【論文504】下がる雑音と下がらない雑音は二つではなく、一つの式の両端である

要旨

長く測れば下がる雑音と、下がらない雑音は、別の雑音だと思われている。本稿が示すのは、それが一本の式の両端であり、切り替わる点が計算できることである。交点は $N^{*}=\sigma^{2}/b^{2}$ である。新しい定理も法則も主張しない。

第一に、偏りが無ければ、$N$ を $9$ 倍にすると二乗平均が $\mathbf{3.0152}$ 分の $1$ になる。次の $9$ 倍でも $\mathbf{2.9386}$ 分の $1$ である(第2節)。

第二に、偏りがあると、$N=8100$ で $\mathbf{0.014863576}$ に下げ止まる(第2節)。

第三に、これが本稿の芯である。どちらも $\sqrt{b^{2}+\sigma^{2}/N}$ という一本の式で、実測との相対差は $0.0013$、$0.0130$、$\mathbf{0.0057}$ である(第3節)。

第四に、二つの項が等しくなる交点は $N^{*}=\mathbf{10^{4}}$ で、そこでの二乗平均は偏りの $\sqrt{2}$ 倍 $\mathbf{0.014142136}$ である(第4節)。

第五に、測った範囲 $N\le8100$ は交点の手前で、だから両方の項が効いていた(第4節)。

第六に、分離子は「雑音が二種類あるのか、一本の式のどちら側にいるのか」である(第5節)。

キーワード:雑音、平均化、偏り、アラン分散、大数の法則。

射程(何を示さないか)

新しい定理も法則も主張しない。独立な雑音が $1/\sqrt{N}$ で下がることも、偏りが平均で消えないことも標準的である。雑音の種類を数えない。熱雑音・ショット雑音・$1/f$ 雑音の分類は論文312 が扱っており、本稿は入らない。$1/f$ を扱わない。本稿の「下がらない」は定数の偏りであって、$1/f$ のような相関のある雑音ではない。両者は別物である。乱数生成器を評価しない。線形合同法とボックス=ミュラー法で作っており、擬似乱数の質そのものは主題ではない。偏りの起源を扱わない。$b$ は与えたものであり、なぜ偏るのかは扱わない。既刊との関係:論文312 は長く測れば下がる雑音と下がらない雑音があると示した。本稿はその二つが一本の式であることと、切り替わる点を出す。論文322 は同じセンサ誤差が位置には三つの別々の冪で届くと示した。同じく、一つの源が複数の顔を持つ場合である。論文300 は同根か別根かが判定できると示した。二つの項は同じ式の中にいる。論文481 は分離子が無いと反証の行き先が決まらないと示した。本稿はその分離子を一本書く。加えたのは、$1/\sqrt{N}$ 則を $3.0152$ と $2.9386$ で確かめたこと、偏りのある側を $0.014863576$ と測ったこと、閉じた式との相対差を三点で出したこと、交点 $N^{*}=10^{4}$ と、そこでの $\sqrt{2}$ 倍を出したこと、測定範囲が交点の手前だったことを示したことである。

1. 記法と問い

設定:ばらつき $\sigma$ の独立な雑音に、一定の偏り $b$ が乗っているとする。$N$ 回平均した誤差の二乗平均は

$$\mathrm{RMS}(N)=\sqrt{b^{2}+\frac{\sigma^{2}}{N}}$$

である。以下 $\sigma=1$、$b=0.01$ とし、$N=100$、$900$、$8100$ で各 $400$ 本の種を取って測る。一本の実現値ではなく二乗平均を取る。$1/\sqrt{N}$ 則は平均についての言明であり、一本では確かめられないからである。

観察 1.1 長く測れば下がる雑音と、下がらない雑音は、別の雑音だと思われている。片方は平均で消え、片方は残る。二種類ある、という像である。

観察 1.2 だが上の式には項が二つしかない。$b^{2}$ と $\sigma^{2}/N$、雑音は一つで、どちらの項が大きいかだけが変わる。

問い:どこで切り替わるのか。

2. 両側を測る

計算 2.1:偏りの無い場合と、ある場合を測る。

$N$ 偏り $0$ 偏り $0.01$
$100$ $0.100658455$ $0.100632328$
$900$ $0.033383439$ $0.034350201$
$8100$ $\mathbf{0.011360408}$ $\mathbf{0.014863576}$

観察 2.2 偏りが無ければ $1/\sqrt{N}$ で下がる。$N$ を $9$ 倍にして $3.0152$ 分の $1$、次の $9$ 倍で $2.9386$ 分の $1$、どちらも $3$ に近く、一点合わせではない。

観察 2.3 偏りがあると下げ止まる。$N=8100$ で $0.014863576$、偏り $0.01$ より大きいが、同じ桁である。

観察 2.4 改善の比が違う。偏り無しで $2.9386$ 倍、偏りありで $2.3110$ 倍、偏りのある側のほうが、同じ操作で得るものが少ない。

観察 2.5 だが $N=100$ では二つがほとんど同じである。$0.100658455$ 対 $0.100632328$、小さい $N$ では、偏りがあるかどうかを見分けられない。

3. 一本の式である

計算 3.1:偏りのある側を、閉じた式 $\sqrt{b^{2}+\sigma^{2}/N}$ と比べる。

$N$ 実測 予測 相対差
$100$ $0.100632328$ $0.100498756$ $0.0013$
$900$ $0.034350201$ $0.034801022$ $0.0130$
$8100$ $\mathbf{0.014863576}$ $\mathbf{0.014948471}$ $\mathbf{0.0057}$

観察 3.2 三点とも $1.3$ パーセント以内で合う。$0.0013$、$0.0130$、$0.0057$、残りは種の数が有限であることによる推定の揺らぎである。

観察 3.3 偏り $0$ の側も同じ式で書ける。$b=0$ と置けば $\sigma/\sqrt{N}$、$N=8100$ で $0.011360408$ 対 $0.011111111$ と合う。

観察 3.4 つまり二種類の雑音ではない。一本の式の、$b$ が $0$ か否か、分けているのは雑音の種類ではなく、パラメータの値である。

4. 交点は計算できる

計算 4.1:二つの項が等しくなる $N$ を解く。

$$b^{2}=\frac{\sigma^{2}}{N^{*}}\ \Longrightarrow\ N^{*}=\frac{\sigma^{2}}{b^{2}}=\mathbf{10^{4}}$$

そこでの二乗平均は $\sqrt{2} b=\mathbf{0.014142136}$ である。

観察 4.2 交点での値が偏りの $\sqrt{2}$ 倍になる。$0.014142136$ 対 $0.014142136$、二つの項が等しいので、和は $2b^{2}$ になる。

観察 4.3 測った範囲は交点の手前だった。$8100<10000$、だから $N=8100$ でも両方の項が効いており、下げ止まりがはっきり見えなかった。

観察 4.4 交点の $100$ 倍では、偏り項が $0.990099$ を占める。$N=10^{6}$、そこで初めて「下がらない雑音」に見える。

観察 4.5 交点の $100$ 分の $1$ では、揺らぎ項が同じ $0.990099$ を占める。$N=100$、境目の反対側であり、そこでは「下がる雑音」に見える。

観察 4.6 同じ雑音が、$N$ をまたいで二つの顔を見せる。$N=100$ と $N=10^{6}$、見えている顔は、雑音の性質ではなく測定の長さで決まる。

5. 分離子

分離子:雑音が二種類あるのか、一本の式のどちら側にいるのか。

観察 5.1 二種類なら、どちらかを取り除ける。別の機構、片方だけを対策できるはずである。

観察 5.2 一本の式なら、$N$ を変えるだけで顔が変わる。$b$ と $\sigma$ は同じまま、実際、同じ数列で両方の顔が出た。

観察 5.3 二つは論文300 の基準で別根である。どちらも「下がらない雑音」と言える。一方は別の機構の存在、一方は同じ式の一方の項が勝っている状態である。

観察 5.4 論文312 は前者の側で二つを分けた。熱雑音・ショット雑音・$1/f$ 雑音、機構が違えば確かに別物である。本稿が示したのは、機構が一つでも二つの顔が出るということである。

観察 5.5 論文322 とも同じ形である。一つのセンサ誤差が三つの冪で届く。源が一つでも、届き方が複数ある。

観察 5.6 これは論文481 でいう分離子の一本である。「長く測っても下がらない」という報告が来たとき、別の雑音が混ざったのか、交点を越えただけなのかで、直す先が違う。

観察 5.7 正直に言えば、扱ったのは定数の偏りだけである。$1/f$ のような相関のある雑音は入っていない。そちらは平均しても下がらないが、理由が違う。相関があるとき $\sigma^{2}/N$ という項自体が成り立たず、本稿の式は使えない。「下がらない」の中身は、少なくとも二つある。

6. 点呼と結び

  1. 偏り無しで $3.0152$ 分の $1$(観察 2.2):次も $2.9386$。
  2. 偏りありで $0.014863576$(計算 2.1):下げ止まる。
  3. $N=100$ では見分けられない(観察 2.5):$0.100658$ 対 $0.100632$。
  4. 閉じた式と $1.3$ パーセント以内(計算 3.1):本稿の芯。
  5. 偏り $0$ 側も同じ式(観察 3.3):$b=0$ と置くだけ。
  6. 交点 $N^{*}=10^{4}$(計算 4.1):$\sigma^{2}/b^{2}$。
  7. 交点で $\sqrt{2}$ 倍 $0.014142136$(観察 4.2):二項が等しい。
  8. 測定範囲は交点の手前(観察 4.3):$8100<10000$。
  9. 分離子は二種類か一本の式か(観察 5.3):論文300 の基準で別根。
  10. $1/f$ は扱っていない(観察 5.7):「下がらない」は少なくとも二つ。

結び:長く測れば下がる雑音と、下がらない雑音は、別の雑音だと思われている。片方は平均で消え片方は残る、二種類ある、という像である。だが $\mathrm{RMS}(N)=\sqrt{b^{2}+\sigma^{2}/N}$ には項が二つしかない。雑音は一つで、どちらの項が大きいかだけが変わる。両側を測る。$\sigma=1$、$b=0.01$、種 $400$ 本で測ると、偏り無しでは $N=100$、$900$、$8100$ に対し $0.100658455$、$0.033383439$、$\mathbf{0.011360408}$、偏りありでは $0.100632328$、$0.034350201$、$\mathbf{0.014863576}$ である。偏りが無ければ $N$ を $9$ 倍にして $\mathbf{3.0152}$ 分の $1$、次の $9$ 倍で $\mathbf{2.9386}$ 分の $1$ と、どちらも $3$ に近い。偏りがあると $N=8100$ で $0.014863576$ に下げ止まり、改善の比も $2.3110$ 倍と、偏り無しの $2.9386$ 倍より小さい。だが $N=100$ では $0.100658455$ 対 $0.100632328$ とほとんど同じで、小さい $N$ では偏りの有無を見分けられない。一本の式である。偏りのある側を閉じた式と比べると、$N=100$、$900$、$8100$ で相対差 $0.0013$、$0.0130$、$\mathbf{0.0057}$ と、三点とも $1.3$ パーセント以内で合う。残りは種の数が有限であることによる推定の揺らぎである。偏り $0$ の側も $b=0$ と置くだけで同じ式になり、$N=8100$ で $0.011360408$ 対 $0.011111111$ と合う。つまり二種類の雑音ではなく、分けているのは雑音の種類ではなくパラメータの値である。交点は計算できる。二つの項が等しくなる $N$ は $N^{*}=\sigma^{2}/b^{2}=\mathbf{10^{4}}$ で、そこでの二乗平均は $\sqrt{2} b=\mathbf{0.014142136}$ である。二つの項が等しいので和が $2b^{2}$ になり、$\sqrt{2}$ 倍が出る。測った範囲 $N\le8100$ は交点の手前で、だから $N=8100$ でも両方の項が効いており、下げ止まりがはっきり見えなかった。交点の $100$ 倍にあたる $N=10^{6}$ では偏り項が $\mathbf{0.990099}$ を占め、そこで初めて「下がらない雑音」に見える。交点の $100$ 分の $1$ にあたる $N=100$ では揺らぎ項が同じ $0.990099$ を占め、そこでは「下がる雑音」に見える。同じ雑音が $N$ をまたいで二つの顔を見せ、見えている顔は雑音の性質ではなく測定の長さで決まる。分けているものは一つ、雑音が二種類あるのか、一本の式のどちら側にいるのか。二種類なら別の機構なので、片方だけを対策できるはずである。一本の式なら、$b$ と $\sigma$ を変えずに $N$ を変えるだけで顔が変わる。実際、同じ数列で両方の顔が出た。二つは論文300 の基準で別根であり、どちらも「下がらない雑音」と言えるが、一方は別の機構の存在、一方は同じ式の一方の項が勝っている状態である。論文312 は前者の側で二つを分けた。熱雑音・ショット雑音・$1/f$ 雑音は機構が違えば確かに別物である。本稿が示したのは、機構が一つでも二つの顔が出るということである。論文322 とも同じ形で、一つのセンサ誤差が三つの冪で届くように、源が一つでも届き方が複数ある。これは論文481 でいう分離子の一本で、「長く測っても下がらない」という報告が来たとき、別の雑音が混ざったのか交点を越えただけなのかで直す先が違う。正直に言えば、扱ったのは定数の偏りだけである。$1/f$ のような相関のある雑音は入っておらず、そちらは平均しても下がらないが理由が違う。相関があるとき $\sigma^{2}/N$ という項自体が成り立たず、本稿の式は使えない。「下がらない」の中身は、少なくとも二つある。

参考文献

  1. Allan, D. W. (1966). Statistics of Atomic Frequency Standards. Proceedings of the IEEE.
  2. Birkhoff, G. D. (1931). Proof of the Ergodic Theorem. Proceedings of the National Academy of Sciences.
  3. Box, G. E. P., & Muller, M. E. (1958). A Note on the Generation of Random Normal Deviates. Annals of Mathematical Statistics.
  4. 山岸勇輝 (2026). 『三百本目の点呼、同根か別根かは、判定できる』[論文300]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22171914
  5. 山岸勇輝 (2026). 『長く測れば下がる雑音と、下がらない雑音がある』[論文312]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22174709
  6. 山岸勇輝 (2026). 『同じ一つのセンサ誤差が、位置には三つの別々の冪で届く』[論文322]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22209240
  7. 山岸勇輝 (2026). 『「法則が破れた」は、どの仮定へも落とせる』[論文481]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22733927

作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。

書誌

山岸勇輝(2026)「下がる雑音と下がらない雑音は二つではなく、一つの式の両端である」[論文504]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.22861737

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引用するとき

山岸勇輝 (2026). 下がる雑音と下がらない雑音は二つではなく、一つの式の両端である [論文504]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/504 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22861737

Yamagishi, Y. (2026). Falling Noise and Non-Falling Noise Are Not Two Noises but Two Ends of One Expression [Paper 504]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/504; DOI: 10.5281/zenodo.22861737

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