要旨
光速は十七世紀から繰り返し測られてきたのだから、片道の速さも測られているはずだと思われている。本稿が示すのは、四つの古典測定のどれも、往路と復路を分けて動かしても値が変わらないことである。片道の比を $\mathbf{19.0000}$ 倍ひらいても、一つも反応しない。新しい定理も法則も主張しない。
第一に、レーマーの遅れは $\mathbf{998.010}$ 秒、すなわち $16.6335$ 分である。式には軌道の直径が入っている(第2節)。
第二に、ブラッドリーの光行差は $\mathbf{20.4894}$ 秒角で、既知の $20.49$ 秒角に合う。これは時間ではなく比 $9.933539\times10^{-5}$ である(第2節)。
第三に、フィゾーの回転数は $\mathbf{12.0578}$ 回転/秒で、逆算すると $c$ に厳密に戻る(第2節)。
第四に、これが本稿の芯である。往復の平均を保ったまま片道を非等方にすると、四つとも値が動かない。差はそれぞれ $0.000\times10^{0}$ 秒、$0.000\times10^{0}$ rad である(第3節)。
第五に、往復の平均そのものを変えれば値は動く。検査が反応することの確認である(第3節)。
第六に、分離子は「往復に効く量か、片道に効く量か」である(第4節)。
キーワード:片道の光速、同期の規約、レーマー、光行差、光速の測定。
射程(何を示さないか)
新しい定理も法則も主張しない。片道の光速が同期の規約に依ることも、四つの古典測定がいずれも往復か比であることも既知である。規約を選ばない。アインシュタイン同期を採るべきか、他の同期を採るべきかは主題ではない。論文24 がその判断を扱っている。歴史の再現をしない。各実験の装置寸法や誤差評価は史料どおりではない。現代の $c$ から逆算した理想的な値を使っている。現代の測定を扱わない。一方向の時計輸送、GPS、共振器の実験は主題ではない。非等方は物理ではない。往路と復路で速さが違う世界を作っているが、それが実在すると主張してはいない。測定が何に反応するかを見るための操作である。既刊との関係:論文24 は片道の光速が測れないと示した。本稿はその主張を、四つの歴史的な測定について数で当てる。論文491 は古典のドップラーが二つの式であることを示した。そちらは媒質があるかどうか、こちらは同期があるかどうかで、どちらも「どの量が測れているか」を問うている。論文481 は分離子が無いと反証の行き先が決まらないと示した。本稿はその分離子を一本書く。論文300 は同根か別根かが判定できると示した。往復平均と片道は別根である。加えたのは、四つの測定値を同じ表に置いたこと、フィゾーの回転数を $12.0578$ と出し逆算で確かめたこと、往復平均を保つ非等方を作り四つに当てたこと、片道の比を $19.0000$ 倍まで動かしたこと、往復平均を変えれば動くことを確かめたことである。
1. 記法と問い
設定:往路の速さを $c_{1}$、復路の速さを $c_{2}$ とし、往復の平均だけを $c$ に保つ。すなわち長さ $L$ について
$$\frac{2L}{c}=\frac{L}{c_{1}}+\frac{L}{c_{2}}$$
を課したうえで、$c_{1}=\kappa c$ として $\kappa$ を動かす。$\kappa=1$ で等方、$\kappa\neq1$ で非等方である。この操作に対して、四つの古典測定が反応するかを見る。
観察 1.1 光速は十七世紀から繰り返し測られてきた。レーマー、ブラッドリー、フィゾー、フーコー、これだけ測られていれば片道も測られているはずだ、という像である。
観察 1.2 だが片道を測るには、離れた二つの時計を合わせなければならない。合わせるには光を使う。論文24 が示したとおり、そこで循環する。
問い:四つの測定は、片道の非等方に反応するのか。
2. 四つの測定値
計算 2.1:現代の $c$ から、四つの測定に対応する量を出す。
| 測定 | 量 | 値 |
|---|---|---|
| レーマー($1676$) | 軌道の直径ぶんの遅れ | $\mathbf{998.010}$ 秒($16.6335$ 分) |
| ブラッドリー($1728$) | 光行差 | $\mathbf{20.4894}$ 秒角 |
| フィゾー($1849$) | 最初の消光の回転数 | $\mathbf{12.0578}$ 回転/秒 |
| フーコー($1862$) | 像のずれ角 | $\mathbf{8.383380\times10^{-4}}$ rad |
観察 2.2 レーマーの式には直径が入っている。片道なら $499.005$ 秒、観測されるのは軌道の両端での遅れの差であり、半径ではなく直径ぶんである。
観察 2.3 ブラッドリーの値は既知と合う。$20.4894$ 秒角 対 $20.49$ 秒角、独立な確認である。
観察 2.4 そしてそれは無次元の比である。$9.933539\times10^{-5}$、$v/c$ であって、秒を含んでいない。
観察 2.5 フィゾーの回転数は史実と同じ桁である。$12.0578$ 回転/秒、フィゾーが報告した約 $12.6$ 回転/秒に近く、そこから戻すと $c$ に厳密に一致する。
観察 2.6 式の因子は $4$ である。$c=4LNn$、歯が一つぶん進むのに要する時間が $1/(2Nn)$ だからで、因子を $2$ と置くと $24.1155$ 回転/秒になり史実と合わなくなる。
3. 片道を非等方にしても、一つも動かない
計算 3.1:往復の平均を保ったまま $\kappa$ を動かす。
| $\kappa$ | 往路と復路の比 | レーマーの遅れ |
|---|---|---|
| $1.00$ | $1.0000$ | $998.009567672$ 秒 |
| $1.50$ | $2.0000$ | $998.009567672$ 秒 |
| $1.90$ | $2.8000$ | $\mathbf{998.009567672}$ 秒 |
| $10.0$ | $\mathbf{19.0000}$ | 、 |
観察 3.2 レーマーの遅れが桁一つ動かない。$998.009567672$ 秒のまま、片道の比を $2.8$ 倍ひらいても、表示している桁がすべて同じである。
観察 3.3 フィゾーの往復時間も動かない。差 $0.000\times10^{0}$ 秒、丸めの範囲ですらない。
観察 3.4 フーコーのずれ角も動かない。差 $0.000\times10^{0}$ rad、回転鏡は光が戻ってきたときの角度を読むので、往復しか見ていない。
観察 3.5 ブラッドリーはそもそも時間を含まない。$v/c=9.933539\times10^{-5}$、比だけで書けるので、片道の時刻を問う場所が無い。
観察 3.6 $\kappa=10$ では片道の比が $19.0000$ 倍になる。往路が復路の $19$ 倍、それでも往復平均は $2.997925\times10^{8}$ のままである。
観察 3.7 だが往復平均そのものを変えれば、値は動く。$0.9c$ にすると差 $6.399\times10^{-6}$ 秒、検査が反応することの確認であり、四つが何にも反応しないわけではない。
4. 分離子
分離子:測っているのが往復に効く量か、片道に効く量か。
観察 4.1 往復に効く量なら、非等方に反応しない。$L/c_{1}+L/c_{2}$、和だけが決まっていて、内訳は決まっていない。
観察 4.2 片道に効く量なら、反応するはずである。$L/c_{1}$、四つのどれもこの形をしていない。
観察 4.3 二つは論文300 の基準で別根である。どちらも「光速」と呼ばれる。一方は往復平均という測れる量、一方は同期の規約に依る量である。
観察 4.4 四つとも往復か比である。レーマーは軌道の直径、フィゾーとフーコーは往復、ブラッドリーは無次元の比、装置も原理も違うのに、測っている量の型は同じである。
観察 4.5 これは論文24 の主張を、四つの実例で確かめたことになる。あちらは同期の循環を論じた。こちらは、循環を避けた測定が実際に何を測っているかを数で示した。
観察 4.6 これは論文481 でいう分離子の一本である。「光速はもう十分に測られている」という主張が問われたとき、何が測られたのかを書けば、往復平均であって片道ではないと分かる。
観察 4.7 正直に言えば、片道が測れないことを証明していない。示したのは四つが反応しないことである。他の測定が反応しうるかどうかは、本稿の外にある。四つで $0$ 件だったことは、五つ目が無いことの証明にはならない。
5. 点呼と結び
- レーマーの遅れ $998.010$ 秒(計算 2.1):直径ぶんである。
- ブラッドリー $20.4894$ 秒角(観察 2.3):既知と一致。
- それは比 $9.933539\times10^{-5}$(観察 2.4):秒を含まない。
- フィゾー $12.0578$ 回転/秒(観察 2.5):史実と同じ桁。
- 因子は $4$ である(観察 2.6):$2$ では史実と合わない。
- 非等方でレーマーが動かない(観察 3.2):本稿の芯。
- フィゾーとフーコーも差 $0$(観察 3.3・3.4):丸めの範囲ですらない。
- $\kappa=10$ で比 $19.0000$ 倍(観察 3.6):往復平均は不変。
- 往復平均を変えれば動く(観察 3.7):検査が反応する。
- 片道が測れないことは示していない(観察 4.7):四つで $0$ 件まで。
結び:光速は十七世紀から繰り返し測られてきた。レーマー、ブラッドリー、フィゾー、フーコー。これだけ測られていれば片道も測られているはずだ、という像である。だが片道を測るには離れた二つの時計を合わせなければならず、合わせるには光を使う。論文24 が示したとおり、そこで循環する。四つの測定値、レーマーの遅れは $\mathbf{998.010}$ 秒すなわち $16.6335$ 分で、観測されるのは軌道の両端での遅れの差だから半径ではなく直径ぶんであり、片道なら $499.005$ 秒になる。ブラッドリーの光行差は $\mathbf{20.4894}$ 秒角で既知の $20.49$ 秒角に合い、しかもそれは無次元の比 $9.933539\times10^{-5}$、すなわち $v/c$ であって秒を含まない。フィゾーの回転数は $\mathbf{12.0578}$ 回転/秒で、報告された約 $12.6$ 回転/秒に近く、そこから戻すと $c$ に厳密に一致する。式の因子は $4$ で、歯が一つぶん進むのに要する時間が $1/(2Nn)$ だからであり、因子を $2$ と置くと $24.1155$ 回転/秒になって史実と合わなくなる。片道を非等方にしても、一つも動かない。往復の平均を保ったまま $\kappa$ を動かすと、$\kappa=1.90$ で往路と復路の比が $2.8000$ になってもレーマーの遅れは $\mathbf{998.009567672}$ 秒のまま、表示している桁がすべて同じである。フィゾーの往復時間も差 $\mathbf{0.000\times10^{0}}$ 秒、フーコーのずれ角も差 $\mathbf{0.000\times10^{0}}$ rad で、丸めの範囲ですらない。回転鏡は光が戻ってきたときの角度を読むので、往復しか見ていない。ブラッドリーはそもそも時間を含まず、比だけで書けるので片道の時刻を問う場所が無い。$\kappa=10$ では片道の比が $\mathbf{19.0000}$ 倍になり、往路が復路の $19$ 倍でも、往復平均は $2.997925\times10^{8}$ のままである。だが往復平均そのものを $0.9c$ に変えれば差は $6.399\times10^{-6}$ 秒となって動く。四つが何にも反応しないわけではない。分けているものは一つ、測っているのが往復に効く量か、片道に効く量か。往復に効く量なら非等方に反応しない。$L/c_{1}+L/c_{2}$ は和だけが決まっていて、内訳は決まっていない。片道に効く量なら反応するはずだが、四つのどれも $L/c_{1}$ という形をしていない。二つは論文300 の基準で別根であり、どちらも「光速」と呼ばれるが、一方は往復平均という測れる量、一方は同期の規約に依る量である。四つとも往復か比で、レーマーは軌道の直径、フィゾーとフーコーは往復、ブラッドリーは無次元の比、装置も原理も違うのに、測っている量の型は同じである。これは論文24 の主張を四つの実例で確かめたことになる。あちらは同期の循環を論じ、こちらは循環を避けた測定が実際に何を測っているかを数で示した。これは論文481 でいう分離子の一本で、「光速はもう十分に測られている」という主張が問われたとき、何が測られたのかを書けば、往復平均であって片道ではないと分かる。正直に言えば、片道が測れないことを証明していない。示したのは四つが反応しないことであって、他の測定が反応しうるかどうかは本稿の外にある。四つで $0$ 件だったことは、五つ目が無いことの証明にはならない。
参考文献
- Rømer, O. (1676). Démonstration touchant le mouvement de la lumière. Journal des Sçavans.
- Bradley, J. (1728). A Letter Giving an Account of a New Discovered Motion of the Fix’d Stars. Philosophical Transactions of the Royal Society.
- Anderson, R., Vetharaniam, I., & Stedman, G. E. (1998). Conventionality of Synchronisation, Gauge Dependence and Test Theories of Relativity. Physics Reports.
- 山岸勇輝 (2026). 『片道の光速は、測れない』[論文24]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22090261
- 山岸勇輝 (2026). 『三百本目の点呼、同根か別根かは、判定できる』[論文300]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22171914
- 山岸勇輝 (2026). 『「法則が破れた」は、どの仮定へも落とせる』[論文481]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22733927
- 山岸勇輝 (2026). 『古典のドップラーは二つの式であり、相対論はその幾何平均である』[論文491]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22760067
作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。
書誌
山岸勇輝(2026)「光速の四つの古典測定に、片道は一つも無い」[論文499]. Zenodo.
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引用するとき
山岸勇輝 (2026). 光速の四つの古典測定に、片道は一つも無い [論文499]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/499 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22760231
Yamagishi, Y. (2026). Not One of the Four Classical Measurements of the Speed of Light Measures One Way [Paper 499]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/499; DOI: 10.5281/zenodo.22760231
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author = {Yamagishi, Yuuki},
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