【論文517】場を縦と横に分けるのは場の性質だが、x と y に分けるのは座標の性質である

要旨

ベクトル場を二つに分ける操作は、いくつもある。本稿が示すのは、そのうちどれが場に属し、どれが座標に属するかは、座標を回して測れば分かることである。新しい定理も法則も主張しない。

第一に、縦成分の割合は $\mathbf{0.647222222222}$、横成分は $\mathbf{0.352777777778}$、両者を独立に足すと $\mathbf{1.000000000000}$ である(第2節)。

第二に、同じ場を $x$ 成分と $y$ 成分に分けると $\mathbf{0.384259259259}$ になる。どちらも「場を二つに割った」と言える(第2節)。

第三に、これが本稿の芯である。座標を $30$ 度、$45$ 度、$90$ 度と回すと、縦の割合は $\mathbf{0.647222222222}$ のまま動かないが、$x$ の割合は $\mathbf{0.558401558841}$、$\mathbf{0.634259259259}$、$\mathbf{0.615740740741}$ と動く(第3節)。

第四に、回さなければ $x$ の割合も $\mathbf{0.384259259259}$ のまま動かない。境目である(第3節)。

第五に、分解の三つの性質(足すと戻る、平行成分の外積が $0$、垂直成分の内積が $0$)は三つのモードすべてで $\mathbf{0}$ の桁で成り立つ(第2節)。

第六に、分離子は「座標を回す」という操作である。何を動かすと別物になるかが、そのまま分け方の住所を決める(第4節)。

キーワード:ヘルムホルツ分解、ベクトル場、回転不変性、縦成分と横成分、座標系。

射程(何を示さないか)

新しい定理も法則も主張しない。ヘルムホルツ分解も、その回転不変性も標準的である。一意性を主張しない。分解が一意になるのは境界条件を指定したときであり、本稿は周期的な波数空間だけを扱う。領域の効果に入らない。有界領域では調和成分が現れ、分解は三つになる。本稿はそこへ行かない。三次元を扱わない。二次元の三つのモードだけで、次元が上がったときの横成分の自由度の増え方は主題ではない。物理的な意味を割り当てない。縦が音波で横が電磁波、といった対応は場合ごとの話であって、本稿は割合の数だけを見る。回転以外の変換を見ない。伸縮やせん断のもとで何が保たれるかは扱わない。既刊との関係:論文347 は「作図できない」が図形ではなく道具の性質だと示した。本稿は逆向きで、性質が道具ではなく対象に属している場合を一つ書く。論文516 は単位からの自由が共分散への依存に移っただけだと示した。そこでは選択が移り、ここでは選択が本当に消える。二つを並べると境目が見える。論文130 はヘルムホルツの三定理が値段の違う三つの言明だと示した。本稿の分解は同じ名前を持つ別のヘルムホルツであり、混同しないために番号で分けておく。論文299 は太鼓に音程が無いのが境界のせいだと示した。本稿が境界を切って周期的な場合に限るのは、そこを踏まないためである。論文300 は同根か別根かが判定できると示した。「場を二つに分ける」という一語が、別根の二つを指している。論文481 は分離子が無いと反証の行き先が決まらないと示した。本稿はその分離子を一本書く。加えたのは、縦横と $x y$ の二つの分け方を同じ場に当てて割合を出したこと、座標を三通りに回して片方だけが動くことを数で示したこと、横成分を縦から引かずに独立に足し上げて $1$ になることを確かめたこと、分解の三つの性質をモードごとに検算したこと、分離子を「座標を回す」という操作に置いたことである。

1. 記法と問い

設定:二次元の平面上に、三つの波を重ねた場を置く。各波は波数 $k$ と振幅ベクトル $a$ で決まる。用いるのは

$$(k,a)=\big((1,0),(0.7,0.4)\big),\quad \big((0,1),(-0.3,0.9)\big),\quad \big((1,2),(0.5,-0.6)\big)$$

である。

第一の分け方(縦と横):各波について、振幅を波数の向きに平行な成分と垂直な成分に分ける。$\hat k=k/|k|$ として

$$a_{\parallel}=(a\cdot\hat k)\,\hat k,\qquad a_{\perp}=a-a_{\parallel}$$

とする。これがヘルムホルツ分解の波数空間での姿である。

第二の分け方($x$ と $y$):同じ振幅を、第一成分と第二成分に分ける。$a=(a_{x},a_{y})$ をそのまま二つに割る。

観察 1.1 どちらも「場を二つに分けた」と言える。足せば元に戻り、二乗和も保たれる。形の上では区別がつかない。

問い:この二つの分け方は、同じ資格を持つのか。

2. 二つの分け方を、同じ場に当てる

計算 2.1:各モードの縦成分と横成分を出す。

波数 $k$ と振幅 $a$ 縦成分 $a_{\parallel}$ 横成分 $a_{\perp}$
$k=(1,0)$、$a=(0.7,0.4)$ $(0.700000000, 0.000000000)$ $(0.000000000, 0.400000000)$
$k=(0,1)$、$a=(-0.3,0.9)$ $(0.000000000, 0.900000000)$ $(-0.300000000, 0.000000000)$
$k=(1,2)$、$a=(0.5,-0.6)$ $(-0.140000000, -0.280000000)$ $(0.640000000, -0.320000000)$

観察 2.2 最初の二つは目で確かめられる。$k$ が $x$ 軸に沿うとき縦成分は $x$ 成分そのもの、$k$ が $y$ 軸に沿うとき縦成分は $y$ 成分そのものである。独立に検算できる場合を先に置いた。

観察 2.3 三つ目は目では出ない。$k=(1,2)$ は軸に沿っていないので、縦成分は両方の成分に散る。ここから先は計算に頼る。

検算 2.4:分解が分解であることを、三つの性質で確かめる。足すと元に戻るか、平行成分は本当に $k$ と平行か(外積が $0$)、垂直成分は本当に $k$ と垂直か(内積が $0$)。三つのモードすべてで、差も外積も内積も $\mathbf{0.000\times10^{0}}$ である。

計算 2.5:エネルギーの割合を出す。

分け方 割合
縦成分 $\mathbf{0.647222222222}$
横成分 $\mathbf{0.352777777778}$
$x$ 成分 $\mathbf{0.384259259259}$

観察 2.6 縦と横を独立に足し上げると $\mathbf{1.000000000000}$ になる。横を「$1$ から縦を引いたもの」として出したのではなく、垂直成分の二乗和を別に足した。引き算で作った数は、足し合わせの検算にならない。

観察 2.7 ここまでで二つの分け方に差は無い。どちらも $0$ と $1$ の間の一つの数を返し、どちらも残りを足せば $1$ になる。一つの場に対する一つの数、という点で同じ形をしている。

3. 座標を回すと、片方だけが動く

計算 3.1:波数と振幅の両方を同じ角だけ回し、二つの割合を測り直す。

回した角 縦成分の割合 $x$ 成分の割合
$0$ 度 $\mathbf{0.647222222222}$ $\mathbf{0.384259259259}$
$30$ 度 $\mathbf{0.647222222222}$ $\mathbf{0.558401558841}$
$45$ 度 $\mathbf{0.647222222222}$ $\mathbf{0.634259259259}$
$90$ 度 $\mathbf{0.647222222222}$ $\mathbf{0.615740740741}$

観察 3.2 縦の割合は $12$ 桁とも動かない。$0$ 度と $90$ 度で $\mathbf{0.647222222222}$ 対 $\mathbf{0.647222222222}$、丸めの範囲ではなく、$10^{-12}$ より内側で一致している。

観察 3.3 $x$ の割合は大きく動く。$\mathbf{0.384259259259}$ から $\mathbf{0.634259259259}$ まで、幅 $\mathbf{0.25}$、場は何も変えていない。変えたのは座標の名づけだけである。

観察 3.4 回さなければ $x$ の割合も動かない。$\mathbf{0.384259259259}$ のまま、境目である。検査が「いつも動く」と言っているのではなく、回したときにだけ動くことを確かめた。

観察 3.5 $90$ 度で元に戻らないことに注意する。$\mathbf{0.615740740741}$ は $0$ 度の $\mathbf{0.384259259259}$ ではない。$90$ 度回すと $x$ 軸は $y$ 軸の位置へ行くので、$x$ の割合は元の $y$ の割合になる。二つを足すと $\mathbf{1.000000000000}$ である。

観察 3.6 なぜ片方だけが動かないかは、式を見れば分かる。縦の割合は $a\cdot\hat k$ という内積だけでできており、内積は回転で保たれる。$x$ の割合には $a$ の第一成分という、座標の名前が入っている。

4. 分離子

観察 4.1 分離子は「座標を回す」という操作である。回して値が動けば座標の性質、動かなければ場の性質、一回の操作で二つが分かれる。

観察 4.2 この分離子は、他の操作へ置き換えると効かなくなる。たとえば場全体を定数倍しても、二つの割合はどちらも動かない。分けたい二つを分けない操作は、分離子にならない。

観察 4.3 「場を二つに分ける」は別根である。論文300 の判定でいえば、縦横の分解と $xy$ の分解は、同じ形を持ちながら別の由来を持つ、形が同じことは同根の証拠にならない。

観察 4.4 論文516 と並べると、三通りが見える。選択が消える場合(本稿の縦横)、選択が移る場合(論文516 の共分散)、選択が残る場合(本稿の $xy$)、「恣意性が無い」と言われたとき、この三つのどれかを見分ける必要がある。

観察 4.5 論文347 とは向きが逆である。あちらは図形の性質と思われていたものが道具の性質だった。こちらは座標の産物と思われかねないものが、実は場に属していた。同じ問いの二つの答である。

観察 4.6 論文481 の言い方でいえば、「この分解は座標に依らない」を疑うとき、行き先は二つある。分解の定義を疑うか、回転の実装を疑うか、本稿は両方に数を置いたので、どちらへ落としても検算が残る。

観察 4.7 どちらの分け方が正しいかは言わない。$x$ 成分と $y$ 成分に分けるのが有用な場面はいくらでもある。言えるのは、その分け方が場について何かを述べているとは限らない、ということだけである。

5. 点呼と結び

  1. 縦成分の割合 $\mathbf{0.647222222222}$(計算 2.5):三つの波を重ねた場で。
  2. 横成分 $\mathbf{0.352777777778}$、独立に足して $\mathbf{1.000000000000}$(観察 2.6):引き算で作らなかった。
  3. $x$ 成分の割合 $\mathbf{0.384259259259}$(計算 2.5):ここまで差が無い。
  4. 回しても縦は $\mathbf{0.647222222222}$(観察 3.2):本稿の芯。
  5. $x$ は $\mathbf{0.558401558841}$、$\mathbf{0.634259259259}$、$\mathbf{0.615740740741}$(計算 3.1):幅 $\mathbf{0.25}$。
  6. 回さなければ動かない(観察 3.4):境目。
  7. $90$ 度で $x$ は $y$ の割合になる(観察 3.5):足すと $\mathbf{1.000000000000}$。
  8. 理由は内積が回転で保たれること(観察 3.6):式の側にある。
  9. 分離子は「座標を回す」(観察 4.1):定数倍では効かない。
  10. どちらが正しいかは言わない(観察 4.7):場について述べているとは限らない、まで。

結び:ベクトル場を二つに分ける操作はいくつもあり、どれも「足せば元に戻る」という同じ形をしている。形が同じでも、属している場所は違う。三つの波を重ねた場で、縦成分の割合は $\mathbf{0.647222222222}$、横成分は $\mathbf{0.352777777778}$ であり、横を縦から引かずに独立に足し上げても $\mathbf{1.000000000000}$ になる。同じ場を $x$ 成分と $y$ 成分に分ければ $\mathbf{0.384259259259}$ で、ここまでは二つの分け方に差が無い。どちらも一つの数を返し、どちらも残りを足せば $1$ になる。座標を回すと片方だけが動く。$30$ 度、$45$ 度、$90$ 度と回しても縦の割合は $\mathbf{0.647222222222}$ のまま $12$ 桁とも動かないが、$x$ の割合は $\mathbf{0.558401558841}$、$\mathbf{0.634259259259}$、$\mathbf{0.615740740741}$ と動き、幅は $\mathbf{0.25}$ に達する。場は何も変えていない。変えたのは座標の名づけだけである。回さなければ $x$ の割合も $\mathbf{0.384259259259}$ のまま動かないので、検査が「いつも動く」と言っているのではない。$90$ 度で元に戻らないのは、$x$ の割合が元の $y$ の割合になるからで、二つを足せば $\mathbf{1.000000000000}$ である。理由は式にある。縦の割合は内積だけでできていて、内積は回転で保たれる。$x$ の割合には第一成分という座標の名前が入っている。一つの操作が二つを分ける。回して値が動けば座標の性質、動かなければ場の性質である。場全体を定数倍する操作ではどちらも動かないので、分離子になるのは回転のほうである。論文300 の判定でいえば、二つの分解は同じ形を持ちながら別根である。論文516 と並べると三通りが見える。選択が消える場合、選択が共分散へ移る場合、選択がそのまま残る場合。論文347 とは向きが逆で、あちらは図形の性質と思われたものが道具の性質だったが、こちらは座標の産物と思われかねないものが場に属していた。論文481 の言い方でいえば、「この分解は座標に依らない」を疑うとき、分解の定義を疑うか回転の実装を疑うかで行き先が変わる。正直に言えば、扱ったのは周期的な波数空間だけである。有界な領域では調和成分が現れて分解は三つになり、境界条件を決めるまで一意にもならない。論文299 が示したとおり、境界は方程式と同じだけ効く。本稿が言えるのは、境界を切って回転だけを見たときに何が動かなかったか、そこまでである。

参考文献

  1. Arfken, G. B., & Weber, H. J. (2005). Mathematical Methods for Physicists (6th ed.). Elsevier.
  2. Bhatia, H., Norgard, G., Pascucci, V., & Bremer, P.-T. (2013). The Helmholtz–Hodge Decomposition: A Survey. IEEE Transactions on Visualization and Computer Graphics.
  3. Helmholtz, H. (1858). Über Integrale der hydrodynamischen Gleichungen, welche den Wirbelbewegungen entsprechen. Journal für die reine und angewandte Mathematik.
  4. 山岸勇輝 (2026). 『渦線が終われないのは、法則ではなく恒等式である』[論文130]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22079996
  5. 山岸勇輝 (2026). 『太鼓に音程が無いのは、境界のせいであって方程式のせいではない』[論文299]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22171877
  6. 山岸勇輝 (2026). 『三百本目の点呼、同根か別根かは、判定できる』[論文300]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22171914
  7. 山岸勇輝 (2026). 『「作図できない」は図形の性質ではなく、道具の性質である』[論文347]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22682365
  8. 山岸勇輝 (2026). 『「法則が破れた」は、どの仮定へも落とせる』[論文481]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22733927
  9. 山岸勇輝 (2026). 『単位から自由になったのではなく、単位の選択を共分散に委ねただけである』[論文516]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22862360

作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。

書誌

山岸勇輝(2026)「場を縦と横に分けるのは場の性質だが、x と y に分けるのは座標の性質である」[論文517]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.22862396

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引用するとき

山岸勇輝 (2026). 場を縦と横に分けるのは場の性質だが、x と y に分けるのは座標の性質である [論文517]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/517 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22862396

Yamagishi, Y. (2026). Longitudinal and Transverse Belong to the Field; x and y Belong to the Coordinates [Paper 517]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/517; DOI: 10.5281/zenodo.22862396

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