要旨
伐らずに測る立木の材積は、直径・樹高・形の係数の三つの誤差が重なり、三つを独立とすると相対誤差は $0.102470$ になる(論文891)。本稿は、三つの誤差に相関を入れ、材積の相対誤差がどれだけ動くか、どの組の相関がいちばん効くかを、一次の式・誤差を正規分布としたときの正確な値・乱数の三通りで数える。新しい定理も法則も主張しない。
第一に、いちばん効くのは形の係数と樹高の組である。相関 $1$ あたりに分散が動く量は、形の係数と樹高 $0.0080$、直径と形の係数 $0.0064$、直径と樹高 $0.0040$ で、独立のときの分散は $0.0105$ だった(第2節)。
第二に、相関 $\pm0.5$ で相対誤差は独立の $0.786796$ 倍から $1.175139$ 倍まで動く。形の係数と樹高の相関が $+0.5$ なら $0.120416$(独立の $1.175139$ 倍)、$-0.5$ なら $\mathbf{0.080623}$($0.786796$ 倍)、直径と樹高なら $0.111803$ と $0.092195$ だった(第2節)。
第三に、一つの組の相関だけでは、誤差は二倍にならない。一つの組で届く最大は形の係数と樹高の $+1$ で $\mathbf{1.327368}$ 倍だった。半分にするには形の係数と樹高の相関が $-0.984375$ 要り、三つとも $+1$ なら $0.170000$($1.659030$ 倍)だった(第3節)。
第四に、三つの相関を選べば一次の誤差は 0 になる。寄与 $0.04$・$0.05$・$0.08$ は三角形をつくれ($0.04+0.05=0.09$ が $0.08$ を超える)、直径と樹高 $0.575000$・直径と形の係数 $-0.859375$・形の係数と樹高 $-0.912500$ で一次の式は $0$ になった。誤差を正規分布としたときの正確な値は $0.006486$(独立の $\mathbf{0.063181}$ 倍)で、$0$ にはならなかった(第4節)。
第五に、分離子は、三つの寄与が三角形をつくれるかどうかである。直径は二乗で入るので寄与が $0.04$ になり、三角形がつくれる。仮に直径を一乗で数えると寄与は $0.02$・$0.05$・$0.08$ で三角形をつくれず、相関をどう選んでも一次の式は $0.010000$ より下がらなかった(第5節)。
キーワード:材積、誤差の伝播、相関、形の係数、相対誤差、ガウス・エルミート求積。
射程(何を示さないか)
新しい定理も法則も主張しない。積の形の量の相対誤差が、相関を入れると共分散の項を持つこと(誤差の伝播の式)、正の相関で誤差が増え負の相関で減ること、相関の行列が半正定値でなければならないことは、いずれも測定の不確かさの扱いで既知である。相関の値を置く。相関の値は本稿で置いたもので、どの森やどの測り方で起きるかは主張しない。偶然の誤差だけを扱う。三つの誤差は平均 $0$ の正規分布と置き、測り方の偏り(系統誤差)、形の係数の樹種による違いは入れない。一本の木だけを扱う。論文891 と同じ直径 $0.30$ m・樹高 $20.0$ m・形の係数 $0.45$ の一本で、林全体の標本の取り方は扱わない。既刊との関係:論文891 の射程注記は、相関を入れず、三つの誤差は互いに独立としたと書いた。本稿はその席に座る(先客なし)。論文891 は、三つの誤差を独立とすると材積の相対誤差は $0.102470$ で、分散の取り分は直径 $0.152381$・樹高 $0.238095$・形の係数 $0.609524$ であることを示した。ここでは、その三つに相関を入れたとき、どの組がどれだけ誤差を動かし、どこまで消えうるかを数える。論文938 と論文957 は、林を層に分けたときの標本の誤差を数えた。ここでの誤差は一本の木の三つの量の誤差で、標本の取り方の誤差ではない。加えたのは、相関 $1$ あたりに分散が動く量を三つの組で並べたこと、九通りの相関で一次の式と正確な値を出したこと、一つの組で届く最大と半分にする相関を出したこと、三つの相関で一次の誤差が消えることと直径の冪の役を示したこと、分離子を「三つの寄与が三角形をつくれるか」に置いたことである。
1. 記法と問い
設定:材積は論文891 と同じく $V=f\cdot\frac{\pi D^2}{4}\cdot h$ で、直径 $D=0.30$ m・樹高 $h=20.0$ m・形の係数 $f=0.45$ に、相対の標準偏差 $\varepsilon_D=0.02$・$\varepsilon_h=0.05$・$\varepsilon_f=0.08$ の誤差を乗せる。直径は二乗で入るので、材積の相対誤差への寄与は $a_D=2\varepsilon_D=0.04$、$a_h=0.05$、$a_f=0.08$ である。相関を $\rho_{Dh}$・$\rho_{fh}$・$\rho_{Df}$ とすると、一次の式は
$$\left(\frac{\sigma_V}{V}\right)^2\approx a_D^2+a_h^2+a_f^2+2\rho_{Dh}a_Da_h+2\rho_{fh}a_fa_h+2\rho_{Df}a_Da_f$$
である。三つの誤差を相関のある正規分布とし、$V/V_0=(1+\varepsilon_Dz_D)^2(1+\varepsilon_hz_h)(1+\varepsilon_fz_f)$ の平均と二乗の平均をガウス・エルミート求積(一つの向きに $6$ 点)で出して、正確な標準偏差とした(被積分関数は多項式なので、$8$ 点にしても $0.102653410$ と $0.102653410$ で $10^{-12}$ 以内で同じ)。乱数では $400000$ 本の木を作った。
問い:三つの誤差に相関があるとき、材積の相対誤差はどれだけ動き、どこまで下がりうるか。
2. 相関の効き方
計算 2.1:独立のとき、一次の式は $0.102470$、正確な値は $0.102653$。分散の取り分は直径 $0.152381$・樹高 $0.238095$・形の係数 $0.609524$。相関 $1$ あたりに分散が動く量 $2a_ia_j$ は、形の係数と樹高 $0.0080$、直径と形の係数 $0.0064$、直径と樹高 $0.0040$(独立のときの分散 $0.0105$)。
計算 2.2:九通りの相関での相対誤差。
| 相関 | 一次の式 | 独立に対する比 | 正確な値 |
|---|---|---|---|
| 形の係数と樹高 $+0.5$ | $0.120416$ | $1.175139$ | $0.120655$ |
| 形の係数と樹高 $-0.5$ | $\mathbf{0.080623}$ | $0.786796$ | $0.080782$ |
| 直径と形の係数 $+0.5$ | $0.117047$ | $1.142262$ | $0.117326$ |
| 直径と形の係数 $-0.5$ | $0.085440$ | $0.833809$ | $0.085560$ |
| 直径と樹高 $+0.5$ | $0.111803$ | $1.091089$ | $0.112113$ |
| 直径と樹高 $-0.5$ | $0.092195$ | $0.899735$ | $0.092250$ |
| 形の係数と樹高 $+1$ | $0.136015$ | $1.327368$ | $0.136330$ |
| 形の係数と樹高 $-1$ | $0.050000$ | $0.487950$ | $0.050217$ |
| 三つとも $+1$ | $0.170000$ | $1.659030$ | $0.171177$ |
九通りとも、正確な値と一次の式の差は $0.002$ 以内だった。
計算 2.3:乱数 $400000$ 本の相対誤差は、独立で $0.102625$(正確な値 $0.102653$・差 $-0.000029$)、形の係数と樹高 $-0.5$ で $0.080812$($0.080782$・差 $0.000030$)、三つとも $+1$ で $0.170836$($0.171177$・差 $-0.000342$)で、三つとも正確な値と $0.002$ 以内だった。
観察 2.4 いちばん効くのは、寄与の積が大きい形の係数と樹高の組である。効く順は形の係数と樹高、直径と形の係数、直径と樹高で、$2a_ia_j$ の順と同じだった。相関 $\pm0.5$ で、形の係数と樹高なら相対誤差は独立の $1.175139$ 倍と $0.786796$ 倍、直径と樹高なら $1.091089$ 倍と $0.899735$ 倍に動いた。
3. 一つの組の相関でできること
計算 3.1:一つの組だけの相関で届く最大は、形の係数と樹高 $+1$ の $1.327368$ 倍。形の係数と樹高の相関だけで相対誤差を独立の半分にするには相関 $-0.984375$ が要り、そのとき一次の式は $0.051235$ だった。三つとも $+1$ では $0.170000$($1.659030$ 倍)だった。
観察 3.2 一つの組の相関だけでは、誤差は二倍に届かず、半分にするには強い負の相関が要る。正の相関で最も効く組を $+1$ にしても $1.327368$ 倍で、二倍には届かない。半分にするには形の係数と樹高の相関を $-0.984375$ まで負にする必要があった。
4. 三つの寄与の三角形
計算 4.1:一次の式は、長さ $a_D$・$a_h$・$a_f$ のベクトルを相関の余弦の角で足した長さの二乗である。$0.04+0.05=0.09$ は $0.08$ を超えるので三つは三角形をつくれ、足して $0$ になる相関は
$$\rho_{Dh}=\frac{a_f^2-a_D^2-a_h^2}{2a_Da_h},\qquad \rho_{Df}=\frac{a_h^2-a_D^2-a_f^2}{2a_Da_f},\qquad \rho_{fh}=\frac{a_D^2-a_h^2-a_f^2}{2a_ha_f}$$
で、$0.575000$・$-0.859375$・$-0.912500$ だった。相関の行列の最小の固有値は $-1.24\times10^{-16}$(半正定値)、一次の式は $0$、誤差を正規分布としたときの正確な値は $0.006486$(独立の正確な値の $0.063181$ 倍)だった。
計算 4.2:平面の中で二つの角を $1441\times1441$ に刻んで総当たりすると、相関を選んで届く一次の式の最小は、寄与 $0.04$・$0.05$・$0.08$ で $0.000091$、仮に直径を一乗で数えた寄与 $0.02$・$0.05$・$0.08$ で $0.010000$($0.08-0.05-0.02=0.01$)だった。
観察 4.3 三つの相関を選べば一次の誤差は消えるが、正確な値は消えない。三つの寄与が三角形をつくれるとき、一次の式は $0$ まで下がる。そのときも正確な値は $0.006486$ 残り、独立の $0.063181$ 倍だった。直径を一乗で数えた寄与では三角形がつくれず、最小は $0.010000$ だった。
5. 分離子
観察 5.1 分離子は、三つの寄与(相対誤差に式の冪を掛けた値)が三角形をつくれるかどうかである。つくれるなら、三つの相関を選んで一次の誤差を $0$ まで消せる。つくれないなら下がりきらず、仮に直径を一乗で数えると $0.08-0.05-0.02=0.01$ の $0.010000$ より下がらなかった。直径の誤差 $0.02$ は三つの中で最も小さいが、二乗で入って寄与が $0.04$ になることで三角形が成り立った。
観察 5.2 言わないこと。実際の森でどの相関が起きるか、測り方の偏り、樹種による形の係数の違い、林全体の標本の誤差は扱わない。示したのは、置いた相関で材積の相対誤差がどれだけ動き、一次の式と正確な値がどこまで下がるかである。
6. 点呼と結び
- 相関を入れた一次の式と正確な値(第1節):寄与は $0.04$・$0.05$・$0.08$。
- 相関 $1$ あたり $0.0080$・$0.0064$・$0.0040$(計算 2.1):形の係数と樹高がいちばん効く。
- 形の係数と樹高 $-0.5$ で $\mathbf{0.080623}$(計算 2.2):正確な値・乱数と $0.002$ 以内。
- 一つの組の最大 $\mathbf{1.327368}$ 倍(計算 3.1):二倍に届かない。
- 三角形の相関で正確な値は独立の $\mathbf{0.063181}$ 倍(計算 4.1):一次の式は $0$。
- 三つの寄与が三角形をつくれるか(観察 5.1):分離子・論文891 の射程注記。
結び:三つの誤差に相関があると材積の誤差は動き、いちばん効くのは形の係数と樹高の組である。相関 $1$ あたりに分散が動く量は形の係数と樹高 $0.0080$・直径と形の係数 $0.0064$・直径と樹高 $0.0040$ で、形の係数と樹高の相関 $\pm0.5$ で相対誤差は $0.120416$ と $0.080623$ になった。一つの組だけでは最大 $1.327368$ 倍にとどまったが、三つの寄与 $0.04$・$0.05$・$0.08$ は三角形をつくれ、三つの相関を選ぶと一次の式は $0$、正確な値は独立の $0.063181$ 倍まで下がった。分離子は、三つの寄与が三角形をつくれるかどうかである。既刊との位置:論文891 が独立として数えた三つの誤差に、論文891 が入れなかった相関を入れた。正直に言えば、相関の値は置いたもので、実際の測り方でどの相関が起きるかは見ていない。置いた相関で誤差がどれだけ動き、どこまで消えうるか、そこまでである。
参考文献
- Husch, B., Beers, T. W., & Kershaw, J. A. (2003). Forest Mensuration (4th ed.). Wiley.
- JCGM (2008). Evaluation of Measurement Data: Guide to the Expression of Uncertainty in Measurement (JCGM 100:2008). Joint Committee for Guides in Metrology.
- Ku, H. H. (1966). Notes on the use of propagation of error formulas. Journal of Research of the National Bureau of Standards.
- Taylor, J. R. (1997). An Introduction to Error Analysis (2nd ed.). University Science Books.
- 山岸勇輝 (2026). 『伐らずに測る材積の誤差は三つの仮定の誤差が重なり、いちばん効くのは測りにくい形の係数である』[論文891]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/891
- 山岸勇輝 (2026). 『林を層に分けて標本を取ると層の間の違いが誤差から消え、ばらつく層に多く配るとさらに減る』[論文938]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/938
- 山岸勇輝 (2026). 『層の境は度数の平方根の累積で等分すれば最適とほぼ同じで、本数で揃えるといちばん悪い』[論文957]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/957
作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。
書誌
山岸勇輝(2026)「三つの誤差に相関があると材積の誤差は動き、いちばん効くのは形の係数と樹高の組である」[論文963]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/963
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引用するとき
山岸勇輝 (2026). 三つの誤差に相関があると材積の誤差は動き、いちばん効くのは形の係数と樹高の組である [論文963]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/963
Yamagishi, Y. (2026). When the Three Errors in Tree Volume Are Correlated, the Volume Error Shifts, and the Form Factor and Height Pair Matters Most [Paper 963]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/963
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author = {Yamagishi, Yuuki},
title = {When the Three Errors in Tree Volume Are Correlated, the Volume Error Shifts, and the Form Factor and Height Pair Matters Most},
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指紋(SHA-256)と確かめ方
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