【論文416】積が同じでも、結果が同じにならない

要旨

露光は「照度 $\times$ 時間」で決まると教わる。本稿が示すのは、その掛け算が破れることである。積を一定に保ったまま、結果が $\mathbf{0.524807}$ 倍から $\mathbf{1.905461}$ 倍まで動く。新しい定理も法則も主張しない。

第一に、どの組でも積 $It$ はちょうど $1.00$ で一定である(第2節)。

第二に、これが本稿の芯である。それでも実効露光は動く。照度 $1/100$・時間 $100$ 倍で $\mathbf{0.524807}$ 倍になる(第2節)。

第三に、これは写真の段でいえば $\mathbf{0.9301}$ 段の損失にあたる(第2節)。

第四に、逆に短時間・高照度へ振ると $\mathbf{1.905461}$ 倍に増える。境目の両側で符号が変わる(第3節)。

第五に、指数を $p=1$ に置けば実効露光は積と完全に一致する。破れは指数のずれだけから来る(第3節)。

第六に、分離子は「積で書けるか、指数を持つか」である。$It$ という書き方そのものが仮説である(第4節)。

射程(何を示さないか)

新しい定理も法則も主張しない。相反則、シュワルツシルトの指数、相反則不軌の存在はすべて既知である($1899$ 年以来)。機構を説明しない。潜像核の形成と再結合という機構は主題ではなく、指数 $p$ を与えられた値として使う。$p$ の値を決めない。$p=0.86$ は説明のための代表値であり、乳剤ごとに違う。本稿は特定の材料を主張しない。デジタル撮像素子を扱わない。半導体センサでの相反則の成否は主題ではない。天体写真の実務を扱わない。長時間露光の補正表は主題ではない。高照度側の不軌を分けない。短時間側と長時間側で機構が違うことは知られているが、本稿は一つの指数で通している。既刊との関係:論文415 は同じガラスが $5000$ 倍透明になったことを示した。そこでは名前が値を決めなかった。ここでは式が値を決めない。論文300 は同根か別根かが判定できることを示した。「積で決まる」と「指数で決まる」は、その基準で別根である。論文414 は同じ一刻が季節で $1.5$ 倍変わることを示した。そこでも、同じ名前が同じ量を指していなかった。論文413 は柱を一本足すと閉じた式が消えることを示した。ここでは指数が $1$ からずれた瞬間に、積という閉じた形が使えなくなる。加えたのは、六つの組で積が一定であることを示したこと、同じ組で実効露光が動くことを数に出したこと、損失を写真の段に換算したこと、短時間側で符号が反転することを示したこと、$p=1$ の対照を置いたこと、分離子を「積か指数か」に置いたことである。

1. 記法と問い

設定:相反則は、照度 $I$ と時間 $t$ の積が同じなら結果も同じ、と言う。

$$H=I\,t$$

相反則が破れる場合、実効的な露光は次の形で書かれる(シュワルツシルト)。

$$H_{\mathrm{eff}}=I\,t^{\,p},\qquad p<1$$

以下 $p=0.86$ を代表値として使う。

観察 1.1 $H=It$ は、掛け算の形をしている。だから「絞りを一段絞ったら時間を倍にすればよい」が成り立つ、写真の基本はこの上に立っている。

観察 1.2 だがこれは法則の名前がついた仮説である。「相反則」と呼ばれる。名前がつくと、成り立つことが前提に見えてくる。

問い:積を一定に保ったまま、$I$ と $t$ をどこまでも振ったらどうなるのか。

2. 積は一定で、結果は動く

計算 2.1:積 $It=1$ を保ったまま、$I$ と $t$ を六通りに振る。

照度 $I$ 時間 $t$ 積 $It$ 実効露光 $It^{p}$
$1.000$ $1.0$ $1.00$ $1.000000$
$0.100$ $10.0$ $1.00$ $0.724436$
$0.010$ $100.0$ $1.00$ $0.524807$
$0.001$ $1000.0$ $1.00$ $0.380189$
$10.000$ $0.1$ $1.00$ $1.380384$
$100.000$ $0.01$ $1.00$ $1.905461$

観察 2.2 積の列はちょうど $1.00$ で動かない。相反則が言っているのはこの列である。そしてこの列だけを見ている限り、六つの組は区別できない。

観察 2.3 右端の列は動く。$0.380189$ から $1.905461$ まで、$\mathbf{5.01}$ 倍の幅がある。同じ「露光量」で、五倍違う。

計算 2.4:照度 $1/100$・時間 $100$ 倍の場合を写真の段($2$ の冪)に換算する。

$0.524807$ 倍は $\mathbf{0.9301}$ 段の損失にあたる。ほぼ一段である。絞りを一段開けるか、時間を倍にするかで埋める量である。

観察 2.5 時間を $1000$ 倍にすれば $\mathbf{1.3952}$ 段になる。損失は時間の対数に比例する。$\log_2$ をとれば $(1-p)\log_2 t$ だからである。

3. 境目の反対側と、対照

観察 3.1 短時間・高照度へ振ると、実効露光は増える。照度 $100$ 倍・時間 $1/100$ で $\mathbf{1.905461}$ 倍、損失ではなく利得になる。

観察 3.2 つまり $t=1$ が境目である。$t>1$ なら $t^{p}<t$ で損し、$t<1$ なら $t^{p}>t$ で得する。境目の両側で符号が変わる。

計算 3.3:対照として $p=1$ に置く。

六つの組すべてで実効露光が積と一致し、ちょうど $1.000000$ になる。

観察 3.4 この対照が効いている。破れの原因が $p\neq1$ だけであることを示す。他の要素が混じっていれば、$p=1$ でも一致しない。

観察 3.5 そして $p$ は $1$ に近い。$0.86$ である。$1$ からのずれは $14$ パーセントしかないのに、時間を $1000$ 倍振ると $1.4$ 段になる。指数のずれは冪で効く。

4. 分離子

分離子:積で書けるか、指数を持つか。

観察 4.1 $It$ という書き方は、$I$ と $t$ が対等だと言っている。どちらを二倍にしても同じ、これは主張であって、定義ではない。

観察 4.2 $It^{p}$ は、対等でないと言っている。時間のほうが効きが弱い。同じ量を $I$ で稼ぐか $t$ で稼ぐかが、結果を変える。

観察 4.3 これは論文300 の基準で別根である。「積で決まる」は二つの量が交換可能だという主張、「指数で決まる」は交換に費用がかかるという主張である。

観察 4.4 そして名前が誤解を助けている。「相反則」という名前は、それが法則だと言っている。論文326 で二乗三乗の「法則」が恒等式だったのと逆で、ここでは法則の名前がついたものが経験則である。

観察 4.5 破れは実務で先に見つかった。天体写真では長時間露光が理論どおりに効かない。式が先にあって現象が後から来たのではなく、逆である。

観察 4.6 正直に言えば、$p=0.86$ は説明のための代表値であり、乳剤ごとに違う。本稿は特定の材料の値を主張していない。動かないのは、$p$ が $1$ でない限り積では書けない、という点である。

観察 4.7 最後に一つ、$It$ が破れることと、$It$ が役に立たないことは別である。通常の撮影では $t$ の幅が狭いので、積で足りる。破れが見えるのは、$t$ を三桁振ったときである。

5. 点呼と結び

  1. 積 $It$ は六組ともちょうど $1.00$(計算 2.1):相反則が言うこと。
  2. 実効露光は $0.380189$〜$1.905461$(計算 2.1):$5.01$ 倍の幅。
  3. 照度 $1/100$ で $0.524807$ 倍(計算 2.1):積は同じなのに。
  4. それは $0.9301$ 段の損失(計算 2.4):ほぼ一段。
  5. 時間 $1000$ 倍で $1.3952$ 段(観察 2.5):対数に比例。
  6. 短時間側では $1.905461$ 倍(観察 3.1):符号が反転。
  7. 境目は $t=1$(観察 3.2):両側で向きが変わる。
  8. $p=1$ なら六組とも $1.000000$(計算 3.3):対照が効いている。
  9. $p=0.86$ はずれ $14$ %(観察 3.5):冪で効くので大きく出る。
  10. 分離子は積か指数か(観察 4.3):交換可能かどうか。

結び:露光は「照度 $\times$ 時間」で決まると教わり、だから「一段絞ったら時間を倍に」が成り立つ、だが積 $It=1$ を保ったまま $I$ と $t$ を六通りに振ると、積の列はちょうど $\mathbf{1.00}$ で動かないのに、実効露光は $\mathbf{0.380189}$ から $\mathbf{1.905461}$ まで $\mathbf{5.01}$ 倍の幅で動く。照度を $1/100$ にして時間を $100$ 倍にすれば $\mathbf{0.524807}$ 倍、写真の段でいえば $\mathbf{0.9301}$ 段の損失で、ほぼ一段ぶん足りない。時間を $1000$ 倍にすれば $\mathbf{1.3952}$ 段になり、損失は時間の対数に比例する。そして境目の反対側では符号が変わる。照度 $100$ 倍・時間 $1/100$ に振れば実効露光は $\mathbf{1.905461}$ 倍に増え、損失ではなく利得になる。境目は $t=1$ で、$t>1$ なら $t^{p}<t$、$t<1$ なら $t^{p}>t$ である。原因が指数のずれだけであることは、$p=1$ に置くと六組すべてがちょうど $\mathbf{1.000000}$ に戻ることが示す。他の要素が混じっていれば、この対照は一致しない。$p$ は $1$ に近い。$0.86$ で、$1$ からのずれは $14$ パーセントしかない。それでも時間を三桁振れば $1.4$ 段になる。指数のずれは冪で効くからである。分けているものは一つ、積で書けるか、指数を持つか。$It$ という書き方は $I$ と $t$ が対等だと言っており、これは定義ではなく主張である。$It^{p}$ は対等でないと言っており、同じ量を照度で稼ぐか時間で稼ぐかが結果を変える。論文300 の基準で別根であり、一方は交換可能だという主張、一方は交換に費用がかかるという主張である。そして「相反則」という名前がそれを法則に見せている。論文326 で二乗三乗の「法則」が恒等式だったのとちょうど逆で、ここでは法則の名前がついたものが経験則である。正直に言えば、$p=0.86$ は説明のための代表値で、乳剤ごとに違い、本稿は特定の材料の値を主張していない。動かないのは、$p$ が $1$ でない限り積では書けないという点である。最後に一つ、$It$ が破れることと $It$ が役に立たないことは別である。通常の撮影では $t$ の幅が狭いので積で足りる。破れが見えるのは、$t$ を三桁振ったときである。

参考文献

  1. Schwarzschild, K. (1900). On the Deviations from the Law of Reciprocity for Bromide of Silver Gelatine. Astrophysical Journal.
  2. Bunsen, R., & Roscoe, H. E. (1862). Photochemische Untersuchungen. Annalen der Physik.
  3. Mees, C. E. K., & James, T. H. (1966). The Theory of the Photographic Process (3rd ed.). New York: Macmillan.
  4. Hamilton, J. F. (1988). The Silver Halide Photographic Process. Advances in Physics.
  5. 山岸勇輝 (2026). 『三百本目の点呼、同根か別根かは、判定できる』[論文300]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22171914
  6. 山岸勇輝 (2026). 『二乗三乗の「法則」は、法則ではなく恒等式である』[論文326]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22209992
  7. 山岸勇輝 (2026). 『柱を一本足すと、閉じた式が消える』[論文413]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22699750
  8. 山岸勇輝 (2026). 『同じ「一刻」が、季節で $1.5$ 倍変わる』[論文414]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22699766
  9. 山岸勇輝 (2026). 『同じガラスが、$5000$ 倍透明になった』[論文415]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22699790

作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。

書誌

山岸勇輝(2026)「積が同じでも、結果が同じにならない」[論文416]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.22699831

YOI 416第1版・2026年9月ビットコインに記録済み

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引用するとき

山岸勇輝 (2026). 積が同じでも、結果が同じにならない [論文416]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/416 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22699831

Yamagishi, Y. (2026). The Product Is the Same and the Result Is Not [Paper 416]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/416; DOI: 10.5281/zenodo.22699831

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  note = {Preprint, edition 1}
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