【論文967】カムの切り下げを避けるローラーの大きさは、圧力角と違い、減速の強さの順に決まる

要旨

カムの輪郭は、ローラーの中心が描くピッチ曲線からローラーの半径だけ内側にある。ピッチ曲線の凸の部分の曲率半径よりローラーが大きいと、輪郭が削れて従動節が曲線どおりに動かない(切り下げ)。本稿は、論文961 の四つの運動曲線(持ち上げ 10 mm・カムの角 60 度)で、ピッチ曲線の凸の曲率半径の最小を、961 が圧力角 30 度に要るとしたピッチ円と 30 mm のピッチ円で出し、圧力角の並びと比べる。新しい定理も法則も主張しない。

第一に、同じピッチ円では、曲率半径の最小は減速の係数の最大の順に小さい。ピッチ円 30 mm で、曲率半径の最小はサイクロイド $\mathbf{16.4923}$ mm、3-4-5 多項式 $17.2563$ mm、単弦 $18.8235$ mm、放物線 $19.6172$ mm で、減速の係数の最大 $6.283185$・$5.773502$・$4.934801$・$4.000000$ の大きい順と同じだった(第2節)。

第二に、その並びは圧力角の並びと違う。圧力角 30 度に要るピッチ円は単弦・3-4-5 多項式・放物線・サイクロイドの順に大きかった(論文961)が、曲率半径の最小では放物線がいちばん大きく、単弦は三番目だった(第2節)。

第三に、圧力角で最小のカムで済む単弦は、使えるローラーもいちばん小さい。961 のピッチ円で比べると、曲率半径の最小は単弦(21.4575 mm)$\mathbf{12.9428}$ mm、3-4-5 多項式 $14.9088$ mm、サイクロイド $15.4845$ mm、放物線 $18.3906$ mm だった(第3節)。

第四に、曲率半径の最小は、持ち上げの終わりに近い減速の区間に出る。ピッチ円 30 mm で、最小の出る位置はサイクロイド $u=0.7543$(持ち上げ $0.9134$)、3-4-5 多項式 $u=0.7902$、単弦は持ち上げの終わり $u=1$、放物線は減速に移る $u=0.5$ だった。式の曲率半径と、直交座標で描いた三点を通る円の最小は $0.01$ mm 以内で一致した(第2節)。

第五に、分離子は、ピッチ曲線を傾きで見るか、曲がりで見るかである。圧力角はピッチ曲線の傾き(速さの係数)で決まり、切り下げは曲がり(加速度の係数)で決まる。二つの設計の制約は、同じ四つの曲線を違う順に並べた(第4節)。

キーワード:カム、切り下げ、曲率半径、ローラーの従動節、ピッチ曲線、運動曲線。

射程(何を示さないか)

新しい定理も法則も主張しない。ローラーの従動節でピッチ曲線の凸の曲率半径がローラーの半径より小さいと切り下げが起きること、極座標の曲線の曲率半径の式、運動曲線ごとの最大の加速度は、いずれもカムの設計で知られている。961 と同じ置き方である。持ち上げ 10 mm、カムの角 60 度、半径方向に動くローラーの従動節、四つの運動曲線、要るピッチ円の値は論文961 のもので、30 mm のピッチ円は比べるために置いた。輪郭の強さを扱わない。接触の応力、材料、ローラーの軸の強さ、戻りの区間、持ち上げの前後の休みとのつなぎ目の曲率は、持ち上げの区間の端の値だけで見た。設計を勧めない。どの曲線やローラーを使うべきかは述べない。既刊との関係:論文961 の射程注記は、輪郭の強さを扱わず、接触の応力、材料、ローラーの半径が輪郭の曲率を超えて削れる切り下げ、戻りの区間は扱わないと書いた。本稿はそのうち切り下げの席に座る(先客なし)。論文961 は、速さの最大が同じカムの曲線でも、圧力角を収めるピッチ円が角の最大になる位置で変わることを示した。ここでは、同じ曲線とピッチ円で、ローラーの大きさを限る曲率を数え、圧力角と並びが違うことを示す。論文929 は、四つの運動曲線の最大の加速度を並べた。ここではその減速の側が曲率半径の最小の順を決めることを使う。加えたのは、四つの曲線と二つのピッチ円で凸の曲率半径の最小を出したこと、三点を通る円で独立に確かめたこと、並びが減速の係数の最大と同じで圧力角と違うと示したこと、最小の出る位置を並べたこと、分離子を「傾きか、曲がりか」に置いたことである。

1. 記法と問い

設定:論文961 と同じく、持ち上げ $h=10$ mm をカムの角 $\beta=60$ 度で行い、ピッチ曲線の半径は $r(\theta)=R_p+h s(u)$、$u=\theta/\beta$ である。速さの係数を $v=ds/du$、加速度の係数を $a=d^2s/du^2$ とすると、$r’=dr/d\theta=(h/\beta)v$、$r”=(h/\beta^2)a$ で、極座標の曲線の曲率半径は

$$\rho=\frac{\bigl(r^2+r’^2\bigr)^{3/2}}{r^2+2r’^2-r\,r”}$$

である。分母が正の点(凸)で $\rho$ の最小を $u$ を $20000$ に刻んで探し、ローラーの半径がこれを超えると切り下げが起きるとする。確かめとして、ピッチ曲線を直交座標の $4001$ 点で描き、隣り合う三点を通る円の半径の最小も出した。

問い:切り下げを避けるローラーの大きさは、四つの曲線でどう並び、圧力角の並びと同じか。

2. 同じピッチ円での曲率

計算 2.1:ピッチ円 30 mm での凸の曲率半径の最小。

曲線 曲率半径の最小(mm) 三点の円(mm) 最小の $u$ その持ち上げ 減速の係数の最大
サイクロイド $\mathbf{16.4923}$ $16.4923$ $0.7543$ $0.9134$ $6.283185$
3-4-5 多項式 $17.2563$ $17.2563$ $0.7902$ $0.9342$ $5.773502$
単弦 $18.8235$ $18.8235$ $1.0000$ $1.0000$ $4.934801$
放物線 $19.6172$ $19.6181$ $0.5000$ $0.5000$ $4.000000$

八つの組(四つの曲線×二つのピッチ円)で、式と三点の円は $0.01$ mm 以内で一致した。

観察 2.2 同じピッチ円では、減速が強い曲線ほど使えるローラーが小さい。曲率半径の最小の小さい順(サイクロイド・3-4-5 多項式・単弦・放物線)は、減速の係数の最大の大きい順と同じだった。圧力角 30 度に要るピッチ円の小さい順(単弦・3-4-5 多項式・放物線・サイクロイド)とは、放物線と単弦の位置が違った。

3. 961 のピッチ円での曲率

計算 3.1:圧力角 30 度に要るピッチ円(論文961)での凸の曲率半径の最小。

曲線 ピッチ円(mm) 曲率半径の最小(mm) 最小の $u$ その加速度の係数
単弦 $21.4575$ $\mathbf{12.9428}$ $1.0000$ $-4.934802$
3-4-5 多項式 $26.3648$ $14.9088$ $0.7932$ $-5.771411$
サイクロイド $28.3851$ $15.4845$ $0.7558$ $-6.279014$
放物線 $28.0797$ $18.3906$ $0.5000$ $-4.000000$

観察 3.2 圧力角で最小のカムで済む単弦は、そのカムで使えるローラーもいちばん小さい。単弦は圧力角 30 度にピッチ円 21.4575 mm で足りた(論文961):その小さいカムでは、持ち上げの終わりの減速で曲率半径が $12.9428$ mm まで下がり、四つのうち最小だった。放物線は 28.0797 mm のカムが要るが、曲率半径の最小は $18.3906$ mm だった。

4. 分離子

観察 4.1 分離子は、ピッチ曲線を傾きで見るか、曲がりで見るかである。圧力角は $r’/r$、つまり速さの係数で決まり、速さの最大が小さい単弦が有利だった(論文961):切り下げは曲率半径の分母の $-r r”$、つまり減速の係数で決まり、同じピッチ円では減速の最大が小さい放物線が有利だった。一つのカムで、二つの制約は曲線を違う順に並べた。

観察 4.2 言わないこと。接触の応力、材料、ローラーの軸の強さ、戻りの区間、休みとのつなぎ目の曲率の詳しい形、どの曲線を使うべきかは扱わない。示したのは、961 と同じ置き方で、ピッチ曲線の凸の曲率半径の最小が減速の強さの順に並び、圧力角の並びと違うことである。

5. 点呼と結び

  1. 極座標の曲率半径(第1節):分母に $r”$=加速度の係数。
  2. 30 mm でサイクロイド $\mathbf{16.4923}$ mm が最小(計算 2.1):減速の係数の最大の順。
  3. 三点の円と 0.01 mm 以内(計算 2.1):式の確かめ。
  4. 961 のピッチ円で単弦 $\mathbf{12.9428}$ mm(計算 3.1):圧力角で最小のカムが曲率でも最小。
  5. 並びが圧力角と違う(観察 2.2):放物線と単弦の位置。
  6. 傾きか、曲がりか(観察 4.1):分離子・論文961 の射程注記。

結び:カムの切り下げを避けるローラーの大きさは、圧力角と違い、減速の強さの順に決まる。961 の四つの運動曲線で、ピッチ円 30 mm での凸の曲率半径の最小はサイクロイド $16.4923$ mm、3-4-5 多項式 $17.2563$ mm、単弦 $18.8235$ mm、放物線 $19.6172$ mm で、減速の係数の最大の大きい順と同じだった。961 が圧力角 30 度に要るとしたピッチ円では、単弦が $12.9428$ mm で最小になり、圧力角で有利な曲線が切り下げでは不利だった。分離子は、ピッチ曲線を傾きで見るか、曲がりで見るかである。既刊との位置:論文961 が圧力角で比べた四つの曲線を、論文961 が扱わなかった切り下げで比べ、曲率を決める減速は論文929 の加速度の並びから読んだ。正直に言えば、接触の強さも戻りの区間も見ていない。持ち上げの区間の曲率で、使えるローラーの大きさがどう並ぶか、そこまでである。

参考文献

  1. Norton, R. L. (2009). Cam Design and Manufacturing Handbook. Industrial Press.
  2. 山岸勇輝 (2026). 『サイクロイドのカムは加速度の最大が大きいのに、端で跳ばないぶん速く回しても揺れが残りにくい』[論文929]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/929
  3. 山岸勇輝 (2026). 『速さの最大が同じカムの曲線でも、圧力角を収めるピッチ円は、角が最大になる位置で変わる』[論文961]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/961

作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。

書誌

山岸勇輝(2026)「カムの切り下げを避けるローラーの大きさは、圧力角と違い、減速の強さの順に決まる」[論文967]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/967

YOI 967第1版・2026年9月ビットコインに記録済み

日付の証拠(OpenTimestamps):日本語版の .ots・英語版の .ots・SHA256SUMS

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住所:https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/967・CC BY 4.0・プレプリント(査読を経ていません)・ORCID 0009-0006-8587-3450

引用するとき

山岸勇輝 (2026). カムの切り下げを避けるローラーの大きさは、圧力角と違い、減速の強さの順に決まる [論文967]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/967

Yamagishi, Y. (2026). The Roller Size That Avoids Cam Undercutting Is Ordered by Deceleration, Not by Pressure Angle [Paper 967]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/967

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  author = {Yamagishi, Yuuki},
  title = {The Roller Size That Avoids Cam Undercutting Is Ordered by Deceleration, Not by Pressure Angle},
  year = {2026},
  howpublished = {YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/967},
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