなる 44.8、40〜49 歳からの上がり方も 3.1 倍から 29.4 倍まで違う [M045]. Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22974556

作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。

書誌

山岸勇輝(2026)「HbA1c の平均は 40〜44 歳から 70〜74 歳へ 0.426 しか上がらないのに、6.5 以上の人は 5.11 倍になる」[M046]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.22974590

YOI M046医療統計ビットコインに記録済み

日付の証拠(OpenTimestamps):日本語版の .ots・英語版の .ots・SHA256SUMS

予備の置き場所(ミラー。中身は上と同じです):PDF 日本語・PDF English・SHA256SUMS

住所:https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/M046・DOI 10.5281/zenodo.22974590・CC BY 4.0・プレプリント(査読を経ていません)・ORCID 0009-0006-8587-3450

引用するとき

山岸勇輝 (2026). HbA1c の平均は 40〜44 歳から 70〜74 歳へ 0.426 しか上がらないのに、6.5 以上の人は 5.11 倍になる [M046]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/M046 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22974590

Yamagishi, Y. (2026). The Mean HbA1c Rises Only 0.426 from Ages 40–44 to 70–74, Yet People at 6.5 or Above Increase 5.11-Fold [M046]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/M046; DOI: 10.5281/zenodo.22974590

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  author = {Yamagishi, Yuuki},
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