【論文991】見落としは上下法が追う強さを上へずらし、多すぎると厳しい規則から集まる点を失わせる

要旨

当て推量があると上下法が追う強さは下へずれ、1 回で下げる規則は 2 択で集まる点を持たない(論文954)。そこでは、観察者が分かるはずの強さでも答えを誤る見落としを入れなかった。本稿は、954 の観察者に見落としの割合を足して正しく答える割合に天井を作り、k 回続けて正しければ下げる規則の目標と、乱数の観察者の位置を数える。新しい定理も法則も主張しない。

第一に、見落としは目標を上へずらす。当て推量 0 で 3 回の規則の目標は、見落とし 0・0.02・0.05・0.10・0.15 に $0.819329$・$0.877522$・$0.976026$・$1.184485$・$\mathbf{1.504435}$ と上がった(第2節)。

第二に、見落としが 1 − 0.5 の k 乗根を超えると、目標が無い。その境は k = 1〜5 で $0.500000$・$0.292893$・$0.206299$・$\mathbf{0.159104}$・$\mathbf{0.129449}$ で、見落とし 0.15 では 5 回の規則だけが目標を持たなかった(第3節)。

第三に、目標が無い規則は上がり続ける。見落とし 0.15・5 回の規則の位置は、600 試行で $4.230500$、2400 試行で $\mathbf{9.631750}$ だった。2 択でも $4.136750$ から $9.657250$ に上がった(第3節)。

第四に、境のすぐ手前では、目標があっても上に残り続けた。見落とし 0.15・4 回の規則は目標 $2.300495$ を持つが、位置は 600・2400・9600 試行で $2.580750$・$2.883000$・$\mathbf{3.092250}$ と上がり続け、600 試行の推定と目標の差は $0.160879$ だった(第4節)。

第五に、分離子は、正答の割合の天井が目標の割合より上にあるか、下にあるか。当て推量は正答の割合の床を上げ、1 回の規則の目標 0.5 を床の下にした(論文954)。見落としは天井を下げ、厳しい規則の目標を天井の上にした。当て推量 0.5 でも、見落とし 0.15 では 5 回の規則が目標を持たなかった(第5節)。

キーワード:上下法、見落とし、心理測定関数、目標の強さ、当て推量、心理物理学。

射程(何を示さないか)

新しい定理も法則も主張しない。心理測定関数に見落とし(ラプス)を入れて正答の割合の天井を 1 より下げること、上下法が正答の割合 0.5 の k 乗根を追うこと(レヴィット)、見落としが閾の推定をずらすこと(ウィックマンとヒル)は、いずれも心理物理学で既知である。置いた値である。正規分布の累積に当て推量と見落としを足した観察者、見落とし 0〜0.15、歩幅 0.1、開始 2.0、400 回、600・2400・9600 試行は、論文935・論文954 の模型に本稿で足した値で、どの感覚、どの実験にも対応しない。見落としを一定とする。見落としの割合は試行によらず一定とし、疲れや慣れのように試行とともに変わる見落としは入れない。集まるとは言わない。境のすぐ手前の規則は、目標を持っていても 9600 試行までに位置が落ち着くことを確かめていない。既刊との関係:論文954 の射程注記は、実際の知覚を扱わず、疲れ・慣れ・見落としは入れないと書いた。本稿はそのうち見落としの席に座る(先客なし。論文935 の射程注記も疲れ・慣れを入れないと書いたが、試行とともに変わるものの席には座らない)。論文954 は、当て推量があると上下法が追う強さは下へずれ、1 回で下げる規則は 2 択で集まる点を持たないことを示した。ここでは、正答の割合の床ではなく天井を動かすと、目標がどちらへ動き、どの規則で消えるかを数える。論文988 は、当て推量が上下法の推定を強さの目盛りでばらつかせることを示した。ここではばらつきではなく、目標の位置と、それが有るかどうかを見る。加えたのは、二つの当て推量と五つの見落としと五つの規則で目標を解いたこと、目標が消える見落としの境を出したこと、目標が無い規則が上がり続けることを長い試行で確かめたこと、境のすぐ手前でも位置が上がり続けたことを示したこと、分離子を「天井が目標の上か下か」に置いたことである。

1. 記法と問い

観察者:刺激の強さ $x$ で正しく答える割合を、論文954 の当て推量 $\gamma$ に見落とし $\lambda$ を足して

$$p(x)=\gamma+(1-\gamma-\lambda)\,\Phi(x)$$

とする。$p$ は $\gamma$(床)から $1-\lambda$(天井)の間を動く。

規則と目標:$k$ 回続けて正しければ $x$ を $0.1$ 下げ、一度でも誤れば上げる。開始は $2.0$。規則が追う割合は $0.5^{1/k}$ で、目標は $p(x)=0.5^{1/k}$ の解である。$\gamma<0.5^{1/k}<1-\lambda$ のときだけ解があり、見落としで言えば $\lambda<1-0.5^{1/k}$ である。乱数の観察者は 400 回、600 試行(後ろ 3 分の 2 の位置の平均を推定とする)で走らせ、三つの組は 2400 試行と 9600 試行まで延ばした。

問い:見落としで正答の割合に天井ができると、規則の目標はどこへ動き、どの規則で消えるか。

2. 見落としと目標

計算 2.1:当て推量 0 の目標(なしは解が無い)。

見落とし $k=1$ $k=2$ $k=3$ $k=4$ $k=5$
$0$ $-0.000000$ $0.544952$ $0.819329$ $0.998149$ $1.128998$
$0.02$ $0.025581$ $0.587415$ $0.877522$ $1.071633$ $1.217626$
$0.05$ $0.066012$ $0.656731$ $0.976026$ $1.201153$ $1.381055$
$0.10$ $0.139710$ $0.791501$ $1.184485$ $1.508834$ $1.842219$
$0.15$ $0.223008$ $0.961662$ $\mathbf{1.504435}$ $2.300495$ なし

$k=1$〜$4$ のどれでも、目標は見落としとともに上がった。見落とし 0 の値は論文935・論文954 と同じである。

計算 2.2:600 試行の推定−目標(当て推量 0)。

見落とし $k=1$ $k=2$ $k=3$ $k=4$ $k=5$
$0$ $0.005087$ $0.011682$ $0.019513$ $0.009253$ $0.026901$
$0.10$ $0.003447$ $0.027381$ $0.037874$ $0.097214$ $0.126704$
$0.15$ $0.006577$ $0.042548$ $0.105255$ $0.160879$ なし

観察 2.3 見落としが大きく規則が厳しいほど、推定は目標より上に残った。見落とし 0 の差は $0.026901$ 以下だったが、見落とし 0.15 の 4 回の規則では $0.160879$ だった。$k=1$ の差は見落としによらず $0.006577$ 以下だった。

3. 目標が消える境

計算 3.1:目標が無くなる見落としの境 $1-0.5^{1/k}$ は、$k=1$〜$5$ で $0.500000$・$0.292893$・$0.206299$・$0.159104$・$0.129449$ である。見落とし 0.15 は $k=5$ の境を超え $k=4$ の境の下にあり、当て推量 0 で目標を持たないのは $k=5$ だけだった。

計算 3.2:目標が無い組の位置(400 回の平均)。

組 600 試行後 2400 試行後
当て推量 0・見落とし 0.15・$k=5$ $4.230500$ $\mathbf{9.631750}$
当て推量 0.5・見落とし 0.15・$k=5$ $4.136750$ $9.657250$

二つとも 2400 試行で 600 試行より 1 以上上にいた。当て推量 0.5 の $k=1$ は、見落としによらず目標が無く下へ進んだ(見落とし 0.15 で 600 試行後 $-2.861000$)。

4. 境のすぐ手前

計算 4.1:当て推量 0・見落とし 0.15・$k=4$(目標 $2.300495$)の位置は、600 試行で $2.580750$、2400 試行で $2.883000$、9600 試行で $3.092250$(目標との差 $0.791755$)、9600 試行の後ろ 3 分の 2 の平均は $3.039208$ だった。

観察 4.2 目標があっても、境のすぐ手前では位置が上に残り続けた。9600 試行までに位置が落ち着くことは確かめられなかった。天井 $1-0.15$ と目標の割合 $0.840896$ は近い。位置が上に残る理由は項ごとに分けて測っておらず、9600 試行より長く走らせたときのことは数えていない。

5. 分離子

観察 5.1 分離子は、正答の割合の天井が目標の割合より上にあるか、下にあるか。当て推量は床を上げ、2 択では 1 回の規則の目標 0.5 を床と同じ高さにして、下へ進ませた(論文954):見落としは天井を下げ、厳しい規則の目標を天井の上にして、上へ進ませた。当て推量 0.5 でも見落とし 0.15 の 5 回の規則は目標を持たず、床と天井は別々に規則を選んだ。

観察 5.2 言わないこと。試行とともに変わる見落とし(疲れや慣れ)、見落としの割合の推定、どの規則を使うべきか、実際の知覚実験は扱わない。示したのは、見落としで天井が下がると、上下法の目標が上へ動き、どの規則でいつ消えるかである。

6. 点呼と結び

  1. 当て推量と見落としの観察者(第1節):床と天井。
  2. 3 回の規則の目標 0.819329 → $\mathbf{1.504435}$(計算 2.1):上へずれる。
  3. 境 $\mathbf{0.159104}$・$\mathbf{0.129449}$($k=4$・5)(計算 3.1):超えると目標が無い。
  4. 目標が無い規則は 2400 試行で $\mathbf{9.631750}$(計算 3.2):上がり続ける。
  5. 境の手前の $k=4$ は 9600 試行で $\mathbf{3.092250}$(計算 4.1):上に残り続ける。
  6. 天井が目標の上か下か(観察 5.1):分離子・論文954 の射程注記。

結び:見落としは上下法が追う強さを上へずらし、多すぎると厳しい規則から集まる点を失わせる。954 の観察者に見落としを足すと、3 回の規則の目標は見落とし 0 の $0.819329$ から 0.15 の $1.504435$ に上がり、目標は見落としが $1-0.5^{1/k}$($k=4$ で $0.159104$、$k=5$ で $0.129449$)を超えると無くなった。目標が無い 5 回の規則は 2400 試行で $9.631750$ まで上がり、境のすぐ手前の 4 回の規則も 9600 試行で $3.092250$ と目標の上に残り続けた。分離子は、正答の割合の天井が目標の割合より上にあるか、下にあるか。既刊との位置:論文954 が当て推量で床を動かして数えた上下法に、論文954 が入れなかった見落としで天井を動かす側を足した。正直に言えば、見落としの割合を一定と置いた一つの観察者で、目標と位置を数えた。天井が規則の目標をどう動かし消すか、そこまでである。

参考文献

  1. Levitt, H. (1971). Transformed up-down methods in psychoacoustics. Journal of the Acoustical Society of America.
  2. Wichmann, F. A., & Hill, N. J. (2001). The psychometric function: I. Fitting, sampling, and goodness of fit. Perception & Psychophysics.
  3. 山岸勇輝 (2026). 『上下法が追う割合は下げる規則が選び、非対称な規則では集まる点が歩幅に比例して上にずれる』[論文935]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/935
  4. 山岸勇輝 (2026). 『当て推量があると上下法が追う強さは下へずれ、1 回で下げる規則は 2 択で集まる点を持たない』[論文954]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/954
  5. 山岸勇輝 (2026). 『当て推量は上下法の推定を強さの目盛りでばらつかせ、正答の割合の目盛りではほぼ同じに保つ』[論文988]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/988

作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。

書誌

山岸勇輝(2026)「見落としは上下法が追う強さを上へずらし、多すぎると厳しい規則から集まる点を失わせる」[論文991]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/991

YOI 991第1版・2026年9月ビットコインに記録済み

日付の証拠(OpenTimestamps):日本語版の .ots・英語版の .ots・SHA256SUMS

予備の置き場所(ミラー。中身は上と同じです):PDF 日本語・PDF English・SHA256SUMS

住所:https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/991・CC BY 4.0・プレプリント(査読を経ていません)・ORCID 0009-0006-8587-3450

引用するとき

山岸勇輝 (2026). 見落としは上下法が追う強さを上へずらし、多すぎると厳しい規則から集まる点を失わせる [論文991]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/991

Yamagishi, Y. (2026). Lapses Push the Level an Up-Down Method Tracks Upward, and Too Many Strip Strict Rules of Their Convergence Point [Paper 991]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/991

@misc{yamagishi2026yoi991,
  author = {Yamagishi, Yuuki},
  title = {Lapses Push the Level an Up-Down Method Tracks Upward, and Too Many Strip Strict Rules of Their Convergence Point},
  year = {2026},
  howpublished = {YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/991},
  note = {Preprint, edition 1}
}
指紋(SHA-256)と確かめ方
b9d57d16cee83d1747b60cacbbeaf2a6838bbb38aa070475dfd215b79958b349 yamagishi_yoi991_v1_jp.pdf
f9ac0e9fad3a7df779c325bac071ac620568fd945ad7ebe23bdb488f4ba075bd yamagishi_yoi991_v1_en.pdf

PDF と .ots を同じ場所に保存し、opentimestamps.org に .ots、続けて PDF を落とすと、記録された日時が表示されます。PDF が 1 バイトでも変わっていれば通りません。