【論文921】脚を振り子と見ても歩調は当たらないが、歩いていられる速さの上限は脚の長さと重力で決まる

要旨

歩くとき、宙にある脚は振り子のように前へ振れ、地面に着いた脚の上を体は逆さの振り子のように越えていく。本稿は、長さ $0.90$ m の脚でこの二つの振り子を数え、一方が歩調を当てず、もう一方が歩いていられる速さの上限を出すことを示す。新しい定理も法則も主張しない。

第一に、脚を垂らした振り子の歩調は、ふつうの歩調に届かない。半周期を一歩とすると、単振り子で $63.0435$ 歩/分、一様な棒の振り子で $77.2122$ 歩/分で、ふつうの歩調 $110$ 歩/分(代表値)の $\mathbf{0.573123}$ 倍と $0.701929$ 倍だった(第2節)。

第二に、倒立させた同じ振り子は、歩いていられる速さの上限を出す。脚の上を越える体の頂点で要る向心加速度が重力の加速度に等しくなる速さは $\sqrt{gL}=\mathbf{2.970856}$ m/s で、そこで頂点の地面を押す力は $0$ になった(第3節)。

第三に、速さを上げると、頂点で地面を押す力が減っていく。体重あたりで、$1.4$ m/s では $0.777928$、$2.5$ m/s では $0.291864$、$3.2$ m/s では $-0.160210$ で、上限を超えると脚が地面を引かねばならない(第3節)。

第四に、脚の長さで、歩調と速さの上限は逆に動く。脚を $4$ 倍にすると歩調は半分、速さの上限は $2$ 倍になった。ふつうに歩く $1.4$ m/s のフルード数は $0.222072$、歩きから走りへ移るフルード数 $0.5$(代表値)の速さは $2.100712$ m/s で、月の重力では速さの上限は $1.207477$ m/s だった(第4節)。

第五に、分離子は、脚を垂らした振り子と見るか、体を上に乗せた倒立振り子と見るかである。垂らした振り子が決めるのは脚の自然な揺れの速さで、歩調はそれより速い。倒立させた振り子が決めるのは、体が脚の上から浮かずに越えられる速さの天井である(第5節)。

キーワード:歩行、振り子、倒立振り子、歩調、フルード数、脚の長さ。

射程(何を示さないか)

新しい定理も法則も主張しない。単振り子と物理振り子の周期、倒立振り子として歩きを見る模型、フルード数による歩きと走りの比べ方は、いずれも標準的である。歩調が何で決まるかを主張しない。筋の働き、エネルギーの使い方、神経の制御は扱わない。振り子の歩調がふつうの歩調に届かないことを数えるだけである。値は代表値である。脚の長さ $0.90$ m、ふつうの歩調 $110$ 歩/分、ふつうに歩く速さ $1.4$ m/s、歩きから走りへ移るフルード数 $0.5$ は代表値である。脚を剛体の棒か点の重りと置く。膝の曲がり、足首の働き、腕の振りは入れない。月で人がどう動くかは主張しない。重力を変えた速さの上限を一つ並べるだけである。既刊との関係:論文380 は、走る速さの限界が脚を速く動かせないことではなく、地面を強く押せないことにあると示した。ここでは走りではなく歩きで、地面を押す力が頂点で $0$ になる速さが上限を決めることを数える。論文396 は、振り子の「小さい角」を数にすると $10$ 度で一日 $164.78$ 秒ずれることを示した。ここでは小さい角の周期をそのまま使い、脚の振り子の歩調が何を当て、何を当てないかを数える。加えたのは、二つの振り子の歩調をふつうの歩調と比べたこと、倒立振り子の頂点で地面を押す力が $0$ になる速さを出したこと、速さごとに頂点の力を並べたこと、脚の長さと重力を動かしたこと、分離子を「垂らした振り子か、倒立振り子か」に置いたことである。

1. 記法と問い

設定:脚の長さを $L$、重力の加速度を $g$ とする。宙にある脚を振り子と見て半周期を一歩とすると、歩調(歩/分)は単振り子と一様な棒の振り子で次のとおりである。

$$n_{\text{単}}=\frac{60}{\pi\sqrt{L/g}},\qquad n_{\text{棒}}=\frac{60}{\pi\sqrt{2L/3g}}$$

地面に着いた脚の上を体が速さ $v$ で越えるとき、頂点で体の重心が描く円の向心加速度は $v^2/L$ で、頂点で地面を押す力(体重あたり)は $1-v^2/gL$ である。それが $0$ になる速さが $v_{\max}=\sqrt{gL}$、フルード数は $v^2/gL$ である。

問い:脚を振り子と見る模型は、歩きの何を当て、何を当てないか。

2. 脚を垂らした振り子

計算 2.1:$L=0.90$ m で、単振り子の歩調は $63.0435$ 歩/分、一様な棒の歩調は $77.2122$ 歩/分だった。ふつうの歩調 $110$ 歩/分(代表値)との比は $\mathbf{0.573123}$ と $0.701929$ である。

観察 2.2 脚を垂らした振り子の歩調は、ふつうの歩調に届かない。脚を棒と置いて慣性を分布させても七割にとどまる。ふつうの歩きは、脚が自然に揺れる速さより速い歩調で進んでいる。

3. 体を乗せた倒立振り子

計算 3.1:$L=0.90$ m で、速さの上限は $\sqrt{gL}=\mathbf{2.970856}$ m/s だった。頂点で地面を押す力(体重あたり)。

速さ(m/s) 頂点で地面を押す力(体重あたり)
$1.400000$ $0.777928$
$2.500000$ $0.291864$
$2.970856$ $0.000000$
$3.200000$ $-0.160210$

観察 3.2 倒立させた振り子は、歩いていられる速さの天井を出す。速さを上げると頂点で地面を押す力が減り、$2.970856$ m/s で $0$ になる。それより速いと、体を脚の上に保つには脚が地面を引かねばならず、倒立振り子の歩きは続けられない。

4. 脚の長さと重力を動かす

計算 4.1:脚の長さを動かす。

脚の長さ 単振り子の歩調 棒の歩調 速さの上限(m/s)
$0.45$ m $89.1570$ $109.1946$ $2.100712$
$0.90$ m $63.0435$ $77.2122$ $2.970856$
$1.80$ m $44.5785$ $54.5973$ $4.201425$

脚を $4$ 倍にすると歩調は半分、速さの上限は $2$ 倍だった。

計算 4.2:ふつうに歩く $1.4$ m/s のフルード数は $0.222072$、フルード数 $0.5$(代表値)の速さは $2.100712$ m/s だった。月の重力 $1.62$ m/s² では速さの上限は $1.207477$ m/s(地球の $0.406441$ 倍)である。

観察 4.3 脚の長さで、歩調と速さの上限は逆に動く。長い脚ほど自然な揺れは遅いが、脚の上を越えられる速さの天井は高い。ふつうの歩きはフルード数 $0.222072$ で天井の下にあり、走りへ移るとされるフルード数 $0.5$ も天井 $1$ より手前である。

5. 分離子

観察 5.1 分離子は、脚を垂らした振り子と見るか、体を上に乗せた倒立振り子と見るかである。垂らした振り子が決めるのは脚の自然な揺れの速さで、ふつうの歩調はその $1/0.573123$ 倍ほど速い。倒立させた振り子が決めるのは、体が脚の上から浮かずに越えられる速さの天井 $\sqrt{gL}$ で、それは脚の長さと重力だけで決まる。

観察 5.2 言わないこと。歩調が何で決まるか、膝や足首の働き、実際に走りへ移る理由、月での人の動きは扱わない。示したのは、同じ振り子の模型が垂らせば歩調を外し、倒立させれば速さの天井を出すことである。

6. 点呼と結び

  1. $n_{\text{単}}$・$n_{\text{棒}}$・$v_{\max}=\sqrt{gL}$(第1節):二つの振り子。
  2. 歩調 $63.0435$・$77.2122$ 歩/分、比 $\mathbf{0.573123}$(計算 2.1):歩調に届かない。
  3. 速さの上限 $\mathbf{2.970856}$ m/s(計算 3.1):頂点で押す力が $0$。
  4. $1.4$ m/s で $0.777928$、$3.2$ m/s で $-0.160210$(計算 3.1):上限を超えると引く。
  5. 脚 $4$ 倍で歩調半分・上限 $2$ 倍(計算 4.1):逆に動く。
  6. フルード数 $0.222072$・月で $1.207477$ m/s(計算 4.2):天井の下。
  7. 垂らすか、倒立させるか(観察 5.1):分離子・論文380・396。

結び:脚を振り子と見ても歩調は当たらないが、歩いていられる速さの上限は脚の長さと重力で決まる。長さ $0.90$ m の脚を垂らした振り子の歩調は $63.0435$ 歩/分で、ふつうの歩調の $0.573123$ 倍にとどまった。同じ振り子を倒立させると、頂点で地面を押す力が $0$ になる速さ $2.970856$ m/s が出て、それを超えると脚が地面を引かねばならなかった。脚を $4$ 倍にすると歩調は半分、速さの上限は $2$ 倍で、二つは逆に動く。分離子は、脚を垂らした振り子と見るか、体を上に乗せた倒立振り子と見るかである。既刊との位置:論文380 が走りで見た地面を押す力を歩きの頂点で数え、論文396 の小さい角の周期を脚の歩調に当てた。正直に言えば、歩調が何で決まるかは言わない。同じ模型が何を外し、何を当てるか、そこまでである。

参考文献

  1. Alexander, R. McN. (2003). Principles of Animal Locomotion. Princeton University Press.
  2. 山岸勇輝 (2026). 『走る速さの限界は、脚を速く動かせないことではなく、地面を強く押せないことである』[論文380]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/380 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22698815
  3. 山岸勇輝 (2026). 『振り子の「小さい角」を数にすると、$10$ 度で一日 $\mathbf{164.78}$ 秒ずれる』[論文396]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/396 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22699299

作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。

書誌

山岸勇輝(2026)「脚を振り子と見ても歩調は当たらないが、歩いていられる速さの上限は脚の長さと重力で決まる」[論文921]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/921

YOI 921第1版・2026年9月ビットコインに記録済み

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引用するとき

山岸勇輝 (2026). 脚を振り子と見ても歩調は当たらないが、歩いていられる速さの上限は脚の長さと重力で決まる [論文921]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/921

Yamagishi, Y. (2026). Treating the Leg as a Pendulum Misses the Cadence, but the Top Walking Speed Is Set by Leg Length and Gravity [Paper 921]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/921

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