要旨
通った道に印を付ければループがあっても必ず着き、歩数は通路の数の二倍を超えない(論文941)。そこでは、印が消える場合を扱わなかった。本稿は、941 と同じ作り方の $15\times15$ の迷路で、トレモー法の印に寿命(歩数)を持たせて古い印を数えないとき、着く割合と歩数がどう変わるかを、ループの無い迷路と壁を 15 パーセント外した迷路の各 400 個で数える。新しい定理も法則も主張しない。
第一に、ループの無い迷路では、印が消えても遅れるだけだった。寿命を通路の数の $\mathbf{0.0893}$ 倍(20 歩)まで縮めても 400 個すべてで着き、着いた回の歩数は消えない印の $\mathbf{1.461064}$ 倍だった(第2節)。
第二に、ループがあると、着かない迷路が出た。壁を 15 パーセント外した迷路では、寿命を通路の数の $\mathbf{0.7905}$ 倍(200 歩)にすると着く割合は $0.9925$、20 歩で $\mathbf{0.9625}$ だった(第2節)。
第三に、打ち切りを 4 倍にしても、着かない迷路は減らなかった。打ち切りを 4500 歩から 18000 歩にすると、ループのある迷路で寿命 200・100・50・20 歩の着く割合は $0.9925$・$0.9950$・$0.9900$・$0.9625$ のまま変わらなかった(第3節)。
第四に、寿命 1 歩は印の無い乱歩と同じで、長く歩けば着いた。寿命 1 歩の着く割合は乱歩と $0.5225$ 対 $0.5175$、$0.9150$ 対 $0.9175$ で、18000 歩ではループのある迷路で $\mathbf{1.0000}$ になり、寿命 20 歩の $0.9625$ を上回った(第3節)。
第五に、分離子は、寿命が通路の数に比べて短いかどうかではなく、迷路にループがあるかどうか。ループの無い迷路は寿命が通路の数の $0.0893$ 倍でもすべて着き、ループのある迷路は $0.7905$ 倍で着かない迷路が出た(第4節)。
キーワード:迷路、トレモー法、印の寿命、乱歩、ループ、打ち切り。
射程(何を示さないか)
新しい定理も法則も主張しない。通った通路に印を付けて迷路を解くトレモー法、それが必ず着くこと、印を使わずに乱歩で歩いても、つながった有限の迷路ならいつかは着くことは、いずれも既知である。置いた値である。迷路は論文941 と同じく乱数で作った $15\times15$ のますで、壁を外す割合 0 と 15 パーセント、各 400 個、印の寿命 1〜1000 歩、打ち切り 4500 歩と 18000 歩は本稿で置いた。庭園や建物の迷路、生き物の道しるべには対応しない。仕組みを測らない。着かなかった迷路で歩く人が何を繰り返していたかは数えていない。着いたかどうかと歩数だけを数える。永久を言わない。着かなかったのは 18000 歩までの話で、もっと長く歩いたときに着かないとは言わない。既刊との関係:論文941 の射程注記は、印を付けられない場合と三次元を扱わず、印が消える場合、複数の人が歩く場合、立体の迷路は扱わないと書いた。本稿はそのうち印が消える場合の席に座る(先客なし)。論文941 は、通った道に印を付ければループがあっても必ず着き、歩数は通路の数の二倍を超えないことを示した。ここでは、その印が一定の歩数で消えるとき、着く割合と歩数がどう変わるかを数える。加えたのは、二種類の迷路と八つの寿命で着く割合と歩数を 400 個ずつ出したこと、打ち切りを 4 倍にして着く割合が変わらないことを確かめたこと、寿命 1 歩を印の無い乱歩と並べたこと、分離子を「寿命の短さではなく、ループがあるか」に置いたことである。
1. 記法と問い
迷路:論文941 と同じく、$15\times15$ のますで乱数の穴掘りでループの無い迷路を作り、残った内側の壁のうち 0 と 15 パーセントを乱数で外す。種類ごとに 400 個。通路の数(隣り合うますの間の開いた所)の平均は、0 パーセントで $224.0$、15 パーセントで $253.0$ である。スタートとゴールは外周から 3 ます以上内側の別々のますに置いた。
歩き方:論文941 のトレモー法で、通路を通るたびにその歩数を印として残す。印の寿命を $\ell$ 歩とし、今の歩数から $\ell$ 歩以上前の印は数えない($\ell$ が無いときは印は消えない)。新しい通路で分かれ道に着き、ほかの通路に印があれば引き返す。そうでなければ印の無い通路を乱数で選び、無ければ印が一つの通路を選ぶ。寿命は消えない・1000・400・200・100・50・20・1 歩、打ち切りは $4500$ 歩(ますの数 225 の 20 倍)とし、迷路ごとに乱数の種を分けた。比べとして、印を使わずに隣の通路を乱数で選ぶ乱歩も歩かせた。
問い:印が消えるとき、迷路に着く割合と歩数はどう変わり、それは迷路の形でどう違うか。
2. 着く割合と歩数
計算 2.1:400 個の迷路で着いた割合と、着いた回の歩数の平均(打ち切り 4500 歩)。
| 寿命 | ループ無し:割合 | 歩数 | 15 パーセント:割合 | 歩数 | 寿命÷通路の数(無し/15) |
|---|---|---|---|---|---|
| 消えない | $1.0000$ | $162.3$ | $1.0000$ | $152.7$ | なし |
| 1000 歩 | $1.0000$ | $162.3$ | $1.0000$ | $152.7$ | $4.4643$/$3.9526$ |
| 400 歩 | $1.0000$ | $162.3$ | $1.0000$ | $155.4$ | $1.7857$/$1.5810$ |
| 200 歩 | $1.0000$ | $167.2$ | $0.9925$ | $173.1$ | $0.8929$/$\mathbf{0.7905}$ |
| 100 歩 | $1.0000$ | $183.0$ | $0.9950$ | $196.6$ | $0.4464$/$0.3953$ |
| 50 歩 | $1.0000$ | $197.8$ | $0.9900$ | $185.0$ | $0.2232$/$0.1976$ |
| 20 歩 | $1.0000$ | $237.1$ | $\mathbf{0.9625}$ | $219.6$ | $\mathbf{0.0893}$/$0.0791$ |
| 1 歩 | $0.5225$ | $1301.7$ | $0.9150$ | $1113.9$ | $0.0045$/$0.0040$ |
| 乱歩 | $0.5175$ | なし | $0.9175$ | なし | なし |
着いた回の歩数を消えない印の歩数で割ると、寿命 200・100・50・20 歩で、ループ無しは $1.030446$・$1.128132$・$1.219007$・$\mathbf{1.461064}$、15 パーセントは $1.133345$・$1.286930$・$1.211056$・$1.438104$ だった。
観察 2.2 ループの無い迷路では、印が消えても遅れるだけだった。寿命 20 歩(通路の数の $0.0893$ 倍)まで 400 個すべてで着いた。歩数は寿命を 400 歩より縮めると増えた。15 パーセントの迷路の歩数は着いた回だけの平均なので、寿命 50 歩の $1.211056$ が 100 歩の $1.286930$ より小さいことは、着かなかった迷路を除いた平均の違いを含む。
観察 2.3 ループがあると、着かない迷路が出た。壁を 15 パーセント外した迷路では、寿命 400 歩($1.5810$ 倍)まではすべて着き、200 歩($0.7905$ 倍)で $0.9925$ になった。20 歩では 4500 歩までに着いた割合が $0.9625$ だった。
3. 打ち切りを伸ばす
計算 3.1:同じ迷路・同じ乱数の種で、打ち切りを 4 倍の 18000 歩にして数え直した。同じ種なので 4500 歩までの歩みは同じで、着く割合は減りえない。
| 寿命 | ループ無し 4500 歩 | ループ無し 18000 歩 | 15 パーセント 4500 歩 | 15 パーセント 18000 歩 |
|---|---|---|---|---|
| 200 歩 | $1.0000$ | $1.0000$ | $0.9925$ | $0.9925$ |
| 100 歩 | $1.0000$ | $1.0000$ | $0.9950$ | $0.9950$ |
| 50 歩 | $1.0000$ | $1.0000$ | $0.9900$ | $0.9900$ |
| 20 歩 | $1.0000$ | $1.0000$ | $0.9625$ | $0.9625$ |
| 1 歩 | $0.5225$ | $0.8700$ | $0.9150$ | $\mathbf{1.0000}$ |
観察 3.2 ループのある迷路で着かなかった迷路は、打ち切りを 4 倍にしても着かなかった。寿命 200・100・50・20 歩の割合は 18000 歩でも変わらなかった。一方、寿命 1 歩は 18000 歩でループのある迷路の 400 個すべて、ループの無い迷路の $0.8700$ で着いた。18000 歩より長く歩いたときのことは数えていない。
観察 3.3 寿命 1 歩は印の無い乱歩と同じ割合だった。寿命 1 歩では、次のますに着いたときにはどの印も数えないので、引き返す決まりは働かず、隣の通路を乱数で選ぶ。着く割合は乱歩と $0.5225$ 対 $0.5175$、$0.9150$ 対 $0.9175$ で、差は 0.05 以内だった(乱数の使い方が違うので同じ値にはならない)。
4. 分離子
観察 4.1 分離子は、寿命が通路の数に比べて短いかどうかではなく、迷路にループがあるかどうか。ループの無い迷路は寿命が通路の数の $0.0893$ 倍でもすべて着き、ループのある迷路は $0.7905$ 倍で着かない迷路が出た。寿命を通路の数で割った値が同じくらいでも、ループのあるなしで着く割合が分かれた。着かなかった迷路で歩く人が何を繰り返していたかは、本稿では数えていない。
観察 4.2 言わないこと。18000 歩より長く歩いたときの着く割合、着かない仕組み、複数の人が歩く場合、立体の迷路、生き物の道しるべ、実在の迷路は扱わない。示したのは、乱数で作った二種類の迷路で、印の寿命を縮めたときに着く割合と歩数がどう変わるかである。
5. 点呼と結び
- 寿命のある印のトレモー法(第1節):古い印を数えない。
- ループ無しは寿命 $\mathbf{0.0893}$ 倍まで全部着く(計算 2.1):歩数は $\mathbf{1.461064}$ 倍。
- ループありは $\mathbf{0.7905}$ 倍で 0.9925、20 歩で $\mathbf{0.9625}$(計算 2.1):着かない迷路が出る。
- 18000 歩でも同じ割合(計算 3.1):打ち切りを伸ばしても減らない。
- 寿命 1 歩は乱歩と同じ・18000 歩で $\mathbf{1.0000}$(計算 3.1):長く歩けば着いた。
- ループがあるかどうか(観察 4.1):分離子・論文941 の射程注記。
結び:印が消えるとき、ループの無い迷路では遅れるだけで、ループがあると着かない迷路が出る。941 と同じ作り方の迷路で、トレモー法の印に寿命を持たせると、ループの無い迷路では寿命を通路の数の $0.0893$ 倍にしても 400 個すべてで着き、歩数は $1.461064$ 倍になった。壁を 15 パーセント外した迷路では寿命 $0.7905$ 倍で着く割合が $0.9925$、20 歩で $0.9625$ になり、打ち切りを 18000 歩にしても変わらなかった。印の無い乱歩と同じ寿命 1 歩は、18000 歩ではループのある迷路ですべて着いた。分離子は、寿命が通路の数に比べて短いかどうかではなく、迷路にループがあるかどうか。既刊との位置:論文941 が消えない印で数えた着く割合と歩数に、論文941 が扱わなかった印の寿命を足した。正直に言えば、乱数で作った二種類の迷路で、18000 歩までに着いたかどうかと歩数を数えた。着かない仕組みは数えていない。印の寿命を縮めると何が起きるか、そこまでである。
参考文献
- Lucas, É. (1882). Récréations mathématiques. Gauthier-Villars.
- 山岸勇輝 (2026). 『通った道に印を付ければループがあっても必ず着き、歩数は通路の数の二倍を超えない』[論文941]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/941
作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。
書誌
山岸勇輝(2026)「印が消えるとき、ループの無い迷路では遅れるだけで、ループがあると着かない迷路が出る」[論文981]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/981
日付の証拠(OpenTimestamps):日本語版の .ots・英語版の .ots・SHA256SUMS
予備の置き場所(ミラー。中身は上と同じです):PDF 日本語・PDF English・SHA256SUMS
住所:https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/981・CC BY 4.0・プレプリント(査読を経ていません)・ORCID 0009-0006-8587-3450
引用するとき
山岸勇輝 (2026). 印が消えるとき、ループの無い迷路では遅れるだけで、ループがあると着かない迷路が出る [論文981]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/981
Yamagishi, Y. (2026). When Marks Fade, a Maze Without Loops Only Takes Longer, but with Loops Some Goals Are Not Reached [Paper 981]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/981
@misc{yamagishi2026yoi981,
author = {Yamagishi, Yuuki},
title = {When Marks Fade, a Maze Without Loops Only Takes Longer, but with Loops Some Goals Are Not Reached},
year = {2026},
howpublished = {YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/981},
note = {Preprint, edition 1}
}
指紋(SHA-256)と確かめ方
5db90aef3dac4ad27df4505fd521436d1816a41218b489622de3c416c29f9784 yamagishi_yoi981_v1_jp.pdf0f4743889ab52d162e9e8aa5c526a7b8a05df2336a0b756442a8fef4a7e88bcb yamagishi_yoi981_v1_en.pdfPDF と .ots を同じ場所に保存し、opentimestamps.org に .ots、続けて PDF を落とすと、記録された日時が表示されます。PDF が 1 バイトでも変わっていれば通りません。