【論文962】胴の板と空洞の二つの共鳴は、どう板を合わせても、空気だけをばねにした板の高さより近づかない

要旨

穴の開いた胴の空洞は一つの高さで響く(論文888)が、実際の胴では壁の板も動き、空洞の空気を介して首の空気と結びつく。本稿は、論文888 の空洞(体積 $0.010$ m³・穴の半径 $0.05$ m)の壁の一部を、面積 $0.04$ m²・質量 $0.2$ kg の板(置いた値)がピストンのように動く形にし、板のばねを動かして、結びついた二つの共鳴の高さがどこまで近づくかを数える。新しい定理も法則も主張しない。

第一に、二つの共鳴は、元の二つの高さの外側に押し離される。板を動かなくすると論文888 の $163.086441$ Hz に戻る。板を動かすと、七つの板のどれでも低い共鳴はヘルムホルツと穴をふさいだ板の高さの小さいほうより低く、高い共鳴は大きいほうより高かった(第2節)。

第二に、二つの高さの差は、直角三角形の斜辺になる。板のばねだけの高さ(空気なし)を $f_v$ とすると、差は $f_v$ とヘルムホルツの高さの差、空気だけをばねにした板の高さ $53.487201$ Hz を二辺とする斜辺で、七つの板で $10^{-6}$ Hz 以内で一致した(第2節)。

第三に、最も近づいても差は空気だけをばねにした板の高さである。式を使わずに板のばねを探すと、差の最小は $\mathbf{53.487201}$ Hz で、そのときの $f_v$ は $163.086443$ Hz とヘルムホルツにそろっていた。板の質量を $0.1$・$0.4$ kg にすると最小の差は $75.642324$・$37.821162$ Hz だった(第3節)。

第四に、穴をふさいだ板の高さをそろえても最も近づくわけではない。穴をふさいで空気のばねを含めた板の高さをヘルムホルツにそろえると、二つの共鳴は $133.694241$・$187.936757$ Hz で差 $54.242515$ Hz、最小の $\mathbf{1.014121}$ 倍だった。最小のときの穴をふさいだ板の高さは $171.633530$ Hz だった(第3節)。

第五に、分離子は、板の高さに空洞の空気のばねを含めて数えるか、含めずに数えるかである。含めずに数えた高さをそろえると差は最小になり、含めて数えた高さをそろえると最小より大きい。二つの数え方の違いがちょうど空気だけをばねにした板の高さで、それが最小の差になった(第4節)。

キーワード:ヘルムホルツ共鳴、結合振動、共鳴胴、空気のばね、固有振動数、楽器の胴。

射程(何を示さないか)

新しい定理も法則も主張しない。楽器の胴の低い音域を、空洞の空気と板の二つの振動子を結んだ模型で表すこと、結びついた二つの共鳴が元の高さの外側に押し離されること、二つの高さの積と二乗の和が元の値で決まることは、いずれも振動と楽器の音響で知られている。板を一つの形で動く板と置く。板はピストンのように一様に動くとし、板の曲げの形、いくつもの振動の形、板と空気の間の損失、音の放射は入れない。置いた値である。空洞は論文888 と同じ(音速 $343.0$ m/s・空気の密度 $1.2$ kg/m³・体積 $0.010$ m³・穴の半径 $0.05$ m・板の厚さ $0.003$ m・首の補正は半径の $1.7$ 倍)で、板の面積 $0.04$ m² と質量 $0.2$ kg は本稿で置いた。どの楽器の胴にも対応しない。音色を扱わない。どちらの共鳴がどれだけ鳴るか、聞こえ方、実際のギターや太鼓の値は扱わない。既刊との関係:論文888 の射程注記は、板の振動を入れず、胴の板が振動して空洞と結びつくこと、壁で音が吸われることは入れないと書いた。本稿はそのうち板が振動して空洞と結びつく席に座る(先客なし)。論文888 は、穴の開いた空洞の響く高さが長さで決まる管の共鳴とは違い、体積と穴の比で決まり、形に依らないことを示した。ここでは、その空洞の壁が動くとき、響く高さが二つに分かれてどこまで近づけるかを数える。加えたのは、板を結んだ二つの共鳴を七つの板で出したこと、二つの高さの差が斜辺になることを確かめたこと、式を使わずに差の最小を探したこと、穴をふさいだ板の高さをそろえたときと比べたこと、分離子を「空気のばねを含めて数えるか、含めずに数えるか」に置いたことである。

1. 記法と問い

設定:論文888 の空洞(音速 $c=343.0$ m/s・空気の密度 $\rho=1.2$ kg/m³・体積 $V=0.010$ m³・穴の半径 $0.05$ m・板の厚さ $0.003$ m・首の長さに半径の $1.7$ 倍を足す)で、首の空気の質量は $m_n=8.293805\times10^{-4}$ kg、空洞のばねの係数は $\kappa=\rho c^2/V=1.411788\times10^{7}$ Pa/m³ である。首の空気の外向きの変位を $x$(穴の面積 $S_n$)、壁の板の外向きの変位を $y$(面積 $S_p=0.04$ m²・質量 $m_p=0.2$ kg・板のばね $k_p$)とすると、空洞の圧力は $p=-\kappa(S_nx+S_py)$ で、

$$m_n\ddot x=S_np,\qquad m_p\ddot y=-k_py+S_pp$$

である。角振動数で $\omega_H^2=S_n^2\kappa/m_n$(ヘルムホルツ)、$\omega_v^2=k_p/m_p$(板のばねだけ・空気なし)、$\omega_a^2=S_p^2\kappa/m_p$(空気だけをばねにした板)、$\omega_b^2=\omega_v^2+\omega_a^2$(穴をふさいだ板)と置くと、結びついた二つの角振動数は

$$\omega_1^2+\omega_2^2=\omega_H^2+\omega_b^2,\qquad \omega_1\omega_2=\omega_H\omega_v,\qquad (\omega_2-\omega_1)^2=(\omega_H-\omega_v)^2+\omega_a^2$$

を満たす。検算では固有値を数値で出してこれらと突き合わせた。

問い:板のばねをどう選んでも、二つの共鳴の高さはどこまで近づけるか。

2. 二つの共鳴と、その差

計算 2.1:ヘルムホルツは $f_H=163.086441$ Hz、空気だけをばねにした板は $f_a=53.487201$ Hz。板のばねだけの高さ $f_v$ を七通りに置いた二つの共鳴。

$f_v$(Hz) $f_b$(Hz) 低い共鳴 高い共鳴 差 斜辺
$80.000000$ $96.233469$ $75.043614$ $173.857769$ $98.814156$ $98.814156$
$120.000000$ $131.380671$ $109.706192$ $178.388956$ $68.682764$ $68.682764$
$140.000000$ $149.869545$ $124.756476$ $183.013359$ $58.256883$ $58.256883$
$163.086441$ $171.633528$ $138.521059$ $192.008259$ $\mathbf{53.487201}$ $53.487201$
$180.000000$ $187.778808$ $145.566533$ $201.664207$ $56.097675$ $56.097675$
$220.000000$ $226.408658$ $154.349847$ $232.452560$ $78.102713$ $78.102713$
$300.000000$ $304.730833$ $159.587324$ $306.577811$ $146.990487$ $146.990487$

斜辺は $\sqrt{(f_H-f_v)^2+f_a^2}$。七つの板で、差は斜辺と $10^{-6}$ Hz 以内、二つの共鳴の積は $f_Hf_v$ と相対 $10^{-9}$ 以内で一致し($f_v=80$ Hz で $13046.915309$ と $13046.915309$)、低い共鳴は $f_H$ と $f_b$ の小さいほうより低く、高い共鳴は大きいほうより高かった。板のばねを $10^{12}$ N/m にすると低い共鳴は $163.086439$ Hz だった。

観察 2.2 二つの共鳴は押し離され、その差は斜辺になる。差は $f_v$ がヘルムホルツにそろった行で最も小さく、離れた行ほど大きかった。$f_v=300$ Hz で差 $146.990487$ Hz、$f_v=80$ Hz で $98.814156$ Hz だった。$f_v$ がヘルムホルツにそろった行で、差は $f_a$ と同じ $53.487201$ Hz だった。

3. 最も近づく板

計算 3.1:式を使わず、$f_v$ を $50$ から $400$ Hz の間で黄金分割($200$ 回)で探して、数値の固有値の差を最小にした。

そろえた高さ 二つの共鳴(Hz) 差(Hz) 最小に対する比
差が最小($f_v=163.086443$ Hz・$f_b=171.633530$ Hz) $138.521060$・$192.008260$ $\mathbf{53.487201}$ $1$
穴をふさいだ板 $f_b=f_H$ $133.694241$・$187.936757$ $54.242515$ $\mathbf{1.014121}$

探した最小の差は $f_a$ と $10^{-6}$ Hz 以内、そのときの $f_v$ は $f_H$ と $10^{-3}$ Hz 以内だった。板の質量を $0.1$・$0.4$ kg にして $f_v=f_H$ と置くと、差は $75.642324$・$37.821162$ Hz で、それぞれの $f_a$($75.642324$・$37.821162$ Hz)と $10^{-6}$ Hz 以内だった。

観察 3.2 二つの共鳴は、空気だけをばねにした板の高さより近づかない。最も近づくのは、空気を含めない板の高さ $f_v$ をヘルムホルツにそろえたときである。穴をふさいだ板の高さ $f_b$ をそろえると、差は $54.242515$ Hz で最小の $1.014121$ 倍だった。板を軽くすると $f_a$ が上がり、最小の差も $0.1$ kg で $75.642324$ Hz に広がった。

4. 分離子

観察 4.1 分離子は、板の高さに空洞の空気のばねを含めて数えるか、含めずに数えるかである。含めずに数えた $f_v$ をヘルムホルツにそろえると、差は最小の $53.487201$ Hz になった。含めて数えた $f_b$ をそろえると $54.242515$ Hz だった。二つの数え方の二乗の差 $\omega_b^2-\omega_v^2$ が空気だけをばねにした板の $\omega_a^2$ で、その $f_a$ が最小の差になった。

観察 4.2 言わないこと。板の曲げの形、いくつもの振動の形、損失と放射、どちらの共鳴がどれだけ鳴るか、実際の楽器の値は扱わない。示したのは、ピストンのように動く板を論文888 の空洞に結んだ模型で、二つの共鳴の差が斜辺になり、空気だけをばねにした板の高さより近づかないことである。

5. 点呼と結び

  1. 二つの角振動数の和・積・差(第1節):差は斜辺。
  2. 七つの板で差と斜辺が $10^{-6}$ Hz 以内(計算 2.1):押し離される。
  3. 最小の差 $\mathbf{53.487201}$ Hz(計算 3.1):空気だけをばねにした板の高さ。
  4. 穴をふさいだ板をそろえると $\mathbf{1.014121}$ 倍(計算 3.1):最小ではない。
  5. 質量 $0.1$・$0.4$ kg で $75.642324$・$37.821162$ Hz(計算 3.1):最小の差も $f_a$。
  6. 空気のばねを含めるか、含めないか(観察 4.1):分離子・論文888 の射程注記。

結び:胴の板と空洞の二つの共鳴は、どう板を合わせても、空気だけをばねにした板の高さより近づかない。論文888 の $163.086441$ Hz の空洞に、面積 $0.04$ m²・質量 $0.2$ kg の板を結ぶと、二つの共鳴の差は板のばねだけの高さとヘルムホルツの差、空気だけをばねにした板の高さ $53.487201$ Hz を二辺とする斜辺になった。差の最小は $53.487201$ Hz で、空気を含めない板の高さをヘルムホルツにそろえたときだった。穴をふさいだ板の高さをそろえると差は $54.242515$ Hz だった。分離子は、板の高さに空洞の空気のばねを含めて数えるか、含めずに数えるかである。既刊との位置:論文888 が板を動かさずに数えた空洞の響く高さに、論文888 が入れなかった板の振動を結んだ。正直に言えば、実際の胴の板は曲がり、いくつもの形で振動する。ピストンのように動く一枚の板で、二つの共鳴がどこまで近づけるか、そこまでである。

参考文献

  1. Fletcher, N. H., & Rossing, T. D. (1998). The Physics of Musical Instruments (2nd ed.). Springer.
  2. Kinsler, L. E., Frey, A. R., Coppens, A. B., & Sanders, J. V. (2000). Fundamentals of Acoustics (4th ed.). Wiley.
  3. 山岸勇輝 (2026). 『共鳴胴の響く高さは、長さで決まる管の共鳴と違い、体積と穴の比で決まり、形に依らない』[論文888]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/888

作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。

書誌

山岸勇輝(2026)「胴の板と空洞の二つの共鳴は、どう板を合わせても、空気だけをばねにした板の高さより近づかない」[論文962]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/962

YOI 962第1版・2026年9月ビットコインに記録済み

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引用するとき

山岸勇輝 (2026). 胴の板と空洞の二つの共鳴は、どう板を合わせても、空気だけをばねにした板の高さより近づかない [論文962]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/962

Yamagishi, Y. (2026). The Air and Plate Resonances of a Body Never Come Closer Than the Plate’s Frequency on the Air Spring Alone [Paper 962]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/962

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