【論文505】「勢力圏」は三つあり、質量比を 1000 分の 1 にすると別々に縮む

要旨

惑星の勢力圏は一つの半径だと思われている。本稿が示すのは、三つの定義があり、指数が $1/3$、$2/5$、$1/2$ で違うことである。だから質量比を変えると、三つが別々に動く。新しい定理も法則も主張しない。

第一に、地球のヒル半径は $\mathbf{149.6433}$ 万 km である(第2節)。

第二に、ラプラスの作用圏は $\mathbf{92.4554}$ 万 km、重力が等しくなる点は $\mathbf{25.8781}$ 万 km である(第2節)。

第三に、最大と最小が $\mathbf{5.7826}$ 倍ひらく(第2節)。

第四に、これが本稿の芯である。質量比を $1000$ 分の $1$ にすると、三つは $\mathbf{10.000000}$ 倍、$\mathbf{15.848932}$ 倍、$31.569804$ 倍と、別々に縮む(第3節)。

第五に、そのときひらきは $5.7826$ 倍から $\mathbf{18.2556}$ 倍へ変わる(第3節)。

第六に、分離子は「何と釣り合わせたか」である(第4節)。

キーワード:勢力圏、ヒル半径、ラプラスの作用圏、天体力学、質量比。

射程(何を示さないか)

新しい定理も法則も主張しない。ヒル半径もラプラスの作用圏も標準的であり、指数が違うことも既知である。軌道力学を作らない。摂動、脱出条件、探査機の航法は主題ではない。三つの半径の値と、質量比への依存だけを見る。円軌道に限る。地球の軌道離心率を無視し、太陽からの距離を一定として計算した。どれが正しいかを決めない。用途によって使うべき定義が違う。本稿はどれが正しいとは言わない。三つ以外を数えていない。ロッシュ限界や重力捕獲の半径は入れていない。三つで打ち止めだとは主張しない。既刊との関係:論文337 は太陽系の「果て」が五つあり、最小と最大が $5106$ 倍ひらくと示した。あちらは太陽の周りで五つ、こちらは地球の周りで三つである。論文490 はラグランジュ点の柵が質量比 $24.96$ だと示した。同じ質量比が、こちらでは三つの半径を別々に動かす。論文300 は同根か別根かが判定できると示した。三つは別根であり、指数がその証拠になる。論文481 は分離子が無いと反証の行き先が決まらないと示した。本稿はその分離子を一本書く。加えたのは、三つの半径を同じ表に置いたこと、ひらきを $5.7826$ 倍と出したこと、質量比を動かして縮み方を閉じた式と突き合わせたこと、ひらき自体が $18.2556$ 倍へ変わることを示したこと、月の位置で三つの判定が割れることを示したことである。

1. 記法と問い

設定:質量 $M$ の主星から距離 $a$ にある、質量 $m$ の惑星を考え、質量比を $q=m/M$ と書く。「勢力圏」には少なくとも三つの定義がある。

$$r_{H}=a\left(\frac{q}{3}\right)^{1/3},\qquad
r_{S}=a\,q^{2/5},\qquad
\frac{r_{E}}{a-r_{E}}=\sqrt{q}$$

左からヒル半径、ラプラスの作用圏、両者の重力が等しくなる点である。以下、地球と太陽で $q=\mathbf{3.002735\times10^{-6}}$ として数を出す。

観察 1.1 惑星の勢力圏は一つの半径だと思われている。そこまでは惑星が支配し、外は主星が支配する。境界が一本ある、という像である。

観察 1.2 だが上の三つは、指数が違う。$1/3$、$2/5$、$1/2$、同じ質量比から、違う数が出る。

問い:三つはどれだけひらき、質量比を変えるとどう動くのか。

2. 三つの半径

計算 2.1:地球について三つを出す。

定義 指数 半径
ヒル半径 $1/3$ $\mathbf{149.6433}$ 万 km
ラプラスの作用圏 $2/5$ $\mathbf{92.4554}$ 万 km
重力が等しくなる点 $1/2$ $\mathbf{25.8781}$ 万 km

観察 2.2 ヒル半径が実測と合う。$1.496433\times10^{9}$ m、約 $150$ 万 km というよく引かれる値と一致する。

観察 2.3 作用圏も既知と合う。$9.245539\times10^{8}$ m、探査機の航法で使われる約 $92$ 万 km である。

観察 2.4 三つは $5.7826$ 倍ひらく。最大と最小、「地球の勢力圏はどこまでか」という問いに、六倍の幅がある。

観察 2.5 順序は決まっている。ヒル $>$ 作用圏 $>$ 釣り合い点、$q$ が小さいとき、指数が小さいほど大きな半径を与える。

観察 2.6 月は三つのうち二つの内側にいる。$3.844\times10^{8}$ m、ヒル半径と作用圏の内側だが、重力が等しくなる点より外である。「月は地球のものか」という問いの答が、定義で割れる。

3. 質量比を動かすと、別々に縮む

計算 3.1:$q$ を $1000$ 分の $1$ にして、三つがどれだけ縮むかを見る。

定義 縮み方 閉じた式
ヒル半径 $\mathbf{10.000000}$ 倍 $1000^{1/3}=10.000000$
ラプラスの作用圏 $\mathbf{15.848932}$ 倍 $1000^{2/5}=15.848932$
重力が等しくなる点 $31.569804$ 倍 $1000^{1/2}=31.622777$

観察 3.2 ヒルと作用圏は閉じた式に一致する。$10.000000000$ と $15.848931925$、指数がそのまま縮み方になっている。

観察 3.3 釣り合い点だけは厳密に一致しない。$31.569804$ 対 $31.622777$、差 $5.297\times10^{-2}$、式に $1+\sqrt{q}$ という分母があるためで、$q$ が小さいほど $1000^{1/2}$ に寄る。

観察 3.4 三つの縮み方が互いに違う。$10.0000$、$15.8489$、$31.5698$、同じ操作をしたのに、答が三通りある。

観察 3.5 だからひらき自体が変わる。$5.7826$ 倍から $18.2556$ 倍へ、「三つの定義の差は小さい」と言えるのは、いまの質量比でだけである。

観察 3.6 軽い衛星ほど、定義の差が効く。$q$ が小さいほどひらきが大きい。小天体では、どの定義を使うかが答を大きく変える。

4. 分離子

分離子:何と釣り合わせて半径を決めたか。

観察 4.1 潮汐力と釣り合わせれば、ヒル半径になる。指数 $1/3$、回転する系で、遠心力を含めた実効的な力の釣り合いである。

観察 4.2 摂動の相対的な大きさで切れば、作用圏になる。指数 $2/5$、どちらを主星として扱うほうが誤差が小さいか、という比較である。

観察 4.3 重力そのものを比べれば、釣り合い点になる。指数 $1/2$、最も素朴で、最も内側にある。

観察 4.4 三つは論文300 の基準で別根である。どれも「勢力圏」と呼ばれる。釣り合わせた相手が違い、その違いが指数として現れている。指数は別根の指紋である。

観察 4.5 論文337 は太陽の周りで五つ数えた。最小と最大が $5106$ 倍、こちらは地球の周りで三つ、$5.7826$ 倍である。同じ形が、入れ子になった二つの階層で起きている。

観察 4.6 論文490 の柵と同じ質量比が効いている。あちらでは $24.96$ という一つの閾値、こちらでは同じ $q$ が三つの半径を別々に動かす。

観察 4.7 正直に言えば、三つで打ち止めだとは示していない。ロッシュ限界や捕獲半径は数えていない。「勢力圏」と呼ばれうる量は他にもあり、本稿が示したのは、少なくとも三つあって指数が違うということまでである。

5. 点呼と結び

  1. ヒル半径 $149.6433$ 万 km(計算 2.1):実測と一致。
  2. 作用圏 $92.4554$ 万 km(観察 2.3):航法で使われる値。
  3. 釣り合い点 $25.8781$ 万 km(計算 2.1):最も内側。
  4. ひらきは $5.7826$ 倍(観察 2.4):六倍の幅。
  5. 縮み方が $10.0000$/$15.8489$/$31.5698$(計算 3.1):本稿の芯。
  6. 釣り合い点だけ厳密に一致しない(観察 3.3):分母 $1+\sqrt{q}$ のため。
  7. ひらきが $18.2556$ 倍へ(観察 3.5):差の大きさ自体が動く。
  8. 月の判定が割れる(観察 2.6):二つの内側、一つの外側。
  9. 分離子は何と釣り合わせたか(観察 4.4):指数が別根の指紋。
  10. 三つで打ち止めではない(観察 4.7):他にもありうる。

結び:惑星の勢力圏は一つの半径だと思われている。そこまでは惑星が支配し外は主星が支配する、境界が一本あるという像である。だが定義は三つあり、指数が $1/3$、$2/5$、$1/2$ と違う。同じ質量比から、違う数が出る。三つの半径、地球について、ヒル半径は $\mathbf{149.6433}$ 万 km、ラプラスの作用圏は $\mathbf{92.4554}$ 万 km、重力が等しくなる点は $\mathbf{25.8781}$ 万 km である。ヒル半径の $1.496433\times10^{9}$ m はよく引かれる約 $150$ 万 km と一致し、作用圏の $9.245539\times10^{8}$ m は探査機の航法で使われる約 $92$ 万 km である。三つは $\mathbf{5.7826}$ 倍ひらき、「地球の勢力圏はどこまでか」という問いに六倍の幅がある。順序はヒル $>$ 作用圏 $>$ 釣り合い点で、$q$ が小さいとき指数が小さいほど大きな半径を与える。そして月は $3.844\times10^{8}$ m でヒル半径と作用圏の内側だが、重力が等しくなる点より外である。「月は地球のものか」という問いの答が、定義で割れる。質量比を動かすと、別々に縮む、$q$ を $1000$ 分の $1$ にすると、ヒル半径は $\mathbf{10.000000}$ 倍、作用圏は $\mathbf{15.848932}$ 倍、釣り合い点は $31.569804$ 倍に縮む。前二つは閉じた式 $1000^{1/3}$ と $1000^{2/5}$ に一致し、指数がそのまま縮み方になっている。釣り合い点だけは $1000^{1/2}=31.622777$ と $5.297\times10^{-2}$ 違うが、これは式に $1+\sqrt{q}$ という分母があるためで、$q$ が小さいほど寄る。三つの縮み方が互いに違い、同じ操作をしたのに答が三通りある。だからひらき自体が $5.7826$ 倍から $\mathbf{18.2556}$ 倍へ変わり、「三つの定義の差は小さい」と言えるのはいまの質量比でだけである。軽い衛星ほど定義の差が効き、小天体ではどの定義を使うかが答を大きく変える。分けているものは一つ、何と釣り合わせて半径を決めたか。潮汐力と釣り合わせればヒル半径になり、指数は $1/3$ で、回転する系で遠心力を含めた実効的な力の釣り合いである。摂動の相対的な大きさで切れば作用圏になり、指数は $2/5$ で、どちらを主星として扱うほうが誤差が小さいかという比較である。重力そのものを比べれば釣り合い点になり、指数は $1/2$ で、最も素朴で最も内側にある。三つは論文300 の基準で別根であり、どれも「勢力圏」と呼ばれるが、釣り合わせた相手が違い、その違いが指数として現れている。指数は別根の指紋である。論文337 は太陽の周りで五つ数え、最小と最大が $5106$ 倍だった。こちらは地球の周りで三つ、$5.7826$ 倍で、同じ形が入れ子になった二つの階層で起きている。論文490 の柵と同じ質量比が効いており、あちらでは $24.96$ という一つの閾値だったが、こちらでは同じ $q$ が三つの半径を別々に動かす。正直に言えば、三つで打ち止めだとは示していない。ロッシュ限界や捕獲半径は数えておらず、「勢力圏」と呼ばれうる量は他にもある。本稿が示したのは、少なくとも三つあって指数が違うということまでである。

参考文献

  1. Hill, G. W. (1878). Researches in the Lunar Theory. American Journal of Mathematics.
  2. Laplace, P.-S. (1799). Traité de Mécanique Céleste. Duprat, Paris.
  3. Roy, A. E. (2005). Orbital Motion (4th ed.). Institute of Physics Publishing.
  4. 山岸勇輝 (2026). 『三百本目の点呼、同根か別根かは、判定できる』[論文300]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22171914
  5. 山岸勇輝 (2026). 『太陽系の「果て」は五つあり、最小と最大は $5106$ 倍ひらく』[論文337]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22681940
  6. 山岸勇輝 (2026). 『「法則が破れた」は、どの仮定へも落とせる』[論文481]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22733927
  7. 山岸勇輝 (2026). 『山の頂上に、物が留まっている』[論文490]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22760033

作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。

書誌

山岸勇輝(2026)「「勢力圏」は三つあり、質量比を 1000 分の 1 にすると別々に縮む」[論文505]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.22861782

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引用するとき

山岸勇輝 (2026). 「勢力圏」は三つあり、質量比を 1000 分の 1 にすると別々に縮む [論文505]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/505 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22861782

Yamagishi, Y. (2026). The “Sphere of Influence” Is Three Spheres, and Dividing the Mass Ratio by 1000 Shrinks Them Differently [Paper 505]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/505; DOI: 10.5281/zenodo.22861782

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