【論文888】共鳴胴の響く高さは、長さで決まる管の共鳴と違い、体積と穴の比で決まり、形に依らない

要旨

楽器の胴が低い音で響くのは、胴が大きい(長い)からだ、と思いやすい。本稿は、穴の開いた空洞の響く高さが、長さで決まる管の共鳴とは別のもので決まることを数える。新しい定理も法則も主張しない。

第一に、穴の開いた空洞には、波長よりずっと小さいまま低く響く高さがある。体積 $0.01$ m$^3$・穴の半径 $0.05$ m で $\mathbf{163.086441}$ Hz、波長 $2.103179$ m である(第2節)。

第二に、これが本稿の芯である。同じ体積なら、形が違っても響く高さは同じである。立方体と細長い箱でどちらも $163.086441$ Hz だが、いちばん長い辺の半波長の高さは $796.032485$ Hz と $343.000000$ Hz で、$\mathbf{2.320794}$ 倍違う(第2節)。

第三に、体積を大きくすると低く、穴を大きくすると高くなる。体積 $2$ 倍で $0.707107$ 倍、穴の半径 $2$ 倍で $\mathbf{1.426423}$ 倍、$0.5$ 倍で $0.695353$ 倍である(第3節)。

第四に、穴の効き方は面積だけではない。穴の半径を $2$ 倍にすると面積は $4$ 倍だが、首の空気の長さも伸びるので、高さは $\sqrt{2}$ 倍をわずかに超える $1.426423$ 倍にとどまる(第3節)。

第五に、式は動かした値と合う。首の空気を質量、空洞の空気をばねとして動かし、零点を数えると $163.086529$ Hz で、式と $0.000088$ Hz 以内で一致した(第2節)。

第六に、分離子は、いちばん長い寸法を問うか、体積と穴の面積を問うかである。管の共鳴は長さを、空洞の共鳴は体積と穴を見ている(第4節)。

キーワード:ヘルムホルツ共鳴、共鳴胴、空洞、穴の面積、管の共鳴。

射程(何を示さないか)

新しい定理も法則も主張しない。ヘルムホルツ共鳴の式、首の長さを穴の半径で補う近似、管の共鳴が長さで決まることは、いずれも音響学で既知である。実在の楽器を主張しない。体積・穴・板の厚さは模型の値で、どのギターにもどの太鼓にも対応しない。板の振動を入れない。胴の板が振動して空洞と結びつくこと、壁で音が吸われることは入れない。範囲を限った。空洞が波長に比べて十分小さいときだけを扱う。首の補正の係数 $1.7$ は代表的な置き方の一つである。既刊との関係:論文857 は、音の高さは張力と重さの比しか見ないが、楽器にかかる力は張力そのものであることを示した。本稿はその隣に置く。あちらは弦で、張力と重さの比が高さを決めた。ここでは空洞で、体積と穴の比が高さを決め、形は効かないことを数える。加えたのは、同じ体積の二つの形で空洞の高さと長い辺の高さを並べたこと、体積と穴の半径を変えて高さの倍率を測ったこと、首と空洞を動かして式と突き合わせたこと、分離子を「長い寸法か、体積と穴か」に置いたことである。

1. 記法と問い

設定:体積 $V$ の空洞に、半径 $r$ の穴が厚さ $t$ の板に開いているとする。穴の中の空気(首)が質量として、空洞の空気がばねとして働き、首の実際の長さは穴の半径で補う。

$$f=\frac{c}{2\pi}\sqrt{\frac{A}{V\,L_{\text{eff}}}},\qquad
A=\pi r^{2},\qquad
L_{\text{eff}}=t+1.7\,r,\qquad
f_{\text{管}}=\frac{c}{2L_{\max}}$$

$c=343$ m/s、空気の密度 $1.2$ kg/m$^3$ とした。$f_{\text{管}}$ は、いちばん長い辺 $L_{\max}$ の半波長で決まる高さである。空洞の高さは、式と、首の空気を質量・空洞の空気をばねとして $10^{-6}$ 秒刻みで動かし零点を数えた値の二通りで出した。

問い:共鳴胴の響く高さは、何で決まるのか。

2. 空洞の高さと、長さの高さ

計算 2.1:体積 $0.01$ m$^3$ の立方体と細長い箱で、空洞の高さといちばん長い辺の高さを出した(穴の半径 $0.05$ m・板の厚さ $0.003$ m)。

形 寸法(m) 空洞の高さ(Hz) 長い辺の半波長(Hz)
立方体 $0.2154$ 立方 $163.086441$ $796.032485$
細長い箱 $0.5\times0.2\times0.1$ $163.086441$ $343.000000$

観察 2.2 これが本稿の芯である。同じ体積なら、形が違っても空洞の響く高さは同じである。立方体と細長い箱で、空洞の高さはどちらも $163.086441$ Hz だった。一方、いちばん長い辺で決まる高さは $796.032485$ Hz と $343.000000$ Hz で $2.320794$ 倍違う。空洞の共鳴は長さを見ず、体積と穴だけを見ている。

観察 2.3 空洞の高さは、波長よりずっと小さいまま低い。$163.086441$ Hz の波長は $2.103179$ m で、空洞の寸法よりずっと長い。首と空洞を動かして零点を数えた高さは $163.086529$ Hz で、式との差は $0.000088$ Hz だった。

3. 体積と穴

計算 3.1:体積と穴の半径を変えて、高さの倍率を出した。

変えたもの 高さ(Hz) 元に対する倍率
体積 $2$ 倍 $115.319529$ $0.707107$
穴の半径 $2$ 倍 $232.630223$ $1.426423$
穴の半径 $0.5$ 倍 $113.402727$ $0.695353$

観察 3.2 体積を大きくすると低く、穴を大きくすると高くなる。体積 $2$ 倍でちょうど $1/\sqrt{2}$ 倍、穴の半径 $2$ 倍で $1.426423$ 倍である。穴の半径を $2$ 倍にすると面積は $4$ 倍になるが、半径で補う首の長さも伸びるので、高さは $2$ 倍ではなく、$\sqrt{2}$ をわずかに超えるところにとどまる。

4. 分離子

観察 4.1 分離子は、いちばん長い寸法を問うか、体積と穴の面積を問うかである。管の共鳴は長さで決まり、形を変えると高さが変わる。空洞の共鳴は、空気全体がばねとしてまとめて縮むので、体積と穴で決まり、形を変えても高さは変わらない。胴が低く響くのは長いからではなく、体積に比べて穴が小さいからである。

観察 4.2 論文857 の隣に置く。857 は、音の高さが張力と重さの比しか見ないことを示した。弦では張力と重さの比が高さを決めた。ここでは空洞で、穴の面積と体積と首の長さの比が高さを決める。どちらも、目立つ大きさそのものではなく比が高さを決める。

観察 4.3 言わないこと。実在の楽器の値も、胴の板の振動との結びつきも、壁の吸音も扱わない。示したのは、空洞の響く高さが体積と穴で決まり、形に依らないということである。

5. 点呼と結び

  1. $f=(c/2\pi)\sqrt{A/(VL_{\text{eff}})}$(第1節):ヘルムホルツ共鳴。
  2. $\mathbf{163.086441}$ Hz(計算 2.1):体積 $0.01$ m$^3$。
  3. 波長 $2.103179$ m(観察 2.3):空洞よりずっと長い。
  4. 立方体と細長い箱で同じ高さ(観察 2.2):本稿の芯。
  5. 長い辺の高さは $\mathbf{2.320794}$ 倍違う(観察 2.2):形で変わる。
  6. 体積 $2$ 倍で $0.707107$ 倍(計算 3.1):$1/\sqrt2$。
  7. 穴の半径 $2$ 倍で $\mathbf{1.426423}$ 倍(計算 3.1):首も伸びる。
  8. 穴の半径 $0.5$ 倍で $0.695353$ 倍(計算 3.1):低くなる。
  9. 動かした値と $0.000088$ Hz 以内(観察 2.3):別々の出し方。
  10. 長い寸法か、体積と穴か(観察 4.1):分離子・論文857。

結び:共鳴胴の響く高さは、長さで決まる管の共鳴と違い、体積と穴の比で決まり、形に依らない。体積 $0.01$ m$^3$・穴の半径 $0.05$ m の空洞は、立方体でも細長い箱でも $163.086441$ Hz で響き、いちばん長い辺で決まる高さは $2.320794$ 倍違うのに、空洞の高さは変わらない。空洞の空気はまとめて縮むばねとして働き、長さではなく体積で効くからである。体積を $2$ 倍にすると $0.707107$ 倍、穴の半径を $2$ 倍にすると $1.426423$ 倍になり、首と空洞を動かした値は式と $0.000088$ Hz 以内で合う。胴が低く響くのは、長いからではなく、体積に比べて穴が小さいからである。既刊との位置:論文857 の「高さは張力と重さの比しか見ない」の隣に、空洞の高さが体積と穴の比しか見ないことを置いた。正直に言えば、寸法は模型の値で、板の振動も吸音も入れず、空洞が波長より小さい範囲だけを扱った。

参考文献

  1. Fletcher, N. H., & Rossing, T. D. (1998). The Physics of Musical Instruments (2nd ed.). Springer.
  2. Kinsler, L. E., Frey, A. R., Coppens, A. B., & Sanders, J. V. (2000). Fundamentals of Acoustics (4th ed.). Wiley.
  3. 山岸勇輝 (2026). 『音の高さは張力と重さの比しか見ないが、楽器にかかる力は張力そのものである』[論文857]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/857

作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。

書誌

山岸勇輝(2026)「共鳴胴の響く高さは、長さで決まる管の共鳴と違い、体積と穴の比で決まり、形に依らない」[論文888]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/888

YOI 888第1版・2026年9月ビットコインに記録済み

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引用するとき

山岸勇輝 (2026). 共鳴胴の響く高さは、長さで決まる管の共鳴と違い、体積と穴の比で決まり、形に依らない [論文888]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/888

Yamagishi, Y. (2026). A Resonating Body’s Pitch Is Set Not by Length, as in a Pipe, but by Volume and Opening, Whatever the Shape [Paper 888]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/888

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