【論文506】同じ燃料が、燃やす場所で 3.90 倍のエネルギーになる

要旨

燃料を使えば、その分だけ得をすると思われている。本稿が示すのは、同じ燃料でも、燃やす場所でエネルギーが $\mathbf{3.90}$ 倍違うことである。燃料の側の式には、場所が入っていない。新しい定理も法則も主張しない。

第一に、$\Delta v=1$ km/s に要る燃料の分率は $\mathbf{0.283469}$ で、閉じた式 $1-e^{-\Delta v/v_{e}}$ に一致する(第2節)。

第二に、これが本稿の芯である。同じ燃料なのに、得られる比エネルギーは $v=3$ km/s と $v=10$ km/s で $\mathbf{3.000000}$ 倍違う(第2節)。

第三に、その比は閉じた式 $(v_{2}+\Delta v/2)/(v_{1}+\Delta v/2)$ に一致する(第2節)。

第四に、静止から燃やすと得は $\Delta v^{2}/2$ だけで、これが下限である(第2節)。

第五に、離心率 $0.6$ の軌道では、近点と遠点で $\mathbf{3.9025}$ 倍ひらく。離心率を $0.01$ にすると $\mathbf{1.019865}$ 倍まで縮む(第3節)。

第六に、分離子は「足しているのが速度か、エネルギーか」である(第4節)。

キーワード:オーベルト効果、ツィオルコフスキーの式、宇宙飛行、軌道力学、推進剤。

射程(何を示さないか)

新しい定理も法則も主張しない。オーベルト効果もツィオルコフスキーの式も標準的である。飛行計画を作らない。実際の軌道設計、重力アシスト、有限時間の噴射は主題ではない。瞬間的な増速だけを扱う。エネルギー保存を疑わない。推進剤が持ち去るエネルギーを含めれば全体は保存する。本稿が数えているのは、機体に残る分だけである。排気速度を一つに固定する。$v_{e}=3$ km/s とし、比推力の選択は扱わない。相対論を扱わない。速度は光速に比べて十分小さいとする。既刊との関係:論文483 は二つの力が同じ指数を持つから半径が消えると示した。こちらは逆に、場所が消えずに残る場合である。論文505 は「勢力圏」が三つあると示した。同じ軌道力学の場で、こちらは一つの量が場所に依る。論文300 は同根か別根かが判定できると示した。速度の増分とエネルギーの増分は別根である。論文481 は分離子が無いと反証の行き先が決まらないと示した。本稿はその分離子を一本書く。加えたのは、燃料の分率を $0.283469$ と出し閉じた式と突き合わせたこと、同じ燃料で $3.000000$ 倍の差が出ることを示したこと、比が閉じた式に一致することを確かめたこと、近点と遠点で $3.9025$ 倍を出したこと、離心率を下げると $1.019865$ 倍まで縮むことを示したことである。

1. 記法と問い

設定:速さ $v$ で進む機体に、瞬間的に $\Delta v$ を足す。単位質量あたりのエネルギーの増分は

$$\Delta E=\frac{1}{2}(v+\Delta v)^{2}-\frac{1}{2}v^{2}
=v\,\Delta v+\frac{\Delta v^{2}}{2}$$

である。一方、$\Delta v$ に要る燃料はツィオルコフスキーの式 $\Delta v=v_{e}\ln(m_{0}/m_{1})$ で決まり、$v$ を含まない。以下 $\Delta v=1$ km/s、$v_{e}=3$ km/s とする。

観察 1.1 燃料を使えば、その分だけ得をすると思われている。同じ燃料なら同じ得、帳簿が一つある、という像である。

観察 1.2 だが上の式には $v$ が入っている。$v \Delta v$ という項、燃料の式には入っていないのに、エネルギーの式には入っている。

問い:同じ燃料で、得はどれだけ変わるのか。

2. 燃料は同じで、得られるものが違う

計算 2.1:$\Delta v=1$ km/s を、三つの速さで足す。

そのときの速さ $v$ 比エネルギーの増分
$3$ km/s $3.500000\times10^{6}$ J/kg
$10$ km/s $\mathbf{1.050000\times10^{7}}$ J/kg
$30$ km/s $3.050000\times10^{7}$ J/kg

観察 2.2 要る燃料はどれも同じである。分率 $\mathbf{0.283469}$、閉じた式 $1-e^{-\Delta v/v_{e}}=0.283468689426$ に一致し、$v$ はどこにも入っていない。

観察 2.3 それでも得は $3.000000$ 倍違う。$1.050000\times10^{7}$ 対 $3.500000\times10^{6}$、同じ燃料を、違う場所で燃やしただけである。

観察 2.4 比が閉じた式に一致する。$3.000000000$ 対 $(v_{2}+\Delta v/2)/(v_{1}+\Delta v/2)=3.000000000$、独立な確認である。

観察 2.5 静止から燃やすと、得は $\Delta v^{2}/2$ だけになる。$5.000000\times10^{5}$ J/kg、これが下限で、$v=0$ でも得はゼロではない。

観察 2.6 速いほど、その下限の項は相対的に小さくなる。$v=30$ km/s で $0.016393$、$1.6$ パーセントしか占めず、ほとんどが $v \Delta v$ の項である。

観察 2.7 燃料の側の検査が $\Delta v$ に反応する。$\Delta v$ を $2$ 倍にすると分率が $0.486583$ へ、$v$ には反応しないが $\Delta v$ には反応しており、式が正しく効いている。

3. 軌道の中で測る

計算 3.1:離心率 $0.6$ の軌道で、近点と遠点に同じ $\Delta v$ を足す。

位置 速さ 比エネルギーの増分
近点 $59.5694$ km/s $\mathbf{6.006938\times10^{7}}$ J/kg
遠点 $14.8923$ km/s $\mathbf{1.539235\times10^{7}}$ J/kg
比 $4.0000$ $\mathbf{3.9025}$

観察 3.2 近点で燃やすほうが $3.9025$ 倍得である。同じ燃料、いつ燃やすかだけが違う。

観察 3.3 エネルギーの比は、速さの比より $1$ に近い。$3.9025$ 対 $4.0000$、$\Delta v^{2}/2$ の項が両側に等しく乗るので、比を薄めている。

計算 3.4:離心率を下げていく。

離心率 近点 遠点 比
$0.60$ $59.5694$ km/s $14.8923$ km/s $3.902549$
$0.30$ $40.5897$ km/s $21.8560$ km/s $1.837973$
$0.10$ $32.9282$ km/s $26.9413$ km/s $1.218173$
$0.01$ $30.0840$ km/s $29.4883$ km/s $\mathbf{1.019865}$

観察 3.5 離心率を下げると比が単調に $1$ へ寄る。$3.902549\to1.837973\to1.218173\to1.019865$、下がる段が一つも無い。

観察 3.6 離心率 $0.01$ でもまだ $1$ ではない。差 $1.987\times10^{-2}$、境目の反対側であり、円に近づけても効果は消えきらない。

観察 3.7 つまり効果の大きさは、軌道の形が決めている。離心率、燃料でも機体でもない。

4. 分離子

分離子:足しているのが速度か、エネルギーか。

観察 4.1 速度を足しているなら、場所は関係ない。$\Delta v$、ツィオルコフスキーの式に $v$ は入っていない。

観察 4.2 エネルギーを足しているなら、場所が効く。$v \Delta v+\Delta v^{2}/2$、$v$ が入っている。

観察 4.3 二つは論文300 の基準で別根である。どちらも「噴射で得たもの」と呼べる。一方は速度の増分、一方はエネルギーの増分で、単位すら違う。

観察 4.4 混同すると、エネルギーが湧いたように見える。同じ燃料で $3.9025$ 倍、実際には、推進剤が持ち去るエネルギーが場所で違うだけである。

観察 4.5 論文483 とは向きが逆である。あちらは二つの力の指数が揃って半径が消えた。こちらは、消えてほしい $v$ が消えずに残る。何が消えるかは、式のどこに入っているかで決まる。

観察 4.6 これは論文481 でいう分離子の一本である。「同じ燃料なのに結果が違う」という報告が来たとき、測定が悪いのか、比べている量が違うのかで、直す先が違う。

観察 4.7 正直に言えば、機体に残る分だけを数えている。推進剤が持ち去るエネルギーは勘定に入れていない。それを含めれば全体は保存しており、「得をした」のは機体の側だけである。エネルギーが湧いているわけではない。

5. 点呼と結び

  1. 燃料の分率 $0.283469$(観察 2.2):$v$ を含まない。
  2. 同じ燃料で $3.000000$ 倍(観察 2.3):本稿の芯。
  3. 比が閉じた式と一致(観察 2.4):独立な確認。
  4. 静止からでも $5.000000\times10^{5}$ J/kg(観察 2.5):下限。
  5. $v=30$ km/s で下限の項は $1.6$ パーセント(観察 2.6):ほとんどが $v\Delta v$。
  6. 近点と遠点で $3.9025$ 倍(計算 3.1):離心率 $0.6$。
  7. 速さの比より $1$ に近い(観察 3.3):$\Delta v^{2}/2$ が薄める。
  8. 離心率 $0.01$ で $1.019865$ 倍(計算 3.4):単調に寄る。
  9. 分離子は速度かエネルギーか(観察 4.3):論文300 の基準で別根。
  10. 機体の側だけを数えた(観察 4.7):全体は保存している。

結び:燃料を使えば、その分だけ得をすると思われている。同じ燃料なら同じ得、帳簿が一つあるという像である。だが $\Delta E=v \Delta v+\Delta v^{2}/2$ には $v$ が入っている。燃料の式には入っていないのに、エネルギーの式には入っている。燃料は同じで、得られるものが違う。$\Delta v=1$ km/s を足すと、比エネルギーの増分は $v=3$ km/s で $3.500000\times10^{6}$ J/kg、$v=10$ km/s で $\mathbf{1.050000\times10^{7}}$ J/kg、$v=30$ km/s で $3.050000\times10^{7}$ J/kg である。要る燃料はどれも同じで、分率 $\mathbf{0.283469}$ が閉じた式 $1-e^{-\Delta v/v_{e}}=0.283468689426$ に一致し、$v$ はどこにも入っていない。それでも得は $\mathbf{3.000000}$ 倍違い、その比は $(v_{2}+\Delta v/2)/(v_{1}+\Delta v/2)$ に一致する。静止から燃やすと得は $\Delta v^{2}/2=5.000000\times10^{5}$ J/kg だけで、これが下限である。速いほどその下限の項は相対的に小さくなり、$v=30$ km/s では $1.6$ パーセントしか占めない。燃料の側の分率は $v$ に反応しないが $\Delta v$ には反応し、$2$ 倍にすると $0.486583$ へ動く。軌道の中で測る。離心率 $0.6$ の軌道では、近点 $59.5694$ km/s で $\mathbf{6.006938\times10^{7}}$ J/kg、遠点 $14.8923$ km/s で $\mathbf{1.539235\times10^{7}}$ J/kg、比は $\mathbf{3.9025}$ 倍である。同じ燃料で、いつ燃やすかだけが違う。エネルギーの比 $3.9025$ は速さの比 $4.0000$ より $1$ に近く、$\Delta v^{2}/2$ の項が両側に等しく乗って比を薄めている。離心率を $0.60$、$0.30$、$0.10$、$0.01$ と下げると比は $3.902549$、$1.837973$、$1.218173$、$\mathbf{1.019865}$ と単調に $1$ へ寄り、下がる段が一つも無い。それでも $0.01$ で差は $1.987\times10^{-2}$ 残り、円に近づけても効果は消えきらない。つまり効果の大きさを決めているのは軌道の形であって、燃料でも機体でもない。分けているものは一つ、足しているのが速度か、エネルギーか。速度を足しているなら場所は関係なく、ツィオルコフスキーの式に $v$ は入っていない。エネルギーを足しているなら場所が効き、$v \Delta v+\Delta v^{2}/2$ に $v$ が入っている。二つは論文300 の基準で別根であり、どちらも「噴射で得たもの」と呼べるが、一方は速度の増分、一方はエネルギーの増分で、単位すら違う。混同すると、同じ燃料で $3.9025$ 倍というのがエネルギーが湧いたように見えるが、実際には推進剤が持ち去るエネルギーが場所で違うだけである。論文483 とは向きが逆で、あちらは二つの力の指数が揃って半径が消えたが、こちらは消えてほしい $v$ が消えずに残る。何が消えるかは、式のどこに入っているかで決まる。これは論文481 でいう分離子の一本で、「同じ燃料なのに結果が違う」という報告が来たとき、測定が悪いのか比べている量が違うのかで直す先が違う。正直に言えば、機体に残る分だけを数えている。推進剤が持ち去るエネルギーは勘定に入れておらず、それを含めれば全体は保存している。「得をした」のは機体の側だけであって、エネルギーが湧いているわけではない。

参考文献

  1. Battin, R. H. (1999). An Introduction to the Mathematics and Methods of Astrodynamics (rev. ed.). AIAA.
  2. Oberth, H. (1929). Wege zur Raumschiffahrt. R. Oldenbourg, München.
  3. Tsiolkovsky, K. E. (1903). Исследование мировых пространств реактивными приборами. Nauchnoe Obozrenie.
  4. 山岸勇輝 (2026). 『三百本目の点呼、同根か別根かは、判定できる』[論文300]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22171914
  5. 山岸勇輝 (2026). 『「法則が破れた」は、どの仮定へも落とせる』[論文481]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22733927
  6. 山岸勇輝 (2026). 『限界に半径が無いのは、二つの力が同じ指数を持つからである』[論文483]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22759875
  7. 山岸勇輝 (2026). 『「勢力圏」は三つあり、質量比を $1000$ 分の $1$ にすると別々に縮む』[論文505]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22861782

作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。

書誌

山岸勇輝(2026)「同じ燃料が、燃やす場所で 3.90 倍のエネルギーになる」[論文506]. Zenodo.
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引用するとき

山岸勇輝 (2026). 同じ燃料が、燃やす場所で 3.90 倍のエネルギーになる [論文506]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/506 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22861840

Yamagishi, Y. (2026). The Same Fuel Buys 3.90 Times the Energy Depending on Where It Is Burned [Paper 506]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/506; DOI: 10.5281/zenodo.22861840

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