要旨
層の境は度数の平方根の累積で等分すれば最適とほぼ同じで、本数で揃えるといちばん悪い(論文957)。そこでは、区画の中をさらに抜き取る二段の取り方と、測る費用の違いを扱わなかった。本稿は、957 の材積の分布(対数の平均 4.5・対数の標準偏差 0.8 の対数正規)を区画の効きと木の効きに分け、区画を $n$ 個、区画ごとに $m$ 本測るとき、区画一つの費用と一本の費用のもとで平均のばらつきを最も小さくする $m$ を、式と総当たりと乱数で出す。新しい定理も法則も主張しない。
第一に、最良の本数は予算によらない。区画の効きの割合 0.1・区画の費用 20 で式の最良は $\mathbf{15.8518}$ 本、総当たりの最良は予算 1000・2000・5000 のどれでも 16 本だった。四つの組のどれでも、三つの予算で最良は同じだった(第2節)。
第二に、二倍に測っても半分に測っても、損は同じ:最良の二倍と半分の本数でばらつきは同じ $\mathbf{1.123327}$ 倍(割合 0.1・費用 20)になり、四つの組で $1.064604$ 倍から $1.123327$ 倍だった(第3節)。
第三に、損の大きさは一つの割合で決まる。最良のとき一本の費用の合計が区画の費用に占める割合を $a$ とすると、損は $a$ と外した倍率だけの式に $10^{-12}$ 以内で一致した。一本だけ測ると $\mathbf{4.432163}$ 倍、50 本全部測ると $1.362887$ 倍だった(割合 0.1・費用 20)(第3節)。
第四に、乱数で抜き取っても式どおり:集団から毎回新しく一万回引いた平均のばらつきは、六つの設定で式の $0.983340$ 倍から $\mathbf{1.033172}$ 倍だった(第4節)。
第五に、分離子は、ばらつきが区画の間にあるか、区画の中にあるか。区画の効きの割合を 0.1 から 0.3 にすると、費用 20 で最良は $15.8518$ 本から $\mathbf{8.0440}$ 本に減った。二つの分散の和は $13776.529821$ で同じだった(第5節)。
キーワード:二段抽出、標本調査、最適な抜き取り本数、調査の費用、分散の分解、森林調査。
射程(何を示さないか)
新しい定理も法則も主張しない。二段の抜き取りで平均のばらつきが区画の間の分散÷区画の数と区画の中の分散÷全本数の和になること、費用のもとで最良の本数が費用の比と分散の比の積の平方根で決まり予算によらないことは、いずれも標本調査の理論で既知である。置いた値である。材積の分布は論文957 と同じ対数正規で、区画の効きの割合 0.1 と 0.3、区画一つの費用 20 と 100、一本の費用 1、予算 1000・2000・5000 は本稿で置いた。どの林や樹種にも対応しない。抜き取りを単純にした。集団は無限と置き、有限の集団の補正、層との組み合わせ、区画の間の移動の距離による費用の違い、区画ごとに本数を変えることは入れない。測り方を勧めない。実在の調査で何本測るべきかは扱わない。既刊との関係:論文938 の射程注記は、区画の中をさらに抜き取る二段の取り方は扱わないと書き、論文957 の射程注記も、区画の中の抜き取りと層ごとに測る費用の違いは扱わないと書いた。本稿はそのうち区画の中の抜き取りの席に座る(先客なし。論文957 は論文938 の同じ射程注記のうち層の境の席に座った)。論文957 は、層の境を度数の平方根の累積で等分すれば最適とほぼ同じで、本数で揃えるといちばん悪いことを示した。ここでは、同じ分布で、区画の中で何本測るかと費用の関係を数える。加えたのは、四つの費用と分散の組で最良の本数を式と総当たりで出し三つの予算で比べたこと、外したときの損が一つの割合の式に一致することを確かめたこと、乱数で抜き取って式と比べたこと、一つの林から推した分散で最良の本数がどれだけ動くかを見たこと、分離子を「ばらつきが区画の間か、中か」に置いたことである。
1. 記法と問い
設定:木の材積を $V=\exp(4.5+b+e)$ とし、区画の効き $b$ と木の効き $e$ を平均 0 の正規分布、分散を $0.64s$ と $0.64(1-s)$ とする($s$ は区画の効きの割合で 0.1 と 0.3)。区画の真の平均の分散(区画の間の分散)と、区画の中の分散の平均は
$$S_b^2=e^{9+0.64(1-s)}\,e^{0.64s}\bigl(e^{0.64s}-1\bigr),\qquad S_w^2=e^{9+1.28s}\,e^{0.64(1-s)}\bigl(e^{0.64(1-s)}-1\bigr)$$
である。区画を $n$ 個、区画ごとに $m$ 本測ると、平均のばらつきと、予算 $B$・区画一つの費用 $c_1$・一本の費用 $c_2$ のもとでの区画の数は
$$\mathrm{Var}(m)=\frac{S_b^2}{n}+\frac{S_w^2}{n\,m},\qquad n=\frac{B}{c_1+m\,c_2},\qquad m^*=\sqrt{\frac{c_1\,S_w^2}{c_2\,S_b^2}}$$
で、$m^*$ はばらつきを最も小さくする本数である。$c_1=20$ と $100$、$c_2=1$ とし、総当たりは $m=1$〜$200$ で行った。
問い:区画の中で何本測るのが最良で、それは予算でどう変わり、外すとどれだけ損をするか。
2. 最良の本数
計算 2.1:真の分散と最良の本数。
| 割合 $s$ | 区画の間の分散 | 区画の中の分散 | 区画の費用 | 式の最良 | 総当たり(予算 1000・2000・5000) |
|---|---|---|---|---|---|
| $0.1$ | $1015.664610$ | $12760.865212$ | $20$ | $\mathbf{15.8518}$ | 16・16・16 |
| $0.1$ | $1015.664610$ | $12760.865212$ | $100$ | $35.4458$ | 35・35・35 |
| $0.3$ | $3252.813592$ | $10523.716229$ | $20$ | $\mathbf{8.0440}$ | 8・8・8 |
| $0.3$ | $3252.813592$ | $10523.716229$ | $100$ | $17.9868$ | 18・18・18 |
区画の中と間の分散の比は、割合 0.1 で $12.564054$、0.3 で $3.235266$ だった。四つの組のどれでも、総当たりの最良は三つの予算で同じで、式の最良の切り下げか切り上げだった。
観察 2.2 最良の本数は予算によらない。$\mathrm{Var}(m)$ は $(S_b^2+S_w^2/m)(c_1+m c_2)/B$ と書け、予算 $B$ は全体を割るだけである。区画の費用を 20 から 100 にすると、最良の本数は割合 0.1 で $15.8518$ 本から $35.4458$ 本に増えた。
3. 外したときの損
計算 3.1:最良の $k$ 倍の本数でのばらつきを最良のばらつきで割ると、$a=m^*c_2/c_1$ として
$$\frac{\mathrm{Var}(k\,m^*)}{\mathrm{Var}(m^*)}=\frac{1+a\,(k+1/k)+a^2}{(1+a)^2}$$
で、$k$ と $1/k$ で同じ値になる。
| 割合 $s$ | 区画の費用 | $a$ | 2 倍 | 半分 | 一本だけ | 50 本全部 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| $0.1$ | $20$ | $0.792592$ | $\mathbf{1.123327}$ | $1.123327$ | $\mathbf{4.432163}$ | $1.362887$ |
| $0.1$ | $100$ | $0.354458$ | $1.096606$ | $1.096606$ | $7.467578$ | $1.023093$ |
| $0.3$ | $20$ | $0.402198$ | $1.102280$ | $1.102280$ | $2.261785$ | $1.895303$ |
| $0.3$ | $100$ | $0.179868$ | $\mathbf{1.064604}$ | $1.064604$ | $3.072804$ | $1.147238$ |
2 倍と半分の値は、四つの組で互いにも式とも $10^{-12}$ 以内で一致した。
観察 3.2 損は、測る本数の倍率の対数について左右対称である。$a$ が大きいほど、同じ倍率で外したときの損は大きかった(2 倍で $a=0.179868$ の $1.064604$ 倍から $a=0.792592$ の $1.123327$ 倍):一本だけ測る損と 50 本全部測る損は、最良の本数から倍率でどれだけ離れているかと $a$ で決まり、割合 0.1・費用 100 では一本だけが $7.467578$ 倍、50 本全部は $1.023093$ 倍だった。
4. 乱数で確かめる
計算 4.1:区画の費用 20・予算 2000 で、区画の数を $n=\lfloor 2000/(20+m)\rfloor$ とし、区画の効きと木の効きを毎回集団から新しく引いて平均を一万回出した。
| 割合 $s$ | 一区画の本数 | 区画の数 | 乱数のばらつき | 式 | 比 |
|---|---|---|---|---|---|
| $0.1$ | $1$ | $95$ | $148.239353$ | $145.016103$ | $1.022227$ |
| $0.1$ | $16$ | $55$ | $32.920832$ | $32.967612$ | $0.998581$ |
| $0.1$ | $50$ | $28$ | $45.067825$ | $45.388640$ | $0.992932$ |
| $0.3$ | $1$ | $95$ | $142.843287$ | $145.016103$ | $0.985017$ |
| $0.3$ | $8$ | $71$ | $66.476279$ | $64.341945$ | $\mathbf{1.033172}$ |
| $0.3$ | $50$ | $28$ | $121.628233$ | $123.688854$ | $0.983340$ |
六つの設定で、乱数のばらつきは式の $0.983340$ 倍から $1.033172$ 倍だった。二つの割合のどちらでも、最良の本数のばらつきは一本だけと 50 本全部より小さかった。
5. 分離子
観察 5.1 分離子は、ばらつきが区画の間にあるか、区画の中にあるか。区画の効きの割合を 0.1 から 0.3 にすると、費用 20 で最良の本数は $15.8518$ 本から $8.0440$ 本に、費用 100 で $35.4458$ 本から $17.9868$ 本に減った。二つの分散の和は割合 0.1 でも 0.3 でも $13776.529821$ で、一本だけ測るときの式のばらつきは二つの割合で同じ $145.016103$ だった。変わったのは、ばらつきが区画の間と中にどう分かれるかだけである。
観察 5.2 一つの林から推すと、最良の本数は動く。区画 400・一区画 50 本の一つの林から分散を推すと、割合 0.1 で区画の間の分散 $925.245704$・区画の中の分散 $12609.537335$、費用 20 の最良は $16.5096$ 本(総当たり 17 本)だった。真の値の $15.8518$ 本(16 本)と一本違った。割合 0.3 では $8.3518$ 本(8 本)だった。
観察 5.3 言わないこと。有限の集団の補正、層との組み合わせ、区画の間の移動の距離による費用、区画ごとに本数を変えること、実在の調査で何本測るべきかは扱わない。示したのは、置いた分布と費用で、最良の本数が予算によらず、外したときの損が一つの割合の式で決まることである。
6. 点呼と結び
- 二段の抜き取りのばらつきの式(第1節):区画の間と中の分散。
- 最良 $\mathbf{15.8518}$ 本(割合 0.1・費用 20)(計算 2.1):三つの予算で総当たりも 16 本。
- 2 倍と半分で同じ $\mathbf{1.123327}$ 倍(計算 3.1):損は $a$ と倍率の式。
- 一本だけ $\mathbf{4.432163}$ 倍(計算 3.1):最良から倍率で遠い。
- 乱数で式の 0.983340〜$\mathbf{1.033172}$ 倍(計算 4.1):式どおり。
- 区画の間か、中か(観察 5.1):分離子・論文957 と論文938 の射程注記。
結び:区画の中で測る本数の最良は予算によらず、二倍にしても半分にしても損は同じである。957 の材積の分布を区画の効きと木の効きに分けると、区画の効きの割合 0.1・区画の費用 20 で最良は $15.8518$ 本で、予算 1000・2000・5000 の総当たりはどれも 16 本だった。最良の 2 倍と半分では同じ $1.123327$ 倍のばらつきになり、損は最良のとき一本の費用の合計が区画の費用に占める割合と倍率だけの式に一致した。乱数で抜き取ったばらつきは式の $0.983340$〜$1.033172$ 倍だった。分離子は、ばらつきが区画の間にあるか、区画の中にあるか。既刊との位置:論文957 と論文938 が層の境と配り方で数えた林の標本に、両編が扱わなかった区画の中の抜き取りと費用を足した。正直に言えば、無限の集団と置いた一つの分布で、ばらつきの式と乱数を比べた。最良の本数が何で決まり、外すとどれだけ損をするか、そこまでである。
参考文献
- Cochran, W. G. (1977). Sampling Techniques. Wiley.
- 山岸勇輝 (2026). 『林を層に分けて標本を取ると層の間の違いが誤差から消え、ばらつく層に多く配るとさらに減る』[論文938]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/938
- 山岸勇輝 (2026). 『層の境は度数の平方根の累積で等分すれば最適とほぼ同じで、本数で揃えるといちばん悪い』[論文957]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/957
作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。
書誌
山岸勇輝(2026)「区画の中で測る本数の最良は予算によらず、二倍にしても半分にしても損は同じ」[論文980]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/980
日付の証拠(OpenTimestamps):日本語版の .ots・英語版の .ots・SHA256SUMS
予備の置き場所(ミラー。中身は上と同じです):PDF 日本語・PDF English・SHA256SUMS
住所:https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/980・CC BY 4.0・プレプリント(査読を経ていません)・ORCID 0009-0006-8587-3450
引用するとき
山岸勇輝 (2026). 区画の中で測る本数の最良は予算によらず、二倍にしても半分にしても損は同じ [論文980]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/980
Yamagishi, Y. (2026). The Best Number of Trees to Measure per Plot Ignores the Budget, and Doubling or Halving It Costs the Same [Paper 980]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/980
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指紋(SHA-256)と確かめ方
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