【論文482】「臨界次元」という同じ語が、上と下で別の数を指している

要旨

「臨界次元」は一つの数だと思われている。本稿が示すのは、上と下で二つの数があり、機構も違うことである。上は $\mathbf{4}$ で紫外側、下は $\mathbf{2}$ で赤外側の話である。新しい定理も法則も主張しない。

第一に、$\int_{\varepsilon}^{1}k^{d-3}dk$ は $\varepsilon=10^{-6}$ で $d=1$ が $\mathbf{999999.000000}$、$d=2$ が $\mathbf{13.815511}$、$d=3$ が $\mathbf{0.999999}$、$d=4$ が $\mathbf{0.500000}$ になる(第2節)。

第二に、$d=3$ の値は厳密に $1-\varepsilon$ であり、$\varepsilon$ を下げると $1$ へ収束する(第2節)。

第三に、これが本稿の芯である。境目は $d=2$ ちょうどである。$d=2.01$ は $24.142242$ で収束し、$d=1.99$ は $31.8257$ で発散側にいる(第2節)。

第四に、$d=2$ の発散は対数である。$\varepsilon$ を $10^{4}$ 分の $1$ にするたび、増分が $\mathbf{9.210340}$ で揃う(第3節)。

第五に、ボース気体の励起数も同じ境目を持つ、$d=2$ で $13.586173$ と発散し、$d=3$ で $0.849847$ に収まる(第3節)。

第六に、分離子は「紫外を切るか、赤外を切るか」である(第4節)。

キーワード:臨界次元、上部臨界次元、下部臨界次元、相転移、マーミン・ワグナーの定理。

射程(何を示さないか)

新しい定理も法則も主張しない。上部臨界次元も下部臨界次元も既知であり、赤外発散の次元依存も教科書にある。凝縮そのものを論じない。相転移の存在証明、有限系での振舞い、相互作用のある場合は主題ではない。理想気体の赤外側だけを見る。五つの分野を計算していない。同じ被積分をもつ場面は他にもあるが、本稿が数を出したのは一般の積分とボース気体の二つだけである。他は名指すにとどめる。$d$ を実数として扱う。$d=1.99$ や $d=2.01$ は物理的な次元ではなく、境目が $2$ ちょうどにあることを確かめるための操作である。既刊との関係:論文279 は自己回避鎖の代価が四次元より上で消えることを示した。そこで出た $4$ が、本稿でいう「上」である。論文271 は平均場が次元を見ないことを示した。同じ $4$ の側である。論文94 は「次元」が一つではないと示した。本稿はその「次元」ではなく、「臨界次元」という語のほうを二つに分ける。論文481 は分離子を書かないと反証の行き先が決まらないことを示した。本稿はその分離子を一本書く。加えたのは、$\int_{\varepsilon}^{1}k^{d-3}dk$ を $d=1,2,3,4$ で出したこと、$d=3$ が厳密に $1-\varepsilon$ だと確かめたこと、境目を $d=2.01$ と $d=1.99$ で挟んだこと、対数発散の署名を増分 $9.210340$ で出したこと、ボース気体で同じ境目を確かめたことである。

1. 記法と問い

設定:$d$ 次元の波数空間で、状態密度は $k^{d-1}$ に比例する。長波長で $1/k^{2}$ のように振舞う量を足し上げると、赤外側の積分は

$$\int_{\varepsilon}^{1} k^{d-1}\cdot\frac{1}{k^{2}}\,dk=\int_{\varepsilon}^{1} k^{d-3}\,dk$$

になる。$\varepsilon$ は系の大きさが決める下限である。$\varepsilon\to0$ でこれが有限に残るか発散するかを見る。

観察 1.1 「臨界次元」は一つの数だと思われている。ある次元より上では話が簡単になる。そういう一本の境目の像である。

観察 1.2 だが体系はすでに $4$ を出している。論文279 は自己回避鎖の代価が四次元より上で消えると示した。本稿が出すのは、それとは別の数である。

問い:下の境目はどこにあり、上の $4$ と何が違うのか。

2. 境目は二ちょうどである

計算 2.1:$\varepsilon=10^{-6}$ として、$\int_{\varepsilon}^{1}k^{d-3}dk$ を数値で出す。

次元 $d$ 積分の値 振舞い
$1$ $\mathbf{999999.000000}$ 冪で発散
$2$ $\mathbf{13.815511}$ 対数で発散
$3$ $\mathbf{0.999999}$ 収束
$4$ $\mathbf{0.500000}$ 収束

観察 2.2 $d=3$ の値は厳密に $1-\varepsilon$ である。$0.999999000000000$ 対 $0.999999000000000$、被積分が $k^{0}=1$ になるからで、閉じた式との一致が独立な確認になる。

観察 2.3 $\varepsilon$ を下げると $d=3$ は $1$ へ寄る。$0.999999999999$、収束する側である。

観察 2.4 $d=4$ はちょうど $1/2$ に収まる。$0.500000000$、$\int_{0}^{1}k dk$ の値であり、これも閉じた式と合う。

観察 2.5 $d=2$ は $\varepsilon$ を $10^{-12}$ にすると倍になる。$2.000000000$ 倍、対数発散の署名である。桁数を倍にすれば値も倍になる。

観察 2.6 $d=1$ は同じ操作で $10^{6}$ 倍になる。$1.000001\times10^{6}$ 倍、冪発散であり、対数とは速さが違う。

観察 2.7 境目は $d=2$ ちょうどである。$d=2.01$ は $24.142242$ で収束し、$d=1.99$ は $31.8257$ で発散側にいる。境目の両側を挟んだ。

3. ボース気体も同じ境目を持つ

計算 3.1:理想ボース気体の励起状態の数を、赤外側だけ数える。被積分は $k^{d-1}/(e^{\beta k^{2}}-1)$ で、$k\to0$ で $k^{d-3}$ に一致する。$\beta=1$・$k=10^{-3}$ で比は $0.999999500$ である。

次元 $d$ 励起数(赤外側) 判定
$2$ $\mathbf{13.586173}$ 発散(凝縮しない)
$3$ $\mathbf{0.849847}$ 有限(凝縮する)

観察 3.2 $d=2$ のほうが大きい。$13.586173 > 0.849847$、励起状態がいくらでも粒子を飲み込めるので、基底状態に溜まらない。

計算 3.3:$d=2$ で $\varepsilon$ を下げたときの値を並べる。

$\varepsilon$ 励起数 前段からの増分
$10^{-4}$ $8.981003$ 、
$10^{-8}$ $18.191343$ $\mathbf{9.210340}$
$10^{-12}$ $27.401684$ $\mathbf{9.210340}$

観察 3.4 増分が揃っている。比は $1.000000$、等差で増えるのは対数発散の署名である。

観察 3.5 増分は $-\ln\varepsilon$ の増分と一致する。$9.210340$ 対 $9.210340$、$\ln(10^{4})$ であり、独立に計算した値と合う。

観察 3.6 $d=3$ は同じ操作でほとんど動かない。比 $1.000117682$、収束する側であり、系を大きくしても励起数は頭打ちになる。

4. 分離子

分離子:切っているのが紫外側か、赤外側か。

観察 4.1 上の $4$ は紫外側の話である。短波長の揺らぎが平均場の答をずらすかどうか、$d>4$ では効かなくなり、論文271 の「平均場は次元を見ない」がそこに立つ。

観察 4.2 下の $2$ は赤外側の話である。長波長の揺らぎが積分を発散させるかどうか、$d\le2$ で発散し、秩序が立たない。

観察 4.3 同じ語が二つの数を指している。どちらも「臨界次元」と呼ばれる。論文300 の基準で別根であり、機構も、切る側も、境目の数も違う。

観察 4.4 見分ける操作がある。$\varepsilon$ を下げて発散するなら下の話、格子間隔を下げて発散するなら上の話、どちらを動かしたかで判定できる。

観察 4.5 これは論文481 でいう分離子の一本である。「臨界次元で振舞いが変わる」という主張が反証されたとき、行き先が二つある。どちらの境目の話かを書いておけば、片方が潰れる。

観察 4.6 論文94 が分けたのは「次元」そのものだった。本稿が分けたのは「臨界次元」という複合語のほうである。語を分けても、その語を含む語がまだ分かれていないことがある。

観察 4.7 正直に言えば、本稿が数を出したのは二つだけである。一般の積分とボース気体、同じ $k^{d-3}$ が現れる場面は他にもあるが、それらは名指すにとどめ、計算していない。数えたのは境目の位置であって、各分野の物理ではない。

5. 点呼と結び

  1. $d=1$ で $999999.000000$(計算 2.1):冪で発散。
  2. $d=3$ は厳密に $1-\varepsilon$(観察 2.2):閉じた式と一致。
  3. $d=4$ はちょうど $1/2$(観察 2.4):独立な確認。
  4. $d=2$ は $\varepsilon$ を下げると倍(観察 2.5):対数発散。
  5. 境目は $d=2$ ちょうど(観察 2.7):本稿の芯。
  6. ボースは $d=2$ で $13.586173$(計算 3.1):凝縮しない側。
  7. 増分が $9.210340$ で揃う(観察 3.5):$\ln(10^{4})$ と一致。
  8. $d=3$ は比 $1.000117682$(観察 3.6):頭打ちになる。
  9. 分離子は紫外か赤外か(観察 4.3):論文300 の基準で別根。
  10. 計算したのは二つだけ(観察 4.7):他は名指すにとどめた。

結び:「臨界次元」は一つの数だと思われている。ある次元より上では話が簡単になる、という一本の境目の像である。だが体系はすでに $4$ を出しており、論文279 は自己回避鎖の代価が四次元より上で消えると示した。本稿が出すのは、それとは別の数である。境目は二ちょうどである。$\varepsilon=10^{-6}$ で $\int_{\varepsilon}^{1}k^{d-3}dk$ は、$d=1$ が $\mathbf{999999.000000}$、$d=2$ が $\mathbf{13.815511}$、$d=3$ が $\mathbf{0.999999}$、$d=4$ が $\mathbf{0.500000}$ になる。$d=3$ の値は厳密に $1-\varepsilon$ で、被積分が $k^{0}=1$ になるからであり、閉じた式との一致が独立な確認になる。$\varepsilon$ を下げれば $0.999999999999$ と $1$ へ寄る。$d=4$ はちょうど $1/2$ に収まり、これも $\int_{0}^{1}k dk$ と合う。$d=2$ は $\varepsilon$ を $10^{-12}$ にすると値が倍になる。対数発散の署名で、桁数を倍にすれば値も倍になる。$d=1$ は同じ操作で $10^{6}$ 倍になり、冪発散とは速さが違う。そして境目は $d=2$ ちょうどで、$d=2.01$ は $24.142242$ で収束し、$d=1.99$ は $31.8257$ で発散側にいる。ボース気体も同じ境目を持つ、理想ボース気体の励起数を赤外側だけ数えると、$d=2$ で $\mathbf{13.586173}$ と発散し、$d=3$ で $\mathbf{0.849847}$ に収まる。前者では励起状態がいくらでも粒子を飲み込めるので、基底状態に溜まらない。$d=2$ で $\varepsilon$ を $10^{-4}$ から $10^{-8}$、$10^{-12}$ と下げると $8.981003$、$18.191343$、$27.401684$ となり、増分が $\mathbf{9.210340}$ で揃う。その値は $-\ln\varepsilon$ の増分、すなわち $\ln(10^{4})$ と一致する。$d=3$ は同じ操作で比 $1.000117682$ しか動かず、系を大きくしても励起数は頭打ちになる。分けているものは一つ、切っているのが紫外側か、赤外側か。上の $4$ は紫外側の話で、短波長の揺らぎが平均場の答をずらすかどうかであり、$d>4$ では効かなくなる。論文271 の「平均場は次元を見ない」がそこに立つ。下の $2$ は赤外側の話で、長波長の揺らぎが積分を発散させるかどうかであり、$d\le2$ で発散して秩序が立たない。どちらも「臨界次元」と呼ばれるが、論文300 の基準で別根であり、機構も、切る側も、境目の数も違う。見分ける操作もある。$\varepsilon$ を下げて発散するなら下の話、格子間隔を下げて発散するなら上の話で、どちらを動かしたかで判定できる。これは論文481 でいう分離子の一本であり、「臨界次元で振舞いが変わる」という主張が反証されたときの行き先が二つあるところを、片方に絞る。論文94 が分けたのは「次元」そのものだったが、本稿が分けたのは「臨界次元」という複合語のほうである。語を分けても、その語を含む語がまだ分かれていないことがある。正直に言えば、本稿が数を出したのは一般の積分とボース気体の二つだけである。同じ $k^{d-3}$ が現れる場面は他にもあるが、それらは名指すにとどめ、計算していない。数えたのは境目の位置であって、各分野の物理ではない。

参考文献

  1. Mermin, N. D., & Wagner, H. (1966). Absence of Ferromagnetism or Antiferromagnetism in One- or Two-Dimensional Isotropic Heisenberg Models. Physical Review Letters.
  2. Hohenberg, P. C. (1967). Existence of Long-Range Order in One and Two Dimensions. Physical Review.
  3. Ginzburg, V. L. (1960). Some Remarks on Phase Transitions of the Second Kind and the Microscopic Theory of Ferroelectric Materials. Soviet Physics Solid State.
  4. 山岸勇輝 (2026). 『「次元」は一つではない』[論文94]. Zenodo. 10.5281/zenodo.21758581
  5. 山岸勇輝 (2026). 『平均場は次元を見ないが、外れ方は次元だけで決まる』[論文271]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22169925
  6. 山岸勇輝 (2026). 『鎖の指数を変えたのは「自分を避ける」ことだけであり、四次元より上ではその代価が消える』[論文279]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22170222
  7. 山岸勇輝 (2026). 『三百本目の点呼、同根か別根かは、判定できる』[論文300]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22171914
  8. 山岸勇輝 (2026). 『「法則が破れた」は、どの仮定へも落とせる』[論文481]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22733927

作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。

書誌

山岸勇輝(2026)「「臨界次元」という同じ語が、上と下で別の数を指している」[論文482]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.22759625

YOI 482第1版・2026年9月ビットコインに記録済み

日付の証拠(OpenTimestamps):日本語版の .ots・英語版の .ots・SHA256SUMS

予備の置き場所(ミラー。中身は上と同じです):PDF 日本語・PDF English・SHA256SUMS

住所:https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/482・DOI 10.5281/zenodo.22759625・CC BY 4.0・プレプリント(査読を経ていません)・ORCID 0009-0006-8587-3450

引用するとき

山岸勇輝 (2026). 「臨界次元」という同じ語が、上と下で別の数を指している [論文482]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/482 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22759625

Yamagishi, Y. (2026). The Same Words “Critical Dimension” Name Two Different Numbers, Above and Below [Paper 482]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/482; DOI: 10.5281/zenodo.22759625

@misc{yamagishi2026yoi482,
  author = {Yamagishi, Yuuki},
  title = {The Same Words ``Critical Dimension'' Name Two Different Numbers, Above and Below},
  year = {2026},
  howpublished = {YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/482},
  doi = {10.5281/zenodo.22759625},
  note = {Preprint, edition 1}
}
指紋(SHA-256)と確かめ方
5e674f573880906ca2a6da240ce31022d45df97a024dd577db486b5ab644f4a0 yamagishi_yoi482_v1_jp.pdf
c0232f149bb0ed91b2e74759fb94c84cb09eca8e11b63110b560e195f7a4623c yamagishi_yoi482_v1_en.pdf

PDF と .ots を同じ場所に保存し、opentimestamps.org に .ots、続けて PDF を落とすと、記録された日時が表示されます。PDF が 1 バイトでも変わっていれば通りません。