【I017】火葬場3,511のうち、動いているのは1,349

要旨

衛生行政報告例(令和6年度)の第5表から、墓地・火葬場・納骨堂の数を経営主体別に数え、I010 で数えた火葬件数と突き合わせた。

墓地は876,042区域、火葬場は3,511施設、納骨堂は13,853施設。

火葬場3,511のうち、過去1年以内に稼働実績があるのは1,349施設(38.4%)。2,162施設(61.6%)は使われていない。

ただしこれは全国平均で、実態は二分されている。 17都道府県では100%が動いている一方、福井県は557施設のうち14(2.5%)、石川県は437のうち13(3.0%)、三重県は640のうち28(4.4%)。中央値は94.7%である。

墓地の82.4%(721,647区域)は個人が経営している。 地方公共団体は3.4%、宗教法人は6.7%にすぎない。

逆に、恒常的に使用している火葬場の97.5%は地方公共団体である。 納骨堂の73.9%は宗教法人。

火葬1,674,137件を恒常火葬場1,349施設で割ると、1施設あたり1,241件/年、1日あたり3.4件。

北海道は、墓地2,002区域に対して納骨堂1,846施設でほぼ同数である。 納骨堂÷墓地は0.922で、全国の0.0158の58.3倍。墓地のうち個人経営はわずか1.5%で、47都道府県中最下位である。

1. はじめに

I010 では、埋葬383件・火葬1,674,137件・改葬176,105件を数えた。あれは件数で、施設ではない。

第5表は、その火葬と埋葬が行われる場所を数えている。

墓地・火葬場・納骨堂は、日本にいくつあるのか。だれが経営しているのか。そのうち、実際に動いているのはいくつか。

2. データ

墓地・火葬場・納骨堂 厚生労働省「衛生行政報告例」令和6年度 第5表(生活衛生)。令和6年度末現在。経営主体は地方公共団体・公益社団財団法人・宗教法人・個人・その他
火葬件数 同 第6表(I010 で数えたもの)
事業所・従業者 総務省・経済産業省「経済センサス-活動調査」令和3年 795 火葬・墓地管理業/796 冠婚葬祭業
人口・高齢化率 総務省「住民基本台帳に基づく人口」2026年1月1日

47都道府県すべての行がそろい、4つとも合計が全国の値とぴたり一致する(墓地876,042、火葬場3,511、恒常1,349、納骨堂13,853、いずれも差0)。

「恒常的に使用している火葬場」とは、過去1年以内に稼働実績のある火葬場をいう(第5表の注1)。

墓地の単位は「区域」で、施設ではない。

3. 結果

3-1 墓地876,042、火葬場3,511、納骨堂13,853

数
墓地 876,042 区域
火葬場 3,511 施設
うち恒常的に使用 1,349 施設(火葬場の38.4%)
納骨堂 13,853 施設

墓地は火葬場の250倍、恒常的に使用している火葬場の649倍ある。

3-2 墓地の82.4%は個人が経営している

墓地876,042区域の経営主体 区域 割合
個人 721,647 82.4%
その他 65,234 7.4%
宗教法人 58,700 6.7%
地方公共団体 30,024 3.4%
公益社団・財団法人 437 0.0%

日本の墓地の8割は、個人が経営している。

火葬場と納骨堂では、まったく違う。

地方公共団体 公益社団財団 宗教法人 その他
火葬場 3,511 1,832(52.2%) 6(0.2%) 29(0.8%) 1,644(46.8%)
恒常火葬場 1,349 1,315(97.5%) 2(0.1%) 4(0.3%) 28(2.1%)
納骨堂 13,853 760(5.5%) 115(0.8%) 10,244(73.9%) 2,734(19.7%)

実際に動いている火葬場の97.5%は、地方公共団体が経営している。 民間の火葬場はほとんど動いていない。

納骨堂の73.9%は宗教法人である。

3-3 動いている火葬場の割合は、二分されている

横棒グラフ。47都道府県を、恒常的に使用している火葬場の割合が小さい順に並べてある。北海道を色を変えて示し、全国の38.4%に縦線を引いている。

図1 火葬場のうち、過去1年に動いたものの割合(47都道府県、令和6年度)。
灰色は都道府県、橙は北海道、青の縦線は全国の38.4%。

全国 38.4%(1,349/3,511)
中央値 94.7%
100%の都道府県 17/47
高い 青森100.0%(36/36)/宮城100.0%(27/27)/秋田100.0%(25/25)
低い 三重4.4%(28/640)/石川3.0%(13/437)/福井2.5%(14/557)
上と下 39.8倍

全国平均の38.4%は、実態を表していない。 47都道府県のうち17は100%で、中央値は94.7%である。

平均が下がっているのは、福井・石川・三重のように「使われていない火葬場を数百件かかえた県」が少数あるためである。

相関(47都道府県) r
稼働率 × 人口(対数) +0.135
稼働率 × 高齢化率 +0.146

稼働率は、人口とも高齢化率とも関係しない。

3-4 1施設あたり1日3.4件

火葬 1,674,137件 ÷ 恒常火葬場 1,349施設 1,241件/年
1日あたり(365日で割った) 3.4件
火葬場すべて3,511で割ると 477件/年
1施設あたりの火葬件数
多い 東京5,576/神奈川5,258/埼玉4,031
少ない 北海道505/岐阜437/島根415
上と下 13.4倍、中央値916件
人口(対数)との相関 r = +0.765

都市部ほど1施設あたりの件数が多い。 東京都は1日あたり15.3件になる。

3-5 人口10万人あたり

全国 多い 少ない 上と下 中央値
墓地(区域) 707.8 島根15,270/岡山5,960/長野4,201 東京67.1/北海道40.1/大阪36.0 424倍 511
納骨堂(施設) 11.2 佐賀77.4/熊本66.8/鹿児島60.5 千葉2.0/埼玉1.9/神奈川1.6 48倍 6.8

島根県には人口10万人あたり15,270区域の墓地がある。大阪府の36.0の424倍である。

墓地のうち個人経営の割合
全国 82.4%
高い 沖縄99.2%/島根98.7%/長野97.2%
低い 鹿児島22.2%/宮崎17.7%/北海道1.5%
中央値 68.2%

3-6 経済センサスと突き合わせる

事業所 従業者 1事業所あたり ある市区町村
795 火葬・墓地管理業 1,580 9,217 5.83人 769
796 冠婚葬祭業 12,587 142,531 11.32人 1,532
突き合わせ 比
火葬場3,511+納骨堂13,853 = 17,364 ⇔ 795の1,580 10.99倍
恒常火葬場1,349+納骨堂13,853 = 15,202 ⇔ 1,580 9.62倍
墓地876,042も足すと 565倍

墓地は「事業所」として数えられていない。 また火葬場の52.2%は地方公共団体が経営しており、経済センサスの事業所にならない。

3-7 北海道と釧路総合振興局管内

北海道
墓地 2,002区域
火葬場 173施設(うち恒常155、89.6%)
納骨堂 1,846施設(全国13,853の13.3%、6位/47)
納骨堂 ÷ 墓地 0.922(全国0.0158の58.3倍)
墓地の経営主体 地方公共団体1,504(75.1%)/宗教法人418(20.9%)/個人31(1.5%、47位/47)
火葬1施設あたり 78,350件 ÷ 155施設 = 505件/年(45位/47。全国1,241件)
人口10万人あたり 墓地40.1(46位)/納骨堂36.9(6位)

北海道は、墓地2,002に対して納骨堂1,846でほぼ同数である。 全国では墓地876,042に対して納骨堂13,853で、墓地の1.6%にすぎない。

北海道の墓地は、4分の3が地方公共団体の経営で、個人はわずか1.5%。全国とまるで逆である。

釧路管内(経済センサス 令和3年、I010 で数えたもの):

市町村 795 火葬・墓地管理業 796 冠婚葬祭業
釧路市 1 22
釧路郡釧路町 0 1
厚岸町 0 1
浜中町 1 0
標茶町 0 2
弟子屈町 0 2
鶴居村 1 1
白糠町 0 3

4. 考察

4-1 平均が実態を表さないとき

全国の稼働率は38.4%だが、中央値は94.7%で、17都道府県は100%である。この2つの数字は、まったく違う姿を描く。

38.4%だけを見れば「日本の火葬場の6割は使われていない」となる。中央値94.7%を見れば「ほとんどの県では火葬場は使われている」となる。どちらも正しい。

起きているのは、福井557・石川437・三重640という、極端に多くの火葬場を登録している県が少数あることである。これらの県の火葬場数は、人口規模から予想されるものよりはるかに多い。

古くからの小さな火葬場が、廃止の手続きをされないまま台帳に残っていると考えられるが、この表からは確かめられない。 第5表は登録の有無を数えており、なぜ残っているかは書いていない。

I009 で公衆浴場23,668のうち銭湯が2,730だったこと、I012 で管理技術者の選任率が99.65%だったことと同じで、衛生行政の表は「制度の上での数」と「実際に動いている数」を別に持っている。 第5表はその2つを明示的に分けている点で、むしろ親切な表である。

4-2 墓地の82.4%が個人であること

日本の墓地876,042区域のうち721,647が個人経営である。

これは、墓地が「商売」ではないことを意味する。 経済センサスの795(火葬・墓地管理業)は1,580事業所しかなく、墓地の数の0.18%にあたる。

個人の墓地とは、多くの場合、家や集落が持っている小さな墓所である。 島根県の人口10万人あたり15,270区域、沖縄県の個人割合99.2%は、そうした形が残っている地域だと読める。ただし区域の大きさは分からないので、区域の数がそのまま墓の数や面積を表すわけではない。

一方で、動いている火葬場の97.5%は地方公共団体である。 死んだ人をどうするかという同じ話のなかで、墓地は個人の手に、火葬は行政の手にある。

4-3 北海道だけ、形が違う

北海道の数字は、全国の型から外れている。

全国 北海道
墓地のうち個人 82.4% 1.5%(47位)
墓地(人口10万人あたり) 707.8 40.1(46位)
納骨堂(人口10万人あたり) 11.2 36.9(6位)
納骨堂 ÷ 墓地 0.0158 0.922(58.3倍)

北海道には、人口あたりの墓地が全国で2番目に少なく、納骨堂は6番目に多い。 そして墓地の4分の3は市町村が経営している。

理由として開拓の歴史(明治以降に計画的に作られた集落と共同墓地)、積雪、寺院の配置などが考えられる。だがこれは仮説であり、この表では確かめられない。 第5表には設置の時期も経緯も無い。

言えるのは、「墓地は個人が持つもの」という全国の型が、北海道には当てはまらないということだけである。

4-4 1日3.4件という規模

恒常火葬場1,349施設で1,674,137件だから、1施設あたり1日3.4件。東京都では15.3件になるが、島根県では1.1件である。

この規模の施設を、市町村が単独で持ち続けられるかという問題がある。 R005 の計算では、2050年までに1,876市区町村の人口中央値は0.664(−33.6%)になる。一方で高齢化により死亡数はしばらく増える。

火葬場の需要は、人口ではなく死亡数で決まる。 I010 で見たとおり、改葬と火葬の関係、高齢化率と火葬の相関(r = +0.936)は強い。人口が減る局面と、死亡数が増える局面は、同じ時期に重なる。

本稿はその先を計算していない。言えるのは、いま1施設あたり1日3.4件だということだけである。

4-5 釧路管内で見えるもの

釧路管内の795(火葬・墓地管理業)は、釧路市1・浜中町1・鶴居村1の3事業所しかない。796(冠婚葬祭業)は32事業所。

火葬場そのものは市町村が持つので、経済センサスには出てこない。 出てくるのは、その周りの民間の商売である。

I015 で見たとおり、鶴居村には理容所1・美容所2しかない。その村に、795が1事業所ある。 人口2,368人の村で、この種の事業所が1つあるということは、人口では説明できない形で残っている商売だということになる。

5. 限界

  • 衛生行政報告例は令和6年度末現在、経済センサスは令和3年6月1日。時点が3年10か月ちがう
  • 墓地の単位は「区域」で、1区域の大きさ(面積・区画数)は分からない
  • 「恒常的に使用している火葬場」は過去1年以内に稼働実績のあるもの(第5表の注1)
  • 火葬件数は都道府県の合計で、火葬場ごとの件数ではない。 県境をまたぐ利用は分けられない
  • 1施設あたりの火葬件数は平均で、施設ごとの分布は見ていない
  • 火葬場の多くは地方公共団体が経営し、経済センサスの「事業所」にならない
  • 墓地は事業所として数えられない。 795との比は、単位が違うものの比である
  • 衛生行政報告例に市区町村別の表は無い
  • 使われていない火葬場が残っている理由(廃止手続き・台帳)は仮説であり、この表では確かめられない
  • 北海道で納骨堂が多い理由(開拓の歴史・雪・寺院の配置)も仮説であり、確かめられない
  • 相関は関係の強さの目安で、原因と結果の向きは示さない

6. 再現の手順

  1. e-Stat で衛生行政報告例 令和6年度の第5表(生活衛生、墓地・火葬場・納骨堂数)を落とす(CP932)
  2. 全国の行と、北海道から沖縄県までの47行を取る(「指定都市(再掲)」より下は使わない)
  3. 総数・地方公共団体・公益社団財団法人・宗教法人・個人・その他の6区分で、墓地・火葬場・恒常火葬場・納骨堂を取る
  4. 恒常火葬場 ÷ 火葬場で稼働率を出し、平均だけでなく中央値も出す
  5. 第6表の火葬件数を恒常火葬場の数で割る
  6. 人口10万人あたりを出し、経済センサスの795・796と突き合わせる

本稿の数値は、すべて1本のスクリプト(kensan_208)の出力である。中間の数値を手で書き写していない。

この論文の位置づけ

新しい理論を主張するものではない。衛生行政報告例の第5表を経営主体別に数え、I010 で数えた火葬件数と突き合わせただけである。火葬場3,511のうち恒常的に使用しているのが1,349(38.4%)であること、ただし中央値は94.7%で17都道府県は100%であること、墓地の82.4%が個人経営で恒常火葬場の97.5%が地方公共団体であること、北海道では墓地と納骨堂がほぼ同数であることを示した。使われていない火葬場が残っている理由と、北海道の形が違う理由については仮説を挙げたが、この表では確かめられない。相関は示したが、原因と結果の向きは示していない。

参考文献・データの出典

  1. 厚生労働省「衛生行政報告例」令和6年度、第5表・第6表(生活衛生)
  2. 総務省・経済産業省「経済センサス-活動調査」令和3年、第9-1A表・第9-1B表
  3. 総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数調査」2026年1月1日現在
  4. 山岸勇輝「「公衆浴場」23,668のうち、銭湯は2,730」(I009)。Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22876425
  5. 山岸勇輝「土葬は383件、火葬は1,674,137件」(I010)。Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22876503
  6. 山岸勇輝「特定建築物48,608を管理する登録営業所は17,842」(I012)。Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22877101
  7. 山岸勇輝「理容所107,995、美容所277,752」(I015)。Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22878037
  8. 山岸勇輝「その商売は、1事業所あたり何人か」(X001)。Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22877856
  9. 山岸勇輝「2050年、その町から何分類が消えるか」(R005)。Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22877595

版の記録

版 日付 内容
第1版 2026-09-22 初出

引用のしかた

山岸勇輝(2026)「火葬場3,511のうち、動いているのは1,349、福井県は557施設のうち14 [I017]」Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22879157

(この DOI は concept DOI。常に最新の版を指す。引用にはこれを使う)

© 2026 山岸 勇輝(Yuuki YAMAGISHI)

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書誌

山岸勇輝(2026)「火葬場3,511のうち、動いているのは1,349」[I017]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.22879157

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引用するとき

山岸勇輝 (2026). 火葬場3,511のうち、動いているのは1,349 [I017]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/I017 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22879157

Yamagishi, Y. (2026). Of 3,511 Crematoria, 1,349 Are in Use: Fukui Has 557 and Uses 14 [I017]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/I017; DOI: 10.5281/zenodo.22879157

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