【論文861】色の素が半分壊れても、布は半分白くならない

要旨

漂白は「色の素を壊すこと」と言われる。本稿は、色の素の減り方と、見た目の白さの戻り方がずれることを数える。新しい定理も法則も主張しない。

第一に、色の素が半分残っていても、光はほとんど通らない。はじめ $0.010000$ の光が、色の素が半分でも $0.100000$ しか通らない(第2節)。

第二に、白くなるのは終わりのほうである。色の素の残りが $0.1$ で $0.630957$、$0.05$ で $0.794328$ である(第2節)。

第三に、これが本稿の芯である。見た目が半分白くなるのは、色の素が半分になるよりずっと後である。時間の比は $\mathbf{2.732021}$ である(第3節)。

第四に、その比は濃さで決まる。比ははじめの吸光度 $A_{0}$ について $\log_{2}A_{0}+1.732021$ で、濃いほど長く待つ(第3節)。

第五に、光の半分は、常用対数で $\log_{10}2$ である。吸光度 $1$ のとき、見た目が半分になる色の素の残りは $\mathbf{0.301030}$ で、論文288・612・719 の同根の組に四つ目として出会う(第4節)。

第六に、分離子は、残った色の素の量を問うか、通る光の割合を問うかである。前者は一定の速さの割合で減り、後者はその指数で戻る(第5節)。

キーワード:漂白、吸光度、ランベルト=ベールの法則、一次反応、通る光、模型。

射程(何を示さないか)

新しい定理も法則も主張しない。通る光の割合が吸光度の指数で決まること(ランベルト=ベールの法則)、吸光度が色の素の量に比例すること、一次反応で量が指数で減ることは、いずれも既知である。実在の漂白を主張しない。はじめの吸光度 $2$、一次の壊れ方は模型の値と置き方で、どの薬剤にも繊維にも対応しない。反応機構に入らない。どの結合がどう切れるかは扱わない。繊維の傷みを扱わない。漂白で布が弱ることは主題ではない。目の感じ方を入れない。人が明るさを対数的に感じることは入れない。通る光の割合だけを見る。既刊との関係:論文719 は「混色」が一つの演算ではなく、片方は足し算、もう片方は通過率の掛け算であることを示し、ランベルト=ベールの法則を既知として置いた。本稿はその席には座らず、隣に置く。あちらは色を重ねる側、こちらは色の素を壊す側である。論文288・612・719 は $\log_{10}2=0.301030$ を「$2$ 倍が一桁のうち占める割合」として同根にまとめた。ここでは通る光を半分にする吸光度の差として同じ数が出る。光の半分が常用対数で $\log_{10}2$ であるという同じ源から来るので、論文300 の意味で同根と書く。加えたのは、色の素の残りと通る光の割合を並べたこと、見た目が半分になる時間の比 $2.732021$ を測ったこと、その比が $\log_{2}A_{0}+1.732021$ と書けると確かめ、$1.732021$ が $\sqrt{3}$ と別物だと切り分けたこと、分離子を「色の素の量か、通る光か」に置いたことである。

1. 記法と問い

設定:色の素の残りの割合を $c$、はじめの吸光度を $A_{0}$ とし、通る光の割合を $T$ とする。色の素は一定の速さの割合で壊れる(一次)と置く。

$$T=10^{-A_{0}c},\qquad c(t)=e^{-kt},\qquad
\frac{t_{T=1/2}}{t_{c=1/2}}=\log_{2}A_{0}-\log_{2}\!\left(\log_{10}2\right)$$

右の式は、$T=1/2$ となる $c$ が $\log_{10}2/A_{0}$ であることから出る。本稿は $A_{0}=2$、$k=1$ で数える。

問い:色の素が半分壊れたとき、布は半分白くなるか。

2. 色の素の残りと、通る光

計算 2.1:色の素の残りごとに、通る光の割合を出した。

色の素の残り 通る光
$1.00$ $0.010000$
$0.50$ $0.100000$
$0.25$ $0.316228$
$0.10$ $0.630957$
$0.05$ $0.794328$
$0.00$ $1.000000$

観察 2.2 色の素が半分でも、光はほとんど通らない。通る光は $0.100000$ で、半分の $0.5$ に遠く届かない。通る光は色の素の量の指数で決まるので、濃いうちは減らしても見た目がほとんど変わらない。

観察 2.3 白くなるのは終わりのほうである。残りが $0.1$ から $0$ になるあいだに、通る光は $0.630957$ から $1$ まで上がる。最後の一割を壊す間に、見た目の変化の多くが起きる。

3. 時間のずれ

計算 3.1:速さ定数 $1$ で、色の素が半分になる時間と、通る光が半分になる時間を出した。

量 値
色の素が半分になる時間 $0.693147$
通る光が半分になる時間 $1.893693$
そのときの色の素の残り $0.150515$
時間の比 $2.732021$

観察 3.2 これが本稿の芯である。見た目が半分白くなるのは、ずっと後である。色の素が半分になる時間の $2.732021$ 倍待って、ようやく通る光が半分になる。そのとき色の素は $0.150515$ しか残っていない。

計算 3.3:はじめの吸光度を変えて、時間の比を出した。

はじめの吸光度 半分になるときの色の素の残り 時間の比
$0.5$ $0.602060$ $0.732021$
$1.0$ $0.301030$ $1.732021$
$2.0$ $0.150515$ $2.732021$
$3.0$ $0.100343$ $3.316983$

観察 3.4 比は $\log_{2}A_{0}+1.732021$ と書ける。四つとも差 $10^{-12}$ 未満で一致し、吸光度が $2$ 倍になるたびに比は $1$ ずつ増える。濃いほど、見た目が変わり始めるまで長く待つ。

観察 3.5 紛らわしい近さを切っておく。定数 $1.732021$ は $-\log_{2}(\log_{10}2)=1.732020846$ で、$\sqrt{3}=1.732050808$ とは差 $2.996\times10^{-5}$ の別物である。同じ批次の論文860 に $\sqrt{3}$ が出るが、源は違う。

4. 光の半分は $\log_{10}2$

観察 4.1 吸光度 $1$ のとき、見た目が半分になる色の素の残りは $\log_{10}2$ そのものである。値は $0.301029996$ で、$\log_{10}2=0.301029996$ と一致する。通る光を半分にするには、吸光度を $\log_{10}2$ だけ減らせばよいからである。

観察 4.2 これは同根の四つ目である。論文719 は、論文288(二分法が一回で得る桁)と論文612(先頭が $1$ になる割合)とともに、$0.301030$ を「$2$ 倍が一桁のうち占める割合」として同根にまとめた。ここでは「光が $2$ 倍違うことが、吸光度の一桁のうちに占める幅」として同じ数が出る。源が同じなので、論文300 の意味で同根と書く。

5. 分離子

観察 5.1 分離子は、残った色の素の量を問うか、通る光の割合を問うかである。前者は一定の速さの割合で減り、後者はその指数で戻る。「どれだけ漂白したか」は、どちらで測るかで $2.732021$ 倍違う時刻を指す。

観察 5.2 論文719 の隣に置く。719 は、混色の片方が通過率の掛け算であることを示した。あちらは色を重ねる側、こちらは色の素を壊す側である。重ねると掛け算で暗くなり、壊すと指数で遅れて明るくなる。

観察 5.3 言わないこと。実在の漂白剤や繊維も、反応機構も、布の傷みも、目の感じ方も扱わない。示したのは、色の素の減り方と見た目の戻り方がずれるということである。

6. 点呼と結び

  1. 色の素が半分で光は $0.100000$(計算 2.1):半分に届かない。
  2. 残り $0.1$ で $0.630957$(計算 2.1):終わりのほうで白くなる。
  3. 色の素が半分になる時間 $0.693147$(計算 3.1):はじめの目安。
  4. 光が半分になる時間 $1.893693$(計算 3.1):ずっと後。
  5. 比は $\mathbf{2.732021}$(計算 3.1):本稿の芯。
  6. 比は $\log_{2}A_{0}+1.732021$(観察 3.4):濃いほど長い。
  7. $1.732021$ は $\sqrt{3}$ と別物(観察 3.5):差 $2.996\times10^{-5}$。
  8. 吸光度 $1$ で残り $\mathbf{0.301030}$(観察 4.1):$\log_{10}2$ そのもの。
  9. 同根の四つ目(観察 4.2):論文288・612・719。
  10. 色の素の量か、通る光か(観察 5.1):分離子・論文719・300。

結び:色の素が半分壊れても、布は半分白くならない。はじめの吸光度を $2$ とすると、色の素が半分残っていても通る光は $0.100000$ にとどまり、通る光が半分になるのは色の素が半分になる時間の $2.732021$ 倍後で、そのとき色の素は $0.150515$ しか残っていない。通る光は色の素の量の指数で決まるので、濃いうちは壊しても見た目がほとんど変わらないからである。その時間の比ははじめの吸光度について $\log_{2}A_{0}+1.732021$ と書け、定数 $1.732021$ は $\sqrt{3}$ と差 $2.996\times10^{-5}$ の別物である。比は、光の半分が常用対数で $\log_{10}2$ であることから出る。吸光度 $1$ のときその残りは $0.301030$ そのもので、論文288・612・719 がまとめた同根の組に四つ目として出会う。既刊との位置:論文719 の「重ねると掛け算」の隣に「壊すと指数で遅れて戻る」を置き、$\log_{10}2$ を論文300 の意味で同根と書いた。正直に言えば、吸光度 $2$ と一次の壊れ方は模型で、人が明るさをどう感じるかは入れていない。

参考文献

  1. Atkins, P., & de Paula, J. (2014). Atkins’ Physical Chemistry. Oxford University Press.
  2. 山岸勇輝 (2026). 『「どれが速いか」には三つの答があり、三つとも別の方法が勝つ』[論文288]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/288 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22171328
  3. 山岸勇輝 (2026). 『三百本目の点呼、同根か別根かは、判定できる』[論文300]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/300 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22171914
  4. 山岸勇輝 (2026). 『先頭の数字が 1 になるのは三割だが、それは桁をまたいで広がるデータだけである』[論文612]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/612 ・ DOI: 10.5281/zenodo.23014476
  5. 山岸勇輝 (2026). 『「混色」は一つの演算ではない。片方は足し算で、もう片方は通過率の掛け算である』[論文719]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/719 ・ DOI: 10.5281/zenodo.23014997
  6. 山岸勇輝 (2026). 『引いて切ると楽なのは、刃が鋭くなるからではなく、動く向きから見た刃の角が小さくなるから』[論文860]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/860

作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。

書誌

山岸勇輝(2026)「色の素が半分壊れても、布は半分白くならない」[論文861]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/861

YOI 861第1版・2026年9月ビットコインに記録済み

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引用するとき

山岸勇輝 (2026). 色の素が半分壊れても、布は半分白くならない [論文861]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/861

Yamagishi, Y. (2026). Destroying Half the Dye Does Not Make the Cloth Half White [Paper 861]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/861

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