要旨
カムの切り下げを避けるローラーの大きさは、圧力角と違い、減速の強さの順に決まる(論文967)。そこでも論文929 でも、輪郭とローラーの接触の応力は扱わなかった。本稿は、サイクロイドと単振動の持ち上げで、ばねと質量の力とヘルツの線接触から持ち上げの区間の応力の最大を出し、ローラーの半径でどう変わるかを、基礎円を決める場合とピッチ円を決める場合で比べる。新しい定理も法則も主張しない。
第一に、基礎円を決めると、ローラーは大きいほど応力が下がる。基礎円 30 mm のサイクロイドで、ローラー 4 mm の $\mathbf{333.861}$ MPa から 30 mm の $139.420$ MPa まで下がり、基礎円 5〜30 mm の二つの曲線の 10 通りのどれでも、ローラー 1〜40 mm で単調に下がった(第2節)。
第二に、ピッチ円を決めると、応力の最小は内側にある。ピッチ円 30 mm のサイクロイドで、ローラー 5 mm の $303.091$ MPa、21.5 mm の $\mathbf{180.310}$ MPa、尖る手前の 29.5 mm の $611.151$ MPa だった(第3節)。
第三に、最良のローラーは、応力が最大の点の輪郭の曲率半径とほぼ等しい。最良のローラーの半径を、そのとき応力が最大になる点の輪郭の曲率半径で割ると、二つの曲線と三つのピッチ円の 6 通りで $\mathbf{0.962550}$ から $1.023792$ だった(第3節)。
第四に、最良の半径は、ピッチ曲線の曲率半径の最小より十分小さい。最良の半径÷ピッチ曲線の曲率半径の最小は、サイクロイドで $0.707727$〜$0.740000$、単振動で $\mathbf{0.583333}$〜$0.595833$ だった(第3節)。
第五に、分離子は、決めておくのが基礎円か、ピッチ円か。基礎円を決めると、ローラーを大きくするとピッチ曲線も外へ広がり、輪郭の曲率半径はローラー 4〜30 mm で 26.914 mm より小さくならなかった(基礎円 30 mm のサイクロイド)。ピッチ円を決めると、ローラーを大きくするほど輪郭の曲率半径がローラーの分だけ削られた(第4節)。
キーワード:カム、接触の応力、ヘルツの接触、ローラーの半径、ピッチ円、曲率半径。
射程(何を示さないか)
新しい定理も法則も主張しない。二つの円柱の線接触の圧力の式(ヘルツ)、ローラーの半径がピッチ曲線の曲率半径より小さくないと輪郭が尖ること、ローラーを大きくすると接触の等価半径が大きくなることは、いずれも接触力学とカムの設計で既知である。置いた値である。持ち上げ 20 mm・角 120 度・600 rpm・質量 0.5 kg・ばね 2000 N/m・予圧 50 N・幅 10 mm・鋼の弾性係数 210 GPa・ポアソン比 0.3、基礎円 5〜30 mm、ピッチ円 25・30・40 mm は本稿で置いた。どのカムにも対応しない。強さを論じない。材料が耐える応力、寿命、摩擦、潤滑、戻りと休みの区間、従動節の偏心は扱わない。持ち上げの区間の応力の最大だけを数える。理由を分けない。最良の半径が輪郭の曲率半径に近くなることは、最大の点での等価半径の形から読むだけで、応力が最大の点がローラーの半径で動く分は分けて測っていない。既刊との関係:論文929 の射程注記は、カムを設計せず、カムの輪郭、圧力角、接触の応力、材料は扱わないと書き、論文961・論文967・論文972・論文977 の射程注記も、輪郭の強さを扱わず接触の応力は扱わないと書いた。本稿はそのうち接触の応力の席に座る(先客なし。圧力角の席には論文961 が、切り下げの席には論文967 が座った)。論文967 は、カムの切り下げを避けるローラーの大きさが、圧力角と違い、減速の強さの順に決まることを示した。ここでは、切り下げの手前までのローラーの大きさで、接触の応力がどう変わるかを数える。論文961 は、速さの最大が同じカムの曲線でも、圧力角を収めるピッチ円は角が最大になる位置で変わることを示した。ここではピッチ円を三つ置いて、最良のローラーを探す。加えたのは、二つの曲線でローラーの半径ごとに応力の最大を出したこと、基礎円を決めると単調に下がることを 10 通りで確かめたこと、ピッチ円を決めると内側に最小があることを 6 通りで確かめたこと、最良の半径を輪郭の曲率半径と比べたこと、分離子を「基礎円か、ピッチ円か」に置いたことである。
1. 記法と問い
持ち上げと力:持ち上げ $h=20$ mm を角 $\beta=120$ 度で、サイクロイド $s=h(u-\sin 2\pi u/(2\pi))$ か単振動 $s=h(1-\cos\pi u)/2$($u=\theta/\beta$)で行う。カムは 600 rpm で回り、従動節の質量 0.5 kg、ばね 2000 N/m、予圧 50 N とし、従動節を押す力を $F=50+2000 s+0.5 \ddot s$、法線の力を $F/\cos\phi$($\phi$ は圧力角)とする。
接触の応力:カムの中心からローラーの中心までの距離を $R=R_p+s$($R_p$ はピッチ円の半径)とし、ピッチ曲線の曲率半径 $\rho_p$ から輪郭の曲率半径を $\rho_c=\rho_p-r$($r$ はローラーの半径)とする。等価半径と接触の圧力の最大(幅 10 mm・鋼)は
$$\frac{1}{R^*}=\frac{1}{r}+\frac{1}{\rho_c},\qquad p_0=\sqrt{\frac{F_n E^*}{\pi\,b\,R^*}},\qquad E^*=\frac{E}{2(1-\nu^2)}$$
で、持ち上げの区間を刻んで $p_0$ の最大を取る。基礎円を決める場合は $R_p=$ 基礎円 $+r$、ピッチ円を決める場合は $R_p$ をそのまま置く。$\rho_p>0$ で $\rho_c\le 0$ になれば輪郭が尖るとした。
問い:ローラーを大きくすると、接触の応力の最大はどう変わり、それは何を決めておくかでどう違うか。
2. 基礎円を決めた場合
計算 2.1:基礎円 30 mm。
| ローラー | サイクロイド(MPa) | 最大の点の角(度) | 単振動(MPa) | 最大の点の角(度) |
|---|---|---|---|---|
| 4 mm | $\mathbf{333.861}$ | $37.02$ | $301.250$ | $18.00$ |
| 10 mm | $217.516$ | $38.40$ | $198.639$ | $23.58$ |
| 20 mm | $162.136$ | $39.72$ | $150.472$ | $27.36$ |
| 30 mm | $139.420$ | $40.44$ | $130.883$ | $29.10$ |
サイクロイドのローラー 30 mm で、輪郭の曲率半径の最小は 26.914 mm だった。基礎円 5・10・15・20・30 mm の二つの曲線の 10 通りで、ローラーを 1〜40 mm と 1 mm ずつ変えると、応力の最大はどれも単調に下がり、最も小さいのは 40 mm だった(サイクロイドで基礎円 5 mm の $203.271$ MPa から 30 mm の $126.804$ MPa)。
3. ピッチ円を決めた場合
計算 3.1:ローラーを 0.5 mm ずつ変えたときの最良の半径。
| 曲線 | ピッチ円 | ピッチ曲線の曲率半径の最小 | 最良の半径 | 応力(MPa) | 5 mm の応力 | 最良÷輪郭の曲率半径 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| サイクロイド | 25 mm | $25.000$ mm | 18.5 mm | $196.573$ | $308.286$ | $0.962550$ |
| サイクロイド | 30 mm | $30.000$ mm | 21.5 mm | $\mathbf{180.310}$ | $303.091$ | $0.987375$ |
| サイクロイド | 40 mm | $38.857$ mm | 27.5 mm | $157.836$ | $298.062$ | $0.975829$ |
| 単振動 | 25 mm | $30.000$ mm | 17.5 mm | $187.573$ | $276.860$ | $0.989181$ |
| 単振動 | 30 mm | $34.483$ mm | 20.5 mm | $172.723$ | $273.004$ | $1.023792$ |
| 単振動 | 40 mm | $43.636$ mm | 26.0 mm | $151.816$ | $270.869$ | $1.005501$ |
尖る手前の半径では、サイクロイドのピッチ円 30 mm で 29.5 mm の $611.151$ MPa、単振動のピッチ円 40 mm で 43.5 mm の $1109.811$ MPa まで上がった。6 通りとも、最小は最も小さい半径と尖る手前の半径の間にあった。最良の半径÷ピッチ曲線の曲率半径の最小は、サイクロイドで $0.740000$・$0.716667$・$0.707727$、単振動で $0.583333$・$0.594500$・$0.595833$ だった。
観察 3.2 最良のローラーは、応力が最大の点の輪郭の曲率半径とほぼ等しい。最良の半径÷応力が最大の点の輪郭の曲率半径は $0.962550$ から $1.023792$ だった。ピッチ円を決めると、ある点で $r+\rho_c=\rho_p$ はローラーによらず、等価半径 $r\rho_c/(r+\rho_c)$ は $r=\rho_c$ で最も大きい。応力が最大の点はローラーの半径で動くので(サイクロイドのピッチ円 30 mm で最良のとき 52.83 度)、この読みは最大の点を固定したときの形である。
4. 分離子
観察 4.1 分離子は、決めておくのが基礎円か、ピッチ円か。基礎円を決めると、ローラーを大きくした分だけピッチ曲線が外へ広がり、輪郭の曲率半径はあまり削られない(基礎円 30 mm のサイクロイドでローラー 30 mm でも最小 26.914 mm):ピッチ円を決めると、ピッチ曲線は動かず、輪郭の曲率半径がローラーの分だけ削られるので、大きすぎるローラーは等価半径を小さくして応力を上げた。
観察 4.2 言わないこと。材料が耐える応力、寿命、摩擦と潤滑、戻りと休みの区間、偏心、圧力角の上限との兼ね合い、実在のカムの値は扱わない。示したのは、置いた力と大きさで、接触の応力の最大がローラーの半径でどう変わり、何を決めておくかで向きが違うことである。
5. 点呼と結び
- ヘルツの線接触と持ち上げの力(第1節):持ち上げの区間の最大。
- 基礎円を決めると単調に下がる(計算 2.1):4 mm の $\mathbf{333.861}$ MPa から。
- ピッチ円 30 mm で最良 21.5 mm の $\mathbf{180.310}$ MPa(計算 3.1):内側に最小。
- 最良÷輪郭の曲率半径 $\mathbf{0.962550}$〜1.023792(計算 3.1):ほぼ等しい。
- 最良÷ピッチ曲線の曲率半径の最小 $\mathbf{0.583333}$〜0.740000(計算 3.1):尖る手前より十分内側。
- 基礎円か、ピッチ円か(観察 4.1):分離子・論文929 ほかの射程注記。
結び:ピッチ円を決めたカムでは、接触の応力はローラーと輪郭の曲率半径が等しいあたりで最も小さい。置いた持ち上げと力でヘルツの線接触の圧力の最大を数えると、ピッチ円 30 mm のサイクロイドでローラー 21.5 mm の $180.310$ MPa が最小で、最良の半径÷応力が最大の点の輪郭の曲率半径は 6 通りで $0.962550$ から $1.023792$ だった。基礎円を決めると、ローラーは大きいほど応力が下がり、4 mm の $333.861$ MPa から 30 mm の $139.420$ MPa になった。分離子は、決めておくのが基礎円か、ピッチ円か。既刊との位置:論文961 が圧力角で、論文967 が切り下げで決めたローラーとピッチ円に、論文929 ほかが扱わなかった接触の応力を足した。正直に言えば、置いた値のカムで、持ち上げの区間の応力の最大だけを数えた。材料が耐えるかは言わない。ローラーの大きさで応力がどう変わるか、そこまでである。
参考文献
- Johnson, K. L. (1985). Contact Mechanics. Cambridge University Press.
- 山岸勇輝 (2026). 『サイクロイドのカムは加速度の最大が大きいのに、端で跳ばないぶん速く回しても揺れが残りにくい』[論文929]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/929
- 山岸勇輝 (2026). 『速さの最大が同じカムの曲線でも、圧力角を収めるピッチ円は、角が最大になる位置で変わる』[論文961]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/961
- 山岸勇輝 (2026). 『カムの切り下げを避けるローラーの大きさは、圧力角と違い、減速の強さの順に決まる』[論文967]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/967
- 山岸勇輝 (2026). 『カムの従動節をずらして得をするのは、戻りが持ち上げより遅いときだけである』[論文972]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/972
- 山岸勇輝 (2026). 『平らな面の従動節は圧力角が 0 でも、凸の輪郭に要る基礎円は減速の強さで決まる』[論文977]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/977
作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。
書誌
山岸勇輝(2026)「ピッチ円を決めたカムでは、接触の応力はローラーと輪郭の曲率半径が等しいあたりで最も小さい」[論文990]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/990
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住所:https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/990・CC BY 4.0・プレプリント(査読を経ていません)・ORCID 0009-0006-8587-3450
引用するとき
山岸勇輝 (2026). ピッチ円を決めたカムでは、接触の応力はローラーと輪郭の曲率半径が等しいあたりで最も小さい [論文990]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/990
Yamagishi, Y. (2026). With the Pitch Circle Fixed, Cam Contact Stress Is Least When Roller and Profile Curvature Radii Are Nearly Equal [Paper 990]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/990
@misc{yamagishi2026yoi990,
author = {Yamagishi, Yuuki},
title = {With the Pitch Circle Fixed, Cam Contact Stress Is Least When Roller and Profile Curvature Radii Are Nearly Equal},
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指紋(SHA-256)と確かめ方
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