要旨
通った道に印を付ければループがあっても必ず着き、歩数は通路の数の二倍を超えない(論文941)。そこでは、一人で歩く場合だけを扱い、複数の人が歩く場合を扱わなかった。本稿は、941 と同じ作り方の $15\times15$ の迷路で、1・2・4・8 人が同じスタートから一手番に一歩ずつトレモー法で歩き、印を全員で分け合う場合と各自で持つ場合に、誰かが着くまでの手番を、ループの無い迷路と壁を 15 パーセント外した迷路の各 400 個で数える。新しい定理も法則も主張しない。
第一に、印を分け合う二人は、一人の二倍より速く着いた。ループの無い迷路で、着くまでの手番の平均は一人 $173.88$、分け合う二人 $78.41$ で、一人÷二人は $\mathbf{2.217472}$ だった。各自で持つ二人は $126.48$ だった(第2節)。
第二に、分け合う得は人を増やすと縮み、八人で消えた。ループの無い迷路で、各自で持つ÷分け合うは二人 $1.612976$・四人 $1.403499$・八人 $\mathbf{0.987638}$ だった(第2節)。
第三に、人を増やすと、手番は最短の道の長さに近づく。最短の道の長さの平均 $41.67$ に対して、分け合う八人の手番は $\mathbf{1.368468}$ 倍、各自で持つ八人は $1.351551$ 倍で、四人から八人で $58.30$ から $57.03$ にしか縮まなかった(第3節)。
第四に、ループのある迷路では、八人でも分け合う得が残った。壁を 15 パーセント外すと最短の道の平均は $12.78$ で、分け合う八人は最短の道の $2.563295$ 倍、各自で持つ÷分け合うは $1.112663$、一人÷八人は $\mathbf{5.008396}$ だった(第3節)。
第五に、分離子は、着くまでの手番を決めるのが、まだ探していない通路の多さか、最短の道の長さか。どの人数と印の持ち方でも 400 個すべてで着き、最短の道より早く着いた迷路は無かった。ループの無い迷路の八人は最短の道の長さの近くで止まり、分け合っても各自で持っても手番はほぼ同じだった(第4節)。
キーワード:迷路、トレモー法、印を分け合う、複数の人、最短の道、探索。
射程(何を示さないか)
新しい定理も法則も主張しない。通った通路に印を付けて迷路を解くトレモー法、複数の歩き手で迷路やグラフを探ること、歩き手を増やしても探す速さは人数に比例して上がり続けないことは、いずれも探索の研究で扱われている。置いた値である。迷路は論文941 と同じく乱数で作った $15\times15$ のますで、壁を外す割合 0 と 15 パーセント、各 400 個、人数 1・2・4・8、打ち切り 4500 手番は本稿で置いた。建物の捜索や群れ、ロボットには対応しない。歩き手を賢くしない。話し合い、役割分担、ほかの人の位置を知ることは入れない。分け合うのは通路の印の数だけで、各自の決まりは一人のときと同じトレモー法である。理由を測らない。二人が一人の二倍より速い理由や、八人で得が消える理由は数えていない。手番の平均と最短の道の長さだけを並べる。既刊との関係:論文941 の射程注記は、印を付けられない場合と三次元を扱わず、印が消える場合、複数の人が歩く場合、立体の迷路は扱わないと書いた。本稿はそのうち複数の人が歩く場合の席に座る(先客なし。同じ射程注記の印が消える場合の席には論文981 が座った)。論文941 は、通った道に印を付ければループがあっても必ず着き、歩数は通路の数の二倍を超えないことを示した。ここでは、同じ方法で複数の人が歩くと、着くまでの手番がどれだけ縮むかを数える。論文981 は、印が消えるとループのある迷路で着かない迷路が出ることを示した。ここでは印は消えない。加えたのは、四つの人数と印の二つの持ち方で着くまでの手番を 400 個ずつ出したこと、最短の道の長さと比べたこと、分け合う得が人数とともに縮むことを測ったこと、ループのあるなしで比べたこと、分離子を「探していない通路の多さか、最短の道の長さか」に置いたことである。
1. 記法と問い
迷路:論文941 と同じく、$15\times15$ のますで乱数の穴掘りでループの無い迷路を作り、残った内側の壁の 0 と 15 パーセントを乱数で外す。種類ごとに 400 個。通路の数の平均は $224.0$ と $253.0$、スタートからゴールまでの最短の道の長さの平均は $41.67$(中央値 $35.0$)と $12.78$(中央値 $11.0$)である。スタートとゴールは外周から 3 ます以上内側に置いた。
歩き方:$k$ 人が同じスタートに立ち、一手番ごとに順に一歩ずつ、論文941 のトレモー法で歩く(新しい通路で着いた分かれ道でほかの通路に印があれば引き返し、そうでなければ印の無い通路、無ければ印が一つの通路を乱数で選び、通るたびに印を一つ足す)。印を分け合う場合は全員が同じ印を数えて足し、各自で持つ場合はそれぞれが自分の印だけを数える。誰かがゴールに着いた手番を数え、打ち切りは 4500 手番、迷路ごとに乱数の種を分けた。
問い:複数の人が印を分け合って歩くと、着くまでの手番はどれだけ縮み、それは人数と迷路の形でどう変わるか。
2. ループの無い迷路
計算 2.1:400 個の迷路で着くまでの手番(全部着いた)。
| 人数 | 印 | 平均 | 中央値 | 最短の道の平均に対する比 | 一人÷この人数 |
|---|---|---|---|---|---|
| $1$ | 一人 | $173.88$ | $161.5$ | $4.172476$ | なし |
| $2$ | 分け合う | $78.41$ | $65.5$ | $1.881637$ | $\mathbf{2.217472}$ |
| $2$ | 各自 | $126.48$ | $101.0$ | $3.035035$ | なし |
| $4$ | 分け合う | $58.30$ | $44.5$ | $1.399064$ | $2.982334$ |
| $4$ | 各自 | $81.83$ | $61.0$ | $1.963585$ | なし |
| $8$ | 分け合う | $57.03$ | $42.0$ | $\mathbf{1.368468}$ | $3.049011$ |
| $8$ | 各自 | $56.32$ | $42.0$ | $1.351551$ | なし |
各自で持つ÷分け合う(平均)は、二人 $1.612976$・四人 $1.403499$・八人 $0.987638$ だった。
観察 2.2 分け合う得は二人で最も大きく、八人で消えた。分け合う二人は一人の $2.217472$ 倍速く、各自で持つ二人より $1.612976$ 倍速かった。八人では分け合っても各自で持っても平均 $57.03$ と $56.32$、中央値はどちらも $42.0$ だった。二人が一人の二倍より速くなった理由は、本稿では数えていない。
3. 最短の道とループのある迷路
計算 3.1:壁を 15 パーセント外した迷路(全部着いた)。
| 人数 | 印 | 平均 | 中央値 | 最短の道の平均に対する比 | 一人÷この人数 |
|---|---|---|---|---|---|
| $1$ | 一人 | $164.04$ | $136.5$ | $12.837996$ | なし |
| $2$ | 分け合う | $84.63$ | $75.5$ | $6.623166$ | $1.938347$ |
| $2$ | 各自 | $109.14$ | $82.5$ | $8.541773$ | なし |
| $4$ | 分け合う | $48.54$ | $37.0$ | $3.798670$ | $3.379603$ |
| $4$ | 各自 | $59.34$ | $43.0$ | $4.644297$ | なし |
| $8$ | 分け合う | $32.75$ | $24.0$ | $\mathbf{2.563295}$ | $\mathbf{5.008396}$ |
| $8$ | 各自 | $36.44$ | $27.0$ | $2.852084$ | なし |
各自で持つ÷分け合うは、二人 $1.289681$・四人 $1.222611$・八人 $1.112663$ だった。
観察 3.2 人を増やすと手番は最短の道の長さに近づき、ループのある迷路ではまだ遠い。ループの無い迷路の八人は最短の道の $1.368468$ 倍で、四人の $1.399064$ 倍からほとんど縮まなかった。ループのある迷路では最短の道が $12.78$ と短く、八人でも $2.563295$ 倍で、分け合う得($1.112663$)が残り、一人÷八人は $5.008396$ だった。
4. 分離子
観察 4.1 分離子は、着くまでの手番を決めるのが、まだ探していない通路の多さか、最短の道の長さか。二種類の迷路のどの人数と印の持ち方でも 400 個すべてで着き、どの迷路でも最短の道より早く着くことは無かった。最短の道の長さは、何人で歩いても手番の下限である。ループの無い迷路の八人は、その下限の $1.368468$ 倍の近くで、印の持ち方によらず同じ手番になった。人数が少ないうちは、分け合うことで手番が縮んだ。
観察 4.2 言わないこと。八人より多い人数、話し合いや役割分担、ほかの人の位置を知ること、印が消える場合(論文981)、立体の迷路、実在の捜索やロボット、二人が二倍より速い理由は扱わない。示したのは、同じトレモー法で複数の人が歩くとき、印を分け合う得が人数と迷路の形でどう変わるかである。
5. 点呼と結び
- 複数の人のトレモー法(第1節):印を分け合うか、各自で持つか。
- 分け合う二人は一人の $\mathbf{2.217472}$ 倍速い(計算 2.1):二倍より速い。
- 各自÷分け合うは八人で $\mathbf{0.987638}$(計算 2.1):得が消える。
- 八人は最短の道の $\mathbf{1.368468}$ 倍(計算 2.1):下限に近づく。
- ループありでは一人÷八人 $\mathbf{5.008396}$・最短の道の $\mathbf{2.563295}$ 倍(計算 3.1):得が残る。
- 探していない通路の多さか、最短の道の長さか(観察 4.1):分離子・論文941 の射程注記。
結び:ループの無い迷路で印を分け合うと、二人で二倍より速く着くが、八人では分け合う得が消える。941 と同じ迷路で複数の人がトレモー法で歩くと、ループの無い迷路で分け合う二人は一人の $2.217472$ 倍速く、各自で持つ二人の $1.612976$ 倍速かった。八人では各自で持つ÷分け合うが $0.987638$ になり、手番は最短の道の $1.368468$ 倍の近くで止まった。ループのある迷路では八人でも最短の道の $2.563295$ 倍で、分け合う得が残った。分離子は、着くまでの手番を決めるのが、まだ探していない通路の多さか、最短の道の長さか。既刊との位置:論文941 が一人で数えたトレモー法に、論文941 が扱わなかった複数の人を足した。同じ射程注記の印が消える場合は論文981 が数えた。正直に言えば、話し合わない歩き手が印の数だけを分け合う模型で、着くまでの手番を数えた。理由は数えていない。人数と迷路の形で分け合う得がどう変わるか、そこまでである。
参考文献
- Lucas, É. (1882). Récréations mathématiques. Gauthier-Villars.
- 山岸勇輝 (2026). 『通った道に印を付ければループがあっても必ず着き、歩数は通路の数の二倍を超えない』[論文941]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/941
- 山岸勇輝 (2026). 『印が消えるとき、ループの無い迷路では遅れるだけで、ループがあると着かない迷路が出る』[論文981]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/981
作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。
書誌
山岸勇輝(2026)「ループの無い迷路で印を分け合うと、二人で二倍より速く着くが、八人では分け合う得が消える」[論文985]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/985
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住所:https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/985・CC BY 4.0・プレプリント(査読を経ていません)・ORCID 0009-0006-8587-3450
引用するとき
山岸勇輝 (2026). ループの無い迷路で印を分け合うと、二人で二倍より速く着くが、八人では分け合う得が消える [論文985]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/985
Yamagishi, Y. (2026). Sharing Marks in a Maze Without Loops, Two Walkers Arrive More Than Twice as Fast, but with Eight the Gain Is Gone [Paper 985]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/985
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author = {Yamagishi, Yuuki},
title = {Sharing Marks in a Maze Without Loops, Two Walkers Arrive More Than Twice as Fast, but with Eight the Gain Is Gone},
year = {2026},
howpublished = {YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/985},
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指紋(SHA-256)と確かめ方
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