【論文864】上の段ほど物質の量は減るのに、濃さは上がる

要旨

物質は食物連鎖を上がるほど濃くなる、と言われる。本稿は、上の段で物質の量そのものは減っていることを数え、濃さを上げているものを分ける。新しい定理も法則も主張しない。

第一に、生き物の量は段ごとに $0.1$ 倍になる。食べた量の $0.1$ が体になると置くと、五段目の生き物の量ははじめの $1.000000\times10^{-4}$ である(第2節)。

第二に、これが本稿の芯である。物質の量は減るのに、濃さは上がる。食べた物質の $0.9$ が体に残ると、五段目の物質の量は $\mathbf{0.656100}$ に減り、濃さは $\mathbf{6561.000000}$ 倍になる(第2節)。

第三に、一段の濃縮は、残る割合を体になる割合で割った値である。一段ずつ質量で数えた濃さは、五通りの残る割合すべてで、その比の四乗と割合の差 $10^{-9}$ 未満で一致した(第3節)。

第四に、残る割合が体になる割合を下回れば、上の段ほど薄まる。残る割合 $0.1$ で濃さは $1.000000$ 倍のまま、$0.05$ では $\mathbf{0.062500}$ 倍になる(第3節)。

第五に、物質がすべて残っても、量は増えない。残る割合 $1.0$ で五段目の物質の量は $1.000000$ のまま、濃さは $10000.000000$ 倍である。濃さの上がりは、すべて分母から来ている(第3節)。

第六に、分離子は、物質の量を数えるか、生き物の量で割るかである。量は上の段ほど減り、生き物の量で割った濃さは上がる。同じ鎖が、どちらを問うかで逆を向く(第4節)。

キーワード:生物濃縮、食物連鎖、濃縮の倍率、段ごとの効率、濃さ、模型。

射程(何を示さないか)

新しい定理も法則も主張しない。生物濃縮、段ごとに生き物の量が目減りすること、濃縮の倍率が残る割合と体になる割合の比で書けることは、いずれも既知である。実在の値を主張しない。体になる割合 $0.1$ と残る割合は模型の値で、どの物質にもどの生態系にも対応しない。仕組みを入れない。体からの排出の速さ、体の大きさ、脂への溶けやすさ、水から直接取り込む分は入れない。鎖を単純にした。一つの段は一つ前の段だけを全部食べる、とした。毒性を論じない。濃さが体に何をするか、基準値をどう置くかは扱わない。既刊との関係:論文417 は、食物連鎖の段数に上限があるのは生き物の都合ではないことを示した。本稿はその隣に置く。あちらは段ごとに $10$ 分の一に減るエネルギーが段数を決めることを数えた。ここでは同じ $10$ 分の一が分母に入り、濃さを上げることを数える。加えたのは、段ごとに生き物の量・物質の量・濃さを並べたこと、物質の量が減りながら濃さが $6561.000000$ 倍になると測ったこと、残る割合を動かして濃くなる側と薄まる側の境を確かめたこと、分離子を「物質の量か、生き物の量で割るか」に置いたことである。

1. 記法と問い

設定:一段目の生き物の量を $1$、物質の量を $1$(濃さ $1$)とする。次の段は前の段を全部食べ、食べた量の割合 $\varepsilon$ が体になり、食べた物質の割合 $f$ が体に残る。$k$ 段目の生き物の量 $B_k$、物質の量 $M_k$、濃さ $C_k$ は次のようになる。

$$B_{k+1}=\varepsilon B_k,\qquad
M_{k+1}=fM_k,\qquad
C_k=\frac{M_k}{B_k}=\left(\frac{f}{\varepsilon}\right)^{k-1}$$

体になる割合は $\varepsilon=0.1$(論文417 と同じ $10$ 分の一)とし、段は五つとした。

問い:上の段で濃くなるのは、物質が集まってくるからか。

2. 段ごとの量と濃さ

計算 2.1:残る割合 $f=0.9$ で、段ごとに一段ずつ質量を追った。

段 生き物の量 物質の量 濃さ
$1$ $1.000000$ $1.000000$ $1.000000$
$2$ $0.100000$ $0.900000$ $9.000000$
$3$ $0.010000$ $0.810000$ $81.000000$
$4$ $0.001000$ $0.729000$ $729.000000$
$5$ $0.000100$ $0.656100$ $6561.000000$

観察 2.2 これが本稿の芯である。物質の量は減るのに、濃さは上がる。五段目の物質の量ははじめの $0.656100$ で、一段目より少ない。それでも濃さが $6561.000000$ 倍になるのは、生き物の量が $1.000000\times10^{-4}$ まで、物質よりずっと速く減るからである。

3. 残る割合を動かす

計算 3.1:残る割合 $f$ を五通りに変えて、五段目を比べた。

$f$ 一段の濃縮 $f/\varepsilon$ 五段目の物質の量 五段目の濃さ
$0.05$ $0.500000$ $6.250000\times10^{-6}$ $0.062500$
$0.10$ $1.000000$ $1.000000\times10^{-4}$ $1.000000$
$0.50$ $5.000000$ $6.250000\times10^{-2}$ $625.000000$
$0.90$ $9.000000$ $6.561000\times10^{-1}$ $6561.000000$
$1.00$ $10.000000$ $1.000000$ $10000.000000$

観察 3.2 境目は、残る割合が体になる割合と等しいところである。$f=\varepsilon=0.1$ では濃さは $1.000000$ のまま、$f=0.05$ では $0.062500$ 倍に薄まる。一段ずつ質量で数えた濃さは、五通りすべてで $(f/\varepsilon)^{4}$ と割合の差 $10^{-9}$ 未満で一致した。

観察 3.3 物質がすべて残っても、量は増えない。$f=1.0$ で五段目の物質の量は $1.000000$ のままで、濃さは $10000.000000$ 倍になる。物質の量はどの $f$ でも $1$ を超えない。濃さの上がりはすべて、分母の生き物の量が $10$ 分の一ずつ減ることから来ている。

4. 分離子

観察 4.1 分離子は、物質の量を数えるか、生き物の量で割るかである。量を数えれば上の段ほど減り、生き物の量で割れば上がる。同じ鎖の同じ数が、どちらを問うかで逆を向く。「上の段に物質が集まる」は、量の言葉としては誤りで、濃さの言葉としてだけ正しい。

観察 4.2 論文417 の隣に置く。417 は、段ごとに $10$ 分の一に減るエネルギーが食物連鎖の段数の上限を決めることを示した。そこでは $10$ 分の一は減る量として働いた。ここでは同じ $10$ 分の一が濃さの分母に入り、濃さを上げる側に働く。

観察 4.3 言わないこと。実在の物質や生態系の値も、排出の速さや体の大きさも、毒性や基準値も扱わない。示したのは、濃さを上げているのが物質の集まりではなく、分母の減り方だということである。

5. 点呼と結び

  1. 濃さは $(f/\varepsilon)^{k-1}$(第1節):量と生き物の量の比。
  2. 五段目の生き物の量 $1.000000\times10^{-4}$(計算 2.1):段ごとに $0.1$ 倍。
  3. $f=0.9$ で物質の量 $\mathbf{0.656100}$(計算 2.1):減っている。
  4. $f=0.9$ で濃さ $\mathbf{6561.000000}$ 倍(計算 2.1):本稿の芯。
  5. $f=0.5$ で $625.000000$ 倍(計算 3.1):一段 $5$ 倍。
  6. $f=0.1$ で $1.000000$ 倍(計算 3.1):境目。
  7. $f=0.05$ で $\mathbf{0.062500}$ 倍(計算 3.1):薄まる側。
  8. $f=1.0$ でも量は $1.000000$(観察 3.3):濃さは $10000.000000$ 倍。
  9. 一段ずつと式が割合の差 $10^{-9}$ 未満(観察 3.2):別々に出した。
  10. 物質の量か、生き物の量で割るか(観察 4.1):分離子・論文417。

結び:上の段ほど物質の量は減るのに、濃さは上がる。食べた量の $0.1$ が体になり、食べた物質の $0.9$ が残るとき、五段目の物質の量は $0.656100$ に減り、濃さは $6561.000000$ 倍になる。生き物の量が $1.000000\times10^{-4}$ まで、物質よりずっと速く減るからである。一段の濃縮は残る割合を体になる割合で割った値で、$0.5$ なら $625.000000$ 倍、$0.1$ なら $1.000000$ 倍、$0.05$ なら $0.062500$ 倍に薄まる。物質がすべて残っても量は $1.000000$ を超えず、濃さの上がりはすべて分母から来る。既刊との位置:論文417 が段数の上限として数えた $10$ 分の一の隣に、同じ $10$ 分の一が濃さの分母として働く側を置いた。正直に言えば、体になる割合と残る割合は模型の値で、排出の速さや体の大きさ、鎖の枝分かれは入れていない。

参考文献

  1. Begon, M., Townsend, C. R., & Harper, J. L. (2006). Ecology: From Individuals to Ecosystems (4th ed.). Blackwell.
  2. Pimm, S. L. (1982). Food Webs. London: Chapman & Hall.
  3. 山岸勇輝 (2026). 『食物連鎖の段数に上限があるのは、生き物の都合ではない』[論文417]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/417 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22699882

作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。

書誌

山岸勇輝(2026)「上の段ほど物質の量は減るのに、濃さは上がる」[論文864]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/864

YOI 864第1版・2026年9月ビットコインに記録済み

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引用するとき

山岸勇輝 (2026). 上の段ほど物質の量は減るのに、濃さは上がる [論文864]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/864

Yamagishi, Y. (2026). Higher Up the Chain There Is Less of the Substance, Yet It Is More Concentrated [Paper 864]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/864

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