【論文945】合法な碁の並べ方の割合は点ごとに一定の比で減り、盤の幅が広いほど減り方は小さい

要旨

碁盤に黒・白・空を並べたとき、どの石の塊にも隣に空いた点があれば、その並べ方は盤の上に在りうる(合法な)局面である。本稿は、小さな盤の合法な並べ方を、総当たりと行ごとに数える方法の二通りで数え、全部の並べ方に対する割合が盤の大きさと幅でどう変わるかを出す。新しい定理も法則も主張しない。

第一に、二つの数え方は五つの盤で一致した。$2\times2$ で $57$、$3\times3$ で $12675$、$3\times4$ で $321689$、$2\times6$ で $299681$、$1\times12$ で $141209$ だった(第2節)。

第二に、合法な割合は点が増えるほど下がり、同じ点の数でも盤の形で違う。全部の並べ方に対する割合は $2\times2$ で $0.703704$、$3\times3$ で $0.643957$、$3\times4$ で $0.605315$ で、同じ $12$ 点でも $2\times6$ は $0.563903$、$1\times12$ は $\mathbf{0.265710}$ だった(第2節)。

第三に、行を一つ足すたびの増え方は一定の比に収まる。幅 $1$・$2$・$3$・$4$ で、合法な数は行を一つ足すごとに $2.769292354$・$8.533652512$・$25.445014706$・$75.709341135$ 倍になり、一つ前の行と $9$ 桁一致した(第3節)。

第四に、一点あたりの比は、盤の幅が広いほど 1 に近い。一点あたりの割合(点一つを足すと合法な割合が何倍になるか)は、幅 $1$ で $\mathbf{0.923097}$、幅 $2$ で $0.973747$、幅 $3$ で $0.980422$、幅 $4$ で $\mathbf{0.983255}$ だった(第3節)。

第五に、分離子は、点の隣がいくつあるかである。一列の盤では点の隣は多くて二つで、塊が空いた隣を得にくい。幅が広がると隣が増え、同じ約束が点ごとに削る割合が小さくなる(第4節)。

キーワード:囲碁、合法局面、呼吸点、転送行列、数え上げ、盤の幅。

射程(何を示さないか)

新しい定理も法則も主張しない。碁の合法な局面の定義、行ごとに状態を持って数える方法、合法な局面の数が点の数について指数で増えることは、いずれも既知である。小さな盤だけを数える。幅 $4$ までの盤と $12$ 点以下の総当たりだけで、$19\times19$ の数や広い盤の極限の値は書かない。打つ規則に入らない。自殺手、コウ、同じ局面の繰り返しの禁止、どの局面が実際の対局で現れるかは扱わない。数えるのは並べ方だけである。強さを論じない。勝ち負け、手の良し悪しは扱わない。既刊との関係:論文846 は、勝てるかどうかは終局から後ろへ塗れば分かり、何手で勝てるかはその札からは読めないことを示した。ここでは勝ち負けではなく、盤の上に在りうる並べ方そのものを数える。加えたのは、二つの数え方を五つの盤で突き合わせたこと、全部の並べ方に対する合法な割合を盤の大きさと形で並べたこと、行を足すごとの比が一定に収まることを確かめたこと、一点あたりの比を幅ごとに出したこと、分離子を「点の隣がいくつあるか」に置いたことである。

1. 記法と問い

合法:盤の点に黒・白・空のどれかを置く。縦か横に隣り合う同じ色の石はつながって塊をつくる。すべての塊が、少なくとも一つの空いた点に隣り合っていれば、その並べ方を合法と呼ぶ。

数え方:①総当たり:$3$ の点の数の乗の並べ方をすべて調べる($12$ 点以下)。②行ごとに数える:最後の行の色と、その行の石がどの塊に属しすでに空いた隣を持つかを状態として、行を一つずつ足す(転送行列)。塊が次の行に続かず空いた隣も無ければ、その並べ方は捨てる。状態の数は幅 $1$・$2$・$3$・$4$ で $5$・$17$・$67$・$277$ だった。

問い:合法な並べ方は全部の並べ方のうちどれだけで、その割合は盤の大きさと幅でどう変わるか。

2. 小さな盤の数

計算 2.1:総当たりと行ごとの数え方。

盤 総当たり 行ごとの数え方 全部の並べ方に対する割合
$2\times2$ $57$ $57$ $0.703704$
$3\times3$ $12675$ $12675$ $0.643957$
$3\times4$ $321689$ $321689$ $0.605315$
$2\times6$ $299681$ $299681$ $0.563903$
$1\times12$ $141209$ $141209$ $\mathbf{0.265710}$

行ごとの数え方は、向きを変えた盤($2\times3$ と $3\times2$、$3\times4$ と $4\times3$)でも一致した。

観察 2.2 点が増えるほど合法な割合は下がり、同じ点の数でも細長い盤ほど低い。$12$ 点の三つの盤では、$3\times4$ が $0.605315$、$2\times6$ が $0.563903$、$1\times12$ が $0.265710$ だった。一列の盤では、塊が空いた隣を持てない並べ方がずっと多い。

3. 行を足すごとの比と一点あたりの比

計算 3.1:幅 $w$ の盤で、高さを一つ増やしたときの比(高さ $40$・$30$・$24$・$18$ まで数えた最後の二つ)と、その $w$ 乗根(一点あたり)。

幅 行を一つ足す比 一点あたりの比 $3$ に対する割合
$1$ $2.769292354$ $2.769292$ $\mathbf{0.923097}$
$2$ $8.533652512$ $2.921242$ $0.973747$
$3$ $25.445014706$ $2.941266$ $0.980422$
$4$ $75.709341135$ $2.949765$ $\mathbf{0.983255}$

四つの幅とも、行を一つ足す比は一つ前の行の比と相対 $10^{-8}$ 以内で一致した(高さを増やして収まっている)。

観察 3.2 合法な割合は点一つごとにほぼ一定の比で減り、その比は幅が広いほど 1 に近い。並べ方の数は点ごとに $3$ 倍になるが、合法な数は幅 $1$ で点ごとに $2.769292$ 倍にしかならない。合法な割合は幅 $1$ では点を一つ足すごとに $0.923097$ 倍、幅 $4$ では $0.983255$ 倍になる。幅 $1$・$2$・$3$・$4$ の順に、比は $1$ に近づいた。

4. 分離子

観察 4.1 分離子は、点の隣がいくつあるかである。合法の約束は「塊に空いた隣がある」だけで、どの盤でも同じである。一列の盤では点の隣は多くて二つで、石の塊は空いた隣を得にくく、点を足すごとに削られる割合が大きい。幅が広がると内側の点は四つの隣を持ち、同じ約束が点ごとに削る割合が小さくなった。

観察 4.2 言わないこと。$19\times19$ の数、広い盤の極限の比、自殺手やコウなど打つ規則、対局の強さは扱わない。示したのは、幅 $4$ までの盤で、合法な割合が点ごとに一定の比で減り、その比が幅とともに $1$ に近づくことである。

5. 点呼と結び

  1. 合法の約束と二つの数え方(第1節):状態の数 $5$・$17$・$67$・$277$。
  2. 五つの盤で一致(計算 2.1):$3\times3$ で $12675$。
  3. $12$ 点でも $1\times12$ は $\mathbf{0.265710}$(計算 2.1):細長いほど低い。
  4. 行を足す比が収まる(計算 3.1):相対 $10^{-8}$ 以内。
  5. 一点あたり $\mathbf{0.923097}$ から $\mathbf{0.983255}$(計算 3.1):幅が広いほど $1$ に近い。
  6. 点の隣の数(観察 4.1):分離子・論文846。

結び:合法な碁の並べ方の割合は点ごとに一定の比で減り、盤の幅が広いほど減り方は小さい。総当たりと行ごとの数え方は五つの盤で一致し、$3\times3$ の合法な並べ方は $12675$、全部に対する割合は $0.643957$ だった。点を一つ足すごとに合法な割合は、幅 $1$ で $0.923097$ 倍、幅 $4$ で $0.983255$ 倍になり、同じ $12$ 点でも $1\times12$ は $0.265710$、$3\times4$ は $0.605315$ だった。分離子は、点の隣がいくつあるかである。既刊との位置:論文846 が後ろから塗って決めた勝ち負けの手前で、盤に在りうる並べ方そのものを数えた。正直に言えば、広い盤の値は言わない。小さな盤で、合法の約束がどれだけ並べ方を削り、それが盤の幅でどう変わるか、そこまでである。

参考文献

  1. Tromp, J., & Farnebäck, G. (2007). Combinatorics of Go. Computers and Games. Springer.
  2. 山岸勇輝 (2026). 『勝てるかどうかは後ろから塗れば分かる。何手で勝てるかは、その札からは読めない』[論文846]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/846

作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。

書誌

山岸勇輝(2026)「合法な碁の並べ方の割合は点ごとに一定の比で減り、盤の幅が広いほど減り方は小さい」[論文945]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/945

YOI 945第1版・2026年9月ビットコインに記録済み

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引用するとき

山岸勇輝 (2026). 合法な碁の並べ方の割合は点ごとに一定の比で減り、盤の幅が広いほど減り方は小さい [論文945]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/945

Yamagishi, Y. (2026). The Share of Legal Go Positions Shrinks by a Fixed Ratio per Point, and Less So on Wider Boards [Paper 945]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/945

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  title = {The Share of Legal Go Positions Shrinks by a Fixed Ratio per Point, and Less So on Wider Boards},
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