【論文853】窓が結露し始める湿度は、部屋ではなく窓が決める

要旨

冬の窓の結露は「部屋の湿気が多いから」と言われる。本稿は、結露し始める湿度がどこで決まるかを数える。新しい定理も法則も主張しない。

第一に、窓の内側の温度は、熱の通りにくさの直列で決まる。室内 $20$ ℃・外 $0$ ℃ で、単板 $5.0575$ ℃、複層 $12.3529$ ℃、三層 $15.4386$ ℃ である(第2節)。

第二に、これが本稿の芯である。結露し始める湿度は窓ごとに違う。単板 $\mathbf{0.375006}$、複層 $\mathbf{0.614094}$、三層 $0.750225$ である(第3節)。

第三に、同じ部屋の同じ空気が、窓で結露したりしなかったりする。相対湿度 $0.5$ の部屋は、単板では結露し、複層ではしない(第3節)。

第四に、外が冷えると境目は下がる。外 $-10$ ℃ では単板 $\mathbf{0.219391}$、複層 $0.475909$、三層 $0.647323$ になる(第3節)。

第五に、部屋の露点だけを見ても答は出ない。相対湿度 $0.5$ の露点は $9.2611$ ℃で、比べる相手は窓の表面温度である(第3節)。

第六に、分離子は、空気の湿りを問うか、表面の冷たさを問うかである。結露は空気の性質と面の性質の出会いで決まる(第4節)。

キーワード:結露、露点、表面温度、熱抵抗、飽和水蒸気圧、模型。

射程(何を示さないか)

新しい定理も法則も主張しない。飽和水蒸気圧が温度で決まること(マグヌスの式)、露点、表面温度が熱抵抗の直列で決まること、面の温度が露点を下回ると結露することは、いずれも既知である。設計の助言をしない。どの窓を選ぶべきか、換気をどうするかは述べない。実在の窓を主張しない。ガラスの熱抵抗 $0.004$・$0.17$・$0.40$ m$^{2}$K/W と表面の熱抵抗 $0.13$・$0.04$ m$^{2}$K/W は模型の値である。窓枠と熱橋を入れない。ガラスの中央だけを見る。枠や縁の冷えは扱わない。その先を扱わない。結露によるカビや健康には入らない。既刊との関係:論文451 は断熱しているのが雪ではなく雪が抱えている空気であることを示し、射程注記で「建物を設計しない。断熱材の選択、施工、結露対策は主題ではない」と空けた。本稿はその席に座る。先客はいない。論文399 は水を一滴も足さずに湿度が $53.80$ パーセントから $100$ パーセントになることを示した。本稿はその隣に置く。あちらは空気を持ち上げて冷やす。こちらは空気が冷たい面に触れる。加えたのは、三つの窓と二つの外気温で表面温度と結露し始める湿度を並べたこと、同じ部屋が窓で結露したりしなかったりする例を数えたこと、分離子を「空気の湿りか、表面の冷たさか」に置いたことである。

1. 記法と問い

設定:室温を $T_{\mathrm{in}}$、外気温を $T_{\mathrm{out}}$ とし、窓の熱抵抗を室内側の表面・ガラス・室外側の表面の直列で置く。窓の内側の表面温度 $T_{s}$ と、そこで結露し始める相対湿度は次のようになる。

$$T_{s}=T_{\mathrm{in}}-(T_{\mathrm{in}}-T_{\mathrm{out}})\,\frac{R_{si}}{R_{si}+R_{g}+R_{se}},\qquad
\phi_{\max}=\frac{e_{s}(T_{s})}{e_{s}(T_{\mathrm{in}})}$$

飽和水蒸気圧 $e_{s}$ はマグヌスの式で出す。部屋の相対湿度が $\phi_{\max}$ を超えると、窓の内側で結露する。

問い:結露し始める湿度は、何が決めているのか。

2. 窓の内側の温度

計算 2.1:室内 $20$ ℃ で、三つの窓の内側の表面温度を出した。

窓 外 $0$ ℃ 外 $-10$ ℃
単板ガラス $5.0575$ ℃ $-2.4138$ ℃
複層ガラス $12.3529$ ℃ $8.5294$ ℃
三層ガラス $15.4386$ ℃ $13.1579$ ℃

観察 2.2 同じ部屋でも、窓の内側の温度は窓で大きく違う。外 $0$ ℃ で単板と三層の差は $10$ ℃を超える。ガラスの熱抵抗が小さいほど、表面の温度は外の側へ引っぱられる。

3. 結露し始める湿度

計算 3.1:表面温度の飽和水蒸気圧を室温の飽和水蒸気圧で割り、結露し始める相対湿度を出した。

窓 外 $0$ ℃ 外 $-10$ ℃
単板ガラス $0.375006$ $0.219391$
複層ガラス $0.614094$ $0.475909$
三層ガラス $0.750225$ $0.647323$

観察 3.2 これが本稿の芯である。境目は部屋ではなく窓が決める。外 $0$ ℃ の同じ部屋で、単板なら $0.375006$、複層なら $0.614094$ を超えると結露する。部屋の空気は同じで、違うのは窓の内側の冷たさだけである。

計算 3.3:相対湿度 $0.5$ の部屋を置いた。その露点は $9.2611$ ℃である。

窓(外 $0$ ℃) 表面温度 結露するか
単板ガラス $5.0575$ ℃ する(露点より低い)
複層ガラス $12.3529$ ℃ しない(露点より高い)

観察 3.4 同じ空気が、窓で結露したりしなかったりする。露点 $9.2611$ ℃は部屋の性質だが、それを割るかどうかは窓の性質である。「湿気が多い」は二つの量の片方しか言っていない。

観察 3.5 外が冷えると、境目は下がる。単板では $0.375006$ から $0.219391$ まで下がる。同じ部屋の同じ湿りでも、寒い夜ほど結露しやすいのはこのためである。

4. 分離子

観察 4.1 分離子は、空気の湿りを問うか、表面の冷たさを問うかである。前者は露点を決め、後者はその露点を割るかどうかを決める。結露は、空気の性質と面の性質の出会いで起きる。

観察 4.2 論文451 の席に座り、論文399 の隣に置く。451 は雪が断熱するのではなく雪が抱える空気が断熱することを示し、結露対策を空けた。ここでも効いているのは熱抵抗の直列で、その帰結の一つとして結露を数えた。399 は水を足さずに湿度が $100$ パーセントになることを示した。あちらは空気を持ち上げて冷やし、こちらは空気が冷たい面に触れる。同じ露点に、空気の側から近づくか、面の側から近づくかの違いである。

観察 4.3 言わないこと。どの窓を選ぶべきかも、窓枠や熱橋も、換気も、カビも扱わない。示したのは、結露し始める湿度が窓で決まるということである。

5. 点呼と結び

  1. 単板の内側は $5.0575$ ℃(計算 2.1):外 $0$ ℃。
  2. 複層は $12.3529$ ℃(計算 2.1):同じ部屋。
  3. 単板は $\mathbf{0.375006}$ で結露(計算 3.1):本稿の芯。
  4. 複層は $\mathbf{0.614094}$ まで持つ(計算 3.1):窓が決める。
  5. 三層は $0.750225$(計算 3.1):さらに高い。
  6. 露点は $9.2611$ ℃(計算 3.3):部屋の性質。
  7. 同じ空気が単板でだけ結露(観察 3.4):窓の性質。
  8. 外 $-10$ ℃で単板は $\mathbf{0.219391}$(計算 3.1):境目が下がる。
  9. 寒い夜ほど結露しやすい(観察 3.5):同じ湿りでも。
  10. 空気の湿りか、表面の冷たさか(観察 4.1):分離子・論文451・399。

結び:窓が結露し始める湿度は、部屋ではなく窓が決める。室内 $20$ ℃・外 $0$ ℃ で、窓の内側は単板 $5.0575$ ℃・複層 $12.3529$ ℃・三層 $15.4386$ ℃になり、結露し始める相対湿度は $0.375006$・$0.614094$・$0.750225$ と窓ごとに違う。表面の温度が熱抵抗の直列で外の側へ引っぱられる度合いが、窓ごとに違うからである。相対湿度 $0.5$ の同じ部屋は、露点 $9.2611$ ℃を単板の $5.0575$ ℃が割るので結露し、複層の $12.3529$ ℃は割らないので結露しない。露点は部屋の性質だが、それを割るかどうかは窓の性質だからである。外が $-10$ ℃になると単板の境目は $0.219391$ まで下がり、寒い夜ほど同じ部屋が結露しやすくなる。既刊との位置:論文451 が空けた結露対策の席に座り、論文399 の「空気を持ち上げて冷やす」の隣に「空気が冷たい面に触れる」を置いた。正直に言えば、熱抵抗は模型の値で、ガラスの中央だけを見ており、窓枠や縁の冷えは扱っていない。

参考文献

  1. Hens, H. (2012). Building Physics、Heat, Air and Moisture. Ernst & Sohn.
  2. 山岸勇輝 (2026). 『水を一滴も足さずに、湿度が $53.80$ パーセントから $100$ パーセントになる』[論文399]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/399 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22699338
  3. 山岸勇輝 (2026). 『断熱しているのは雪ではなく、雪が抱えている空気である』[論文451]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/451 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22732772

作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。

書誌

山岸勇輝(2026)「窓が結露し始める湿度は、部屋ではなく窓が決める」[論文853]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/853

YOI 853第1版・2026年9月ビットコインに記録済み

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引用するとき

山岸勇輝 (2026). 窓が結露し始める湿度は、部屋ではなく窓が決める [論文853]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/853

Yamagishi, Y. (2026). The Humidity at Which a Window Starts to Fog Is Set by the Window, Not the Room [Paper 853]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/853

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