要旨
安定な点とは、谷の底のことだと思われている。本稿が示すのは、$L_{4}$ が有効ポテンシャルの極大でありながら安定であることである。柵は形ではなく、質量比 $\mathbf{24.9599357944}$ である。新しい定理も法則も主張しない。
第一に、$L_{4}$ は停留点である。勾配は $(0.000\times10^{0}, 1.110\times10^{-10})$ で、$0.05$ ずらすと $-0.040634$ になる(第2節)。
第二に、これが本稿の芯である。その停留点は極大である。有効ポテンシャルは $-1.499998500005$ で、周囲八方向の最大が $-1.499998503754$、すべて低い(第2節)。
第三に、それでも安定であり、条件は $27\mu(1-\mu)<1$ である。閾値の質量比は $\mathbf{24.9599357944}$ である(第3節)。
第四に、太陽と地球の比 $333029.7043$ は安定側、質量比 $20$ は不安定側にいる(第3節)。
第五に、$L_{1}$ は数値解で $\mathbf{1491426526}$ m、近似式は $1496433206$ m で相対差 $0.003357$ である(第4節)。
第六に、分離子は「支えているのがポテンシャルか、速度に依る力か」である(第5節)。
キーワード:ラグランジュ点、制限三体問題、L4 と L5、線形安定性、天体力学。
射程(何を示さないか)
新しい定理も法則も主張しない。制限三体問題、ラグランジュ点、$L_{4}$/$L_{5}$ の線形安定条件は、いずれも標準的である。天体力学を作らない。摂動、離心率、太陽輻射圧、実際のトロヤ群の分布は主題ではない。円制限三体問題の内側だけを見る。非線形の安定性を扱わない。扱うのは線形安定であり、長時間の挙動やアーノルド拡散には立ち入らない。五点すべての位置を出さない。$L_{1}$ と $L_{4}$ の数だけを出す。$L_{2}$、$L_{3}$、$L_{5}$ は名指すにとどめる。ヒル半径を導かない。論文337 が射程注記で「三体問題やヒル半径の導出そのものには立ち入らない」と書いており、本稿はその隣に置く。既刊との関係:論文195 は「安定」が六つの別の言葉であり、分けているのは何を揺らすかだと示した。本稿はその六つのうち二つが $L_{4}$ で食い違う例を出す。論文487 は停留点が最小・最大・縮退の三通りあることを示した。$L_{4}$ はその「最大」であり、しかも安定である。論文337 は太陽系の「果て」が五つあると示した。同じ系で「安定な場所」も一つではない。論文481 は分離子が無いと反証の行き先が決まらないと示した。本稿はその分離子を一本書く。加えたのは、$L_{4}$ の極大性を八方向で確かめたこと、勾配を $1.110\times10^{-10}$ と出したこと、閾値を $24.9599357944$ と出し逆算で確かめたこと、境目の両側を $20$ と $25$ で挟んだこと、$L_{1}$ の数値解と近似式を相対差 $0.003357$ で比べたことである。
1. 記法と問い
設定:質量 $m_{1}$、$m_{2}$ の二体が共通重心のまわりを円運動し、質量比を $\mu=m_{2}/(m_{1}+m_{2})$ と書く。共に回る座標系で、質量の無視できる第三体が感じる有効ポテンシャルは
$$\Omega(x,y)=-\left[\frac{1}{2}(x^{2}+y^{2})
+\frac{1-\mu}{r_{1}}+\frac{\mu}{r_{2}}\right]$$
である($G(m_{1}+m_{2})=1$、距離 $1$、角速度 $1$ の単位)。その停留点が五つあり、$L_{4}$ と $L_{5}$ は二体と正三角形をなす。
観察 1.1 安定な点とは、谷の底のことだと思われている。ずらせば戻る。ポテンシャルが低いほうへ落ちる、という像である。
観察 1.2 だが回る座標系には、速度に依る力がある。コリオリの力、ポテンシャルには書けない。
問い:$L_{4}$ は谷なのか、山なのか。
2. $L_{4}$ は山の頂上である
計算 2.1:$\mu=3.0\times10^{-6}$(太陽と地球に近い値)で $L_{4}$ の勾配を数値で出す。
$$\left(\frac{\partial\Omega}{\partial x},\ \frac{\partial\Omega}{\partial y}\right)
=\left(0.000\times10^{0},\ 1.110\times10^{-10}\right)$$
観察 2.2 勾配が消えている。$1.110\times10^{-10}$、数値微分の刻みの大きさであり、停留点である。
観察 2.3 そこから $0.05$ ずらすと停留点でなくなる。$-0.040634$、八桁動いており、検査が位置に反応していることの確認になる。
計算 2.4:$L_{4}$ とその周囲八方向で $\Omega$ を比べる。
| 位置 | 有効ポテンシャル $\Omega$ |
|---|---|
| $L_{4}$ | $\mathbf{-1.499998500005}$ |
| 周囲八方向の最大 | $\mathbf{-1.499998503754}$ |
| 周囲八方向の最小 | $-1.499998513721$ |
観察 2.5 周囲がすべて低い。最大でも $-1.499998503754<-1.499998500005$、どの向きへずらしてもポテンシャルは下がる。$L_{4}$ は極大である。
観察 2.6 極小ではない。周囲の最小が $-1.499998513721$、向きによる差もあり、平らでもない。
観察 2.7 論文487 の三通りでいえば、これは「最大」である。停留点が山になっている場合、そこでは光の経路が最長になった。ここでは物が留まる。
3. それでも安定であり、柵は質量比である
計算 3.1:$L_{4}$/$L_{5}$ の線形安定条件 $27\mu(1-\mu)<1$ を解く。
| 量 | 値 |
|---|---|
| 臨界の質量比 $\mu_{c}$ | $0.038520896505$ |
| $27\mu_{c}(1-\mu_{c})$(逆算) | $0.999999999999999$ |
| 閾値の質量比 $(1-\mu_{c})/\mu_{c}$ | $\mathbf{24.9599357944}$ |
観察 3.2 逆算が $1$ に戻る。$0.999999999999999$、式の変形にも数値にも誤りが無いことの独立な確認である。
観察 3.3 柵は $24.9599357944$ である。重いほうが軽いほうの $24.96$ 倍より重ければ安定、形の話ではなく、比の話である。
計算 3.4:境目の両側を確かめる。
| 系 | 質量比 | 判定 |
|---|---|---|
| 太陽と地球 | $\mathbf{333029.7043}$ | 安定 |
| 質量比 $25$ の連星 | $25$ | 安定(境目のすぐ上) |
| 質量比 $20$ の連星 | $20$ | 不安定 |
観察 3.5 太陽と地球は柵から四桁離れている。$333029.7043$ 対 $24.9599357944$、余裕をもって安定側にいる。
観察 3.6 $25$ と $20$ で境目を挟んだ。片方は安定、片方は不安定、閾値がその間にあることの確認である。
観察 3.7 支えているのはコリオリの力である。ずれると横向きに曲げられ、山を降りきる前に周回に入る。速度に依るので、ポテンシャルの図には現れない。
4. $L_{1}$、谷ではないが、鞍である
計算 4.1:太陽と地球で $L_{1}$ の位置を数値で解き、近似式と比べる。
| 出し方 | 地球からの距離 |
|---|---|
| 数値解 | $\mathbf{1491426526}$ m($149.1427$ 万 km) |
| 近似式 $R(m_{2}/3m_{1})^{1/3}$ | $1496433206$ m |
| 差 | $5006679$ m(相対差 $0.003357$) |
観察 4.2 実測の約 $150$ 万 km に合う。$149.1427$ 万 km、観測衛星が置かれている距離であり、独立な確認になる。
観察 4.3 近似式は $0.34$ パーセント外れる。差 $5006679$ m、一致してはいないが、桁は合っている。近似が効いている範囲が読める。
観察 4.4 $L_{1}$ は鞍点であり、安定でない。一方向に落ちる。置いた衛星は制御を続けなければ留まれない。
観察 4.5 つまり五つの停留点は同じ種類ではない。三つは鞍、二つは極大、そして安定なのは極大のほうである。
5. 分離子
分離子:支えているのがポテンシャルか、速度に依る力か。
観察 5.1 ポテンシャルなら、極小でなければ安定でない。谷の底、$L_{4}$ はそうなっていない。
観察 5.2 速度に依る力なら、極大でも安定でありうる。コリオリ、実際に $L_{4}$ がそれである。
観察 5.3 論文195 が分けた六つの「安定」のうち、二つがここで食い違う。「エネルギーが極小」と「摂動が発散しない」。$L_{4}$ は後者を満たし、前者を満たさない。論文300 の基準で別根である。
観察 5.4 だから「安定だから谷にある」とは言えない。反例が実在する。トロヤ群の小惑星が、その山の頂上に留まっている。
観察 5.5 柵が形ではなく比であることも、そこから来る。$24.9599357944$、コリオリの効きと山の傾きの釣り合いが、質量比だけで決まる。
観察 5.6 これは論文481 でいう分離子の一本である。「安定なはずの点から外れた」という報告が来たとき、どの意味の安定が破れたのかで、直す先が違う。
観察 5.7 正直に言えば、扱ったのは線形安定だけである。一次までの摂動が発散しないこと、長時間でどうなるか、非線形の効果がどう効くかは別の問題であり、本稿は触れていない。実際のトロヤ群が数十億年留まっている理由の全部が、ここに書かれているわけではない。
6. 点呼と結び
- $L_{4}$ の勾配は $1.110\times10^{-10}$(計算 2.1):停留点である。
- $0.05$ ずらすと $-0.040634$(観察 2.3):検査が位置に反応する。
- $\Omega(L_{4})=-1.499998500005$(計算 2.4):本稿の芯。
- 周囲の最大が $-1.499998503754$(観察 2.5):すべて低く、極大である。
- 閾値は $24.9599357944$(計算 3.1):逆算で $0.999999999999999$。
- 太陽と地球は $333029.7043$(計算 3.4):四桁の余裕。
- $25$ と $20$ で挟んだ(観察 3.6):境目の両側。
- $L_{1}$ は $1491426526$ m(計算 4.1):近似式との差 $0.003357$。
- 分離子はポテンシャルか速度依存の力か(観察 5.3):論文195 の六つのうち二つが食い違う。
- 線形安定だけを扱った(観察 5.7):長時間の話ではない。
結び:安定な点とは谷の底のことだと思われている。ずらせば戻る、ポテンシャルが低いほうへ落ちる、という像である。だが回る座標系にはコリオリの力があり、それはポテンシャルには書けない。$L_{4}$ は山の頂上である。$\mu=3.0\times10^{-6}$ で $L_{4}$ の勾配は $(0.000\times10^{0}, 1.110\times10^{-10})$、数値微分の刻みの大きさであり停留点である。そこから $0.05$ ずらすと $-0.040634$ となって八桁動く。有効ポテンシャルは $\mathbf{-1.499998500005}$ で、周囲八方向の最大が $\mathbf{-1.499998503754}$、最小が $-1.499998513721$。どの向きへずらしてもポテンシャルは下がる。$L_{4}$ は極大であって極小ではなく、向きによる差もあるので平らでもない。論文487 の三通りでいえばこれは「最大」であり、あちらでは光の経路が最長になった場合だった。ここでは物が留まる。それでも安定であり、柵は質量比である。線形安定条件 $27\mu(1-\mu)<1$ を解くと $\mu_{c}=0.038520896505$、逆算した $27\mu_{c}(1-\mu_{c})$ は $0.999999999999999$ で $1$ に戻り、閾値の質量比は $\mathbf{24.9599357944}$ である。重いほうが軽いほうの $24.96$ 倍より重ければ安定で、形の話ではなく比の話である。太陽と地球の比 $\mathbf{333029.7043}$ は柵から四桁離れて安定側におり、質量比 $25$ は安定側、$20$ は不安定側で、境目を挟んだ。支えているのはコリオリの力で、ずれると横向きに曲げられ、山を降りきる前に周回に入る。速度に依るので、ポテンシャルの図には現れない。$L_{1}$ は谷ではないが、鞍である。太陽と地球で数値に解くと地球から $\mathbf{1491426526}$ m、すなわち $149.1427$ 万 km で、観測衛星が置かれている距離に合う。近似式 $R(m_{2}/3m_{1})^{1/3}$ は $1496433206$ m で、差は $5006679$ m、相対差 $0.003357$、一致してはいないが桁は合っており、近似の効く範囲が読める。$L_{1}$ は鞍点であって安定でなく、置いた衛星は制御を続けなければ留まれない。つまり五つの停留点は同じ種類ではなく、三つは鞍、二つは極大で、安定なのは極大のほうである。分けているものは一つ、支えているのがポテンシャルか、速度に依る力か。ポテンシャルなら極小でなければ安定でないが、$L_{4}$ はそうなっていない。速度に依る力なら極大でも安定でありうる。実際に $L_{4}$ がそれである。論文195 が分けた六つの「安定」のうち、「エネルギーが極小」と「摂動が発散しない」の二つがここで食い違う。$L_{4}$ は後者を満たし前者を満たさず、論文300 の基準で別根である。だから「安定だから谷にある」とは言えない。反例が実在し、トロヤ群の小惑星がその山の頂上に留まっている。柵が形ではなく比であることもそこから来る。コリオリの効きと山の傾きの釣り合いが、質量比だけで決まる。これは論文481 でいう分離子の一本で、「安定なはずの点から外れた」という報告が来たとき、どの意味の安定が破れたのかで直す先が違う。正直に言えば、扱ったのは線形安定だけである。一次までの摂動が発散しないことであって、長時間でどうなるか、非線形の効果がどう効くかは別の問題であり、本稿は触れていない。実際のトロヤ群が数十億年留まっている理由の全部が、ここに書かれているわけではない。
参考文献
- Lagrange, J.-L. (1772). Essai sur le problème des trois corps. Prix de l’Académie Royale des Sciences de Paris.
- Szebehely, V. (1967). Theory of Orbits: The Restricted Problem of Three Bodies. Academic Press.
- Murray, C. D., & Dermott, S. F. (1999). Solar System Dynamics. Cambridge University Press.
- 山岸勇輝 (2026). 『「安定」は六つの別の言葉であり、分けているのは何を揺らすかである』[論文195]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22107170
- 山岸勇輝 (2026). 『三百本目の点呼、同根か別根かは、判定できる』[論文300]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22171914
- 山岸勇輝 (2026). 『太陽系の「果て」は五つあり、最小と最大は $5106$ 倍ひらく』[論文337]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22681940
- 山岸勇輝 (2026). 『「法則が破れた」は、どの仮定へも落とせる』[論文481]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22733927
- 山岸勇輝 (2026). 『停留点は三通りある。最小と、最大と、どこでも同じ』[論文487]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22759965
作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。
書誌
山岸勇輝(2026)「山の頂上に、物が留まっている」[論文490]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.22760033
日付の証拠(OpenTimestamps):日本語版の .ots・英語版の .ots・SHA256SUMS
予備の置き場所(ミラー。中身は上と同じです):PDF 日本語・PDF English・SHA256SUMS
住所:https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/490・DOI 10.5281/zenodo.22760033・CC BY 4.0・プレプリント(査読を経ていません)・ORCID 0009-0006-8587-3450
引用するとき
山岸勇輝 (2026). 山の頂上に、物が留まっている [論文490]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/490 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22760033
Yamagishi, Y. (2026). Something Is Resting on the Summit of a Hill [Paper 490]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/490; DOI: 10.5281/zenodo.22760033
@misc{yamagishi2026yoi490,
author = {Yamagishi, Yuuki},
title = {Something Is Resting on the Summit of a Hill},
year = {2026},
howpublished = {YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/490},
doi = {10.5281/zenodo.22760033},
note = {Preprint, edition 1}
}
指紋(SHA-256)と確かめ方
22dfa8c8de7c43ae9b05882803f09140667c5f1cda7056fb8a34fd941113712b yamagishi_yoi490_v1_jp.pdf98346bccd29af3650547255f333d3151321bcafe4c76adab53712d9d0bc9eb3d yamagishi_yoi490_v1_en.pdfPDF と .ots を同じ場所に保存し、opentimestamps.org に .ots、続けて PDF を落とすと、記録された日時が表示されます。PDF が 1 バイトでも変わっていれば通りません。