要旨
COPD(慢性閉塞性肺疾患)の死亡率の年齢 × 年の形が男女で違うかを、人口動態統計特殊報告の都道府県別年齢調整死亡率(平成27年モデル人口)第33表の全国の行で確かめた。表は 1980〜2020 年の 9 版で、比べるのは分類が同じ 1995〜2015 年の 5 版、年齢は 55〜59 歳から 90〜94 歳の 8 階級。新しい数学定理も新しい法則も主張しない。
第一に、表と比べ方を確かめた。9 本の表題はどれも第33表・慢性閉塞性肺疾患で、二つの当てはめの比べ方は、作り物の率で正しい側を選ぶ(第3節)。
第二に、1995→2015 年に、年齢調整死亡率は男性 0.603 倍・女性 0.351 倍で、女性のほうが大きく下がった。 男女の比は 4.33 から 7.44 に開いた(第4節)。
第三に、年齢別に見ると、女性は 65 歳以上のどの年齢でも 0.28〜0.40 倍にそろって下がり、男性は 75〜79 歳の 0.42 倍から 90〜94 歳の 0.83 倍まで、高い年齢ほど下がり方が小さい(65 歳以上の倍率の幅は女性 0.12・男性 0.41)(第5節)。
第四に、ここが本稿の芯である。ln(死亡率)を「年齢 + 年」で当てるより「年齢 + 生まれ年」で当てるほうが、自由度あたりの残りは男性で 3.24 分の 1、女性で 1.25 分の 1 になる。 男性の率は生まれ年にそろい、女性はそろいにくい(第6節)。
第五に、分類の変わり目は外して比べた。 1990→1995 年(ICD-10 の適用)に年齢調整死亡率は男性 1.266 倍・女性 1.144 倍に跳ね、2017 年の分類の変更で COPD は同じ死亡票で 1.206 倍に数えられる(第7節)。
第六に、分けるのは年にそろうか、生まれ年にそろうか。同じ「COPD の死亡率が下がった」でも、女性ではどの年齢もそろって下がり、男性では生まれた年の違いが年齢別の率の形に残っている。
射程注記:本稿は新しい数学定理も新しい法則も主張しない。年齢別の死亡率は公表の表にあり、本稿は二つの当てはめで比べただけである。本稿は公開の集計データの数の形を述べる構造的解釈であり、医学的な助言・診断・治療の推奨ではない。著者は医師ではない。個人の健康に関する判断は医師・医療機関に相談すること。査読を経ていないプレプリントである。 なぜ男女で形が違うのか(たばこ・仕事・診断・治療など)には立ち入らず、どの原因とも結びつけない。 年・生まれ年・年齢のうち、直線の傾きの分は分けられない(年 = 生まれ年 + 年齢のため)。本稿が比べられるのは、傾きを除いた曲がりの形である。一人の見通しではない。 都道府県の行は使わず、地域は比べない。データについて:人口動態統計特殊報告(e-Stat)は政府標準利用規約(第2.0版)に、厚生労働省の資料は公共データ利用規約(第1.0版)に従って使い、本稿の倍率・当てはめはそれらを加工して作成した。本稿が加えたこと:分類が同じ 1995〜2015 年の中で、COPD の死亡率が男性では生まれ年に、女性では年にそろいやすいことを、同じ比べ方で示したこと、比べ方そのものを作り物の率で確かめたこと。
1. 記号と問い
- 二つの当てはめ:ln(死亡率)を「年齢 + 年」で当てるか、「年齢 + 生まれ年」で当てるか。生まれ年は「年 − 階級の真ん中の年齢」(5 年きざみ)。
- 比べる値:残りの二乗和 ÷ 自由度(升目の数 − 当てた数)。生まれ年の当てはめは当てる数が多い(19 対 12)ので、自由度で割って比べる。
- 比べる版:1995・2000・2005・2010・2015 年(分類が同じ)。年齢は 55〜59 歳から 90〜94 歳の 8 階級(40 升目)。
問い:COPD の死亡率の年齢 × 年の形は、男女で違うか。年にそろうか、生まれ年にそろうか。
観察 1.1:M033 は、男性の肝臓がんの死亡率の山が生まれ年にそろい、肺と大腸の山は年にそろうことを、山の年で示した。本稿は COPD で、同じ問いを二つの当てはめの残りで測る。M003 は、同じ年で横に読むか、同じ生まれで縦に読むかで平均余命が変わることを示した。M041 は 2017 年の分類の変更の比を示した。
2. 下見と設計
正直に書く:設計は表を見てから決めた。
| 内容 | |
|---|---|
| 死亡率 | 人口動態統計特殊報告 都道府県別年齢調整死亡率(平成27年モデル人口)第33表(慢性閉塞性肺疾患・1980〜2020 年の 9 版・全国の行・男女別) |
| 分類の変わり目 | 平成29年の概況の注(1995 年の ICD-10 の適用)、ICD-10 の一部改正の影響の資料の表3(COPD の新旧比) |
| 物差し | 年齢調整死亡率の比、年齢別の率の倍率、二つの当てはめの自由度あたりの残り |
| 見送ったデータ | 人口動態統計の第5.15表(年齢 × 年次)の「慢性気管支炎及び肺気腫」は COPD の一部で、同じ範囲ではないので使わなかった |
| 途中で気づいたこと | 比べ方の自己検査で、年の効きを直線の下がりで作ると、生まれ年の当てはめでも同じように表せた(年 = 生まれ年 + 年齢)。直線の傾きは分けられないので、自己検査は曲がった効きで作り直し、この限界を射程注記に書いた |
3. データと確かめ
計算 3.1 取得した 11 本のファイルを SHA-256 で固定し、次を確かめた。
- 9 本の表番号の欄は S55-33表・S60-33表・H02-33表・H07-33表・H12-33表・H17-33表・H22-33表・H27-33表・R02-33表で、表題は慢性閉塞性肺疾患。使う 8 つの年齢階級の率は 9 版 × 男女とも 0 より大きい。
- 比べ方の自己検査:生まれ年だけの効きで作った率では生まれ年の当てはめが(0.00029 対 0.01340)、曲がった年の効きで作った率では年の当てはめが(0.00035 対 0.04126)、自由度あたりの残りで小さい。直線の下がりだけの作り物では二つとも 0.00039 で、見分けられない。
- 平成29年の概況の注に「ICD-10(2003年版)(平成7年1月適用)」、影響の資料の表3に COPD の新 2,641・旧 2,190(新旧比 120.6)がある。
4. 年齢調整死亡率と男女の比
計算 4.1 COPD の年齢調整死亡率(人口 10 万対・平成27年モデル人口)
| 年 | 男 | 女 | 男 ÷ 女 |
|---|---|---|---|
| 1980 | 31.5 | 9.6 | 3.28 |
| 1985 | 37.7 | 10.6 | 3.56 |
| 1990 | 38 | 9.7 | 3.92 |
| 1995 | 48.1 | 11.1 | 4.33 |
| 2000 | 39.9 | 7.7 | 5.18 |
| 2005 | 36.8 | 6.2 | 5.94 |
| 2010 | 35.4 | 5.3 | 6.68 |
| 2015 | 29 | 3.9 | 7.44 |
| 2020 | 25.7 | 2.9 | 8.86 |
観察 4.2:1995→2015 年に、年齢調整死亡率は男性 0.603 倍・女性 0.351 倍で、女性のほうが大きく下がった。 男女の比は 4.33 から 7.44 に開いた(分類の違う 1980 年の 3.28 から 2020 年の 8.86 まで、比は開き続けている)。
5. 年齢別の率の下がり方
計算 5.1 年齢別の死亡率(人口 10 万対)の 1995 → 2015 年
| 年齢 | 男 1995 → 2015 | 男の倍率 | 女 1995 → 2015 | 女の倍率 |
|---|---|---|---|---|
| 55〜59 歳 | 2.2 → 1.4 | 0.64 倍 | 0.7 → 0.4 | 0.57 倍 |
| 60〜64 歳 | 8.2 → 5.4 | 0.66 倍 | 1.8 → 0.9 | 0.50 倍 |
| 65〜69 歳 | 24.6 → 12 | 0.49 倍 | 4.4 → 1.5 | 0.34 倍 |
| 70〜74 歳 | 66.9 → 31.5 | 0.47 倍 | 11.5 → 4.6 | 0.40 倍 |
| 75〜79 歳 | 164.9 → 69 | 0.42 倍 | 31.9 → 8.9 | 0.28 倍 |
| 80〜84 歳 | 307.2 → 155.8 | 0.51 倍 | 61.1 → 19.7 | 0.32 倍 |
| 85〜89 歳 | 457 → 324.5 | 0.71 倍 | 111.5 → 38.3 | 0.34 倍 |
| 90〜94 歳 | 589.9 → 489.7 | 0.83 倍 | 183.5 → 65 | 0.35 倍 |
観察 5.2:女性は 65 歳以上のどの年齢でも 0.28〜0.40 倍にそろって下がった(幅 0.12)。男性は 75〜79 歳の 0.42 倍から 90〜94 歳の 0.83 倍まで、高い年齢ほど下がり方が小さい(幅 0.41)。 男性の 90〜94 歳の倍率は 75〜79 歳の 1.5 倍より大きい。

図1:COPD の年齢別死亡率(縦は対数・左が男性、右が女性)。点線は分類の変わり目(1995 年の ICD-10、2017 年の 2013 年版)。女性の線は 1995 年からそろって下がり、男性の高い年齢の線は下がりが小さい。
6. 芯、年にそろうか、生まれ年にそろうか
計算 6.1 二つの当てはめ(1995〜2015 年・8 年齢 × 5 版 = 40 升目)
| 性 | 年齢 + 年:自由度あたりの残り | 年齢 + 生まれ年:自由度あたりの残り | 年 ÷ 生まれ年 |
|---|---|---|---|
| 男性 | 0.0205 | 0.0063 | 3.24 |
| 女性 | 0.0237 | 0.0190 | 1.25 |
観察 6.2:男性では、生まれ年でそろえるほうが自由度あたりの残りが 3.24 分の 1 になる。女性では 1.25 分の 1 で、差が小さい。 男性の年齢別の率は生まれ年にそろい、女性はそろいにくい。
観察 6.3:男性の当てはめの生まれ年の効き(いちばん古い 1902 年ごろを 1 とした倍率)は、1902〜1918 年ごろ 1.00〜0.90 とほとんど動かず、1922〜1942 年ごろに 0.80 から 0.35 へ下がり、1948・1952 年ごろは 0.37・0.39 である。傾きの分は年とも分けられないので、読めるのはこの曲がり(平ら → 急な下がり → 平ら)の形である。

図2:1995〜2015 年の年齢別死亡率を、生まれ年(年 − 階級の真ん中の年齢)で並べた。
7. 分類の変わり目
観察 7.1:1990→1995 年(ICD-10 の適用)に、年齢調整死亡率は男性 38 → 48.1(1.266 倍)、女性 9.7 → 11.1(1.144 倍)と跳ねた。 2017 年の 2013 年版の適用では、同じ死亡票で COPD は 1.206 倍に数えられる。2015→2020 年の年齢調整死亡率は男性 0.886 倍・女性 0.744 倍で、新旧比で割ると 0.735 倍・0.617 倍である。本稿の比べ方はこの二つの変わり目を外した 1995〜2015 年の中で行った。
8. 限界
- 年・生まれ年・年齢の直線の傾きは分けられない。 比べたのは曲がりの形である。
- 5 年きざみの表なので、生まれ年も 5 年きざみ(10 年の幅にまたがる近似)である。
- 比べたのは 5 版(40 升目)で、升目の数は多くない。
- 男女で形が違う理由には立ち入らない。
- 一人の見通しではない。
結び
1995〜2015 年の COPD の死亡率は、男性では生まれ年でそろえると残りが 3.24 分の 1 になり、女性では 1.25 分の 1 にとどまる。女性は 65 歳以上のどの年齢でも 0.28〜0.40 倍にそろって下がり、男性は高い年齢ほど下がり方が小さく、年齢調整死亡率の男女の比は 4.33 から 7.44 に開いた。
分けているものは一つ、年にそろうか、生まれ年にそろうか。
「ある病気の死亡率が下がった」と聞いたら、どの年齢でもそろって下がったのか、生まれた年の違いが残っているのかを、男女に分けて一緒に確かめる。
データと再現
| データ | 人口動態統計特殊報告 都道府県別年齢調整死亡率(平成27年モデル人口)第33表(1980〜2020 年の 9 版・e-Stat・2026 年 9 月 26 日に取得)、厚生労働省「ICD-10 の一部改正の適用による死因統計への影響について」・平成29年 人口動態統計月報年計(概数)の概況(同日取得) |
| 利用条件 | e-Stat は政府標準利用規約(第2.0版)、厚生労働省のページは公共データ利用規約(第1.0版)に従う。本稿の倍率・当てはめは、これらを加工して作成したもので、国が作成した数ではない |
| 範囲 | 日本(全国)・男女別・55〜94 歳・1980〜2020 年(比べるのは 1995〜2015 年) |
| 検算 | 検算/M044.py(--zu で図も書く)。本文の数字はすべて 検算/M044_output.txt から取った |
| 生データ | data/ に取得した 11 本と SOURCES.md(URL・取得日・SHA-256・利用条件・定義と計算の置き方) |
| 図 | 図/M044_zu1・図/M044_zu2(png・svg・英語版) |
参考文献
- 厚生労働省. ICD-10 の一部改正の適用による死因統計への影響について(2026年9月26日に利用). https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/icd_2013_eikyo.pdf
- 厚生労働省. 平成29年 人口動態統計月報年計(概数)の概況 結果の概要(2026年9月26日に利用). https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai17/dl/kekka.pdf
- 厚生労働省. 人口動態統計特殊報告 都道府県別年齢調整死亡率(平成27年モデル人口)昭和55年〜令和2年 第33表. e-Stat(2026年9月26日に利用). https://www.e-stat.go.jp/
- 山岸勇輝 (2026). 平均余命は、誰かが実際に生きる年数ではない [M003]. Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22963485
- 山岸勇輝 (2026). 男性の肝臓がんの死亡率の山は生まれ年にそろい、肺と大腸の山は年にそろう。肝臓では 8 つの年齢の山の年が 28.5 年にわたってずれるのに、山の生まれ年は 6.5 年の幅に収まる [M033]. Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22972855
- 山岸勇輝 (2026). 2017 年の肺炎の死亡の減りは、同じ死亡票を新旧の分類で数え直した比でほぼ言い当てられる。肺炎は実際の段差 0.826 に対して新旧比 0.810、65 の死因で相関 0.969、減った分は認知症・アルツハイマー病・心不全・COPD などへ移った [M041]. Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22974374
作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。
書誌
山岸勇輝(2026)「COPD の死亡率は、男性では生まれ年にそろい、女性ではそろいにくい」[M044]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.22974498
日付の証拠(OpenTimestamps):日本語版の .ots・英語版の .ots・SHA256SUMS
予備の置き場所(ミラー。中身は上と同じです):PDF 日本語・PDF English・SHA256SUMS
住所:https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/M044・DOI 10.5281/zenodo.22974498・CC BY 4.0・プレプリント(査読を経ていません)・ORCID 0009-0006-8587-3450
引用するとき
山岸勇輝 (2026). COPD の死亡率は、男性では生まれ年にそろい、女性ではそろいにくい [M044]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/M044 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22974498
Yamagishi, Y. (2026). COPD Death Rates Line Up by Birth Year for Men but Hardly for Women [M044]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/M044; DOI: 10.5281/zenodo.22974498
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