要旨
「臨界次元」は一つの数だと思われている。本稿が示すのは、上と下で二つの数があり、機構も違うことである。上は $\mathbf{4}$ で紫外側、下は $\mathbf{2}$ で赤外側の話である。新しい定理も法則も主張しない。
第一に、$\int_{\varepsilon}^{1}k^{d-3}dk$ は $\varepsilon=10^{-6}$ で $d=1$ が $\mathbf{999999.000000}$、$d=2$ が $\mathbf{13.815511}$、$d=3$ が $\mathbf{0.999999}$、$d=4$ が $\mathbf{0.500000}$ になる(第2節)。
第二に、$d=3$ の値は厳密に $1-\varepsilon$ であり、$\varepsilon$ を下げると $1$ へ収束する(第2節)。
第三に、これが本稿の芯である。境目は $d=2$ ちょうどである。$d=2.01$ は $24.142242$ で収束し、$d=1.99$ は $31.8257$ で発散側にいる(第2節)。
第四に、$d=2$ の発散は対数である。$\varepsilon$ を $10^{4}$ 分の $1$ にするたび、増分が $\mathbf{9.210340}$ で揃う(第3節)。
第五に、ボース気体の励起数も同じ境目を持つ、$d=2$ で $13.586173$ と発散し、$d=3$ で $0.849847$ に収まる(第3節)。
第六に、分離子は「紫外を切るか、赤外を切るか」である(第4節)。
キーワード:臨界次元、上部臨界次元、下部臨界次元、相転移、マーミン・ワグナーの定理。
射程(何を示さないか)
新しい定理も法則も主張しない。上部臨界次元も下部臨界次元も既知であり、赤外発散の次元依存も教科書にある。凝縮そのものを論じない。相転移の存在証明、有限系での振舞い、相互作用のある場合は主題ではない。理想気体の赤外側だけを見る。五つの分野を計算していない。同じ被積分をもつ場面は他にもあるが、本稿が数を出したのは一般の積分とボース気体の二つだけである。他は名指すにとどめる。$d$ を実数として扱う。$d=1.99$ や $d=2.01$ は物理的な次元ではなく、境目が $2$ ちょうどにあることを確かめるための操作である。既刊との関係:論文279 は自己回避鎖の代価が四次元より上で消えることを示した。そこで出た $4$ が、本稿でいう「上」である。論文271 は平均場が次元を見ないことを示した。同じ $4$ の側である。論文94 は「次元」が一つではないと示した。本稿はその「次元」ではなく、「臨界次元」という語のほうを二つに分ける。論文481 は分離子を書かないと反証の行き先が決まらないことを示した。本稿はその分離子を一本書く。加えたのは、$\int_{\varepsilon}^{1}k^{d-3}dk$ を $d=1,2,3,4$ で出したこと、$d=3$ が厳密に $1-\varepsilon$ だと確かめたこと、境目を $d=2.01$ と $d=1.99$ で挟んだこと、対数発散の署名を増分 $9.210340$ で出したこと、ボース気体で同じ境目を確かめたことである。
1. 記法と問い
設定:$d$ 次元の波数空間で、状態密度は $k^{d-1}$ に比例する。長波長で $1/k^{2}$ のように振舞う量を足し上げると、赤外側の積分は
$$\int_{\varepsilon}^{1} k^{d-1}\cdot\frac{1}{k^{2}}\,dk=\int_{\varepsilon}^{1} k^{d-3}\,dk$$
になる。$\varepsilon$ は系の大きさが決める下限である。$\varepsilon\to0$ でこれが有限に残るか発散するかを見る。
観察 1.1 「臨界次元」は一つの数だと思われている。ある次元より上では話が簡単になる。そういう一本の境目の像である。
観察 1.2 だが体系はすでに $4$ を出している。論文279 は自己回避鎖の代価が四次元より上で消えると示した。本稿が出すのは、それとは別の数である。
問い:下の境目はどこにあり、上の $4$ と何が違うのか。
2. 境目は二ちょうどである
計算 2.1:$\varepsilon=10^{-6}$ として、$\int_{\varepsilon}^{1}k^{d-3}dk$ を数値で出す。
| 次元 $d$ | 積分の値 | 振舞い |
|---|---|---|
| $1$ | $\mathbf{999999.000000}$ | 冪で発散 |
| $2$ | $\mathbf{13.815511}$ | 対数で発散 |
| $3$ | $\mathbf{0.999999}$ | 収束 |
| $4$ | $\mathbf{0.500000}$ | 収束 |
観察 2.2 $d=3$ の値は厳密に $1-\varepsilon$ である。$0.999999000000000$ 対 $0.999999000000000$、被積分が $k^{0}=1$ になるからで、閉じた式との一致が独立な確認になる。
観察 2.3 $\varepsilon$ を下げると $d=3$ は $1$ へ寄る。$0.999999999999$、収束する側である。
観察 2.4 $d=4$ はちょうど $1/2$ に収まる。$0.500000000$、$\int_{0}^{1}k dk$ の値であり、これも閉じた式と合う。
観察 2.5 $d=2$ は $\varepsilon$ を $10^{-12}$ にすると倍になる。$2.000000000$ 倍、対数発散の署名である。桁数を倍にすれば値も倍になる。
観察 2.6 $d=1$ は同じ操作で $10^{6}$ 倍になる。$1.000001\times10^{6}$ 倍、冪発散であり、対数とは速さが違う。
観察 2.7 境目は $d=2$ ちょうどである。$d=2.01$ は $24.142242$ で収束し、$d=1.99$ は $31.8257$ で発散側にいる。境目の両側を挟んだ。
3. ボース気体も同じ境目を持つ
計算 3.1:理想ボース気体の励起状態の数を、赤外側だけ数える。被積分は $k^{d-1}/(e^{\beta k^{2}}-1)$ で、$k\to0$ で $k^{d-3}$ に一致する。$\beta=1$・$k=10^{-3}$ で比は $0.999999500$ である。
| 次元 $d$ | 励起数(赤外側) | 判定 |
|---|---|---|
| $2$ | $\mathbf{13.586173}$ | 発散(凝縮しない) |
| $3$ | $\mathbf{0.849847}$ | 有限(凝縮する) |
観察 3.2 $d=2$ のほうが大きい。$13.586173 > 0.849847$、励起状態がいくらでも粒子を飲み込めるので、基底状態に溜まらない。
計算 3.3:$d=2$ で $\varepsilon$ を下げたときの値を並べる。
| $\varepsilon$ | 励起数 | 前段からの増分 |
|---|---|---|
| $10^{-4}$ | $8.981003$ | 、 |
| $10^{-8}$ | $18.191343$ | $\mathbf{9.210340}$ |
| $10^{-12}$ | $27.401684$ | $\mathbf{9.210340}$ |
観察 3.4 増分が揃っている。比は $1.000000$、等差で増えるのは対数発散の署名である。
観察 3.5 増分は $-\ln\varepsilon$ の増分と一致する。$9.210340$ 対 $9.210340$、$\ln(10^{4})$ であり、独立に計算した値と合う。
観察 3.6 $d=3$ は同じ操作でほとんど動かない。比 $1.000117682$、収束する側であり、系を大きくしても励起数は頭打ちになる。
4. 分離子
分離子:切っているのが紫外側か、赤外側か。
観察 4.1 上の $4$ は紫外側の話である。短波長の揺らぎが平均場の答をずらすかどうか、$d>4$ では効かなくなり、論文271 の「平均場は次元を見ない」がそこに立つ。
観察 4.2 下の $2$ は赤外側の話である。長波長の揺らぎが積分を発散させるかどうか、$d\le2$ で発散し、秩序が立たない。
観察 4.3 同じ語が二つの数を指している。どちらも「臨界次元」と呼ばれる。論文300 の基準で別根であり、機構も、切る側も、境目の数も違う。
観察 4.4 見分ける操作がある。$\varepsilon$ を下げて発散するなら下の話、格子間隔を下げて発散するなら上の話、どちらを動かしたかで判定できる。
観察 4.5 これは論文481 でいう分離子の一本である。「臨界次元で振舞いが変わる」という主張が反証されたとき、行き先が二つある。どちらの境目の話かを書いておけば、片方が潰れる。
観察 4.6 論文94 が分けたのは「次元」そのものだった。本稿が分けたのは「臨界次元」という複合語のほうである。語を分けても、その語を含む語がまだ分かれていないことがある。
観察 4.7 正直に言えば、本稿が数を出したのは二つだけである。一般の積分とボース気体、同じ $k^{d-3}$ が現れる場面は他にもあるが、それらは名指すにとどめ、計算していない。数えたのは境目の位置であって、各分野の物理ではない。
5. 点呼と結び
- $d=1$ で $999999.000000$(計算 2.1):冪で発散。
- $d=3$ は厳密に $1-\varepsilon$(観察 2.2):閉じた式と一致。
- $d=4$ はちょうど $1/2$(観察 2.4):独立な確認。
- $d=2$ は $\varepsilon$ を下げると倍(観察 2.5):対数発散。
- 境目は $d=2$ ちょうど(観察 2.7):本稿の芯。
- ボースは $d=2$ で $13.586173$(計算 3.1):凝縮しない側。
- 増分が $9.210340$ で揃う(観察 3.5):$\ln(10^{4})$ と一致。
- $d=3$ は比 $1.000117682$(観察 3.6):頭打ちになる。
- 分離子は紫外か赤外か(観察 4.3):論文300 の基準で別根。
- 計算したのは二つだけ(観察 4.7):他は名指すにとどめた。
結び:「臨界次元」は一つの数だと思われている。ある次元より上では話が簡単になる、という一本の境目の像である。だが体系はすでに $4$ を出しており、論文279 は自己回避鎖の代価が四次元より上で消えると示した。本稿が出すのは、それとは別の数である。境目は二ちょうどである。$\varepsilon=10^{-6}$ で $\int_{\varepsilon}^{1}k^{d-3}dk$ は、$d=1$ が $\mathbf{999999.000000}$、$d=2$ が $\mathbf{13.815511}$、$d=3$ が $\mathbf{0.999999}$、$d=4$ が $\mathbf{0.500000}$ になる。$d=3$ の値は厳密に $1-\varepsilon$ で、被積分が $k^{0}=1$ になるからであり、閉じた式との一致が独立な確認になる。$\varepsilon$ を下げれば $0.999999999999$ と $1$ へ寄る。$d=4$ はちょうど $1/2$ に収まり、これも $\int_{0}^{1}k dk$ と合う。$d=2$ は $\varepsilon$ を $10^{-12}$ にすると値が倍になる。対数発散の署名で、桁数を倍にすれば値も倍になる。$d=1$ は同じ操作で $10^{6}$ 倍になり、冪発散とは速さが違う。そして境目は $d=2$ ちょうどで、$d=2.01$ は $24.142242$ で収束し、$d=1.99$ は $31.8257$ で発散側にいる。ボース気体も同じ境目を持つ、理想ボース気体の励起数を赤外側だけ数えると、$d=2$ で $\mathbf{13.586173}$ と発散し、$d=3$ で $\mathbf{0.849847}$ に収まる。前者では励起状態がいくらでも粒子を飲み込めるので、基底状態に溜まらない。$d=2$ で $\varepsilon$ を $10^{-4}$ から $10^{-8}$、$10^{-12}$ と下げると $8.981003$、$18.191343$、$27.401684$ となり、増分が $\mathbf{9.210340}$ で揃う。その値は $-\ln\varepsilon$ の増分、すなわち $\ln(10^{4})$ と一致する。$d=3$ は同じ操作で比 $1.000117682$ しか動かず、系を大きくしても励起数は頭打ちになる。分けているものは一つ、切っているのが紫外側か、赤外側か。上の $4$ は紫外側の話で、短波長の揺らぎが平均場の答をずらすかどうかであり、$d>4$ では効かなくなる。論文271 の「平均場は次元を見ない」がそこに立つ。下の $2$ は赤外側の話で、長波長の揺らぎが積分を発散させるかどうかであり、$d\le2$ で発散して秩序が立たない。どちらも「臨界次元」と呼ばれるが、論文300 の基準で別根であり、機構も、切る側も、境目の数も違う。見分ける操作もある。$\varepsilon$ を下げて発散するなら下の話、格子間隔を下げて発散するなら上の話で、どちらを動かしたかで判定できる。これは論文481 でいう分離子の一本であり、「臨界次元で振舞いが変わる」という主張が反証されたときの行き先が二つあるところを、片方に絞る。論文94 が分けたのは「次元」そのものだったが、本稿が分けたのは「臨界次元」という複合語のほうである。語を分けても、その語を含む語がまだ分かれていないことがある。正直に言えば、本稿が数を出したのは一般の積分とボース気体の二つだけである。同じ $k^{d-3}$ が現れる場面は他にもあるが、それらは名指すにとどめ、計算していない。数えたのは境目の位置であって、各分野の物理ではない。
参考文献
- Mermin, N. D., & Wagner, H. (1966). Absence of Ferromagnetism or Antiferromagnetism in One- or Two-Dimensional Isotropic Heisenberg Models. Physical Review Letters.
- Hohenberg, P. C. (1967). Existence of Long-Range Order in One and Two Dimensions. Physical Review.
- Ginzburg, V. L. (1960). Some Remarks on Phase Transitions of the Second Kind and the Microscopic Theory of Ferroelectric Materials. Soviet Physics Solid State.
- 山岸勇輝 (2026). 『「次元」は一つではない』[論文94]. Zenodo. 10.5281/zenodo.21758581
- 山岸勇輝 (2026). 『平均場は次元を見ないが、外れ方は次元だけで決まる』[論文271]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22169925
- 山岸勇輝 (2026). 『鎖の指数を変えたのは「自分を避ける」ことだけであり、四次元より上ではその代価が消える』[論文279]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22170222
- 山岸勇輝 (2026). 『三百本目の点呼、同根か別根かは、判定できる』[論文300]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22171914
- 山岸勇輝 (2026). 『「法則が破れた」は、どの仮定へも落とせる』[論文481]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22733927
作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。
書誌
山岸勇輝(2026)「「臨界次元」という同じ語が、上と下で別の数を指している」[論文482]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.22759625
日付の証拠(OpenTimestamps):日本語版の .ots・英語版の .ots・SHA256SUMS
予備の置き場所(ミラー。中身は上と同じです):PDF 日本語・PDF English・SHA256SUMS
住所:https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/482・DOI 10.5281/zenodo.22759625・CC BY 4.0・プレプリント(査読を経ていません)・ORCID 0009-0006-8587-3450
引用するとき
山岸勇輝 (2026). 「臨界次元」という同じ語が、上と下で別の数を指している [論文482]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/482 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22759625
Yamagishi, Y. (2026). The Same Words “Critical Dimension” Name Two Different Numbers, Above and Below [Paper 482]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/482; DOI: 10.5281/zenodo.22759625
@misc{yamagishi2026yoi482,
author = {Yamagishi, Yuuki},
title = {The Same Words ``Critical Dimension'' Name Two Different Numbers, Above and Below},
year = {2026},
howpublished = {YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/482},
doi = {10.5281/zenodo.22759625},
note = {Preprint, edition 1}
}
指紋(SHA-256)と確かめ方
5e674f573880906ca2a6da240ce31022d45df97a024dd577db486b5ab644f4a0 yamagishi_yoi482_v1_jp.pdfc0232f149bb0ed91b2e74759fb94c84cb09eca8e11b63110b560e195f7a4623c yamagishi_yoi482_v1_en.pdfPDF と .ots を同じ場所に保存し、opentimestamps.org に .ots、続けて PDF を落とすと、記録された日時が表示されます。PDF が 1 バイトでも変わっていれば通りません。